イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

灰と幻想のグリムガル:第10話『リーダーの器じゃないけれど』感想

一難去ってまた一難ぶっちゃけありえない系ファンタジーアニメ、新しい狩場攻略とクッソ面倒くさい吉野に悩む第10話。
ただのウザい奴に収まりがちなランタにしっかり尺を割くことで、彼なりの考えと割りきり、それを受け止めきれないハルヒコのモヤモヤを丁寧に拾い上げていて、組織モノとして面白い回だった。
人間関係はジワジワやってくしか無いし、ジワジワやってメリイをデレさせた成功体験もあるのだから、腐らず見捨てず諦めず、器じゃなくても頑張れハルヒロッて感じだ。

ランタは吉野が最高のウザ演技を見せてくれる最高のウザ野郎なんですが、そんな彼にも自分なりの考えと行き方というものがあるわけで。
これは今回いきなり描写されたわけではなくて、例えば前回ユメのフリークライミングを見つめている姿とか、マナトが死んだ時のリアクションとか、うぜーけどうぜーだけの人間ではない、結構複層的な捕らえられ方をしてきたと思います。
表面的なキャラクターの奥にあるゆらぎを大事にしていればこそ、このアニメのテンポはゆっくりなのだろうし、そのゆらぎを捉える前に死んでしまったマナトの描き方含めて、大きく成功しているストロングポイントでしょう。

嫌われているのを知っていても、嫌われ者の自分を曲げれないランタは、事自分と向き合い分析するという点において、パーティー内部でも抜きん出ています。
分析して見えてきた問題点を変化させようとしない所が業の深いところですが、少なくとも論理的で冷静な側面があるのは事実。
ハルヒコが歩み寄ろうとしてやり込められ、自分への情けなさに涙してしまうのも、そこら辺の人間力のなさが原因でしょう。

ランタのウザさの裏にあるウザくなさが描かれたように、ハルヒロのリーダーシップ(見習い)の奥にある未熟さも丁寧に切り取られていて、このアニメらしい楽しさだったと思います。
マナトへの義務感からか、立派なリーダーたろうと自分を抑えこんで、結局ランタへの不満をブスブスと焦げ付かせてしまうところとかは、共感の持てるダメっぷりでした。
冒険だけでなく人格的成長も、三歩進んで二歩下がるだなぁ、今更ながら。
そんなグリムガル的な歩き方が、僕は好きですねやっぱ。


パーティーの内側の人間模様描写もリキ入ってましたが、レベルアップした殺戮巧者っぷりも手際良く紹介されてました。
第1話のモタモタした『殺し』未遂に比べると、装備も立派になったし、ゲームキャラみてーなエフェクトもブリバリ出すし、良くも悪くも『殺し』に慣れた感じがよく出ている。
不謹慎だろうが非倫理的だろうが、主人公たちの成長ってのは嬉しいもんで、新技・スパイダーでコボルドをぶっ殺しまくるハルヒロの活躍に、思わず拳を握ってしまうわけです。
こういう地道な成長描写をちゃんと入れるのは、物語的な満腹感出すのには非常に大事だねやっぱ。

新しい冒険の舞台となった鉱山は、奇っ怪な燐光が妖しく輝き、ゴブリンの廃都とはまた違った息苦しさのある、良いフィールドでした。
美術が非常に良いアニメなので、奇妙奇天烈な風景に頭から飛び込んでいく臨場感や楽しさが、新しいフィールドになるとグッと全面に出てくるのよね。
『"新世界より"に帰れ!!』と言いたくなるブサイク動物農場とか、潜れば潜るほど文明レベルが上がるコボルドの生活圏とか、細かい描写が本当に気持ちが良い。
異質な世界を丁寧に描写することで、作り物のはずの異世界の肌触りや体温を疑似体験できるのはファンタジーの醍醐味だなぁ、やっぱ。

結構順調にコボルド狩りしてたパーティーですが、鳴子に引っかかって増援は呼ばれるわ、すんごい強そうオーラをむき出しにネームドモンスターは湧いてくるわ、メリイさんはPTSD発症して身動き取れないわで、地すべりのように大ピンチ。
こっからどう切り返すかも楽しみだし、不発地雷のような存在感を放つランタとの関係も気になるし、来週のグリムガルも楽しむです。
……流石に死なねぇよな……?(安心したいけど安心できない気持ちに揺らぐマン)