イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

うしおととら:第29話『三日月の夜』感想

最終決戦への気配強まる人妖戦記、今週は紅蓮と遊ぼう! ヒョウさんも来るよ!!回。
とらと紅蓮含めた字伏誕生の秘密を公開しつつ、ヒョウさんのモチベーション、主役たちとの繋がりを確認するエピソードとなりました。
復讐鬼がようやく仇を見つけた昏い喜びとか、殺伐とした暮らしの中で見つけた小さな光とか、明暗の感情表現が良いお話なんだけど、惜しむるかな少しタメが足らない印象。
この押しさが常に付きまといつつ、出来る範囲で最高に面白いのがうしとらアニメの悩ましいところだなぁ……エピソードの再構築自体はとってもいい感じだと思います。

ボーボー燃やされた麻子を取り敢えず落ち着かせたりとか、キリオとの関係整理とか、いろいろやりつつも今回は紅蓮&ヒョウさんがメイン。
若本さんの泥っぽい演技やら、ジュビロスマイル完全再現のヒョウさんの表情とか、とにかくダーティーでダークな色合いが目立つ話でした。
潮は黒い感情から無縁なわけじゃないけど、常に正しい方向に軌道修正できる強さがあるので、如何に正当な理由があれど殺し殺されの道に行ったヒョウさんが出てくると、味方なのに明暗くっきりするね。

それを強調するべくとにかくゲスに煽り倒す紅蓮は、強さひっくるめて最高に憎たらしい、良い敵役だと思う。
ヒョウさん一家に襲いかかった悲劇を見ると、『ギリョウさんなんでこんなのに力貸しちゃったの……』と聴きたくなるが、あの人も復讐のために人間やめた怪物なので、巧くコントロールなんて出来ないよね。
そう考えてみると、ヒョウさんも獣の槍もとらも、薄黒い感情に飲み込まれそうになったところを、潮の輝きでぎりぎり踏みとどまった連中ばかりなのだな。
そらー化物と裏社会の人間にモテるわな、潮は。


そんな潮は元気になりすぎたとらを抑え、マッチアップ相手を再確認する良い動きをしていた。
主人公力が求められるところではしっかり前に出て、状況整理が必要なタイミングでは後ろに下がる出し入れの上手さは、お話全体が迷わないスマートさにも繋がっていて、潮の強いところだ。
あまりの紅蓮の憎らしさに『コイツ殺しますよ、マジ殺します!!』と吹き上がったとらPLを、『おめーハンドアウトもう一回見ろよ。紅蓮は、キャラ作成段階からヒョウさんのリソースだから。気持ちは判るが落ち着け』と制する潮PLを幻視したが、あながち間違ってもいないだろう。
『鏡に写った醜い自分』を敵役として配置することで、同族嫌悪を煽ってキャラクターの感情を熱くする辺りも、上手いテクニックよね。

まだクライマックスには早いので、因縁の対決は水を入れて次回に持ち越し。
余った時間で何をやるかと思えば、潮と出会ったことで変わった自分たちを、おっさん二人が確認する時間だった。
それまで泥のような殺気に満ちていただけに、とらちゃんがアイスをぺーろぺろするあざとい仕草とか、唐突にパなされるヒョウポエムとか、ゆったりした時間が心地よいシーンである。
のだが、ヒョウさんの復讐鬼っぷりはゆるふわ時間でも癒やされることなく、仇諸共散る覚悟を確認するシーンでもあり、いい塩梅に死亡フラグが積み重なる。

こうやって『この男が人生に決着をつけるには、生きるか死ぬかしかないんだ!』という事実を視聴者に確認させていくのは、自己犠牲に酔っ払った自殺特攻で話がなんとなーくまとまった感じを出さずに済むので、大事なことだと思う。
みんながみんな潮のように、黒い感情と清らかな思いをバランス良く乗りこなせるなら、わざわざ主役に配置する必要ないもんな。
ヒョウさんにはヒョウさんなりの因縁との決着の付け方があるが、それはそれとして、復讐鬼が真っ直ぐな少年と出会ったことは無駄ではなかったのだと確認する意味で、酒盛りのシーンは必要なシーンだし、詩情と寂しさのある良い見せ場だったと思う。

そんなわけで、ちょい駆け足でヒョウさん周りの因縁を整理・確認する回でした。
ヒョウさんが背負っている復讐のドラマはやっぱ濃くて黒くて、うしとらの中でもギラリとした存在感がある話。
紅蓮の憎たらしい敵役っぷりもハマっていて、決戦へのモチベーションを上げる良い話だったと思います。

記憶を食われていない頼もしい味方が出てきたのも、絶望ムードから反撃ムードに徐々に切り替わっていく上で、いい仕事してたなぁ。
謀略に追い込まれつつも、反撃の気運高まるうしとら。
来週以降どういう盛り上がりを見せるのか、非常に楽しみです。