イマワノキワ

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うる星やつら:第38話『嵐を呼ぶデート 後編』感想ツイートまとめ

 うる星やつら 第38話を見る。

 前回Bパートから引き続き、水乃小路飛鳥と面堂くんのドタバタデート回である。
 …という通り一遍の解説が、全く意味をなさないスーパーカオスが荒れ狂い、さんざん大騒ぎした挙げ句振り出しに戻ってくるという、箱庭系ラブコメの極地みたいな展開であった。
 変化や成長というものは、精妙に作られた時の止まった喜劇の舞台をぶっ壊す劇薬なので、”うる星”においてはかなり扱いが難しい要素なんだなぁ…と思わされる。
 あとアニメで動く水乃小路母が想定以上にヤバくて、令和時代に許されざる劇毒マザーが、三石さんの声帯でギリギリ洒落になってるヒリツキ、独特の味わいでした。ヤベー…。

 

 そも飛鳥の男性恐怖症も、イカれた風習に子ども染め上げた弊害なわけで、ぶっ壊れた我が子の被害者ッ面でゴリゴリ振り回した挙げ句、反攻の兆しを見せた少女を圧力で黙らせるというのは、コメディじゃなきゃ相当”毒”のある立ち回り。
 そこら辺の苦みを笑いのオブラートで包んで、ギリギリを攻めたテンションを維持し続けているのがるーみっくわーるどである。
 トンちゃんが至極真っ当な価値観を維持しつつ、イカれちゃった妹を大事にしつつ危ない一線に迫りつつ、なかなか苦労するポジションでいてくれるから、飛鳥の健気と幼気がぎりぎり報われている構図で、まったく大変な姉妹だなぁ…という感じ。

 ここら辺の健気さは面堂くんにも言えて、なんもかんも狂っている状況でも飛鳥に優しく、許嫁としてジェントルに振る舞おうと頑張ってくれている姿が、なかなか好感度高い。
 こういう健気さがそこまで報われることもなく、ハイテンションなノリと勢いに飲み込まれてどっかに押し流されてしまうことも多々あるのは、ぶっ飛びコメディの宿命といったところか。
 しのぶと因幡くんとか、あたるとラムとか、しっとり落ち着いたエピソードを振り分けられると変化も許されるのだが、底抜けに勢い良い話の中だと、ノリを殺さないために”人間的”な部分をあえて無視して走り切る。
 結果あがいた結果が出なかったり、報われなかったりもあり得る。

 そこら辺の無惨をゲラゲラ笑うのもコメディの醍醐味であり、悪戦苦闘の結果何も生み出せない苦みを感じさせないよう、テンション高い笑いで走り切る強度を緩めず、容赦のない暴力が色んなモノを壊していくわけだが。
 飛鳥が好き勝手絶頂場を荒らす、原因になっていた武力で母に上回られた結果、場のコントロール権限が鬼親に写るの、荒野のルールで話が動いていて面白かった。
 ブレーキの壊れた暴走機関車として設計されたキャラを抑え込み、話の方向を変えるためにさらなる猛獣を呼び込むしか無いの、バトル漫画の戦力インフレが何故起こるのか実地で教えてくれてて、不思議な学びがあった。
 結局、カラテを極めたやつが上を行くのだ。

 

 水乃小路兄妹とその母、許嫁の面堂くんに加えて、了子とラム&あたるも首を突っ込み好き勝手やる結果、状況は極めてカオスに展開して、全く手がつけられなくなっていく。
 状況を俯瞰で見てコントロールしようとするキャラがいないか、暴れ狂う展開の犠牲になって有効打が打てないか、制圧できても根っこが邪悪なのでより最悪なカオスになっていくかという、話が落ち着くわけがない座組。
 つーか落ち着かせないために燃料ボンボン注ぎ込んでいる話なわけで、そらー大山鳴動して鼠一匹、大した実りもなく飛鳥は兄の寝所に忍び込み続けるというオチにもなっていくわけだ。
 しかしまぁ、落ち着くべきところに落ち着いた感じもあるんだよな……。

 今回のあたるは状況を混乱させるための装置というか、結構ヤバいことになってる飛鳥の”人間”を、例えばトンちゃんや面堂くんみたいにちゃんと見ず、ただただベタベタ触ってぶっ飛ばされ続ける。
 この優しくなさが、あたるがモテない理由付として結構生っぽい感触があった。
 そらーモテないよ…相手の事情や感情、全く気にしていない(気にすることが出来ないよう設計されている)もんな。
 どうやっても人生や人間にシリアスになれない、色情狂のトリックスター以外の顔を持てない少年が、ラム相手だと複雑な内面を開示できるから、僕はそういう話が好き…なのかな?
 終盤戦はそういう、人間・諸星あたるの話増えそうで楽しみ。

 ラムは安全圏から様子をうかがって、人間ビリビリ漁を迷いなく敢行するヤバさなんぞも見せつつ、時折飛鳥の助けになるいいポジション。
 このぐらいの距離感のラムが一番可愛くて、ダーリンの浮気性にキレ続けてる時は怖いしうっせーしが先に立つなぁやっぱ…。
 でも騒動の原因になる状況は的確に作っていて、各々が好き勝手に立ち回った結果ドンドンやばくなっていくという、スラップスティックの基本エンジンが元気な回だった。

 落ち着いた目で見れば溜まったもんじゃないんだが、皆が好き勝手自由に、やりたいようにやる。
 その結果としてモノも壊れカオスは加速するが、ただ最悪なだけでなく力強い心地よさがある。

 

 そんなハチャメチャコメディとしての”うる星”の強さを、結局兄妹ふりだしに戻る青春すごろくを通して感じられる回でした。
 母から自由になった飛鳥が何しようとしたか考えると、トンちゃんと家出て逃避行だから、少なくとも兄とは一緒にいられる結末は希望通りなんだな…お兄様の貞操がピンチなのは、まぁしょうがねぇ!!

 おそらく令和うる星では最後の水乃小路エピ、大変元気で良かったです。
 こっから各キャラのファイナルラップに入っていくんだろうけど、どうまとめていくかは楽しみだ。
 水乃小路母に勝るとも劣らない激ヤバ親父、藤波父がどういう暴れっぷりを見せるのか。
 次回も楽しみッ!