メガロボクスを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月21日
野犬は群れる。
悪意の雨露を凌ぐ屋根も、差別の寒風を乗り越えるための車も持たないどん詰まり共が、肩を寄せ合い始める。
素寒貧、持ち寄れるだけの知恵と意地を寄せ集めて、寒くて冷たい世間を野良犬の群れが歩き出す。
ジョー、吠えないのか?
そういう感じの、ジョー一家始動のお話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月21日
ユーリとの運命的な出会いに重点した二話までに比べると、じっくりジョー達の最底辺の生活、おっちゃんの過去、ギア調整含めたボクサーとしての鍛錬を追いかける形で、メガロボクス世界の煤けた人情が、土の匂いを巻き上げて迫ってきた。体温あって素晴らしい
ギアの調達は盗品屋、鍛錬のための事務は橋の下。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月21日
まさに河原者なジョーたちの生活は、弱いものがさらに弱いものから奪い、塗炭の苦しみを麻薬でごまかす、この世の地獄だ。
ガキが盗んでヤクに溺れる。攻めた描写が、あの世界のどん詰まりを巧く表現する。キッツいな、オイ。
しかしそれはあの世界の『当たり前』であり、自分自身も『弱いもの』であるジョーは、ストリート・キッズに同情などしない。南部のオッサンとも馴れ合わない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月21日
ただただ孤高に、胸を疼かせる拳のビートに従って、ストイックに鍛え、実力をつけていく。その清潔さが良い。
世間と馴れ合うためのへつらいや、飢えを凌ぐため…を通り越し、絶望を紛らわせるためのインスタントな麻薬(ゆめ)は、他の連中に任せておけばいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月21日
ジョーはただボクシングを追い求め、ユーリを追い求める。世間なんて何も見えやしない、ただのガキの目。
埃臭い世界だからこそ、塵にまみれつつ目がランランと輝き、ハングリーに明日を目指し続けるジョーの姿勢が、高潔に輝く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月21日
ジョーは阿ねない。己を曲げない。そういう生き方はイカサマのためのイヤフォンと一緒に捨てて、ユーリのパンチでぶっ壊されてしまったのだ。もう、戻る訳にはいかない。
そんなジョーの孤高に、ガキどもは光を見る。最下位じゃねぇかとバカにしたって、突き出される拳、黙々と走る姿に、このどん詰まりをぶち抜いて明日を見せてくれるかもしれない希望を載せ、ギアを盗みにかかる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月21日
犯罪を糧にスレ果てても、否だからこそ、ジョーの拳に夢を見たいのだ。
そしてそんなジョーの高潔さは、南部のオッサンが人生の世知辛い部分を、へつらい顔で背負ってくれればこそだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月21日
選手登録、マッチアップ、ギアの調整、スパーリングとトレーニング。運命共同体であり、ガキがわからない厄介事を背負ってくれる親父でもある存在は、大車輪の活躍を果たす。
ガードを重視するトレーニング理論の確かさ。お上品な服を着た連中の評判。南部贋作もまた、何かを夢見てへし折られ、泥まみれに叩き落とされた過去を持っているのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月21日
ガキが飲み込むアカダマと同じように、現実の鬱屈を忘れさせてくれていた酒を、贋作は投げ捨てる。酒はもういらないのだ。
芽を開けたまま、シラフで見る夢。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月21日
ジョーはユーリとの出会いで、贋作とサチヨ達はジョーとの出会いで、届くはずもない『明日』を夢見るようになる。
ひとりひとり、食うか食われるか。ストリートの当たり前を大それた夢が押しのけて、ゴミクズ共は肩を寄せ合い、力を合わせるようになる。
それはつまり、ジョーの拳がそういうカリスマをどっかに宿している、ということでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月21日
ガラスをバイクで突き破って飛び込む。無茶苦茶な救出劇が象徴するように、ジョーのボクシングには明日への突破口を開いてくれる『何か』があるのだ。それが人を惹きつけ、変えていく。
そういう人間同士のつながりとは逆しまに、メガロボクスの参加資格であるギアは二度ぶっ壊れる。Gear is Dead。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月21日
贋作の素人細工は逆効果で、プロトタイプは無敵の鎧なんかじゃない。ギアが具体化する『階級』は、ジョーの仲間ではないのだ。
どうせ最底辺の素寒貧。銭金の強さがそのまま強さに直結するギアを殺して、裸一貫生身でやる…っていう運びになるのかな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月21日
『階級』に反逆する、最底辺からの逆打ちの鏃。常識くらいぶっ壊さなきゃ、地べたから天井まで一気に駆け上がる奇跡なんぞ、起こせやしない。
掟破りの裸ボクシング。センセーショナルなスキャンダルになるだろうそれを際だたせるべく、贋作が今回『ウケるマッチメイク』に拘る描写が積まれていたとしたら、なかなかに計画的だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月21日
三ヶ月でてっぺん。たしかに、ただ強いだけじゃたどり着けない。分かりやすい看板が必要になるだろう。
同時にそれは、ニンゲンを遥かに超える超人製造装置に、無手で立ち向かう戦いだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月21日
蒸気を噴き出し唸るハンマーを、かいくぐってカウンターを入れる。ロマンはあるが、一歩間違えればぺしゃんこだ。機械化時代の『階級』格差は、なかなか厳しそうだ。
実際どうなるかは来週を見ないと分からんが、もし裸でやるとなったら、ジョーが背負っている高潔とロマンは、更に加速するだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月21日
それを支えるボクシング技術の描写が、切れ味鋭いのが非常に良い。パリング、スウェー、ダッキング、カウンター、コンビネーション。パンチの描写に『理』がある。
ボクシングという技術体系に敬意を持ち、ストイックに己を捧げて手に入れた身体芸術。速く、鋭く、正確な一撃の描写があればこそ、ただのゴロン坊ではなく『ボクサー』としてのジョーが、明日を掴んでいく展開にも頷ける。それを獲得するべく、練習を重ねる描写も良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月21日
情も優しさもない、剥き出しの生存競争。魂に泥を塗りたくるしか生き残るすべのない場所で、しかしジョーの拳は燦然と輝きを放つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月21日
それに魅せられた者たちが、それぞれの矜持と役割を背負って集まりだすときのうねりが、どっしり描かれるエピソードでした。ベタ足の中のベタだが、やっぱり良い。最高
贋作の三輪オートに、ぶる下げられた十字架。そこに刻まれているのは『Dios aprieta pero no ahoga』…直訳すれば『神は苦しめるが、殺しはしない』、本朝風に言えば『艱難汝を玉にする』だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月21日
©高森朝雄・ちばてつや/講談社/メガロボクスプロジェクト pic.twitter.com/GNbXDnENKy
泥の底から湧き上がるそんな祈りが、果たして届くのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年4月21日
『玉』を掴み取るためにどんな『艱難』が襲いかかり、それをジョーたちはどう乗り越えていくのか。その一端を見せる修行と結集の、そして手に入れた結束を足場にさらなる明日へ飛び出す期待のエピソードだったと思います。来週も楽しみですね。