・第1話『運命のチョイス! 』
特別版 Free!-Take Your Marks- #01『運命のチョイス!』を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月26日
7月からの三期に備え、劇場版を見て感想を書こう、という話である。特別版は24分の単話が4つ繋がって、一つの映画になっている。
二期で青春期を走り終えた連中が、未だ持ってる物語のタネ。そこを描いていく話なのかな。
時間軸的には二期と三期の合間、岩鳶を巣立っていく遥と誠が、東京砂漠をウロウロするお話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月26日
美術の強さは相変わらずで、桜咲き誇る春の日差しを肌で感じられるような、柔らかくて優しい色調がとても良い。見てるとなんか、鼻がくすぐったくなってくる。
ハイスピ勢のカメオ出演、あざといシチュエーションの乱打と、全体的にはファンサービスなアニメに見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月26日
冒頭、はるまこが同棲しているところから始まり、エプロン姿での料理、いつもの脱衣まで詰め込むアバンの”圧”は、凄いことになってた。女の子向け肌色アニメやな…。
しかしそういうあざとさ一本で走りきらず、また走りきれないのが京都アニメーションである。何らかの感情、人間の体温を記号描写に込め、ノスタルジーや愛着を生み出してしまう筆は、あざとい記号いじりで画面を終わらせない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月26日
第1話で大事にされているのは、流れる時間と去りゆく過去、感傷と憧れだ。
不動産屋でバイトしている貴澄はすっかりオトナの体格になり、物件案内も堂に入ったもの、ファミレス代を経費で落とすズルさも見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月26日
元々はるまこべったりではない、離れているがゆえのジョーカー的役割を担うキャラではあったが、このお話での貴澄は”オトナ”だ。
彼がひと足先に飛び込んでいる、自主自立のオトナ世界。若葉マークが取れない遥も、東京の交通事情にビビる誠も、そこに馴染みきっているわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月26日
しかし、岩鳶での感情地獄をくぐり抜け、適切にへその緒を切り羊水から出た彼らは、だんだん自律呼吸の方法を覚えている。
『今まさに、そういう時代なのだ』と見せることが、エピソードの目的であった気もする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月26日
長かった愛着の時代をようやく離れて、遥と誠は別々の世界へ漕ぎ出していく。まだ少し怖くて、でも面白そうだ。競技者と教育者、目指す場所は違えど、”競泳”で繋がるのは同じだ。
ココらへんを巧く見せているのが、露骨に失われた青春時代を擬人化した岬(漕ぎ出すべき大きな海と、帰るべき大地の中間地点を意味する名前)くんであり、彼と一緒のプールシーンだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月26日
大事なことは水辺で起こる。”競泳”の映画なので、それはとても重要なルールだ。
真琴はレーンをまたいで、岬くんの側で教える。言語を使い、的確にコミュニケーションしながら導いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月26日
一方コミュ障遥は、ただただ泳ぎを見せる。身勝手な自由形に、しかし岬くんは目を奪われる。そういう”華”が、遥の泳ぎにはあるわけだ。そして、真琴にはない。それは寂しいが、悲しくはない。
自分たちがバラバラであること、別種の存在であること。人間の当たり前を頭では判っていて、しかし魂で理解していなかった少年たちは、狭い狭い岩鳶で馴れ合い、混じり合い、一体感の魔力に引き寄せられつつも、最終的に手を離した。バラバラであることを納得した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月26日
二期でグダグダかき混ぜた青春があって、東京での一人暮らしがある。あの時代ほどの質量と本気があるかは判らないが、それぞれに乗り越えるべき小さな課題があり、個性がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月26日
そういう過去と未来の中間点、そこに立つ二人の男の表情を、かなり巧く描いていた。静かで良いエピソードだったと思う。
コンテ山村卓也の趣味なのか、演出山田尚子の好みか。”足が喋る”京アニ演出も多いが、とにかく手のカットが多い。クローズアップにされた手は複雑に動いて、心情を乗っけてよく喋る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月26日
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焦燥、孤独、期待、愉悦。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月26日
色んな感情を乗せて踊る手だが、クローズアップにされない江の手芝居が、すごく印象に残った。
画面の端っこで手がヒラヒラしているだけなんだが、それが世界で一番気心がしれた兄との、日常的な会話を待ち受ける”手”なのだと伝わるところは、やっぱ凄い。
『二人が新居探してるトコロ見た~い』という欲望に十分答えつつ(というか、24分ほぼはるまこ新生活のスケッチだ)、要所要所に圧縮率の高い絵を入れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月26日
大胆な遠景とクローズアップのラッシュでリズムを生んで、退屈になりがちな日常のスケッチに、躍動を作っていく。
そうして生まれた活力を筆に乗っけて、描かれるのは春だ。新しい世界へ飛び込む前の、置いてけぼりにされる不安。嵐の予感に、何故か胸が震える不思議。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月26日
二期の物語を終えた彼らが、今どこにいるかをゆったり、丁寧に描いていく。その先に続く景色を、確かに予感させる。
派手なことはまったく起きていない話だが、ファンサービスに終わらない詩情と表現力があり、楽しみつつも弛緩を許さない仕上がりでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月26日
これが劇場版限定のクオリティではなく、TVシリーズ全部通して維持されちゃう所が、京都アニメーションの怪物性だとは思う。
無生物へのフェティシズムも相変わらず元気で、特に”携帯電話”への信仰が分厚かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月26日
離れても思いをつなげてくれる、文明の利器。手のひらに収まる、絆の集約体。二期分積み上げた健全な離別を肯定するためには、そういう魔法の道具を大事にしていかないとな。
次回はカメラを岩鳶に戻して、鮫柄組のお話が書かれるようだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月26日
巣立つものと残るもの、どっちに力点をおいて描いていくかは三期大事なトコロだと思う。巣立つ側の春が鮮明に描かれた第1話に、残るものを描くだろう第2話でどういうアンサーを見せるか。
次のお話も楽しみですね。
・第2話『秘湯のクーリングダウン! 』
特別版 Free!-Take Your Marks- 第2話『秘湯のクーリングダウン!』を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月27日
岩鳶の三年たちが”離れる”物語を展開する中、チーム鮫柄は最後のふれあいを思う存分楽しむ。温泉街のしっとりした雰囲気の中、積み重なる感謝。湯けむりの先に見えてくる、未だ終わらざる物語たち。
というわけで、絵コンテ・山村卓也、演出・武本康弘という座組でお送りする第2話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月27日
3話までコンテが同じなので、演出の味が見れるという意味ではかなりの京アニ参考書かもしれないね、この映画。実際のトコロどういう作業順で手が入ってるかは、ファンからは読み切れないわけだけどもさ。
さておき、第1話よりもまったりゆったり、ローカルに進んでいくお話である。舞台も東京渋谷のシャープな美術から、温泉街の暖かな空気へと変化している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月27日
極端な遠近のリズムよりも、緩やかな流れをキープし、静かに繋いでいくテンポが目立つ。
雰囲気としては強くファンアイテムで、鮫柄のアホ高校生共が一生キャッキャしている話である。百太郎が目立つけども、メカイクラに拘るアホ三人のアホっぷりが、なんだか気持ちいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月27日
憑き物が落ちた凛&宗介の柔らかな表情も、見ていて心地よい。
超絶イライラ爆弾として第1期を引っ掻き回した凛にとって、父の不在は巨大なスティグマであり、真っ直ぐ向かい合えない(向かい合える精神だと、話が展開しない)ものだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月27日
しかし落ち着きを取り戻した今、父の遺影は明瞭に描かれる。
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松岡母が明瞭に描かれるのも含めて、凛を不安定な物語的ニトロにしていた家庭環境(というか精神状態)は今や安定し、すっかり他人を背負い見守れる男となった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月27日
クソみたいな青春地獄を振り払って、だんだん大人になっていくのは皆同じである。
温泉旅はつまり、あの四人が青臭い青春にサラバと告げる旅である。四人が一緒に泳ぐ時間、羊水の中でコドモでいられる時代が終わるので、ケジメをつける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月27日
そういう発想が似鳥から出てくる事自体、彼が部長にふさわしいオトコになった証明であろう。
水は常に流れ、同じ場所にはとどまらない。しかしだからといって、全ての物語が完結したわけでもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月27日
故障を抱え、二期の物語的歪みを全て背負わされた感もある宗介は、”競技と教育”という分水嶺で”競泳”と向かい合う遥&真琴とは、また違う角度から”競泳”と向かい合う。
ちらちら映画第一作に目配せし、懐かしきハイスピメンツが顔を見せる中で、”競泳”を切り取る複層的な描画は際立ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月27日
目の手術を乗り越え、尚はスポーツ医学の方向から”競泳”に向かう。そんな彼を、夏也はプールでずっと待っている。それでも”競泳”なんだから、競い合いたい、と。
宗介が故障とどう向き合い、”競泳”とどう付き合っていくか。それはまだまだ伸びしろのある物語で、三期はむしろここを掘り下げるのではないか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月27日
旅館の掛け軸には、やがて龍となる鯉の滝登りが描かれている。
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今は苦悩の水の中にいても、いつかは龍となり、自在に天を泳ぐ。そういう物語が三期の宗介に用意されているからこそ、このカットが挿入されているのではないか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月27日
二期での宗介の扱いに、正直納得がいっていないめんどくさい視聴者としては、そういう計画性を期待したくもなる。
旅の終わりを飾る神社で、宗介は”病気平癒”のお守りまでしか見ない。マイナスをゼロにするのが、俺には似合いだと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月27日
しかしアホの百太郎はその先にある”必勝”を見据え、衒いなく手渡してくる。それが、アンタの物語なのだ。
賢しら顔で諦めているオトナが、何も考えてないガキの真っ直ぐさに射抜かれる
ファンサービスに徹し(顔ハメ看板の壁尻暗喩っぷりは、余りにもゲイポルノ力が高くてビックリだった)、露骨な”いい話”を抑えてきた展開だけに、お守りをフェティッシュにして一気に持っていく構成が力強い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月27日
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この第2話は、シリアスで大事な話をしようとするたび邪魔が入る。目線は隠され、真正面から本心を受け止めるシーンは少ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月27日
あくまで楽しい日常が、柔らかに交流する友情が、世界を覆う。目は口ほどに物を言うので、あえて隠す。
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この抑圧があればこそ、感情を反射して万色に変化する瞳の芝居が、的確に刺さる。ここら辺のメリハリの付け方、表現力の分厚さは、ハイスピ映画の演出だなぁ、と思う。派手な特殊性に逃げない、凄くベーシックな芝居。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月27日
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正直、神社によるまでは『真芯なく進めてくんだなぁ』と侮っていたが、最後の最後で重い一発をコンパクトにブチ込んで、宗介が未だ抱える物語の意味、そこに宿った感情をぶっ刺された。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月27日
二期が終わっても、宗介の物語は終わっていない。むしろ、始まってすらいないのだ。ならば、三期をやる意味はある
故障により”競泳”から離れるしかなかった宗介は、己の非才ゆえに”教育”で競泳と向き合う真琴、あるいは”医学”を橋渡しとする尚とは別の角度から、競技を照らす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月27日
才に恵まれたスターとして、競泳に向かい合う遥と凛とは、また別の物語を彼らが背負っている。
”競技”に対し多角的な視座を用意し、その価値を立体的に掘り下げようという野心。周到な準備。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月27日
これらはやっぱり、とにかく少年たちの絡み合う感情を掘り下げ、そのための土台として”競泳”を蹴り飛ばす節すらあった内海監督のイズムとは、大きく異なる気がする。
その透明な水、公平な視座が、Free三期をどこに連れて行くのか。内海監督が確かに持っていた歪さと強烈なパワー(こう言って良ければ”Freeらしさ”)は、”まともさ”によって浄化されてもなお維持できるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月27日
そういう部分が気にもなる、真っ向勝負のテーマ描写であり、ファンサービスであった。
遠い三期を睨みつけつつ、今は特別版第三話である。チマチマ描写を積んでいる、岩鳶水泳部の勧誘ビデオ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月27日
『まーた現在にかまけすぎて孤独な未来に土壇場で対応する展開かよ”けいおん!!”でやったじゃん中野に謝れ!』って感じであるが、さて何が見れるか。俺は中野に囚われ過ぎか。次回も楽しみである
・第3話 『結束のバタフライ!』
特別版 Free!-Take Your Marks- 第3話『結束のバタフライ!』を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月30日
旅立つ人に後ろ髪、引かせぬために健気な仕草。岩鳶水泳部新部長となった竜ヶ崎怜が、新入生歓迎のPVを作るために悪戦苦闘するエピソード。
毒気がすっかり抜けた彼の、必死で健気な戦いの記録。
特別編も第三話、コンテ演出ともに山村卓也のエピソードである。焦点は鳥取に残る岩鳶水泳部、特に怜に当てられていて、先輩たちが心残りなく旅立てるよう、立派な姿を見せようと空回りする新部長の努力が、健気に切り取られている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月30日
俺は怜に甘いので、彼の必死さを大事に創ってくれて嬉しかった。
全体的に怜の書き方というか、演技プランがTVシリーズよりもソフトになっている印象を受ける。平たくいうと、アホの子っぽくなってる気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月30日
チョロチョロ走り回る姿も、甘える目線も、平川さんの声の調子も、トゲが抜けて犬っぽい。元々そういう子だった気もするが。
そんな彼がウロチョロするエピソードは、前二話に比べるとそこまでガツン!と掴むシーンがあるわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月30日
元々特別編は、”なにか”を激しく求め成し遂げた本編の成長を受けて、全体的なムードはゆったりしている。キャラ同士のイチャイチャ、見たかった絡みがみっしり詰まっている作りだ。
第3話はそこに、過去描写へのオマージュが色濃く反映されている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月30日
アラビアンナイト風味のPVは、第一期EDへの目配せが強い。通りすがりの旭の言葉に、迷いを打破するヒントを貰う展開は、ハイスピ映画で怜自身が旭にやった仕事を、逆さまにした作りだ。
こういう過去へのクスグリが、『ああ、そういうこともあったなぁ…』という述懐を生み、時間的な奥行きをエピソードに与える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月30日
ある意味、ファンアイテムとしての色合いが一番強い話数なのかもしれない。そこにある種の清潔さがあるのが、京アニっぽいなぁと思いもする。
岩鳶に残る三人が、仲良く力強いのが、彼らが好きな僕には嬉しかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月30日
Freeという話の焦点はどうしても遥にあり、彼らは三期へ進む物語から”置き去り”にされる立場なわけだけど、彼らには彼らなりの尊厳がある。
そこを大事に、胸を張って先輩を送り出そうと、日々を楽しく過ごそうとする彼らの表情
そこを大事に作ってくれたのは、とてもありがたかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月30日
あ、GO-Changの出番がモリモリあって、すっげー可愛かったの最高にグッドでしたね。部室の大掃除をしてて、カラーボックスに引っかかる一連の作画とか、かなり手間かかってて面白かった。あとケツだった。
さておき、怜は遥達から受け取ったものをPVに込めようとして、なかなか答えが見つからない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月30日
終盤挿入されるモンシロチョウは、”バタフライ”を泳ぐ彼の象徴として、一期から画面の中に何度も登場していた。
迷い、羽ばたき、止まり、飛び立つ。一連の動きを繰り返しながら、画面の中を泳ぐ。
ひらひらと迷った蝶を、遥が逃がす。『もう、俺から旅立って良いんだぞ』というサインは、当然目の前の怜に出されている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月30日
それを素直に受け取って、PVに自分の気持を刻んでいく怜の物分りの良さを、僕は少し哀しく眺めた。ああ、キミはここでも物分りが良いんだね、と。
それは彼自身の善性であり、物語への都合の良さであり、都合悪くキャラを振り回すことを許されない不公平でもあろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月30日
帳は自由に飛んでいるように見えて、切り取られた画面の中を計画通り、綺麗に飛ぶ。
空に向かって旅立つ姿は、主役にかまってもらえる時間が終わった証明なのかもしれない。
そういう悲観的で個人的な読みを跳ね返すように、怜は幾度も空を見上げる。無限に続いていく、青い青い空。それは水に満ちたプールであり、遥に自由を見たかつての怜が、今後後輩に見せる青だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月30日
その連鎖は、凄く広くて気持ちよかった。
©2017 おおじこうじ・京都アニメーション/岩鳶高校水泳部TYM pic.twitter.com/CfpFkBWXno
新キャラ満載、ハイスピ勢もリバイバルしてくる三期で、岩鳶残党にどれだけカメラが回るかは判らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月30日
ただ、今回怜が見つけた青いキャンバスに、新しい蝶が舞っている姿、怜が彼らの宿り木になっている姿は、絶対に見たいと思う。
これは推しの贔屓目であり、作品の責任感に期待する態度でもあるが。
特別編は二期と三期をブリッジする、見なくてもいいが見たほうがTVシリーズを把握しやすくなる補助線のような作品ではないかと、第3話まで見て思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月30日
これから起こりうる可能性、これまで積み上げた物語。その両方を同時に、色んな場所から切り取って、過去と現在に橋を架ける。
そういう物語が怜と岩鳶水泳部に一話、回されたこと。それはすごく良いことだと感じた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月30日
旅立つものだけではなく、取り残されるものにも勿論ドラマがある。解決されるべき問題があり、叶っていない夢がある。見知らぬものとの出会いがあり、泳ぐべき青空が広がっている。
もし、その景色が描かれるなら、それは綺麗で素敵なものになるのだろうなぁという期待を、しっかり創ってくれる特別編でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年6月30日
いやマージ、遥のグダグダ思春期進行役というある種の縛りから開放された怜の姿は、是非にも見てみたい。あの子、物語進行に協力的過ぎんねんホント。
・第4話『旅立ちのエターナルブルー!』
特別版 Free!-Take Your Marks- 第4話『旅立ちのエターナルブルー!』を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月1日
特別編の〆は、河浪監督がコンテ&演出を担当するバラエティパック。トンチキ賑やかで間抜けな前半、圧巻の水泳シーンが映える後半、未来への期待を宿したエピローグと、なかなかリッチな仕上がり。
色んな場所にカメラを仕込んで、ザッグザグスイッチして画面を作ってくるセンスは、なかなか独特のパワー。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月1日
傾がせたり大胆に引いたり、グーッっとよったり。スタイリッシュなカメラワークで飽きさせないセンスは、なかなかにパワフルだ。
こういうスタッフの味が見れて、特別編楽しかったな。
お話は前半緩め、後半いい話の特別編フォーマットに乗っ取り、ユルく始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月1日
百太郎の幼さが全員に感染したかのように、全員モリモリIQが下がり、情報は混乱し、伝言ゲームはグダグダである。つーか宗介と映画デートしてる時点で、凛の精神年齢が10ほど下がってんだよ!!
ありがとうございます。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月1日
初代は浄化技が(ほぼ)ないので、後輩にシメを渡さないと取り返しのつかない事になっちゃいますからね。
今回でえみルー軸の話も一旦落ち着くと思いますが、強烈なえみルーエンジンで上がった速度をどう活かすか、何に繋ぐかはとても気になりますね。
特別編は出るキャラ軒並みトゲがないが、そののんきさは、TVシリーズで思う存分青春地獄絵図した結果でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月1日
ハードコアな荒波を嫌うファン心理を拾った結果とも取れるが、どっちかっていうとキャラの変化を大事に扱った結果かな、と思う。彼らが丸くなったのは、彼らの努力の結晶なのだ。
一つのゴールに辿り着いても、人生という舟に乗る限り新天地はやってきて、新しい波も起こる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月1日
特別編は三期で描く荒波の予感を、ヌルい描写の中に埋め込んでもいる。これまでたどってきた荒波の軌跡も。エピローグで顔見世した眼鏡、一体何者なんだ…。
登場人物軒並み近視眼的低IQに押し込まれて、どんどん勘違いが加速する展開。それが切り替わるのは凛と遥の正面衝突、アツくてエモいぶつかり合いである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月1日
トンチキな勘違いはしつつ、水泳と勝負への熱い想い、ようやく取り戻した関係をちゃんと言葉に出来てる遥に、成長を感じ嬉しかった。
遥はTVシリーズで、散々狭い世界をさまよった結果、ようやく広い外界に泳ぎだす。彼がたどり着いた変化が話を落ち着かせるシーンが、ぐっと引いた構図で見せられるのが面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月1日
強く体が前に出て思いの熱量が伝わる芝居と、客観性の同居。
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この手前のシーンは思い込みに支配されているので、グーッとキャラによったカメラに。客観性とアツサで誤解を解消して大人なズルさと強い感情を見せるシーンは、また寄せて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月1日
行きつ戻りつするカメラに強めの意思を感じて、なかなか面白い
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引きの画が”強い”のが第4話の特長で、冒頭回想シーンの明暗、二人で引き寄せた未来を思う時の星図と、印象に焼き付く絵が多い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月1日
こういうのをスパッと出して、惜しげも無く引っ込めるのは京アニだなぁ、と思う。時に過剰品質にもなるが。
©2017 おおじこうじ・京都アニメーション/岩鳶高校水泳部TYM pic.twitter.com/QMgswJACU6
ちょうど時間も半分を折り返し、凛と遥がぶつかり合って誤解は解ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月1日
間抜けな迷走は終わりになって、あとは水の時間だ。
前三話では見られなかった、ガッチンガッチンにカロリー入れた水泳作画。その透明度と力強さは、やっぱりFreeの醍醐味である。
大学で鍛え上げられた御子柴兄が、キッチリ遥に勝つ展開が好きで。あの年代の”一年差”がもってる重さを、ちゃんと見た運びだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月1日
まぁ散々バブバブしてた凛ちゃんに、ギザ歯で獰猛な見せ場を用意したかっただけかもしれんが。ホント、前半のクソ雑魚シスコンナメクジっぷりはヒドい。素晴らしい。
勝負自体は百太郎を貫禄で押しつぶし、遥&凛が大勝利。あとは多幸感あふれるサプライズパーティーでファンサービスして、皆新しい未来へ旅立っていく、と。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月1日
物語開始時はマジボロカスだった二人が、『ありがとう』を言葉にできるようになるまで、二期必要だったんだなぁ、と思う。
人格起因のトラブルだけが話を作るわけではないけど、Freeはガキが少しはマトモになるまでのネトネトを燃料に、ここまで走ってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月1日
特別編四話は、もうそういうものがキャラクターにはあんま残っていない現状を、丁寧に追う話だったとも思う。そのうえで、何を描くか。
ハイスピ組との再開、新らしい環境、あるいは見知らぬ強敵(とも)。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月1日
そういう要素に目配せしつつ、教育や医療、リハビリという”勝負”以外の角度から”競泳”を更に掘り下げるのが、三期の視座なのかな、と通して見て思った。それはなかなか、面白くなりそうだ。
第4話で主役を張った凛と遥は、選ばれたものとして戦い続ける。だが水は到るところにあって、トッププレイヤーとして走るだけが”泳ぎ”の正解ではないのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月1日
勇気を持って癒着を剥がした青年たちは、そういう多様性に向き合う準備ができていると、特別編を見ながら思った。
無論そういう、物分りよく視野が広く正しい観点に、全力で水をぶっかけられるのがFreeの強みでもあるのだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月1日
特別編四話でスケッチされた、多角的な視座をどう扱っていくか。キャラの熱量を保ったまま、面白いヴィジョンを組み上げられるか。
そういう部分への期待値も上がる、なかなか面白いブリッジだった。三期を見る前に、なんとはなしに見てみたわけだが、ファンに報いる優しい歯ざわりの奥に、新シリーズへの野心がちゃんとあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月1日
TV放送でそれがどう芽吹くか、とても楽しみである。
もう一個見てよかったのは、『あ、俺このアニメやっぱ好きだ』と思い出せたことだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月1日
目配せの情報量、パキッとした構図の強さ、キャラいじりのテンポ。作品の特徴が肌にあって、映像を浴びてるといい気分になる。そういう気持ちを、特別編は思い出させてくれた。
特別編から僕が幻視した、Freeのこれまでとこれから。それがただの蜃気楼なのか、はたまたよく組み上げられた預言なのは、この夏に判る。とてもワクワクしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月1日
特別版Free! とても面白かったです。一つの物語を終えた青年たちが、どんな波を超えていくか。三期も楽しみですね。