ブギーポップは笑わない を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
巨大建造物”ムーンテンプル”の閉鎖、歪曲王が引き起こす大規模昏倒事件。
人知れず進行する事件の奥で、人々は夢を見る。それは甘やかならぬ、苦味に満ちた過去の再生。迷い人を捉えるのは、異形の牢獄か、後悔の痛みか。
というわけで、一生内面トーク! 怪獣とかも出てくるよ!! な、アニメ歪曲王第二回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
明瞭な敵が出てこないミステリ仕立てのお話なので、状況は錯綜し、感情はグダグダ煮込まれ、出口は見えにくい。非常に懐かしい意味での”深夜アニメ”である。いいぞもっとやれ(lain世代)
今回は歪曲王が生み出した…と同時に、昏倒するすべての人の中にある後悔の世界が、主な舞台となる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
現実は”目を覚ました”ハバケンがちょろっと駆け抜けるくらいで、話は一生インナーな場所で展開していく。
異能の装いを借りつつも、大事なのは私と世界と心の遠近法。
こうして考えると、上遠野浩平作品は非常にスタンダードかつベーシックな心の物語を、形を変えて変奏しているのが判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
心に突き刺さり錆びついた後悔を、どう否定せず変化させていくか。卑金属から黄金を錬成するように、思い出の色合いを変えるにはどうしたら良いか。
起こっている事自体はとてもありふれていて、だからこそ見過ごされがちな人生の一大事。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
別にムーンテンプルがあろうとなかろうと、歪曲王がいようといなかろうと、神ならぬ人は愛する人と死に別れたり、真実を上手く告げられなかったりする。
そんな当たり前のことを、どう鮮烈に語り直すか。
そのための道具立てとして(も)、異能と現代伝奇が選び取られているのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
ある種の『新しい革袋に古い酒』というか。本当に大事なものはありふれていて、幾度も既に語られていて、しかしだからこそ古びて見える。誰も耳を傾けようとはしない(人混みの中泣いていた、エコーズの谺のように)
ならば語り口を変え、都会に突如出現した奇っ怪なバベルや、人の心に滑り込む怪人、想像の街を暴れまわる巨大怪獣というファンタスティックをフックにして、後悔との付き合い方を語り直す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
歪曲王はまぁ、そういう物語なのだと思う。ブギー全体がそういう話であるが。
歪曲王はイマジネーター”ではない”。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
自分が見たヴィジョンを他人に与えるのではなく、他人が心に秘めた後悔を引き出していく。深夜のバー、無限に続く線路、無人の喫茶店。
©2018 上遠野浩平/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会 pic.twitter.com/WWzss2ZsYr
それは夢のように美しい場所であり、甘い過去の思い出に浸る場所であり…同時に薄暗く、危険な場所でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
そこに後悔が満ちていることを、夢見る人々はみな知っている。脱出すら出来る。
©2018 上遠野浩平/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会 pic.twitter.com/d1gT08sfCr
薄暗く狭い場所を潜り抜けて、怪物と偶然遭遇して、痛みを直視し過去と向き合うことを…”VSイマジネーター”であることを歪曲王は求めてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
それは人の形を突破するのではなく、人が人のままより輝くための厳しい試練だ。それは誰かから与えられる夢ではなく、自分の内側から湧き出る記憶なのだ。
歪曲王ののっぺりした瞳は、個人の記憶や後悔や資質や決意…彼の言葉を借りれば”黄金”を反射するための鏡である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
僕は原作を読んで結末を知ってしまっているから、歪曲王が”世界の敵”だと(あるいは寺月恭一郎が歪曲王だと)するミスリードには、やっぱり上手く乗れない。
彼が強く、厳しく、優しく、他人と己に問いを投げかける存在だと知ってしまっている。イマジネーターのように、答えで塗りつぶす存在ではないと知っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
安能くんが忘却の中で流した涙のように、消しても消えないものを蘇らせ、問い直す存在であることを知っている。
だからまぁ、一見大事件に見えるこの話に対立の構造自体がなく、ブギーポップの出動は(ストレンジの残響でしかなかった”VSイマジネーター”のように)空回りに終わると判っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
やっぱ”夜明け”のスッキリした構造は、初期ブギーだとかなり異質だよなぁ…ある種の心地よい肩透かしが少ないつーか。
さておき、このお話は歪曲王の真実にたどり着くまでの旅路であり、ハバケンはその賢さ故にミスリードにハマり、すやすや眠る被害者たちは思う存分過去と語らう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
死人を置き去りに、現実に押し流され続けた二人の女は、錆色の後悔に向き合わされ、大真面目に己を悩む。
静香は『ここは記憶の中なのだから、全てを君の好きにできる』と悪魔的提案を受けて、寺月との幸せな日々を思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
ここで息子の消失、過去の完全なやり直しを望まない所が、彼女の(ようなありふれた百億の”母”の)善性だな、と思う。お母さんは、真くんが大事なんよ…。
現実ではツンツンしてた咲子ちゃんも、線路と一緒に記憶をたどる時は、少女のように幼く、無垢だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
一緒に大人になることが出来なかった、とても素敵な女の子。その死別の痛みを、彼女は涙とともに告白し、歪曲王は吐露された真実と一緒に、闇に進んでいく。
それは確かに心の中にあって、しかし直視できなかった薄暗がりで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
地底から金を採掘し鍛造するように、地底深くに眠った傷を掘り起こし、再定義させる。そうすれば、あなたはもっと善く生きられる。
歪曲王がやっているのは、超大規模な異能催眠療法なわけだ。功徳なことである。
ハバケンはサイドキックを自認しつつ、”炎の魔女”や”不気味な泡”の岸に近い存在だ。優れた知能で状況を分析し、過去の後悔にとらわれることなく解決に突き進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
しかしヒロイックであることは内省の眠りに身を投げる贅沢を、彼から遠ざけてもしまう。眠れる少女のように、彼は過去と向き合えない。
それが幸福なのか不幸なのかは、このエピソードが最後まで進み、探偵役が事件を解決した後に判別することであり、例えば彼が主役を務める”不可抗力のラビット・ラン”(”歪曲王”から十八年五ヶ月後に発行)を見なければ…見てもジャッジしかねるところである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
ともあれ、超常から隔てられた被害者たちは、幸福で残酷な眠りの中で過去を再生し、痛みに満ちた施術を走っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
それは歪曲王に強制された歩みでなく、自分の記憶を自分の足で進む道のりだ。あくまで、錆びついた後悔を黄金に変え、今を生きるべく過去を決着させるのは、自分自身。
そういう他者性の尊重ひっくるめて、本当に歪曲王は優しいやつだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
サスペンス・ミステリ風味を上手く活かしつつ、そういう地金が透けて見える演出になっていて、三者三様の対話シーンは面白かった。『ぱっとみ悪そうなんだけど、よくよく聞くと…』という塩梅が巧い。
ハバケンは現実のムーンテンプルを走り、沢山の人が巻き込まれた事件を調査・解決していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
眠る犠牲者は夢の中で、歪曲王の厳しい問いかけ(と補助)を受けつつ、それぞれの後悔に向かい合う。
停止した逡巡、暴かれた記憶、深い闇とその果てにある光。錆びついた黄金。
それを巡る個人個人の歩みこそが、このエピソードの”戦い”である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
凄くちっぽけで、孤独で地味で、だからこそ大切な”戦い”は、まだまだ微睡みの中で続いていく。
当たり前に凡俗な人々の、特別なマインドダイブをどう描ききるか。やっぱり僕は、そこが楽しみである。
加えてハバケンと志郎くん、新刻とブギーポップの、奇っ怪タワーぶらぶら旅も面白い。今回は出てこなかったけども、ブギーさんVSゾーラギのインチキバトルも楽しみなのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
その”現実”の歩みもまた、精神の黄金にたどり着くための迷宮物語だ。夢と現実、過去と現在。ムーンテンプルは多層を捉える。
そのために、ムーンテンプルには”階層”がなく、全てが地続きなのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
あの建造物は歪曲王事件を引き起こすために作られたわけじゃないが、その異質性、日常の中にそびえつつ馴染みきらない錆びついた痛みが、よく状況と呼応している。
”おあつらえ向きの舞台”と言えよう。
ゾーラギくんの『児童の脳内から引っ張り出された”さいきょうのかいじゅう”』力とか、歪曲王は特にビジュアライズの力が強くて、原作のオタクとしてはありがたい限りだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
文字で想像していたものが、期待以上のイマージュで形になる喜びは、アニメ特有のものだなぁ…。
そんな感じの、歪曲王の夢幻カウンセリング回でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
曖昧で、構造がはっきりせず、しかし奇妙に真を抉る。初期ブギーに特徴的な味わいが強く出ていて、やっぱり良いなぁと思います。
ここから事態はさらに展開して、事件の別の顔が見えてくる。それをどう切り取るかも含めて、次回が楽しみです。
あ、竹田くんがムーンテンプルという”後悔の塔”に踏み込まないのは、やっぱり屋上でトンチキ人間と会話してただけの”浪漫の騎士”が彼にとって決定的な”戦い”であり、そこで後悔を燃やし尽くした結果、歪曲王に出会う資格が無いからだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
それだけ決定的だったのだ、あの第一話。
ワイヤーで”世界の敵”をぶった切る、解りやすいクライマックス。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年3月9日
それを目の当たりにしても錆びついた傷が残る人もいれば、異能に出会わなくても(出会わないからこそ)己を充足し、世界に飛び出せる人もいる。
多層な世界の表れとして、このEP2に竹田くんが”いない”ことはデカイと思う。