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かくしごと を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
餃子づくりに防災訓練、鎌倉旅行に夏祭り、あとガサ入れ!!
漫画家の生活はイベント盛りだくさんで、生きてるだけで笑い事。
姫との生活を守るため、可久士は今日も思い込みに突き動かされ、全力で走る!
…そんな日々は、今はもう遠い過去となり、優しい箱が暴かれていくのだ。
そんな感じの、多重構造漫画家日常コメディミステリ、第二話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
相変わらず可久士はパラノイドと娘への愛情を暴走させ、愉快な面々を巻き込んでコメディにひた走る。
コンパクトなネタで畳み掛けるスピード感と、合間合間の情感。それを最後にひっくり返す、10年目のシリアス。
バラエティ豊かな強みがよく出た、盛りだくさんのエピソードとなった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
妄想暴走な強火の笑いで走ったかと思えば、姫を見守る人々の温かい視線を書いたり、可久士の密かなプロ意識が燃えたり。
緩急とメリハリを付けて、飽きさせない作りがなかなか親切だった。
色んな事が起きるエピソードなのだが、笑いと生真面目、現在と未来を貫通する軸が、ひっそり、しかし確かに入っているのは強い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
意識して、見ないようにしているもの。
漫画家稼業の、恥とプライド。
娘を思いやる遺志と、それが救いきれないもの。
正反対に見えて繋がっていて、妙な納得がある要素。
これを上手く繋いで、ともすればバラバラになりそうな豊かさにまとまりを出して、『なんかいい話だった気がする…』という充実感を生み出している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
ポップで元気で、食味は軽いのに腹にたまる。サラッとやってるけど、なかなか出ない味わいで非常に良かった。
存外、構成キッチリしてるな…。
アバンの餃子騒動は軽いクスグリであり、漫画家の奇行を見せる面白シーン…なのだが、可久士は現実逃避した後現実に帰ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
世間から偏見の目で見られ、過剰な”恥”を感じていても、可久士にとって”漫画家”は天職である。
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『娘に見せられねぇ』と隠すくらいなら、辞めればいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
餃子を作ったのなら、焼く所まで行けばいい。
しかし妙な生真面目と業に絡め取られて、可久士は漫画家を続けている。
そこには笑えるけど洒落にはならない、天職への矜持というものがある。それを、あんま声高には叫ばんシャイネスが良い。
お父さんはお父さんなりに、お仕事にプライドを持ってお仕事しとるのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
しかしそれは、未来には打ち捨てられ消えてしまう。現在と未来をつなぐミッシングリンクに、一体何があったのか。
それをジリジリ積み上げていくのも、このお話の”隠蔽”の一つだろう。気になるね…。
可久士は娘可愛さのあまり、スタッフ慰安にかこつけて鎌倉まで出張る。なんだかんだ、アシスタントと楽しく交流できてる辺り、いい上司でもあるよね可久士…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
思い込みとすれ違いはこのお話の笑いの基礎であり、先生も桃色脳みそで恋に迷う。
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そして不審者はさすまたで捉え、生徒の安全を守るいい先生でもあるのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
ボケてるんだけどボケきらず、同時に生真面目にも生ききれない。
そういう半煮えのパラノイド達が織りなす人生模様は、バカバカしくて面白く、妙に愛おしい。
先生は『お母さんに教えてもらってないの?』という幼い残酷を、ポケーっとやり過ごす姫のサバイバルを見落とさない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
おバカなアシスタントたちも、漫画から逃げて来た鎌倉で結局漫画を書く。
おバカに回る世界で、大人も子供も生きることに妙に真面目だ
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その必死さが柔らかなペーソスに包まれて、不思議なズレを生む所がおかしみの源泉であり、語り口の下支えでもあるのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
久米田先生の作家力は何よりも人間観察眼にあるとおもうが、日常エッセイを描くときにもそれは冴えている。
クレイジーな方向にアクセルを踏み切らない、バランス感覚も良い。
第1話から元気だった姫ちゃんの可愛さは今回も大暴れで、大自然の中ぽけけーってしたり、美しい夜空の下でカレーを食べたり、思う存分十歳である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
やっぱ誰かがぽけーっとしてるシーン、妙に刺さるんだよな…沢山ぽけーっしてくれるからこのアニメ好き。
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可久士は娘にドンピシャな世界最高のカレーを作れるのに、『姫が恥をかかないように、いじめられないように!』とスパイス大量にブチ込んで、不評を買わせてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
彼の眼球にハマった新愛のレンズはどっかズレていて、しかし世間を介在しない時は、凄く綺麗に姫に届く。
ズレてるんだけど届く。届くんだけどズレてる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
現在編を支配しているルールは、しかし未来では破綻してしまっている。
家屋は崩れ、父はおらず、姫ちゃんは一人だ。
子供の頃は健気な自己防衛だった『あえて考えない』は、罪科のように少女に刺さる。
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箱の中に、閉じ込められた箱。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
健やかな成長を望む妻の遺志だったもの、失われたものへの愛おしさとノスタルジーを掻き立てていたフェティッシュは、冷たい未来の風のなかで、少しホラーな雰囲気をまとっている。
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現代編では、おかしくも必死な笑いの源泉だった”必死に隠す”という行為が、未来においては洒落にならない喪失に繋がっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
このヒネりが、作品を甘く染めすぎず、上手く翳りを生んでいる。
あるいは喪失が約束されているからこそ、可久士の必死な愛情が良く見えるのかも知れない。
子供なりの知識で『お父さん知らないの~』とマウント取ってくる姫ちゃんが、本当に可愛くて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
そんな娘の夢を壊さないために、新しい嘘を紡ぐために裁縫学ぶ可久士もまた、優しく愛おしい。
ちょっとパラノイド気味で、でも善良で優しく穏やかな日々。
それは、壊れることを約束された夢だ。
現在の充足と、未来の破綻。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
それを繋ぐ真実こそが、作品最大の”かくしごと”なのだろう。
何故、可久士は姫ちゃんの未来にいないのか。愛が積み上がるほどに、疑問と切なさも膨らんでいく。
『幸せ親子はズッと仲良し…それでいいだろうが!』って思うよねぇ、見てると…本当に幸せなんだもん。
しかし喪失は未来だけではなく、過去にもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
姫の母親は既に黄泉に去り、その不在を問わないことで、少女は必死に生きのびている。
その喪失を埋めるためにも、可久士は狂気めいた必死さで、姫の世界を守ろうとしている。
妻が、母が、どういう人物だったか。
それも、直接描かれない”かくしごと”だ
意識された隠蔽と、的確なほのめかし。不在の周囲を縁取る愛おしさと切なさ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
実はこのお話、日常エッセイでありほっこりいい話でありクレイジーなコメディであると同時に、複層的なミステリでもあるなと、よく判る第二話でした。
こんだけ色々やりつつ、いい感じのムードが濁らないのは凄い。
色んなジャンルを横断しつつ、スムースな繋がりを感じて楽しい気持ちになれるのは、”芯”として姫ちゃんの可憐さ、可久士の必死な愛情がブレないからだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
根本的には親子の話で、しかし未来においてその関係は壊れている。
壊れている所から、喪失の現場を隠蔽して物語が転がる。
親子のトンチキで温かい日常を楽しみつつ、それが行き着いた先、喪失の真実を知りたくなる、なかなか上手い構造だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
それを楽しめるのも、現在編で描かれる人間模様が生き生きしていて、面白いからこそだと思う。
みんなどっかズレてて、妙に善良でクレイジーである。面白い奴らだ。
第2話にしてかなり姫ちゃんと可久士に肩入れしてるので、マジ一生仲良く幸せにぽけけーってしてて欲しいし、そうなってない未来が納得いかんくてしょうがねぇ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
よく出来た話であるし、面白い話でもあると思う。当たり前に見えるが、これを両立するのは存外大変なのだ。
次回も楽しみ。
しっかし可久士の過剰な大暴走は、完全に岡田あーみん”お父さんは心配症”の継承者であろうな。根っこの生真面目さ、だからこその笑い含めて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月10日
土の匂いが抜けきらない手触りと、図抜けたセンスとスタイルの両立。そういう所も、岡田あーみんっぽくはある。