梅雨の晴れ間をなんとか利して、行ってきました川崎チネチッタ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
アニメ映画短評企画第11弾は、”羅小黒戦記(2019年)”です。
中国Web発の仙道ハートフル超常バトルジュブナイルが、映画になって上陸、という塩梅。
公式サイトは ↓https://t.co/qEEdVSiXis
見終わった感想は…大変面白かったです!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
日本アニメのエッセンスを随所に感じつつも、過去と現在、開発と自然が難しいバランスを要求する現代中国特有の視点が(おそらく)作品を貫通していて、非常に独特の味わいがあります。
全編緩みのないハイクオリティが、シンプルな筋立てと絡まって力強い。
お話としては森を追われたチビ猫シャオヘイが、ファンタジックな存在を駆逐しつつある現在に己の居場所を探し、ムゲンとフーシー、二人の男との交流の中で世界を、自分自身を知っていく…という感じ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
何も知らないシャオヘイの小さな視界から始まって、徐々に広がっていく物語運びがなかなか良い。
ド派手なバトルシーンとか、シャオヘイのブッチギリな可愛さとかが目立つ作品なんですが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
主人公シャオヘイが世間を知っていくことで、作品世界に視聴者も引っ張られていくシンクロ率の高さが、色々乗っかってる作品をシンプルに喰わせる、大事な背骨になっているな、と感じました。
最初フーシー一派はシャオヘイの苦境を判って、助けてくれる”いい人”に見えるし、それをぶっ壊したムゲンは”悪い人”に思える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
でも長尺のお船の旅を通じて、むっつりしたムゲンにも情と人間味があると、じわじわ染みてくる。あそこを長く美しく取って、話が転がる基盤を作ってくれたのはありがたい。
なにしろ本国ではデカいサーガになってるっぽいので、世界設定とか沢山のキャラクターとか沢山あるんでしょうけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
映画はシャオヘイとムゲン、フーシー三人の交流と衝突に焦点を絞って、肉汁たっぷりな情感を飲み込めば映画が見れるようになっている。そのシンプルさはとても親切で的確です。
そのためにはシャオヘイとムゲン、フーシーが好きにならなきゃいけないんだけども…ここがまー強い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
”動く”というアニメーションの基本的な気持ちよさを最大限ぶん回し、時にパワフルに、時にコミカルに活きている彼等が、凄い説得力と共感性をもって、こちらに迫ってくる。心に乗っかってくる。
実はあんま台詞を使わず、画面に喋らせるストイックな作品でもあるんですが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
背景、動画、レイアウト、カメラワーク。
全領域に及ぶクオリティの高さが寡黙な作風をしっかり支えて、伝えたいことがしっかりと伝わる映画になっています。キャラも好きになれるし、世界観もスッと入ってくる。
猫と美少年、両方の可愛さたくましさを120%引っ張り出したシャオヘイちゃんがまず強いわけです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
野生育ちらしく、ナヨッと手弱女な主役ではないんだけども、子供らしく世間も狭く、力も弱い。
しかし自分の意志をもって、美しいものに喜び、裏切りに悲しむ豊かな心を持っているのが、見てると判る。
そんな彼が野の獣として、人化の力を持った妖精として、表情豊かに旅をする姿だけで、胸にぐっと迫るパワーがあります。製作者…相当な少年愛者だな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
彼が可愛いので、主観として作品の真ん中に座るのが納得行って、シャオヘイというフィルターを通して情報を制御する話作りが上手く行ってるのね。
そんなシャオヘイにムゲンとフーシー、二人の男がメロンメロンにされてっちゃう男たらし物語でもあるわけですが。まぁしょうがねぇ…シャオヘイは可愛いからな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
とにかくむっつりと事情を話さないムゲンは、最初(シャオヘイが感じるように)あんま印象良くないのですが、これが綺麗に逆転していく
美しい海の旅、刺激に溢れた人の街。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
シャオヘイの世界が広がるたび、いつでもそばに居てくれるムゲンは思いの外面白いやつで、静かな態度の奥に豊かな情がある。
描写力の高さで、それは台詞にしなくてもジワジワと伝わってきて、段々と彼が好きになる。
一方フーシーは最初から好感度高め…なんだけども、実は大きな秘密と歪みを抱えたキャラクターであり、最終的には対峙することになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
彼がシャオヘイの何を求めていたかが顕になることで、クライマックスの幕は開くわけですが。
それはつまり、ムゲンがシャオヘイに何を求めたかが鮮明になる瞬間です
彼は敵を追い詰めた時、執行人としての責務を果たすより、シャオヘイの身柄を取り戻すことを優先する。鉄面皮の奥に、宿命に巻き込んでしまった少年を愛する心を隠し持つ男なわけです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
あの迷いない突撃を見た時、僕は自分がこの作品に凄く前のめりになるのを感じました。そういうシーン大事よね。
シャオヘイはフーシーから引き離されて、ムゲンに拘束されつつ旅をすることで、一筋縄ではいかない世界、知らなかった世の中の広さを学んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
その一歩一歩が、どっしりとした描写、美しく鮮烈な美術を通じて腹に落ちていくのも、とても気持ちよかったです。修行描写、交流描写の緩急も良い。
笑いの挟みどころと見せ方があっさり目で、なおかつちゃんと微笑ましいのも良かったですね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
成長とバトルの潤滑油として、キャラクターを好きになる足場として、コミカルなシーンが凄くしっかり仕事をしている。
どーも中国アニメはそこら辺クドい印象があったんですが、偏見でありました…。
そしてゆったりと進む”緩”のジュブナイルに挟まる、圧倒的な異能アクション。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
引いたカメラワークを活用し、高速で魅せるバトルの組み立て。仙道とクンフーを存分に暴れさせる地域性のオリジナリティが、アニメーションの本道を堂々踏破していく気持ちよさ。
衝撃波は不可視だし、技名叫んだりタメたりしないでスッと出すしで、異能の見せ方が凄くスマートに感じるんですよね。凄くハイスピードに流れるんだけど、迫力とメリハリがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
ここら辺、”AKIRA”や”X”の正統進化系かなー、と感じたりもした。日本だとあんま本道じゃない雰囲気。
能力の設定も恐らく本家だとたっぷりあるんだろうけど、そこは的確に絞って必要な分だけに抑えて、しかしアクション自体はバリエーション豊かに、様々なシチュエーションと魅せ方で楽しませてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
ここもバランスが良くて、色んなアクションの乱れ打ちを堪能できました。
ムゲンが表情も変えず、準備動作もなく力を使うことが、彼の強キャラとしての”格”を無言で伝えてきて、無茶苦茶カッコいいんですよね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
そんな”静”の彼が、シャオヘイを傷つけられた最終決戦では髪を乱し血を流し、思いを表に出して闘う。ここもメリハリのバランスだと思います。
文明と自然の対立、つーテーマはどうやってもジブリ諸作品(個人的には、特に”平成狸合戦ぽんぽこ”)を思い出すわけですが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
透明な加害者たる人間サイドに(ある意味膝を屈して)寄り添う展開には、製作者の差異、国と時代の違いをちょっと感じたりもした。ここ詰めるのは、コスト掛かりそうだな…。
高度成長期を超えた後生まれたジブリ作品においては、ノスタルジーの対象だった”雄大なる自然”って奴が、彼の国ではどの程度の時間的・空間的スケールで捉えられ、この作品に反映されているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
それを判断するには、僕は中国の現在と過去をさっぱり知らないわけで、あくまで印象でしかないけども。
ジブリの圧倒的に生っぽい美術とは、また違ったビジュアルセンスで自然を、都市を切り取る”絵”の説得力が、ただのフォロワーではない独自性をしっかり伝えてきてよかったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
ここら辺はキャラクターデザインもそう。可愛いし、異形の妖精にも独特の魅力がある。
恐らく最も有名な妖精だろう哪吒太子が、今っぽいヴィジュアルと言動で出演してるのが、失われる自然に哀悼を捧げつつ、先に進もうとする貪欲さを作品に滲ませていて面白かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
どうあがいても、時は先に進み人は街を広げる。その怪物的な勢いと、古い生き物はどう向き合うのか。
そんなバックボーンが広がりつつも、本筋はやはりシャオヘイの可愛さ、彼と男たちの魂の交流、仙道バトルの圧倒的な迫力という、シンプルで美味しく食べれる要素でしっかりまとめられている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
エンターテインメントとして、これでもかこれでもかと色んな角度から、休みなく楽しませてくれるのが良い。
普通『人に化けれる猫』だったら、恐らく人間としての描写に力点が寄ると思うんですけど、シャオヘイはその両方を徹底的にアニメに仕上げて、バコバコぶん殴ってくるんですよね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
猫ちゃんの可愛さ、美少年の可愛さ、両方食中毒になるほど襲いかかる。ともすれば、混ぜあって強力な一撃を入れる。
そういう細かいポイントを見ても、メリハリの効いたバランス感覚が随所に生きつつ、先行作の勘所を抑えた気持ちよさと、独特の魅力が上手く絡み合っています。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
とにかく押し引きのバランスが良くて、端っこの処理が丁寧で上手いんですよね。日常からハードなアクションに流れても、見てる側が疲れない
むしろ色んなものが渾然一体となりつつ、どこかに統一性がある気持ちよさを堪能することが出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
これはシャオヘイが複雑な世界を知っていくストーリーラインと、作品の語り口・演出プランが上手く重なったってことで、非常に幸運かつ的確な作品作りだと思います。
強いて難を言うなら…フーシーが凶行に及ぶバックボーンがやや薄いこと…くらいかなあ。十分飲めるけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
色んなキャラが山盛り出てくるのは、背景にある分厚い設定やサーガを勝手に感じて、自分的には盛り上がりどころでした。バトルだけじゃない能力の凄みを、都市閉鎖で見せるの好きだなぁ…。
というわけで、大変面白かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
メディアにまとまるのがほぼ絶望的らしく、現在日本で一館でしか見れないのがあまりに高いハードルですけども…可能であれば是非に見ていただきたい!!
黒船アニメの凄みを感じても良し、シンプルな出来の良さを味わって良し。オススメです!