ケムリクサ 第一話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
枯渇する命の水。苛烈なる赤い霧。命を喰らう赤い虫。
過酷な環境の只中で、寄り添い生きる奇妙な姉妹。彼女たちが出会った、わたし達ではない誰か…わかば。
出会い、繋がり、助ける。
謎に満ちた世界の中で、切り取られるヒューマニティの形とは。思弁的冒険物語開始ッ!
そんなわけで、遅ればせながらケムリクサ履修開始である。放送当時妙にチャンネルが開かなくって見れなかったが、時勢もあって今から見始めようと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
既に放送が終わっている話に後乗りすることになるので、的はずれな感想、ズレた考察など多々あると思いますが、先輩方何卒ご容赦を…。
さて見終わった感想は…全然わからん!!(ジャガー顔)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
いきなり状況のほっぽりだして、謎を解かせたり考察させたり…という作品構造だと思うので、わかんない事自体を楽しんでいけば良いのだと思うが、キャラクターの背景、世界の設定と状況、それにしたってわからんことだらけだ。
しかし同時に、その判らなさにあんまり拘らなくても良いのかな、と思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
多分この話、凄くオーソドックスなSFだ。ここではない場所、我々ではない誰かをあえて配置し、今ここにある我々をより際立たせ、考えるための物語。
ポスト(あるいはトランス)ヒューマニズムを通じ、ヒューマニズムを描く話
”人間”なるものの定義がどこにあるのか、今現在流通する一般的な”人間”が一人も出てこないこのお話が追っていく気配を、静かに感じている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
見終わった方たちから漏れ聞こえる絶賛を思うと、多分このフィーリングは間違っていない。普遍を描かない物語は、人の心をあんま揺らさないものだ。
さて物語は、唐突な生存の景色から始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
水は枯渇し、姉妹は小さなサークルを作って、アカムシなるコミュニケーション不能な”敵”から己を…己の延長線上にある、”人間”と定義できる他者を守っている。
それは思いだけで達成できるわけではなく、早速一人が死ぬ。
しかし彼女は分裂(あるいは複製)された『沢山いるわたし達』であり、その躯も物質として朽ちることなく、赤い葉っぱとなって散る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
この序盤の描写からして、彼女たちは(我々と同質の存在としての)”人間”ではなく、その精神性は確かに人間である。喋っている言葉も、家族を思う気持ちも共有出来る
共有可能性と応答可能性。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
アカムシになくて、”わたし達”にあるもの。
死によって切断され、生を守ることで増幅していくもの。
赤髪の姉妹たちは、それで作られたサークルの中で必死に生きて、家族の死に涙する。
まぁそこを抑えておけば、わけの分からなさも問題ないかな、と思う。
赤い髪を持ちつつ、彼女たちは赤い血を流さない。それは”敵”であるアカムシの属性であり、見知らぬ他者であるみどりもまた、赤い血を流す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
…あるいはモニタ越し、物語を見ている僕も。
ここで、作中のキャラクターと”僕”との完全な共通は断ち切られる。
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僕らは緑色の葉っぱから”生えて”来たりはしないし、赤くない血が流れてもいない。すべての命が死に絶えた場所に孤独に生存しているわけではないし、沢山に分裂しているわけでも、みどり色の謎の力が使えるわけでもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
モニタの向こうの彼等は、軒並み”人間”ではない。
だが、”人間らしさ”のようなものをその行いに感じ取り、心が接近していく感覚を確かに覚える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
それは彼らが人間の形をしたヒューマノイドで、アカムシがそうではない(と、意図してデザインされている)からだけでは、多分ない。
彼らと僕等の間には断絶があり、それを超える共通点を感じる。
わかばは『これまで活きていくのがとても大変で、他者を排除しないと身内を守れないりんの生き方』を想像し、己の死すら飲み込んでしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
そこにあるのが愚鈍なのか善性なのか、社会的文化的文脈を剥ぎ取られた剥き出しの生に投げ込まれている作品の状況では、なかなか判別しきれないけども。
生存のために好奇心を殺している気配がある姉妹とは、対照的に様々なものに興味を持つわかば。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
赤い共同体に突如迷い込んだ”緑”である彼は、”人間性”なるものの大きな定義と為るだろう、知性と共感を属性ともっているように思う。
そしてそれは、りんに届く。
彼女は自分のことを判ってくれたわかばに衝撃を受け、アカムシを”処理”するように一撃を放つことをためらう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
結局は緑の一撃を放ち、それはアカムシならざるみどりを殺し得ないわけだが、彼女はわかばとの間にある可能性に戸惑いながらも”わたし達”を守るべく、他者を暴力でもって世界から拒絶する。
それが果たし得なかったこと。わかばが”アカムシ”とは違う存在であることは、恐らくりんにとって、赤髪の姉妹たちにとって、この作品世界にとって善いことなのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
世界を覆う毒気は、姉妹の髪と同じ”赤”。死に絶えた世界にはない緑色は、あくまで異物だ。
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しかしその異物に接続されることで、赤髪の姉妹たちは生存のための力を引き出し、”わたし達”を世界の残酷さから守ることが出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
りつ姉の耳がピョコッと出てるのが、あまりにも面白い。基本シビアでダークな世界なんだが、ときおり顔を出す剽軽なユーモアがすっと刺さって気持ちいいよね…。
わかばは姉妹が発揮し得ない観察力(それは同質でコミュニケーション可能な姉妹だけでなく、理解も交流もしなくていい異物…”敵”たるアカムシに及ぶ)でもって、状況を解体し操作していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
世界に触れるマニュピレーターとしての知性を発揮し、りんが守れなかったりながもうひとり死ぬのを止める。
贄のように、愚者のように、聖人のように赤い死地に赴く事で、わかばを束縛するロープは千切れ、彼は自由を手に入れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
誰かを助ける自由。己の在り方を伝える自由。
それはわかばにとっての自由だけではなく、彼を束縛し可能性を封じてしまった、姉妹にとっての自由でもある。
赤い血を流し…つまり”わたし達”ではないはずのわかばは、姉妹が失いたくないと願う命のために死地に飛び込み、その両手で救いあげた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
『あいつは異物な”敵”だから』と、頑なな防衛意識で縛り上げていた、その両腕でだ。
わかばは無私の自己犠牲でもって、姉妹の倫理もまた救済している。
の、だが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
その己を顧みないスタイルはあんまり”人間”っぽくないと感じられるし、恐らくそのナル・ヒューマニティは意図的だ。
母獅子のように雄々しく、何かを切り捨て大事なものを守ろうとするりんの方が、ある意味共感性は高いと思う。
世界の残酷さに喰われないためには、戦士である必要がある。
しかしそれだけでは取りこぼすものがあり、他者性に対して片手を開かず生存できるほど、世界の残酷さは生ぬるくはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
この物語は多分、新緑の色合いをした雄羊と、赤い鬣の雌獅子が出会い、恋をしていく話だ。
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バキバキに暗くてハードな世界を書いたラストに、この上気した表情。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
思わずりん姉可愛い神輿を廃材から組み上げ、廃墟世界を練り歩く”祭り”を開催してしまう、良いラストカットである。
ズルい…ズルいなぁこういう話運びはッ!!!
そんなわけで、ワケわからないけどよく判る第一話でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
皆どこか(我々と=であるという意味合いでの)”人間”ではなく、しかしどこかに共通するものを感じる、異物としてのヒューマニティ。
それがぶつかり触れ合って、何かが変わっていく。掘り下げられていく。
そこにしがみついて見ていけば、まぁ振り落とされることはねーんじゃないかな、と思いました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
防衛、知恵、対話、交流と抵抗。
そこら辺を軸に、異質な世界の異質な人類集団を描くことで、ヒューマニティの輪郭を新たにしていく。
そんな感じかなぁ…淡白でウィットに満ちた語り口と合わせ、好きな味
わかばの無防備な善性が、姉妹が生き延びてきたシビアな世界に黎明をもたらす特権として描かれているけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
りんの凛然とした生き様、凶暴な強がりを張り通すことで姉妹を守ろうとする意志に、フニャッとしたわかばくんが影響されていく様子も、また見たいなー、と思った。
影響は相互のほうが公平よ
今回はかなり断定的に、自分が感じたことをいつもより過剰に投げかけています。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
放送をリアルタイムで追いかけていく時評は、『これぞ!』と見込んで体重を預けたけど、そこまで堅牢に組み立てられていないでバキッと踏み抜き痛い目見るのが怖くて、完全に体重を預けないことがあります。
今回一度終わり、評価が定まった作品を見る運びとなったので、おずおずと発言をためらうのではなく、思い切りブン回す方向に舵を切ってみました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
まー後出しジャンケン故の、ズルい立ち回りなんだがな…期待と自分なりの”読み”がスカるのは、アニメ見てて(身勝手ながら)一番痛い瞬間だ、個人的に。
無論固まった世評に乗っかるだけでなく、自分なり自分だけが作品と向き合って捕まえられたものを、大事に感想を書いていきたいとも思っておりますが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
さて、豊穣なる混沌を見せてくれた第一話から、彼らの冒険はどう転がっていくのか。
水曜日はケムリクサの日(今日制定)!
次回も楽しみです。
追記 生誕は常に、赤い死の気配と隣り合わせに在るのだ
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月21日
わかばが水の中から発生するのはおそらく多重に示唆的で、海から陸へと上陸した生物史、水に満ちた母体から排出され危険に満ちた外界を生きる個人的な人生、水のバプテストを既に終えたメサイアであることが覆い焼きにされている…と思う。終末世界の使徒行伝なのだな。