オッドタクシーを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
雪の街を、タクシーが走る。
金を背負い、急き立てられ、目を逸らした人々の顔。
飛んで、沈んで、舞い戻って。
人の顔を取り戻した獣たちの中で、再び進んでいく。
行き先は見えない。後部座席に座ったのが、人か獣か、もう判らない。
それでも、どちらまで?
そんな感じの獣達のアーバン・サスペンス・ロマンス堂々完結! オッドタクシー最終話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
大変良かった。
納得と裏切りで畳み掛ける喧騒は前回までで終わらせ、静かに決着していく雪の街、人間の世界への帰還…落ち着いたリズムで物語が終わる。
最後に一滴、血の色のビターが不穏に広がって…。
大変この作品らしいまとめ方であり、終わり方であったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
小戸川の呪い(それは彼を残酷な世界から守る鎧でもあった)が解け、似通った顔の人間しかいない世界に機関士た時、感じた少しの寂しさと、たっぷりの安堵。
それが動物の顔がもたらす違和と、いつしか生まれてた愛着を思い知らせる。
気づけばこの話が、相当に好きになっていたんだなと、じっくり思い返させてくれるエピソードだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
力強く説明を積み重ねる前回と、あえて語らず余韻を残す今回の対比が凄くよく効いていて、最後まで作品の持つポテンシャルを最大限発揮しきった、見事な快作でした。
もはや語るべきものは少ししかなくて、少年小戸川の長いモノローグをだけBGMに、タクシーは急き立てられながら走る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
助手席にも後部座席にも同行者はなく、小戸川の不安や恐怖を受け止める人はいない。
それが、人間世界に迷い込んでしまったセイウチの語りと、どっしり重なる。
ヤノと関口はブレーキを踏んで現世にとどまり、小戸川は静止を振り切って海に向かって飛ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
海象は海棲生物、そこが故郷だ。
壊れた家庭、イジメの残酷。動物園だけが居場所の少年が、壊れて生まれ直した場所。
人間嫌いで皮肉やな、タクシードライバーの原点。
そこに沈んでいくことで、小戸川は自分を取り戻す。うっかり生き延びてしまった苦界に別れを告げて、父母の死んだ海に還る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
そんな暗い帰還を、カポエラマスターはけして許さず、足が折れてでもケイシャーダで蹴り開ける。
その決定的瞬間を描かないのが、結構好きだ。
戻ってきた世界で、誰が誰なのか。ここまで付き合った視聴者なら、言わずとも判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
最後まで馥郁と、想像の余地を残して展開していく語り口が、作品を振り返る足場となり、最後の最後で一つ、獰猛な傷を残す凶器ともなる。
小戸川が”普通”になったのは、果たしていいことか?
皆が墜落するタクシーを見て、何かを思い出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
全てがその一点に集約する絵作り、話作りは見事だ。どうにもならないカルマを禊ぐように、小戸川は水をくぐり、現世に帰還する。
指輪、からあげ、死体、スマホ、ツッコむべき対象。
皆が大事なものを思い出して、終わりに向かって踏み出していく。
獣が人の顔を取り戻して、襖の奥の猫は猫のままで、お金も正しい使い方が出来て、万事めでたしめでたし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
そんな安心感をたっぷり醸造して、剛力の豪快な笑顔、それを真っ直ぐ受け止められる小戸川に安心する。
白川さんの顔はまだ、真っ直ぐ見れない。そこも可愛い。
多分二階堂に自白を決意させただろう、小戸川の墜落/飛翔。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
結局ツッコミとボケの基本的な役割分担すら、曖昧で噛み合わないまま、再出発していくホモサピエンス。
約束のキーホルダーに繋がる、一億円の鍵を手渡して、自分を見守ってくれた人にアリガトウとサヨナラ。
何もかもが心地よく収まり、それぞれがそれぞれの業と愚かさにケリをつける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
もう、小戸川は獣の世界にはいない。自分が人間で、人に交わり生きている事実を受け入れ、受け止めて穏やかに眠れる。
そこに忍び寄る、化け猫の影。
小戸川は、もう和田垣の顔を識別できない。
『どんな手を使ってでも、夢を叶えろ』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
母から投げかけられたエールであり、殺人の呪いともなった妄執は、小戸川を襲うのか。
結末は描かれない。
とても豊かにエピローグを彩っていた”想像の余地”が、不穏な牙となって最後に突き刺さる。
主役が目覚めても、街はまだ悪夢の中だ。
二階堂は自分が犯していない殺人を、無言で引き受けた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
多分犯人は解っていて、その妄執が自分の影であると受け止めて、黒猫を官憲の追跡から外した形か。
その牙が、もはや人に戻った小戸川に届くか、躱すか。
タクシーの行方は判らない。
さぁ、どちらまで?
散々に現在社会の闇を彫り込んできた物語は、全てが白く塗り潰されるような心地よさの果てに、一点黒いシミを残す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
小戸川がようやく掴んだ幸福な道を信じ、結末がそこに続いてると思うか。
畜生の園たる街の本質が、そこから逃げ出した彼の喉を噛みちぎって終わると思うか。
それはここまで描かれたものから、視聴者が何を受け取ったかによって変化するだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
生と死、人と獣、どちらでもあり得る灰色の世界を、タクシーはこれからも駆けていく。
その運転席に小戸川が乗り続けているかは、もはや観測の外側…箱の中の海象と言った所か。
最後の最後で、ホッと安心したい視聴者の横っ面を強烈に張り飛ばして、物語は終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
大変良かった。
今まで書いてきたものが、様々に嘘ではないのだと物語が語りかけてくるような、いい最終回だった。
壊れた人間の生き直し物語として見ても、人間の影を寄せ集めた動物寓意譚と見ても。
両方が本当なのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
小戸川の幸せを願う気持ちも、『世の中そんなに甘くはねぇか…』と奥歯を噛みしめる感慨も、両方このお話は描いてきた。
ここで『苦しいことも多いけど、世界はハッピーだ!』という収まりの良い結論に落ち着かなかったのは、かなりの冒険だと思う。
でも、良い冒険だと感じる。
地下アイドル、マッチングアプリ、反社会勢力、精神異常、ソシャゲ狂いにバズ気違い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
ガタガタに歪んだ欲望が、ブレーキをぶっ壊して走る街の行く先は、一体何処か。
このお話は結論を出さなかった。…ひどく多彩で、固定できない結論を重なり合わせながら出した、と言えるか。
そういう横幅の広い…アニメ調ですらないモニタの向こうの現実すらも侵食してくるような物語が、ジクジクと突き刺さって名残る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
『いい話だったッ!』と大声で叫ぶには、あまりに収まりの悪いラストカットが、最後の最後で問いを投げかける。
小戸川タクシーは、人間の国に帰れたのか?
それをしっかりとした重さで、自分にも通じる戯画として受け取れるよう、様々に魅力的な群像を巧妙に動かし、複雑なドラマを的確に駆動させ、毎回ワクワクと楽しませてくれた、とてもいいアニメでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
現実味のあるエグさに、フィルターを掛けつつ強調する動物デザイン。
それを作中最大のフックと使い切って、ミステリと連動させる見事な手際。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
柔らかくファンシーな筆致の中に、ところどころ凄まじく刺さる画作りを差し込んで、その根底にある欲の地獄、業の牢獄をあぶり出しにする演出力。
軽妙に心地よい話芸と、洒落になってない重たさ。
色んなものが有機的に噛み合って、この話にしか描けない世界とドラマを、しっかり作ってくれました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
色々考えるのも、怒涛のドラマに揺さぶられるのも、作中に流れる空気に引き込まれていくのも、とても楽しかった。
やっぱ情報の制御、何見せて何隠すかが的確だったと思う。サスペンスがとにかく巧い
そういう脳のクールな部分を刺激しつつ、マジでどうしょうもなくてどうにもならない人間模様をハートウォーミングに…時に不穏に残酷に描いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
暴力も謀略も脅迫も殺人も、何もかもがありうる動物園としての街が、力強い解像度で迫ってくる。
それは、初見では想像していなかった喜びだ。
小戸川タクシーが何処にたどり着いたかを、この後も幾度か考えると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
答えは出ない。モニターの向こうに広がってる、もう一つの動物園がそうであるように。
そういう世界を物語ることが出来たのは、やっぱ凄いことだと思います。
面白いアニメ、力強いアニメでした。
面白かった。ありがとう!
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
小戸川の聖痕たる動物世界が”治って”良かったね、つうムードから、その欠落が呼ぶだろう致命の危機を照らすのは、お終いムードに流されない冷静な筆運びと言える。
異能を失ったことで、小戸川は顔のない殺人犯を識別できない。
世界への違和と不審を失い、主役から只人になったのだ。
モブとなった男は残酷に、死の歯車に噛み砕かれていくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
セイウチでなくなっても小戸川は彼の人生の主役で、舵輪を握って力強く、街へと駆け出していくのか。
人間になることが幸福で、普通であることが結末とは限らないが、少なくとも小戸川は人の世界へたどり着いた。白川さんが戸を開けた。
そんな甘く暖かいロマンスが、和田垣の背負う漆黒のサスペンスに対し、優勢なのか劣勢なのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年6月28日
それをジャッジするのは、審判下りた呑楽師匠に変わって、視聴者一人ひとりの仕事なのだろう。
俺は、生存に一票。
小戸川は独りじゃないし、不幸だけが世界に待ってるわけでもないから。