唐突にゴールデンカムイ第188話の話するんですけど。https://t.co/Oxlr0TYQwt
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
この話すごく、杉元佐一とアシリパさんが、生き死に、夢と現実を間に挟んでどんだけズレてて、どんだけ繋がってるかよく判る話数だと思ってて。
冒頭、杉本の殺意の籠もった叫びに驚く形で、アシリパさんは意図せず毒矢を打ち放ってしまって、それが尾形の片目をえぐる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
どんだけ杉本がアシリパさんを殺し殺されの修羅界から遠ざけようと思っていても、その杉本自身の獣の声が、構えた武器に本来の仕事を果たさせる。
武器や毒を構えてしまった以上、それは都合のいい脅しで終わらず眼球をえぐり、命を奪いうる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
そんなむき出しのルールから自分の魂を、あるいはもっと大きいものをすくい上げてくれる可能性を、杉本はアシリパさんに見てると思うのね。
でもその叫びこそが、業の引き金を引く。
んだけど、そんな衝撃的なシーンで杉本は『この流れでは死なせねぇぞ』…というよりも早く、眼球をえぐり取って毒を吸い出し、吐き出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
アシリパさんがへたり込んでしまう極限を前に、自分の夢を守るための最適を最速で掴み取る。
それは彼が、干し柿の味も判らない修羅になったからだ。
死ぬこと、殺すことが細胞の隅にまでへばりついてしまった鬼だからこそ、散歩にでも行くように最短最速で為すべきことを見据え、果たし、アシリパさんを偶発的/必然的殺人者にしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
それは彼がすがりたい夢を守るためだし、修羅に落ちたくないアシリパさんの望みを守るためでもある。
現実から隔離されたキレイな夢として、杉本に守られているだけの人生をアシリパさんは望まないし、タフな彼女はそこから距離を取って、戦い傷ついて自分の道を征く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
でもその歩みは、杉本と出会って笑って、生き死にのシビアな際に接近していく人生の歩みでもある。
アシリパさんも杉本も、それぞれの勝手な夢や願いに独立しつつ、切り離し得ない縁と強い影響によって、結ばれこの話数で出会い直す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
そこには意志を持って進む実像と、そうあって欲しい願いと、そうはならない現実が面白く重なっている。
尾形がアシリパさんに殺されるための対峙は、綺麗には生きられなかった自分、杉本にとってのアシリパさんになり得たかもしれない弟や父を、自分の手でもう殺してしまっている因業が、強く反射している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
杉本が『この流れでは殺させねぇ』のと、緒方がアシリパさんを殺人者にしようとするのは…
共に自分がこうあるべきと信じ、しかし完全にそこに浸りきれない世界への証明を、白にも黒にも染まりうる可能性を持った少女に投影しているからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
そこはひどく危うくで、咆哮一つでタガが外れ、道を間違えていく厳しい場所である。
夢はなく、血は苦く、未来は暗い。
そこに身を投げてなお、かつての自分が惚れ込み、戦場に人間の証明を置き去りにしてなお幸福にしたいと願った女のために、黄金を求めた男。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
『俺は不死身の杉本だ!』と叫ばなければ、鬼で在り続けることが出来ない男。
そんな男が、敵であり自分と同じ場所をくぐって、違う淵に身を投げた男を救う。
それは博愛や善良のためではなく、今アシリパさんを殺人者にしない…緒方の信じるニヒリズムに満ち、あらゆる存在がカルマに食われていく世界から彼自身の希望を守るための、暴力的救命である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
尾形は殺す。だが今、ここ、この人によってではない。いつか適切に自分が殺すために、ここでは救う。
それはひどく矛盾した行動で、だからこそ彼が殺さないアシリパさんに、殺させない自分に、その二人が衝突して生まれる世界に、どれだけ切実な願いを投げかけているかを、よく示す気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
殺し、殺されるにしても、それを行うもの、行われる時、奪われ生まれるモノの決定権は、殺し果てた俺が握る。
その決意が、彼の咆哮が引き金を引いた人倫の果てで、あまりにスピーディに的確に救命する姿に見える気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
迷いのないその行いは、ある意味で彼の殺意…総身に染み付き戻り得ない戦場の気配が、アシリパさんが構えた毒矢を放ったことへの対処であり、償いでもあろう。
尾形のニヒリズムと残酷な運命に、巻き込まれつつも主導権を取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
人である証明は戦場に置いてきたが、それでもアシリパさんを通じて、殺すべきを迷わず殺すことで、自分以外に発行できるかもしれない。
そのことが、杉本最後の希望になっている気がする。
彼はもう一度、干し柿を食べれるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
五稜郭を発火点に、最終章が始まった今、その問いに答えが出る日も近いだろう。
吹雪の中、とても暖かく親しい場所で、アシリパさんが言ってくれた救いを、彼自身杉元佐一に望んで、自分の手のひらに掴めるのか。
殺しすぎ、壊れすぎたモノがそれでも、誰かに見た夢を通じてヒトの形を取り戻せるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月4日
既に壊れきってしまったヒトの残骸が、形を繕いながら彼の向こうに立つ。
親を殺し、妻を殺された者たちを超えた先で、死なない男はようやく死ねるのか。そこから生き直せるか。
物語は続く。