輪るピングドラム 第7話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
運命日記に記された通り、”プロジェクトM”へと邁進する苹果。
そんな彼女を置き去りに、多蕗はゆりとの婚約を発表して…というお話。
Marriage飛び越えて受胎まで突き進む大暴走と、苹果ちゃんの幼い不安定、使いの良い昌馬が印象的である。
流されつつも昌馬は良いやつで、苹果ちゃんの空回りにずっと隣り合っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
狂ってる、とか妹のため、とか様々留保は付けつつも結局、出会ってしまった危うい女の子を放っておけない心根の持ち主である。
あるいは、苹果ちゃんだけに運命的に優しいのか。優柔不断ではある。
苹果ちゃんが追う多蕗も優しい印象を受ける青年であるが、心の奥底には渇望と野望を備えていて、少女を置き去りに転がっていく結婚計画もその一環である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
共犯者たる多蕗とゆりはシャンパン、苹果ちゃんはオレンジジュース。
その成熟差は、コメディテイストの中でも苦く舌を突き刺す。
ドギツい孕み狙いが顕になりつつ、苹果ちゃんの甘ちゃん乙女チックな幼い夢は健在…というか、余裕がなくなって更に加速している感じだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
彼女が思い込むのとはまた別の角度で…そしてここでの警戒どおりにゆりはエグい大人なのだが、そこには実感が伴わない。痛み、と言ってもいい。
姉を奪われ家族が壊れ、苹果ちゃんもまた傷をどうにか埋めようとしてる子供なのだが、その歩みはあくまで空回りで終わり、周囲を巻き込まない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
執念が世界を巻き込むと何が起こるかは、今回も怪しい銭を貰っていた冠馬や、取り残された二人の運命が加速していく中で見えてくる。
狂人の切実な独り相撲か、誰かを不幸にしても望みを手に入れるテロルか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
みんな笑っての大団円を、この物語は許してはくれない。
巻き戻らない時間を巻き戻し、喪われたものを取り戻したいのならば、代償は必ずいる。
それを払えない幼子に、欲しいものは手に入らない。
でも、欲しいと思いこんでいたものが本当に欲しいもので無いことは多いし、空回りする中で運命が噛み合って、動き出してしまうときだってある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
本質的に、誰かを傷つけられない優しすぎる子供二人の、コミカルでどこか哀しい、ドタバタ青春旅。前半は、そこが物語の焦点となる。
Maternityの前段階となるセックス…そこに付随する生物的な生臭さは、ネンネな苹果ちゃんにとっては悍ましく、目を背けたいものだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
産卵するタマホマレカエルの、異様ながらも力の入った生き様が目の前に突きつけられた時、苹果ちゃんは瞼を覆ってしまう。
そこが、ヤバ女の現在地だ。
このセックスの現場への忌避、人間の剥き出しに対しての耐性の無さは、ゆりの本当の狙いを見過させる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
『桃果のかわりに、多蕗とMしないと!』という使命感に目を塞いで、自分や世界や家族が見れない、愚かで可愛い苹果ちゃんは、真の激ヤバ女のヤバっぷりを感じ取れていない。
ここでかなり率直に、ゆりは苹果狙いの凶猛を表に出していて、しかし(苹果ちゃんの歪な視界を借りて作品を見る)視聴者には分かりにくい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
幼い苹果ちゃんの強烈なキャラクターに占拠されることで、サスペンスの本質にフィルターをかけて、謎を成立させる。
実はかなりテクニカルなことをやってるが、お話全体に漂うぶっ飛んだ笑い、勢いの良さでなかなか感じさせない。そこも含めて上手さである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
麻美子のへなちょこなお歌がたくさん聞けて嬉しいが、このヘッポコ加減も後々効いてくる伏線と考えると、エグい作風と言える。
とまれ、大人たちは子供の独り相撲を置き去りに、勝手に結婚し失恋させる…ように、状況は見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
よくある青春の1ページ、妄想と夢の破綻。
それを思い知って大人になるための足がかりと、気楽に構えていると、当然足払いを貰う。
爆笑必至に青春コメディは、その実笑えない爆弾で埋まっているのだ。
自分が子供でしかないと諦め果て、そうではないと教えてくれた運命を失い、だからこそ猛烈に、何もかもを置き去りにして再生を求める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
苹果ちゃんが現状、ひた走っている…ように見えて、自分の未成熟とか、犠牲になる人への共感とかで、ハンパに面白くしか走れない暗い道のり。
そこを、涼しい顔して幸せな人生を歩いてるように見えるカップルは爆走している。あるいは、地下鉄の冠馬と真砂子も。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
この段階で、真砂子の携帯電話が繋がる先は『運命が至る場所』である。
苹果ちゃんがノンキに、彼女なり必死に口にするDestinyは、彼女の外側で多くのものを捉えている。
真実運命に衝突され、ズタズタに引き裂かれながらも生き延びてしまうということが、どんな意味を持つのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
子供である苹果ちゃんはそれが解ってないし、その残酷な重さを受け止める準備も伴ってない。
カエルの産卵も、まともに見れないネンネなのだ。(かわいい)
しかしそれを覚悟し準備を整えること…自分の運命以外をすべて切り離して爆走することが、果たして幸福なのかと物語はこれから問い始める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
ハンパで優柔不断であること、厳しい選択を迫られる場所で横を見てしまうことは、人間にとってかなり大事なのではないか。
そんな問いかけを二人の子供は背負う
ごくありふれた喪失と狂気に思える、ピングドラムを巡る騒動。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
それが本当に世界の運命を書き換えてしまう重さを持ち、数多の人が狂い、あるいは手の施しようがないほどに壊れきっている事実を、コミカルな前半戦は上手く隠している。
しかし、そこかしこにきな臭い匂いも漂う。
今ひた走ってる『ピングドラムを巡る冒険』が子供の思い込み、何者にも為り得ない存在のあがきであると思い知らされた後に、昌馬と苹果ちゃんは世界の真実の形、そこに埋められた自分たちの運命を、もう一度叩きつけられることになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
道化は、必死の戦いに挑む当事者でもある。
彼らが優しく(あるいは手ぬるく)取っ組み合うコミカルな作戦は、もっと深い場所で足掻く者たち…覚悟を決めて何かを切り捨てられるモノたちにとっては、真実を捕まえていない嘘とも取れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
そのギャップを強調するように、現状物語は転がっている。笑えて、バカで、軽く浮遊し続ける。
しかし魂の在り方として、覚悟を決めきれないからこそ出会えた…そして出会い直した二人の物語は、カエルの出産のようにグロテスクで真摯な人間の闇を叩きつけられてなお、真実の物語としてもう一度燃え始める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
ここで展開している出会いも、すれ違いも、仲のいいケンカも、文句言いつつの付き従いも
すべてが嘘でも無駄でもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
Mに振り回され『しょーがないなぁ…』とため息つきながらも、ピンクのヴェールを半分開けて向き合った楽しい時間は、けして嘘ではないのだ。
この後に吹く強い嵐を知っている身とすると、その愛しさにピリッと、とびきりの切なさを感傷したりする。
ずっとこんな風に、戯けて楽しい空回りを続けて、傷つけ合うことも蹴落とすこともなしに、大事な何かを掴めていたら良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
『最悪の出会いから腐れ縁、そして運命へ…』という、ロマンティック・コメディの王道を実はしっかり歩んでいる昌馬と苹果ちゃんを見ていると、どうしてもそう感じる。
でも、少年少女は立ち止まれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
陽鞠の死、桃果の死、それぞれの崩壊し崩壊しかけている家族の維持が、子供たちをあら市の只中に否応なく、引き込んでいく。
可愛らしい青春の道化芝居はその前奏でしか無いが、だが確かに、人生の大事な本文でもある。
もし可能なら、この睦み合いを永遠に。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年8月26日
そんな祈りは、凄まじく残酷な世界の真実に、それを見たくないと覆った手を引っ剥がして飛び込んでいく子供たちにとっては、余計なお世話なのだろう。
それでも、やっぱり幸せでいて欲しいと、バカな二人を見てて思った。可愛い奴らよ…。
次回も楽しみ。