ヴァニタスの手記を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
ルスヴン卿がノエに突き立てた牙は、従属の誓いを共用する。
いつか炸裂する呪いを知らないまま、駆けつけたヴァニタスの前に揺れる、新たな事件。
復活せし”ジェヴォーダンの獣”を追って、二人は列車に乗る。
その先に待つのは白き闇か、赤き未来か…。
そんな感じの第1クール終了、ノエとヴァニタスの凸凹青春日記は続く…な、ヴァニタス第12話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
特大級の地雷が埋め込まれつつも、表面上は平穏。
気まずさも衝突も、あるがままの二人を写す鏡…という感じのエピソードであった。
引っかかり多めなのが、逆にヴァニノエっぽくて良いね。
本題に入る前に、今回はデートと旅立ちのエピソードということで、蒸気たゆたうスチームパンク・パリの情景が色濃く描かれる回でもあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
ロンドンと見紛うばかりに、霧の濃いパリの町並みには独特の色香があって、何度見ても飽きない。
(画像は"ヴァニタスの手記"第12話より引用) pic.twitter.com/vhIYnHcKcc
あくまで僕個人の感覚だけど、この風景の面白さ、美しさこそが、この作品に惹かれる強い誘引になっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
”バベル”によって通常の歴史を外れ、僕らの知っているパリとは違った魅力に改造された、スチーム・サイボーグとしてのパリ。
カメラを風景にゆったり逃がす、繋ぎの話数で祖の顔が良く見える。
2クール目からしばらく、物語の舞台は南仏ジェヴォーダンに移るんだろうが、やっぱりこの時代のパリに漂う都会的な蒸気を、胸いっぱいに吸い込める贅沢がありがたくて、このアニメ見てるなぁ…という気分になった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
このアニメの美術が、セヴァンヌの山並みをどう描くかも楽しみだけどね。
可愛い可愛いジャンヌを置き去りに、ヴァニタスはノエの元へとひた走る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
彼が謀略を嗅ぎ分ける嗅覚は確かで、ルスヴン卿の毒牙は確かに、ノエに首輪をつける。
先手を打たれ、裏をかかれた形だ。
(画像は"ヴァニタスの手記"第12話より引用) pic.twitter.com/nFOYtonOQO
アルシヴィストの牙が血に宿る”記憶”を読むように、ルスヴン卿の牙は”強制”の魔力を持つ…のかなぁ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
忘却と合わせて上手く行使すれば、謀略渦巻く宮廷でのし上がるには非常に強力な武器だと思う。
一回だけの、絶対命令遵守権限。
これをどこで切るのか、サスペンスの種が増えた。
ヴァニタスは完全にしてやられた形だが、そうして足元をすくわれるくらいに、ジャンヌとのデートは楽しかった…とも言えよう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
実際可愛いしなぁ…見透かされていたとは言え、デート作戦の狙いを全部自分でゲロっちゃうのとか、あんまりチョロくて涙出てくる。面白すぎて。
恋といい切るにはお互い歪だけど、ジャンヌといる時間はヴァニタスにとって、結構な喜びなんだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
ジャンヌもまた、悪戯に自分を翻弄しつつ、どこかジェントルな所がある”恋人”を、難からず思っているのが判る。
しかしお互いの思いは、恋だけにあるわけでもない。複雑だ…。
ヴァニタスがジャンヌに”死”を誓約したように、ルスヴン卿もノエに誓いを強要する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
男と女の間で結ばれた、消えることのない物騒な…でも心のある契約。
陰謀の道具として魂を弄ぶ、男と男の冷たい盟約。
対照的な二つのデートが、”契り”という同じ結末に落ち着くのは面白い。
俯瞰的に二つのデートを見ることが出来た、透明で無力な視聴者だけが、特大級の地雷が埋まっていることを知っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
同じく”手記”のナレーションを唯一聞けるからこそ、僕らはこの友情の結末が殺戮で終わる(らしい)事も知っている。
ノエの首輪は、悲劇の引き金となってしまうのか?
疑念を深く埋め込んで、状況だけが回っていくのは面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
ジャンヌを霧の向こうに攫っていく”ルスヴン先生”と合わせて、心地よくサスペンスが踊り続ける。
それは一見のんきな、図書室の聖騎士にもまとわりついている。
(画像は"ヴァニタスの手記"第12話より引用) pic.twitter.com/uBPVQkEFEV
『不合理ゆえに、われ信ず』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
古い教父の言葉に堂々背中を向けるような、ローランの乾いた内面。
信じるものしか信じられない、実は篤信と最も遠い場所にある心証が晒されて、大変興奮してしまった。
情熱大暴走に見えて、理性で徹底的に探り倒す学者気質持ってたのねアナタ…ますます好みよ。
”狩人”の古いしきたりも、歴史的に正しいとされている立場も、ローランを縛る鎖にはならない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
自分が見つけたもの、信じたいと思えたもののためなら、あらゆる理不尽を跳ね除け、また押し付けて突き進む、理性の重戦車。
そういう存在が、信仰の中心地にいるのは苦しかろうな、と思う。
同時にそういう存在だからこそ、徹底的に信じるという営為の本質まで突っ走ることも出来よう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
吸血鬼ノエとともに旅をするヴァニタスには、なかなか描きにくい人間の視線。
ローランがそれを背負える怪物だと解ったのは、嬉しい描写だった。
この覚めた顔、めったに出ないんだろうなぁ…セクシーだ。
一方ノエ達のねぐらには『ジェヴォーダンの獣、復活』の一報が迷い込み、ノエは漂う芳香にそれどころじゃない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
白黒から緑、情欲の紫、ランプの自然光、全てが消えた暗がり。
小さな部屋を劇場に変える、色彩の演出が冴える。
(画像は"ヴァニタスの手記"第12話より引用) pic.twitter.com/5eEdf6StE8
ノエの飢えが、ルスヴン卿に蹂躙された反動なのか、ヴァニタスが特上品だからか、イマイチわかりきらないけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
印をつけられた(つけることを許した)ジャンヌだけでなく、ノエにとっても彼の血は濃厚な誘惑だ。
こんなに無防備に、情欲を誘いやがって。
下卑たマチズモを免罪符のようにおっ立てて、人間の首筋を狙う吸血鬼の言説。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
腕力で弱い存在を押し倒し、強引に奪う獣が、ノエの中にも眠っている。
それは性別とはまた違った、バベルが生み出したもう一つの区分…啜るものと餌食の分別なのだろう。
式を狂わされた吸血鬼は、獣と贄以外に存在しない荒野に堕ちる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
それは外側から押し付けられるものであり、内側から這い上がるものでもある。
そんな獣性、暴力性…あえてカッコつきで”男性性”が宿る立場と、その犠牲になる立場。
これが男と男に分配され、不安定に揺れてる所がエロくていい。
ヴァニタスは放埒にジャンヌの欲望に応えているようで、血を啜る相手は厳密に選んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
衝動に苦しむ”患者”でもないのに、その異能で俺の過去を陵辱するのであれば、お前を殺す。
その拒絶には、ただの淫蕩でも犠牲でも終わらない矜持と恥じらいが、確かに薫る。
エキセントリックなクソビッチの癖に、修道女めいた信念、脆く儚い乙女の操がちらほら顔を見せる所が、ヴァニタス…彼を主役とする物語にエロティシズムを宿していて、やっぱりいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
吸血鬼と人間という、ゴシックな区分を作品に持ち込むことで、男女の別とはまた違った緋色の攻防が、随所にひらめく
これが性と謀略に交錯しながら、バチバチ火花を散らし、しかし擦れっ枯らしに汚れきらず奇妙に純情な青春が、爽やかに吹き抜けもする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
ヴァンパイアをメインテーマにするなら触って欲しい、とても柔らかく難しいポイントを、しっかり握りしめてくれる喜び。
それが、塒の攻防にあった。とても良かった
複雑な気まずさ、誠実な内省を眠れぬ夜に溶かしながら、二人はおずおずと間合いを測り、堪えきらず笑いだして共に未来に進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
まるで、親友のように。
あの緊張感と淫蕩に、このジュブナイルな風が同居するのが、独自の味わいでいい。
(画像は"ヴァニタスの手記"第12話より引用) pic.twitter.com/fnfI7WaCjE
ジャンヌとの”デート”もそうなんだけど、ヴァニタスには凄く冷徹に理と利を計算して立ち回る顔と、滅茶苦茶無邪気に生を楽しみ、隣人と笑う表情が混ざってる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
他人を信じず、復讐に滾り、救済を振りかざす固く揺るがない部分と、未成熟に”何か”を待ち焦がれている部分。
彼の間近にいることで、その両方を強く感じるからこそ、ノエは思い出ボムを炸裂させ、OPテーマをバックに二人の関係を言葉にしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
1クール目に相応しい爆エモ演出を、しっかり時間使ってぶっこんできて、大変良かった。
鬼の欲、人の業。
様々なものが擦れあって火花を散らすが。
何よりも二人は運命的に出逢ってしまった若人で、複雑な書物としてお互いを読み、それを手引に自分を知っていく関係にある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
血欲に突き動かされる獣の自分を認めつつ、それ以上に一人間として”ヴァニタス”を読みたい自分をノエは晒して、ヴァニタスも赤面しながら受け入れる。
このおずおずとシャイな探り合いが、彼らの瑞々しさをよく見せていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
複雑怪奇な謀略、己を突き動かすカルマ。
確かにそれも、彼らの否定し得ない一部だ。
それと同じように、この朝のパリを照らす光もまた、嘘ではないのだろう。
綺麗だ…滅茶苦茶になってくれ…。(呻くような願い)
かくして二人向かうは、獣伝承残るジェヴォーダン。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
どう考えても色々あるピンクとか銀とかが画面に乱反射しつつ、新たな物語が語られるのは暫く先の話。
超正統派の伝奇美少女釘宮声来たな…勝ったな…。
(画像は"ヴァニタスの手記"第12話より引用) pic.twitter.com/2CbeBYsWr6
そんなわけで、ヴァニタスの手記第1クールはひとまずの幕である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
大変面白かった。
独特の世界設定とセンスで、”吸血鬼”という題材を解体・再構築して生まれる、スチームパンク・パリの風景。
エキセントリックで凶暴な、呪われし救世主。
それに隣り合う、田舎者の傷追い人。
バロックでおどろおどろしい魅力と、爽やかな青春絵巻が、豊かなイマジネーションの中で入り交じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
史実にネタを拾った奇想と、男女様々に乱反射する濃厚な感情が、一定の美学に導かれて濃厚に織りなす絵巻。
色んな面白さがある作品だった。
板村智幸の絵画的センスがビシッと決まり、美麗でどこか退廃的な作風をより際立たせてもいた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
ドラマの方向性、そこに宿る温度と、アニメとして選んだ表現技法が程よく噛み合って、作品の美味しいところがどこにあるのか、アニメから入った僕にもよく伝わる仕上がりだったと思います。
吸血に否応なく伴うエロティシズムにも、腰をどっしり落として向き合っており、大変満足です。今後もネトネトに屈折しながら、エロくやってください。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
各種古典にもしっかり目配せして、しかし莫大な調査に引っ張られすぎず、蒸気と吸血鬼が彩るもう一つのパリを、オリジナリティ込めて描く。
なかなか絶妙なバランスでエンターテインメントもしてくれていて、とても良く肌に馴染む作品でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年9月18日
白銀のジェヴォーダンを舞台に、どんな業と運命が転がっていくか。
第2クールも大変楽しみですが、今はありがとうとお疲れ様を言いたいです。
非常に良いアニメでした。続きを楽しみにしてます。