ブルーピリオドを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
沈みかけの親友の手を取って、辿りついた海。
潮騒に安らぎ青く不安を溶かし、目覚めて広がる光と風。
小田原への寄り道は受験を控えた八虎に、岐路に立つ龍二に、終わりの先を見せていく。
晒した裸身は頼りがいなくどこまでも自分で、そのキャンバスに、今僕らは…。
そんな感じの二次試験直前! 小田原よいとこ一度はおいでな、ブルーピリオド第10話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
戦場に挑む直前で服を脱ぎ、ダチと一緒に海に沈むことにした八虎と、そうしてもらったことで青い深海から戻ってこれた龍二の、絞れば青汁が出るほどに青い青い青春賦である。
ああ、眩しい…。
蕁麻疹ボリボリ掻きむしるほどに追い込まれた場所で、余計な一歩に囚われたからこそ見えてくる色彩は、万色を孕んだ青。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
自分の人生を絵画に捻じ曲げた引力源の一大事に、土壇場向き合ったからこそ見えてくる景色。
八虎の選んだ道は、描けなかった龍二にもまた道である。
先週色濃く匂っていた赤と閉塞感が、夜の、海の、光の、人間の青に溶かされて、海風が吹き付けていく物語。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
ここで掴んだ突破口が果たして、八虎に未来を広げていくのか。
「早々簡単には終わらねぇぞ…』と言わんばかりの、絵かきの命を直撃するクリティカルと合わせて、さぁクライマックスである。
あんだけ擦れっ枯らしの性悪で装っておいて、いざダチが自分のために人生投げ打つとこの表情。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
龍二がどんな人物か、よく判る新宿発小田原行の車中は、お互いを直視できず、窓ガラスに己を反射する二人の夜を、よく照らしている。
(画像は"ブルーピリオド"第10話より引用) pic.twitter.com/WyJ1i2PEog
紅く己を守るマフラーを外して、隣会い体重を預けれる程強くはなくて、一体何がしたいのか、未だに見えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
八虎が”征く”と決めたことはこの段階では答えではなく、龍二は一瞬の動揺を”アタシ”の鎧で包み直して、自分を必死に切り崩してくる相手に対峙する。
カテゴライズされた輪郭を失い、赤裸の自分でいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
それがとても大事だからこそ、八虎は絵に惹かれ龍二は絵筆を(一旦)置いたわけだが、鎧もなしで世界に、自分に向き合うことはとても難しい。
誰もいない車中に漂う断絶は、そんな困難から若人を守る、優しいシェルターでもある。
夢を捨てられて安心し、火宅なれども出られない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
龍二を包むアンビバレントはとても普遍的で、世界のあらゆる場所、あらゆる人に伸びている。
八虎もまたそんな矛盾に身を置けばこそ、龍二に傷つけられ、見捨てられずに手を伸ばし、一種に沈んで帰ってこようとする。
深く人生の海に沈んで、なおかつ溺れず戻ろうとするなら、着衣は重石にしかならない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
龍二と共に海に行くとホームで決断した時から、八虎がまとった優等生の衣は脱ぎ捨てられつつあり、龍二もその裸身に誘われて、己を切開しだす。
舞台は小田原、俺たちだけの修学旅行だ。
深夜の小田原はマジ何にもなくて、夜闇は深い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
携帯電話の明かりを明かりに、リーズナブルな宿に流れ着いてみると、そこはホッと息を継げる広さと灯火に満ちて、龍二は分厚い衣を脱いで禊をする。
八虎もまた、”べき”に追い立てられた日々から外れて一呼吸
(画像は"ブルーピリオド"第10話より引用) pic.twitter.com/qbHJ2ump8X
旅館のおじさんが透明に告げてくる『男二人?』に、ツンと武装して突っかからないと、自分が崩れてしまいそうな頼りなさ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
それは結構いい部屋のホスピタリティにくるまれて武装解除していって、覆いを問いたことで龍二は、八虎の生々しい傷を見る。
自分が逃げた場所が、生み出す痛み。
あるいはそれを同じく生身で感じたからこそ、最後の最後で耐えきれずの×印、だったかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
それはこうしてダチを誘い、広くてどこかに繋がっている場所、『入れば、死ぬかもな…』と遠巻きに見ればこそ生を取り戻せる海に、龍二を追いやった聖痕だ。
同じものが、優等生にも刻まれている。
それを目の当たりにして震える視線が、蓮っ葉なやけっぱちを演じ、同時にそうならざるを得ない切実を滲ませていた龍二が、何を着て何を隠しているかを、上手く語っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
流石に勝負回、情感宿る表情の作画、それを反射する情景の画作りには、力こぶがしっかり宿って頼もしい。
安らげる場所に身を横たえて、月光に照らされた夜は都会よりも明るく、青い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
色んな味わいをした百の顔の”青”を、今回しっかり焼き付けているのはとても良いな、と思う。
前回出された色彩の宿題に、八虎が見つけた答え。
この後の勝負で、叩きつける抜身。
(画像は"ブルーピリオド"第10話より引用) pic.twitter.com/eLwiXMxdOd
それを彼が、優等生らしく頭で捏ね繰り回した理屈ではなく…でもそうやって考え抜いたからこそ身に染みる、唯一絶対の体験によって掴み取っているのかが、凄く説得力を込めて描かれていると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
修学旅行のように布団を横たえて、それでも相手の方はまだ向けない。
でも自分が何を押し流したか、傷ついていないふりで告げる事はできる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
遠く遠く押し寄せる潮騒は、安らぎと同時に不安も生み出して、夢枕に共に沈む青を見る。
絶望から抜け出せず沈んだ海底もまた青くて、泳ぎ切るには不要な服なんて着てるから、溺れて死ぬのだと教えている。
そこから目覚めて、エーオスの生み出す美しきイリスに目を細める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
青の中には虹色の万色があって、開け放った窓からは涼しい海風が、眩い光が、どこまでも広がっている可能性が…そのすべての真ん前に立つ、苦しみ続ける親友がいる。
そこに、二人はなんとか辿りついたのだ。
暗い闇の中携帯電話の微かな明かりを頼りに、どこかへ行ける列車に覚悟を決めて乗り込み、寒い中彷徨って辿り着いた、小さく暖かな場所。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
自分を苛むことしか出来ない家から飛び出し、海の歌に抱きしめられて目覚め直し、見つめる景色。
掴んだ生。
龍二は、間違いなく死にかけていたと思う。
しかし八虎が胸に突き刺さった灼熱の赤に耐えきれず、伸ばした手を掴んだことで…確かに繋がっていた縁に赤裸々に縋る強さが残っていたことで、まだ死ねない自分を引き寄せた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
この景色は、そんな彼らへの報酬なのだと思う。
勇気ある人達に海路の日和あれかしと、僕も祈る
窓の外に、未来から吹き付ける風に微笑む龍二を見つけられたことで、八虎も悪夢から醒めて己を誇れたと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
それは彼が選んだことで、今ここにある景色だ。
電話越し泣いてるダチに揺さぶられて、黙ってられねぇからバカやって、それで掴んだ未来だ。
あの時、描くことを選んだように。
素泊まりのはずなのに、美味しい小田原のお魚定食を差し出してくれる、優しいおじさん。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
味噌汁もお茶もあったけぇ味わいで、この世の果てに捨てられたガキ共を温める。
マージで、飢えと寒さに震える人にホカホカご飯差し出す生業、”無敵”過ぎて涙出る。
(画像は"ブルーピリオド"第10話より引用) pic.twitter.com/iAQSh30HzR
自分を追い込み追い詰める”家”は息苦しすぎて、差し出された画材は呪いにも思えて、どうしても見たかった海。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
ずっと龍二が窓に、光に、波間に近い方に体を置いてて、まだ受験を戦わなきゃいけねぇ蕁麻疹人間が闇に近い場所に半身を置いてるのは、とても面白い構図だ。
龍二は死にたいけど死ねないと心に刻んで、この相模灘に流れ着いた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
そこには青く優しい夜と、眩い朝日と、優しいおじさんがダメ押しに『生きるのも、悪くねぇかな…』と思わせてくれる暖かくてウメェ飯があった。
彼には、答えが見えつつある。答えの一つは、×印でもう出した。
そんな彼が挑発的に、巣立つまでの三時間を”描く”事に…八虎にとっては新たに進むための一歩であり、龍二にとっては打ち捨てた場所に戻る儀式に費やそうと言い出すのは、とても良く判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
それはまだ影に沈んでる優等生が、光に近づいていくための呼びかけなのだ。
同時に、八虎だけが描くわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
龍二も頼りない素裸の己を描いて、それを服で守ってたげたい己の願いを、誰かの借り物ではなく書く意思を捕まえていく。
青の時代…Período Azulにピカソは、娼婦や物乞いなど、打ちひしがれ世界に苛まれた人々を、選び取って描いた。
その主因となったのは友の自死と言われている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
共感が世界を青く塗り、描くものと描かれるもの、自画像と画家、今描いてる自分と同じく隣で絵筆を滑らしている戦友の間に橋を架けていく。
そうして、自分の輪郭を取り戻し、裸でも生きる足場を作るのだ。
一人だけど一人じゃないと、識っていくのだ。
衝立一つに阻まれて、裸身に向き合う青年二人。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
それはエロティック…と感じる獣の、あるいは犠牲の生生しさよりも、青年の肉付きを浮き上がらせて寂しく、その影は複雑に青い。
気恥ずかしさも、構える気持ちも、壁があるからこそ向き合える。
(画像は"ブルーピリオド"第10話より引用) pic.twitter.com/D0EJ6Osrmm
己の赤裸々には向き合いつつ、しかし相手の裸は見ない礼節、尊重、あるいは優しさ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
このダブルスケッチの構造は、龍二が『服を作る私』をそこから組み上げていく未来と合わせて、とても示唆的だと思う。
人は裸でしか無いのに、裸では生きられない。
自分の姿を見るのにすら、鏡がいる。
ともすれば傷つけられ液状化してしまいがちな己の輪郭を、なにかに反射して確かめながら、なんとか息を継いでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
二人の青年もそんな難しさに生きていて、だから裸でありながら、お互いのむき出しを視認しすぎないよう、互いに尊厳を着せあっている。
それが多分、龍二の目指す服だろう。
複雑な陰影の中で、相手が見えないからこそ投げかけられる真っ直ぐな言葉に、飾りのない真実が返ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
誰を愛し、どのような己でいるのか。
わかり易さを対価に捧げて、これ以上踏み込まれない、自分が流れ出さない輪郭を手に入れる。
でもそれは、窒息性の毒薬でも在る。
龍二が性自認…と複雑に癒着した自己定義を晒す隣で、八虎は鏡に己を照らし、複雑な明暗の中で自分を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
龍二が己をカテゴライズしなおして補強したのとは、違うけど別の鎧。
優等生の服を脱いで、この世界の果てまで、深海の底まで潜って見えるもの。
男/女、あなた/私、描かれるもの/描くもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
わかり易く表象を切り分ける”/”に、どうしても切り分けられないあやふやで大事なものを、その形のまま描き、提示し、解ってもらえる可能性。
それこそが、八虎が…あるいは龍二も”絵”に見出した輝きだろう。
二人は描く行為に立ち向かうこと/舞い戻ることでそんな原点(ブルーピリオド)に辿り着いて、そこを基点として進み直していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
あまりに分かりにくく、時に殴りつけられるあやふやな私。
その訳のわからなさを、丸呑みしてくれる苦手で…でも嫌いじゃない”お前”。
鏡に写った己をスケッチすることは、衝立の向こうにいる”お前”を己に取り入れて、描きたい青に混ぜていく行為でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
筆先に宿る青。指先に混ぜる青。
確かに描き続け、描いてきた行為には、虚しさ以上の血潮が宿る。
それが融変する縁を、確かに繋ぐのだ
(画像は"ブルーピリオド"第10話より引用) pic.twitter.com/xLz5bGByGq
己の内側に秘めたものを壁越しにさらけ出し、そうやって切開された傷口を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
言葉は光に眩しく溶けて、全ての輪郭が青く混ざっていく。
それでも確かに、己を縁取っている線。確かに切り取られていくフィギュール。
他でもなく、今自分が此処にある硬さと、微かな寂しさ。
”女装男子”という、あるいは”優等生”という殻に、等身大の高校3年生を、生きる人間を押し込める行為は共犯的だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
そうあることで、色々便利に渡れ、生き残れた場面は多々あったはずだ。
カテゴリーは本当の自分をさらけ出す怖さから、守ってくれる壁でも在る。
それでも、己を囲って生きていくのは苦しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
龍二と八虎の土壇場が水辺で推移するのは、それが一瞬の落下でも燃え盛る灼熱でもなく、息苦しさによって死をもたらす、彼らの青い現状だからだと思う。
でもそこは水と土の境界が揺れ動き、何かが始まる場所でもある。
彼らの自画像は暗く沈み、しかしそれは眩い光が確かにあればこそだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
”描く”ことで出会った二人の縁は、×印に引き裂かれたように見えて共鳴し、この岸辺に辿り着いた。
描かれた身体に、”肌色”などという色合いはない。
(画像は"ブルーピリオド"第10話より引用) pic.twitter.com/Nc8qCL1C32
それは青を色濃く後引きながら、様々な色合いを混ぜて表現される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
今の自分が、八虎にはこう見えたのだ。
顔よりもその胸板と肋骨が、浮き上がった筋骨が、飾りなく頼りない己なのだという発見が、この一枚には焼き付いている。
堂々、胸を張って預けれるものではなくとも。
その有り様を強く認識して、八虎は帰るべき場所へと戻っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
龍二は進むべき場所へと進みだしていく。
サヨナラ、優しいおじさん…また来ます。
あんだけどん詰まりだった龍二が『また』を口にできて、俺ホント良かったなと思うよ。
(画像は"ブルーピリオド"第10話より引用) pic.twitter.com/5uBy8RTd0Z
詰り誘い受け取るばかりだった龍二が、奇妙なセルフヌード会を、気遣いの籠もった軟膏を手渡す構造というには、八虎は龍二から色んなモノを受け取っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
そこに自覚があるから、大事にしたいから、この話はこのように進んでもいるのだ。
『受かったらお前のおかげ、落ちたら俺のせい』
ちょっとええカッコシイな優等生の答えを、龍二はもう笑わない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
八虎の裸身はもう、焼き付くほどに見たのだ。
その眩い背中を導きとして、龍二は己を海に漕ぎ出していく。
守るべき場所、闘うべき場所。
見誤っていたと思い直せたのなら、いくらでも舵は切り直せる。
そういう再生に龍二を導いたのは、やっぱ八虎の生真面目であり、龍二自身がその生き方から彼に渡していたものなのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
”/”は確かにあって、だからこそ進む方向も変わる。
でもそれは、溶け合うなにかが存在しない、というわけではない。
差し出す私も、受け取る私も、同じ場所で繋がっているのだ
というわけで青春迷い道、一天地六の駆けは吉と出た!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
大葉先生お墨付き、行くぞ藝大二次試験!
やっぱなー、この人”恩師”の概念存在だと思うよつくづく。まつげなげーなオイ…。
今まで色んな色で描かれた、夜の帰り道も明るい。イケる…イケるぞ!
(画像は"ブルーピリオド"第10話より引用) pic.twitter.com/jfQRv2ya4w
って思わせておいてこのヒキなんだから、つくづくこのお話は甘くはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
人生の答えに豁然と目を開き、差し出された優しさに背中を押される。
そんなことだけで突破できるんなら、青春山脈は地獄の難所ではないのだ。
希望、苦悩、感性、直感、努力、幸運。
全てをないまぜにした顔料を、人生というキャンバスに幾度も叩きつけて生まれる”絵”はいったい、どんな色をしているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
八虎の運命を賭けたアクション・ペインティングは、山あり谷あり涙あり。
まだまだ終わってくれない藝大受験物語、次回ももっと面白くなります!
楽しみですね。
追記 顔色ばっかり伺いながら生きてるよ、か。
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
『あの家では、お婆ちゃんも弱者だったから』と、幼年期に停滞して自分の実態を見てくれず、優しさで窒息させてくる人を見据えているのは、龍二が優しく賢いところだと思う。
強弱の間にある”/”が絶対境界線ではなく、それが凄くあやふやに、複雑に危うく動いていること。
龍二はあの家で苛まれながら、その事実を冷静に観察し続けていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
”傷ついてる私”を絶対視出来ず、視界の端っこで誰かの顔を見ちゃうことで迷いもするけど、その客観は、龍二の善さだと僕は思う。
ここら辺、苦手な相手ほど萌える八虎の客観マゾ気質、どっか似てんだよな。
補記 輪郭の捕まえ方、あるいは揺れ動くアイデンティティとその反射
補記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
アニメで省略されたポイントであり、原作で非常に心動いたコマなので、このチャンスに語っておく。
龍二は自分を都合のいいフェアリーとして受け入れ、それ故浮遊する自分の居場所となっていた”女”達との距離感も、またこの小田原で吐露している。
それは都合の良さを通過とした、ある種の共犯だ
『お前は女の形だし、男が好きなんでしょ?』という範疇からはみ出る己を自覚しつつ、それを告げて二度三度、居場所を失う恐ろしさには勝てない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
『俺”普通”だから、判るだろ?』と跳ね除けられる苦しさに涙した龍二と、女が好きでもある龍二…それを拒絶しかねない居場所は、背中合わせに密着だ。
人間は何かをカテゴライズする事で、世界や他人や自分を棚に収め、制御可能な情報として対応していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
むき出しの混沌を個別に、その複雑さのまま捉えられる強さは、人間のデフォルトではない。
そこを超えてむき出しを表現できる強さが絵画にはあり、そしてそれは、言葉と考えを尽くした先にある。
曖昧な輪郭の溶けやすい自分を、抱きしめそのまま縁取ってくれる存在。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
八虎が龍二の(あるいは龍二が八虎の)、恋と性の対象にならないことはこの話において、僕はかなり大事だと思っている。
そこが共鳴しないとしても、人がつながる手段は友情とか絵筆とか、色々あってよいのだ。
その上で、龍二が一般規範から逸脱した自由な存在であるとカテゴライズし、何でも吐き出せるゴミ溜めとして扱ったことで、少女たちが彼女を窒息させる息苦しさから逃げ出し、生存できていた事実も、またそこにはあると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
この身勝手を振り回さなければ、死んでしまうどうしようもなさ。
二人を海に追い込んだ土壇場は、波の向こうでの複雑に揺れていて、相互に波紋が起こっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
それは荒波になったり安らかな凪になったりしながら、時に人を深海に巻き込んで殺し、あるいは服を脱がせて岸に戻す。
カンバスに選ばれなかった画材が、生きる複雑を宿していないわけではない。
ここら辺、前クールに摂取していた”かげきしょうじょ”に置けるゲイの書き方、フェアリーであるからこそ性虐待から愛ちゃんをサバイブさせられた、都合の良すぎる王子様としての太一の描き方と、奇妙に呼応する所だなーと、個人的に思ってもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
普段は別作品呼応させた批評、あんまやらんけどね。
自分にファリックな刃を突き刺さないと、絶対に信頼できるからこそ体重を預け、その表層接点の奥にあるものを考えなくていい対象。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
”普通”からはみ出したものが、そのような有用性でしか人の世にあることが許されないことの窒息性と、その逸脱性が自在と繋がる可能性。
八虎が”女装男子”の色眼鏡を外した後は、龍二のセクシュアリティでもって彼を断じないのが、僕にとって良い描写であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
それは人を殺すほどにシリアスな問題であり、同時に人を成り立たせるたった一つの原因でもない。
とても大事なもので、他の大事なものと混ざりあって、”お前”を作るメディウムだ
カテゴリーが増えて、己を他人に分かってもらうための画材が豊かになることは、とても良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
でも”女装男子”なり”優等生”なりの単色を用意して、それで満足して一つの色に他人を、あるいは自分と世界を塗ってしまうのは、時に暴力的で侮辱的だ。
”肌色”という色は、やっぱり無いのだ。
絵から離れることで、絵に大事なもの、絵を描く意味を取り戻していく今回のエピソードが、”色”の追求をテーマの一つと追っていたことは、僕にとっては凄く豊かであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
自分だけの色彩を他ならぬ”お前”に告げて拒絶される怖さ含め、青く感じたものを青く塗る大切さ、その青を選ぶ難しさと価値。
それこそが、”ブルーピリオド”と名付けられたこの一連の絵巻において、とても大事なんだと思えるエピソードだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年12月4日
あの海は、鏡に写った俺とお前の裸身は、青い青い一つの頂点であり、苦しみ沈んでいた道の終わりであり、何かが始まり直す視点でもあるのだ。
そこに”/”はない。