イマワノキワ

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ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン:第18話『燃えよフー・ファイターズ』感想

 懲罰房第二の刺客・ケンゾーとの死闘遂に決着!
 『そうはならんやろ……』と『そこまで言い切られたら……そうなるかもな!』が交互に襲いかかる、ジョジョ力強いストーンオーシャン第18話である。
 HPゲージが減ってくると本性がむき出しになり、テンションが異常領域に跳ねてオカシイこと言いまくるのもジョジョだが、麦人さんもチョーさんもさすがのベテラン、どっかにトボケた味を残しつつ、異様な凄みを高速・高密度で叩きつけてくれて楽しかった。
 大暴れする暗殺風水怪人に引っ張られる形で、F・Fや徐倫の心意気、あくまで冷徹なアナスイと、味方サイドもいい塩梅に味が濃かった。
 確定した運命に翻弄され、地獄のピタゴラスイッチで感電殺(エレクトロキューション)炸裂! するところとか、大ピンチなのに笑うしかなく、しかし笑ってる場合でもなく、凄くこのアニメぽかったと思う。
 能力戦だろうと、最後は勢いと凄み……それがジョジョだ!

 

 頭をぶった切られても、それが第2ラウンド開始の合図でしか無い、異形の戦いスタンドバトル。
 精神から生まれた形あるヴィジョンをぶつけ合う戦いは、敵味方それぞれの魂を顕にしていく。
 完全無欠の暗殺風水を正面から打ち破るべく、覚悟の相打ちを狙うF・Fはしかし、相手を打倒することだけを考えて戦っているわけではない。
 『コイツボーっと見守って解説してるだけんだな……』と感じた視聴者を代弁するように、入ったツッコミにアナスイが答えたのは、自分の勝利よりも徐倫の安全を優先する、黄金の精神だった。
 人間の死体に宿ったプランクトンの集合体(だからこそ、常人なら百回死んでるような負傷も耐えられるわけだが)は、徐倫と暮らす中で人間性の精髄をその身に宿し、誇り高く力強く戦う戦士となった。

 他方同じ電撃に焼かれてもケンゾーはかつての栄光を妄想し、怪物めいた執念で『教祖復活じゃ~』と叫ぶ。
 多くの人を死に追いやり自分だけ生き残って、20年監獄にブチ込まれておきながらこの体たらく。
 『どんな存在として生まれたか』ということが、『どんな存在であるか』を規定はしない、良い見本であろう。
 余裕ぶった達人オーラがベリッと剥がれて、口汚い妄想をモリモリ垂れ流すようになってくるとジョジョのバトルも本番だなッ! って感じがするよね。

 

画像は”ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン”第18話から引用

 F・Fの心意気を知った徐倫はいても立ってもいられず、両腕すら動かせな身体を階段に投げて、救援に向かう。
 ウェストウッドを頭突きでぶっ倒すしかなかった極限状況から、更に前に突き進むあたり魂に筋金入っているが、身体の痛みより友の献身に報いない心の痛みのほうが、徐倫には辛いのだ。
 そしてその優しさの具現……発現した”ストーンフリー”は、ケンゾーを貫くことより安全方位に残ったフー・ファイターズの生存を確かめ、友を甦らせるために使われる。
 ここまでも”ストーンフリー”は思いを伝えたり誰かを包んだり、人殺しの武器に終わらない多彩な可能性を形にしてきたが、ここでも盟友の命をつなぎ、己の生き様を証明する救命具として機能している。

 この死闘に身を投じている理由も、DIOの骨を回収し”ホワイト・スネイク”の正体を暴き、父の魂を甦らせるためなわけで、殺すより活かすために徐倫は血まみれになっている。
 冤罪と理不尽がまかり通るこの監獄で、甘ったれたティーンエイジャーの小娘は優しき戦士としての魂を目覚めさせ、それは異様な出自を持つ仲間の生き方も変えたのだ。
 そういう、高潔な魂のやり取りが良く見えたのは、今回のバトルの良いところだったと思う。

 

 

画像は”ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン”第18話から引用

 そんな魂の影響力は、週間少年漫画の”味方”がやっちゃあいけないエグい戦い方を、眉一つひそめず完遂するアナスイをどう変えていくのか。
 ケンゾーをバネ足人間に変え、邪悪なコメディでその尊厳もビョンビョン跳ねさせたあげく、異様な風体に折りたたんでバケツに詰め込む、凶暴な”再起不能(リタイア)”。
 凄絶な美貌と哀れ過ぎる敵の末路が、この男の一筋縄でいかない魂を良く語ってもいる。
 決着付いた後結構な長尺でケンゾーの無様を描き、しかしそんな状況を生み出したアナスイ自身はクスリとも嘲笑しないの、生え抜きの危険人物って感じが強く出ててかなり好きだぜ……。

 頼りにはなるが相当ヤバいやつと、いい具合に存在感を示したアナスイを仲間に加えて、徐倫達の戦いは続く。
 僕は文字通り単細胞な異形から徐倫との魂のふれあいを経て、”人間”になっていくF・Fがいっとう好きなので、彼女の覚悟と優しさ、強さが良く見えるケンゾー戦が良い仕上がりだったのは嬉しかった。
 この異様なテンションを引き継いで、DIOの骨を巡る奇妙な戦いはどんな様相を見せるのか。
 次回も楽しみです。