イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

宇崎ちゃんは遊びたい!ω:第12話『クリスマスイブも遊びたい!』感想

 行くのか、行かないのか、どっちなんだい!?
 モヤモヤニタニタ系モラトリアムラブコメ、宇崎家決戦のクリスマスイブを描く第12話である。
 面倒くせーオモシロおじさんとして二期を盛り上げてきた宇崎藤夫を筆頭に、宇崎家の愉快な面々総出演で先輩の宇崎LOVEを見届ける展開となった……がッ!
 お酒の勢いもあって『行けるだろそこはテメー!!』と思ってるのに、決定的な一発がキマらないという、決定力にかけたサッカーチームの試合をハラハラしながら見守ってるような視聴感を堪能できて、マジ宇崎って感じだった。
 そらまーキメるなら最終回であり、このもやもや感が勝負をキメる一発の爽快感を盛り上げてくれるってのは解るが、それにしたってゴールライン上で行ったり来たりしすぎだろ!
 そういうモヤモヤも、作中屈指のオモシロ力を誇る藤夫が全身全霊で体現してくれて、あのオッサンが有する分厚い笑いの背筋が、バキバキのバルクを見せつける最終話一個前であった。
 実際、藤夫で保ってた二期ではあるな。

 

 というわけでオモシロおじさんのエンジンが唸る前に、二人きりにしてると一生ゴールライン目前でフラフラしとる煮え切らない主役に、榊がマジギレしたり妹がグイグイ行って状況を進める回である。
 クリスマスという特別な時間、家族同席という特別な状況、コメディの奥で今まで積み上げてきた生っぽくヤバい人間関係の爆弾、それをぶっ飛ばすために過剰摂取されるアルコール。
 全てが『往く』ために用意された決戦場に、強引に引っ張り込める柳ちゃんの立ち回りを、自分は安全圏において他人のコンテンツ劇場を楽しみたい最悪さから抜け出れなかった亜実は背負えない。
 『あ、このアマに任せてると話し先に進まねぇわ……』と気づいた結果、宇崎家の愉快な面々(+生々しくヤバいからこそ、そこへの反発力で先輩が前に進める桜井父)が二期に駆り出され、色々ちょっかい焼いてた感じもある。
 榊の穏やかな誠実さも、根っこにお調子乗りのクズな部分が深く突き刺さってる(からこそ、笑えてチャーミングでもある)宇崎を変えるには至らなかったわけで、初期メンで二人のモラトリアムを取り囲み、延々同じ場所を歩き続ける物語から色々テコ入れて話がここまでたどり着いたわけだ。
 ここら辺、俯瞰で見て望ましい結末にキャラを引っ張っていく苦労が垣間見えて、つまりはそうしていい未来に自分が生み出した架空の人間を連れて行ってやりたい”熱”が感じられて、二期の好きなポイントだったりする。

 

 そんな勢いに流され、無策で飛び込んだ宇崎家では、藤夫がマジ面白いバチ切れ顔で待ち構えていた。
 アイツオモシロすぎるよ……前々から知ってはいたけど、最終話一個前でその本領をフルで発揮してくるとは思ってなかったので、メチャクチャ笑っちゃった。
 藤夫は主役二人とはまた違った意味で、根っから善良なんだけど自分の本性を制御しきれず苦しむ人間味の濃いキャラで、娘大事が行き過ぎて先輩に圧力かける割に、ノリ良すぎる自分のやらかしに悶え苦しんだり、そのリカバリーのために先輩と奇妙な同盟組んだり、その結果あんだけ鬼瓦顔してた彼氏候補の人間を認めざるを得なくなったり。
 全力で身悶えしつつゴロゴロ転がって、山盛りの笑いと状況の進展を生み出してくれる八面六臂、大変面白かったです。
 父として社会人として、先輩と宇崎には描けないもう一つの『解っちゃいるけど止まらない』感じを染み出させてくれたのは、色んなダメさが噛み合って面白くなってる世界の不思議さを爆笑した後感じさせてくれて、マジいいキャラだなと思った。

 二期は家族やら友人やら職場やジムの知り合いやら、色んなキャラとの接点が増え、そこから差し出されるおせっかいに背中を押されてちょっとずつもどかしさの奥にある本心に若い二人が近づいたり、ビビってバクステコスったり、一進一退の青春模様を丁寧に積んできた。
 一期よりも人間関係のサークルが広がり、そうして開いた世界からの風に後押しされて、自分が相手とどうなりたいのか、向き合う機会が増えたと思う。
 そんな綺麗な題目だけでなく、朗らかな顔した激ヤバおじさんとのオモシロふれあいジムでの一コマが、巡り巡って実家の台所で決着付けなきゃいけない状況に追い込まれていたり、身悶えしながら転がっていく人生コメディとしての良い味わいも、堪能できた二期だった。
 今回の藤夫劇場は、そんな魅力を話が終わる直前に確認できるいいタイミングで、凄く良かったです。

 

 つーわけで、色んな人の優しいおせっかい……と、逃避のために大量にブチ込んだアルコールの力でもって、なかなか良い感じに仕上がってきた先輩と宇崎の距離感。
 逆に言えばここまでお膳立てしてもなお、永遠のモラトリアムに戻ろうとする強烈な引力がこのお話にはあって、さて残り一話振りちぎって飛び立つか、同じ場所に戻っていくか! という局面だ。
 正直どっちでもいいかな、という感じはある。
 晴れての恋愛成就に向けて突き進んできた二期だけど、一期のおんなじ場所で身悶えし続けてる感じも凄く好きだし、あそこでグダグダやってたからこそ、行ったり来たりを繰り返しながらちょっとずつ、自分を変えていくお話に面白さも宿ったわけだし。
 しかしまぁ、最終回という節目にふさわしく、気持ちよくお話をたためるフィナーレはしっかり自分と相手に向き合い、言葉にするべきを言葉にするクライマックスだとは思うので、長く続いた身悶えの決着、是非アニメで見させてほしい。
 次回も楽しみです。