機動戦士ガンダム 水星の魔女を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
株式会社ガンダムの初航海、揺れる積み荷は複雑な乙女心。
目指すべきプラントには謀略と破壊が牙を研いでいて…という、第1クール最終話一個前。
スレッタが抱え込む個人的で身近な問題と、プラントを包囲する巨大な暴力の対比が、スッとエピソードを締める構造
勝手にから回って思い込んで、行き着くところは便所飯。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
スレッタ青春のすれ違いが高解像度で描かれるほどに、そういう個人の微笑ましい悩みを食い尽くす謀略のデカさ、運命の巨大さが際立っていく。
同時に巨獣のハラワタには、個々人の因縁と思惑がワンサと詰め込まれていて…
人間(というか僕は)、極大と極小が互いにつながった円環構造に出会うと感動し興奮するものだが、一期クライマックスの舞台となるプラントは、ちっぽけな一個人の思いと、それを越えて回転する企業的/暴力的/非人間的社会の在り方が、相互に接合している状況をうまく描く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
スレッタとミオリネのすれ違いを長く引っ張りすぎず、1話でしっかりいい方向に転がした上で、そんなちっぽけで大事な繋がりをシャッターが寸断していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
学園を出て遭遇した世界には、テロと理不尽がぎっしりと満ちて、子どもたちの未来を塞いでいる。
今まで描かれた、親しき”家”の閉塞感とは…
また違った味わいで、無知な子どもに世界はその真実を突きつけてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
そんな過酷な青春群像劇に、”地球”からの新キャラたちがいい風を付加していて、展開と良くあった投入タイミング、適切なキャラ立ちだと思う。
ミオリネの見果てぬ夢だった、楽土から来たテロリストたち。
自分たちと同じ子どもで、魔女で、やれ居場所だの青春だの、ヌルくて大事な問題を劣悪な環境、経済的荒廃に追いやられている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
”株式会社ガンダム”が展開する好ましい青春の、歪んだ鏡像はしかし確かな実像でもあり、今まで描かれなかった学園の”外”には、ありふれた呪いなのだろう。
超デケェビーム・カノンで、そういう分断を物理的に突きつけた地球の魔女たちが、なぜテロルに走るのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
それを利して盤面をひっくり返そうとするジェタークとグラスレー…その思惑すら越えていくシャディクが、飲まれている怪物の顔も。
謎めいた呪いを育むデリングとプロスペラが、見据えるものも…
一期クライマックスの爆炎の中で、より鮮明に捉えられていくだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
Prologueの大殺戮を役者を取り替え再演するような、政治的暴力(つまりは暴力的政治)の当事者となることで、多分ミオリネとスレッタの幼年期は終わる。
新年早々のハッピーバースデーは、半年抱えるには重くなりそうだ。
そういう腹を固めたところで、感想に戻る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
とにかくスレッタが空回りする描写が丁寧かつ的確で、『あー…あるわー…』と思わされる引力が強かった。
誰が悪いわけじゃない…つーか地球寮の面々はみんな良い奴らで、だからこそスレッタもここで頑張ろうと思えた。
ようやく掴んだ居場所だと。
そんなやる気は全領域で空回りし、すれ違いでご飯食べれないし、なんか距離ある感じだし、うっかりスレッタ便所飯である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
か、かわいそう…ホントかわいそう…。
水星唯一の児童として、幼年期に他人と触れ合わなかった結果こうなったのか、そもそも一般的な”幼年期”が無いのか。
ともあれ狭く閉ざされた場所に追い込まれたスレッタは、胎児の姿勢で母にすがる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
『自慢の娘よ』とかつての魔女仲間に言い放つ時、画面は母なるプロスペラがスレッタと繋がる影の濃さを、容赦なく切り取ってくる。
(画像は”機動戦士ガンダム 水星の魔女”第11話から引用) pic.twitter.com/B3RebGwE5D
そんな母なる暗黒の子宮に映えてる牙に気づかぬまま、その胎内に一時退避したスレッタは、揺れる心のまま上下不安定な体勢で、くるくると回る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
無重力の船内を最大限活かした、キャラのエモーションを外形化する演出が、大変繊細で良い。
そこでスレッタは、自分がどんな存在かを定められない。
この狭い場所に閉じこもっている限り、スレッタは母の求めるまま、不定形の”娘”の一つである現状から抜け出せない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
感情はボトルから溢れて球を為すけども、滴る先を知らない。
なにもかもが柔らかく溶け合っていて、形をなさず、心地よく檻に囚われた…胎児の夢。
プロスペラは愛子の復讐のために、娘をその中に閉じ込めるし、スレッタもまたその外側にある事実を知らぬまま、くるくるとまどろみ続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
おそらくこれが、学園に来る前の二人の肖像なのだろう。
地に足を付けさせず、言葉と正しさは端末越し、全て母のへその緒から供給され、二人きりで完結している
しかしスレッタは学園へ赴くことで、否応なく支給の外側へと出た。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
そこには満たされぬすれ違いがあり、力で切り開くしか無い明日があり、地面を足で掴んで先に進み、”二つ”を手に入れる可能性があった。
それは常に、望みを理不尽に踏み潰される未来と隣合わせであると、爆炎が後に告げるが…
しかしスレッタには今、母と満たされ閉ざされていた場所に強引に指をかけ、こじ開けて外に連れ出す花嫁(婚姻儀礼により、他人から身内になりうる存在)がいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
ミオリネの生み出す騒音で、スレッタは母とのまどろみから醒め、天地を定める。
(画像は”機動戦士ガンダム 水星の魔女”第11話から引用) pic.twitter.com/wFmD5cUTii
プロスペラと対話していた時、天地逆しまな無重力に揺らいでいたスレッタを、ミオリネのガーガー喧しい異議申し立てが”真っ直ぐ”にする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
そこで転倒していたのがいかなる関係性で、いかなる倫理なのかは、エアリアルの中に誰がいるのか、その真実が暴かれた時より鮮明になるだろう。
外側へこじ開けるミオリネの力は、子宮で微睡んでいては叶わない、スレッタもう一つの望みと呼応しているので強い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
扉をこじ開けられ、少女たちはまるで年頃の子供のように、全力で追いかけっこをする。
多分そんな風に本気で友達と向き合うことも、スレッタのノートに刻まれた祈りの一つだ。
お母さんは遠くにいて絶対で、耳に心地よい囁きを繰り返して、内側に私を閉じ込める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
スレッタさんと触れ合っていると、違いすぎてる私たちが擦れて異音を発し、心地よい痛みが生まれる。
時に違和感に耐えかねて、閉ざされた安らぎに戻ることがあっても、共に進む心地よさを知ってしまえば、帰れない
故郷水星で渦を巻いていた、母なる引力圏。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
そこから強引に引っ剥がして、お互い『何の話!?』と驚くような、嘘のない気持ちを伝えあって、未来へ続く窓へと抱擁を投げかける、一連のシーケンス。
手と目の芝居が大変繊細で、凄く良い。
(画像は”機動戦士ガンダム 水星の魔女”第11話から引用) pic.twitter.com/M53OJyIP66
追いつかれ、抱きしめられ、高い場所に連れて行かれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
一連の動きの中で、無重力に漂う二人は一度も天地を逆転させない。
つまり、ここで交わされる感情も関係性も、けして間違いではないということだ。
愛の真実が必ずしも、無秩序な現実に力を持つわけではないが、しかしそれは確かに、ここにある
ミカのアドバイスに背中を押されて、ミオリネは彼女の花婿の胸に飛び込み、両手ですがることにする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
スレッタからすれば抱きしめられ束縛されている形だが、ミオリネは(素直に認めはしないが)ガーガー文句を垂れることで甘え、思いを預けている。
その手触り、その体温。
それは冷たい場所に閉じこもっていてはけして伝わらないし、携帯電話越しに母が与えてくれるものでもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
今、目の前で抱きつき抱きとめ語り合っている、私と全く違って良く似た女の子が、抱えているモノ。
それはスレッタの中にあるモヤモヤと同じ、混乱して切実な混線だ。
なにもかもを秩序立てて、整然と的確に。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
そう、まるで大人みたいに自分の感情を腑分けできたのなら、起こっていないすれ違い。
それは生の感情を分割できない…しないからこその熱量に満ちていて、わけがわからないパワーで若者を未来に押す。
なにもかも不鮮明だからこそ、誰かに抱いて欲しい。
しかしその相手は、自分を鋳型にはめる親ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
そういう時代を駆け抜けている、青春闘争の同志として、お互い当惑する『何の話!?』は抱擁を通じて、理屈を蹴っ飛ばして解ってしまう。
人生のいろんなややこしさが、こんがらがって確かに胸の中、強く息をしている。
その真ん中に、貴女がいる。
ミオリネが扉をこじ開け変な姿勢で追いすがって、抱きしめて喋り倒して縮まった距離は、そういう事実が鏡合わせなのだと、スレッタに思い出させる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
なんか上手くいかないションボリとモヤモヤに支配されかけ、忘れかけていた、旅立ちと出会いに満ちた喜び。
学校に来てから、とても楽しかった。
それは目の前で震えながら己を抱きしめ、思いを伝えてくれるミオリネがいたからこそで、しかし勝手な思い込みでそれを置き去りにしてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
目を見開くスレッタが見つめるものは、ミオリネにとっても相似形で、どうにも素直には生きられない女の子は花婿を抱きしめながら、出会いの奇跡を思い出す。
『キ、キテる…これまでの塩対応を一気に埋め合わせてお釣りがガッポガッポなほどに、キまくりやがってるッ!』と、外野も大興奮の青春Loversであるが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
泣いてる顔を、大好きな人にこそ見せたくないミオリネの純情が、そらもー可愛らしい。
ダディにギャンギャン喚くのも、同じ心理だよなー多分…。
可愛い花嫁の強がりも、震えて逃げ出していた自分の弱さも、ようやくスレッタは手を伸ばして抱きしめる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
二人の未来は宙に浮かんだまま不安定で、しかしようやくお互い手を伸ばし繋がれたものは、強く揺らがない。
水星の魔女完ッ!!!!!
(画像は”機動戦士ガンダム 水星の魔女”第11話から引用) pic.twitter.com/DkpEssIEWe
…って言いたいところだけど、ワリーがこのアニメは少女漫画ではなく地獄のサイバーパンク宮廷劇なんだわ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
ここで確認したとても大事なものを、容赦なく引き裂き踏みにじるものが満ちた世界で、どう生きてどう進むのか、という物語は、アツい青春突き進む二人を置き去りに、高速で転がっていく。
あるいはここで切り取られた友愛の肖像画こそが、人間定義が否応なく変質していく超高度資本主義/技術革新時代において、それでもなお人が人であるための楔として、作品とそれを見届けるものに突き刺されているのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
それは残酷な嵐に揺らぎ、しかし抜けない。
抜けないからこそ祈りは呪いとなり、全ては災厄の只中に飲まれていくとしても、それでもこのちっぽけな輝きだけが人の持ちうる灯火。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
だからこそ、暴力的激変が舞台を飲み込んでいく直前、とてもありふれた青春のすれ違いと抱擁を、幼年期から強引に連れ出してくれるモノのありがたさを描いた…のか?
そんな疑問に太鼓判が押されるのは、まだまだ先であろうけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
人の真実を厳しく試すテロルの決算は、今まさに現在進行中である。
ベネリットグループを動かす、複雑な政治力学が炸裂する現場には、様々な思惑が絡み合う。
ちょっとここで整理しておかないと、俺も混乱しとるからな…。
ヴィムが主導しサリウスも共感した、デリング暗殺計画。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
ここにシャディクが若手現場監督として組み込まれ、”フォルドの夜明け”を実行犯として進行中の状況だが、シャディクが実行を早めたことで、老人世代を一掃できる舞台が整ってしまった。
そこは古き秘密が眠る研究所でもある、と。
クエタに眠ってるヴァナディースの遺産は、デリングが機関制圧時に握り込んで、ガンドの夢を実現しようとしてるプロスペラは過去の因縁を一時飲み込んで、呉越同舟な状態にある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
遺産を完成させるにはエアリアルが溜め込んだデータが必要なのと、テロを呼んで実行力を用意しておいた…て感じか。
粗暴な感情主義者を装って、抜け目なく盗聴器仕込んでおくヴィムの描写が、その思惑を超えて時計を早めるシャディクの底知れなさを強調してて、なかなか面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
まっとうな道進んでたら権力の構造はひっくり返せないので、裏道から爆破しようとしたら、若手がさらなる獣道に進んだ形だな。
第2話で未然に防がれた爆殺計画に比べ、今回は具体的暴力がバコバコ炸裂しているので、結末がどうあれベネリットグループは大きく揺れるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
つーかそもそも、シャディクの狙いはグループ全体の解体だと明言されとるからな…壊して生まれた空き地に、何立てたいかはまだ不明だけど。
そういう権力の表層でドッタンバッタンやってる奥で、デリングとプロスペラは人間定義を根本から書き換えるGUND技術の真実に、一足早くたどり着いた賢者みたいな立ち回りもしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
その立場を守るためには、知謀と実力を兼ね備えた優秀な王侯でいなきゃならんのが、この世界の現実である。
同時に二人はGUNDが生み出す”現実以上のなにか”を見ている感じもあって、それ故エアリアルやカテドラルを作って、年単位でネトネト謀略練り上げてきたのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
そこら辺の事情、当事者である娘たちにはまーったく蚊帳の外で転がし合ってるのが、なんとも…って感じ。
かくのごとく複雑怪奇なせめぎあいの結果、恋人たちの抱擁は冷たいシャッターで分断され、地球の魔女が銃を構えてほくそ笑む状況である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
なーんも知らされず分からないままでも、世間の荒波はモラトリアムの防波堤を大きく乗り越え、いろんなモノを奪っていく。
そこでされるがままただ終わっていくのか、小さな手のひらで欲しいモノを掴むのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
色々試され見えてきそうな最終話は、ニ週間後だよッ!!
いやー…深夜帯じゃないことが、こういう形でぶっ刺さるとはね。
少女たちの小宇宙で、小さな感情の物語をしっかりいい方向に終わらせてから、全力で蹴る。
『見てる側が今、一番やってほしくないことをやれ』という作劇力学の基本を、すげぇパワーでぶん回す展開になってて、大変良いです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
あの青春追いかけっこ&ハグを見ちゃうと、みーんなスレッタとミオリネが満点ハッピーエンドを迎えることを願っちゃう。
だからこそ『んなわけねーだろ!』をブチ込む
そうして叩き込まれた、おんなじ少女がテロ屋の片棒担いで襲いかかってくる現実…その先にある未来。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2022年12月26日
いったいどうなってしまうのか、大変怖くてワクワクします。
第2クールへの大きなヒキを作る回になるので、何ぶっ飛んできてもおかしくないのがな…。
次回もとっても楽しみですね!