イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

テクノロイドオーバーマインド:第4話感想

 不穏な空気が満ちた終末世界を、ポンコツアンドロイドが歌で天まで駆け上るアニメも第4話。
 相変わらず主役周辺は明るく楽しく、その外側はめっちゃヤバい感じで転がっていて、二層に分離された物語構造が衝突するのが今から楽しみである。
 単純なデータを纏めて演算しても同じ結果にはならない、特別な”なにか”が主役にあると丁寧に描かれている中で、人型機械を持て余しているけどロボット抜きでは文明が成り立たないこの世界が変わっていく鍵を、どこに埋め込むか。
 溶鉱炉おじさんの衝撃を出オチで終わらせず、確かに”今”の延長線上にある滅びと日常で胎動している、大きな事件の予感に使っているのも良い。
 想定していたよりもSFサスペンスとしての仕上がりが良く、世界設定をお出しするペースもいい感じなので、噛むほどに味が出る好みの味目に仕上がってきとるなぁ……ありがたい。

 

 主役サイドはケイを主軸に、KNoCCがヒーローショーで”楽しい”を学んでいく展開。
 家の外側に広がってる世の中の暗さを元気に跳ね除けて、銭がない!→バイトで稼ごう→バイトで学んだ"楽しさ"でバベルを突破だ! と、演者としての成長がスムーズに流れていたのが気持ち良かった。
 この世界のアンドロイドは永遠の機械生命なんかじゃなく、活動してればパーツは摩耗するし、それを修理するにもカネがかかる、リソースの有限性に縛られた社会的動物である。
 ポンコツ四人組が無邪気に笑い合いながら、ここら辺の宿命をちゃんとこちらに届けてきて、マスターなしの機械が自発的に世界を学び、生活を成り立たせていく様子に見応えがある。
 KNoCCを完全白紙の無垢な機械として物語を始めたことが、そこに書き込まれていく小さな成長を際立たせる感じにもなってて、見守りたくなる可愛げがちゃんとある。
 溶鉱炉おじさん落下というイベントが、その無邪気さを強調する機能も果たしていて、本筋ではアンドロイド家族劇とSFサスペンスが合流してないけど、要素がちゃんと呼応する作りだと感じる。

 今回バベルを突破するに足りる経験を与えてくれたケイの子供好きは、プログラムされた傾向なのか、魂に刻まれた特別な運命なのか。
 ブラックボックスが多いKNoCCなので、ここら辺の真相もまだ理解らない。
 心らしきものを育んでいる機械が人間に思える振る舞いをしたとして、それは彼らに人間的特権を与える理由になるのか、モノはモノなのか。
 アシモフロボット三原則を考案して以降、空想を越えて今まさに現実にブートされようとしている基礎問題は、このトンチキアニメでもかなり大事になりそうだ。
 つーか令和のこの時代に、原液そのままのロボット三原則出てきて逆に面白かったけどな……どんくらいまで踏み込んで、”機械の心”を扱っていくのかなぁ。

 

 子どもたちを満面の笑顔にしたケイのステージ……その根っこにある”心”も作り物でしかないとすると、表現を通じて生まれる価値の根っこは揺らぐ。
 アンドロイドを隣人にすることでしか維持できない世界に変わり果てても、ロボット排斥派は元気で、人間様と機械奴隷に切り分ける視線をヒトは手放すことは出来ない。
 溶鉱炉おじさんの事件はそんな、社会の軋みが暴力的に暴れた結果な感じだが……ここら辺のソーシャルな視点を、ボーラ捜査官が一心に背負って生真面目に調査してるの、偉いなぁと思う。
 主役たちが自分たちの特別さに欠片も悩まないので、わざわざ汎用素体にデータ落としてまで問いを深めてくれて、まったくストーリー進行に協力的なアンドロイドである。

 逆に言えば、ボーラが真面目で暗い所背負ってくれてるおかげで、KNoCCとエソラはノンキな家族劇、芸能成長劇を演じられてる……ということでもある。
 ボーラが身を置く摩擦の多い現実と、KNoCCが夢見るパステル色の日常は離れていながら繋がっているわけで、二つの物語が正面衝突する時何が弾けるか、やっぱ楽しみだ。
 ボーラを第2の主役にして、終末世界の暗い側面を描き続けているのは、衝突させる前フリでもあろうしね。

 あと色んな場所でおもしろコスプレを果たし社会に滑り込んで、KNoCCが新たな可能性を示し、ポンコツが生活に困らないよう見守ってくれてるノーベルおじさんの正体も、めっちゃ気になる。
 このまま思惑なくただただ親切……てのも面白いが、世界観の薄暗さを考えると露骨に何かありそうで、さてはて……という感じ。
 人間サイドがロボットを排斥するように、ロボット側も人間を拒絶しておかしくはないわけで、ノーベルはその代表なんかな、という根拠のない予測はある。
 つーかそういう存在が作中にいたほうが、お話として面白い……って話なんだが。
 心というブラックボックスを埋め込まれたKNoCCに、社会と精神の構造をひっくり返す可能性を見て取っているとすれば、表現を通じて自分の中にある”なにか”を育てていけるよう、レールを整えているのも納得ではあるしね。

 

 というわけで主役は着実に小さな一歩を進み、その裏側ではたしかに大きなモノがうねっているお話でした。
 ケイだけに見えている世界を切り取れば、笑顔満点ハッピーヒューマンドラマで終わるんだけども、そうさせてくれない難しさが結構丁寧に積み上がっとるからな……。
 同時にKNoCCのピュアな成長物語は可愛げがあって、あんま世間の泥、運命の荒波かぶんねぇといいな……と思える主役に育っても来た。
 SFサスペンスとして、ほんわかファミリードラマとして、いい具合に煮込まれてきたこのアニメが次回、どんなお話を見せてくれるのか。
 楽しみですね!