音楽関係者の目に止まり、夢のプロデビューが現実に近づいてきたLeo/need。
ワンマンライブへの準備を進める中で、問われる勇気と決断に穂波はどう向き合うのか……というエピソード。
進級という大きな節目に向けて、ゼロ地点を振り返ったり”らしくない(からこそ、可能性を広げてくれる)物語”に勤しんでいたりしてた各ユニットが、自分たちのメインテーマに向かい直しお話の歯車がガンガン前に進んでいる感じの、最近のプロセカの流れ。
レオニもそこに乗っかって、インディーズデビューを前にデカいうねりが生まれてきた。
その先陣を切るのが穂波なわけだが、今回とにッかく自己評価が低くて、作曲・作詞も出来ない演奏技術も拙い、それでも仲間の隣りにいたいと、立ち続けられる理由を必死に探して無理する姿が、生々しい痛ましさだった。
仲間にそんな気持ちを打ち明ければ、『そんな事ない!』と全力で否定してくれるのは間違いないのだろうけども、こればっかりは穂波の気持ち次第。
自分を認められなからこそ燃えたぎる思いだけが、突破しうる壁ってのもあるだろうし、いつも朗らか優しいほなちゃんの湿った部分を、ちゃんと書くイベスト作ったのは良いことだな、と思う。
今回切り取られるのはデビューの前提条件となるソロライブの成功……その下準備の大変さである。
デカいサクセスを前にした地道な試練という感じだが、ここらへんの生っぽい手触りがレオニの醍醐味でもあるし、一足先に自力でイベントを作り上げたモモジャンの中心核、桐谷遥をユニット外から見つめる視点も取り込めた。
遙とモモジャンは学生ベンチャーの側面を強く持っているわけだが、自分たちの活動哲学をしっかり打ち立て、忙しい日々の中でも揺らがずそれに基づいて動き続けられたのは、事務所手動のアイドル活動の中、たっぷり傷ついてきた反動でもある。
事務処理に告知に練習に連絡に、とにかく忙しい社会人としての活動に振り回されるレオニに、いつか待ち受けているかもしれない嵐を先取りする形で遙はドン底まで叩き落されて、その上で今いる場所まで這い上がってきた。
それが自分だけの独力ではなく、みのりを筆頭とした他人の手のひらに導かれての結果だと、謙虚に素直に受け止めた上で”自分”を強く持ち続けている所が、遙の強さであり善さだ。
何でも自分で抱え込み、重荷を運ぶことで”レオニにいて良い自分”を作ろうとしていた穂波は、遙に相談を持ちかけることで答えを見つける。
何をするべきか、何をしたいのか、しっかり見据えた上で重要度を定めて、現実的な対応をすること。
より善い結果を求めつつも、結果だけに縛られず最上以上の理想を形にするべく、夢を諦めないこと。
これはワンマンの準備への向き合い方だけでなく、新堂さんが大人(あるいは未来のビジネスパートナー)として突きつけてくる、抜き身の言葉に怯えない足場にもなっている。
遙は一度アイドル商売という虚像にズタズタになるまでブン回された経験があるので、他人を頼りつつ自分を譲らないこと、自分を守りつつ他人を蔑ろにしないことの価値を、よく分かっている。
この難しいバランス取りを、おそらく初めて向き合う(そしてプロになるなら、これから幾度も向き合っていかなければいけない)社会の現実ってものは穂波に要求する。
バンドメンバーが怯えて立ちすくむ中、顔を上げて堂々前に進み、今譲ってはいけないものについて強い言葉を返せたのは、遙との対話があったればこそだと思う。
もちろんその根底には、優しさの使い方を一度間違えたからこそ真実強くなりたいと願い、その手段として親友と一緒にい続けること、レオニとして音楽を続けることを選んだ穂波自身の、しなやかな魂がある。
初お目見えとなった重要人物、レオニの前にプロデビューという夢への道を開き、その万人でもある新堂さんは、レオニを見込めばこそ試すように重たい言葉を投げかける。
多彩な音楽性と、若さが生み出す話題性。
それを使わないで戦えるほど、音楽ビジネスの現場はヌルくない。
それは社会人としての彼の実感であると同時に、その現実を飲み込んでなお高い場所を見つめ続ける志こそが、バンドが生き続けるための必須栄養素だとよくわかっているから、出てきた言葉だと思う。
彼自身がどんな青春を過ごし、何に傷つけられて大人になってきたかはまだ分からないが、レオニが今まさに向き合っているような青い季節があればこそ、商売としての音楽と夢としてのバンドを両方睨む、独特で面白い立ち姿も生まれていると思う。
ここら辺の渋い味付けは、ビビバスを取り巻く大人の書き方にちょっと似ているか。
彼に背中を押される形で穂波は、ワンマン成立の激務を頼れる友人たちにアウトソースしていく。
それはいちばん大事なバンドとしての実力、技量と音楽性の向上に勤しむスペースを作るための、重要な決断だ。
こうして他人を頼るためには積み上げてきた関係性と、存在意義を証明するはずの仕事を手放しても自分の価値は削れないと、確信できる気持ちが必要になる。
ここまでの物語の中で、穂波は色んな人と触れ合ってその両方を作ってきたから、司に類を紹介してもらってサイト作成を任せたり、フライヤーをこはねに作ってもらったり、ユニットの外に”仕事”を預けていく。
レオニの運命を決めていくかなり大事なイベントで、その下支えを他ユニットの友人がやるのは、いつの間にか広がっていた縁の太さと、狭く閉じていては何も成し遂げられない厳しい場所に、気づけば少女たちが立っている現状をよく教えてくれた。
こういう風通しの良い立ち姿もあれば、ニーゴのようにあくまで内向きにディープに、沈み込みながら作品と人間関係を煮込んでいく在り方も、プロセカにはある。
その両方が”正解”なのだと示すべく、この物語は複数ユニットの個性を大事に、着実にそこに橋をかけながら進んできた。
ワンマンライブの準備に色んな人の手助けが必要で、それをかき集める力が穂波たちに備わっている描写は、そういう足取りが間違いではなかったと証明するようで、見ごたえがあった。
ほなちゃんはフロントランナーとして力強くユニットを押し出したり、厳しく仲間を律して実力をつけさせるタイプではない。
いつもニコニコ優しくて、みんなを見守ってご飯まで作ってくれる、縁の下の力持ち。
自分自身そう感じているからこそ、綺羅星のような仲間に並ぶ輝きを持っているのか、不安だった彼女は今回、分かりやすく”バンド”をやらない部分で大事な決断を果たし、バンドの魂にかかわる部分で前に出た。
そういう強さがこそが、今の望月穂波には備わっているのだと教えてくれるエピソードだったのは、凄く良かった。
ユニストでは優しいからの中途半端さで色んなものを取りこぼしていた彼女が、だからこそ決断する意味、自分の思いを前に出す強さをここで形に出来たのは、彼女がなりたいとあの時思った星に、確かに近づいているのだと教えてくれる。
夢に向かって突き進む中で時に傷つき、あるいは揺らぎ、そして大事な人と笑って進んできたここまでの日々は、確かに彼女をLeo/needに絶対必要な一人なのだと、彼女自身に教える見せ場を用意してくれた。
新堂さんにバンドで唯一、譲れない大切なものを堂々伝え、腰が抜けるほどの不安と緊張をそれでも噛み砕いて、自分の足で立てた。
望月穂波というとても素敵な人が、今回の物語を経て自分のことを認められる大事な一歩になってくれると嬉しいなと思える、とても良いイベストでした。