イマワノキワ

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ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン:第30話『ヘヴィー・ウェザー その①』感想

 地下の悪夢から脱出した先に、更にひろがる地獄の風景! ”ヘヴィー・ウェザー”大暴れ、色と音と動きがつくとマージでキツい超☆カタツムリ祭りの、ストーンオーシャン第30話である。

 

 

画像は”ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン”第30話から引用


 大惨事を巻き起こしてる元凶には来週カメラを当てるとして、今回は叛乱者ヴェルサスと徐倫チームの追いかけっこがメイン。
 肝心の神父はテキトーぶっこいて闇の奥に消える……というか、”悪魔の虹”が出現した以上彼が向き合うべき過去が再び顔を出したわけで、そっちと向き合うほうが重要度が高い、という話なのだろう。
 DIOとの運命に酔ってる間は狂信者特有の浮ついたキモさが目立つが、エンリコ・プッチ個人としての因縁に向き合う時、親父の顔は奇妙に硬質な凄みが宿って、地面に足がつく感じがある。
 これを振りちぎらなきゃ目指すべき”天国”にいけない以上、DIOの息子たちが自身の悪運ともがくのを安全圏から楽しんでいた頃とは、違ったシリアスさも宿るか。
 まぁその足が向かうのは光の方角ではなく、徹底して闇の深い場所なんだけども。
 そこら辺、DIOと同じく吸血鬼的だよなぁ……。

 さて”アンダー・ワールド”を圧倒的な凄みで上回られたヴェルサスは、『幸せになりたい!』と叫びながらみみっちく地上を駆けずり回り、シコシコ地面を掘ったり子どもを後ろから殴りつけたり、地道な勝負に勤しむ。
 ”アンダー・ワールド”は再生されるはずもない惨劇の過去で、条理を越えた悪い夢に敵を飲み込む(はずが、圧倒的な徐倫の覚悟でその思い込みを粉砕される)光景よりも、暴走する”ヘヴィー・ウェザー”が生み出す景色のほうがグロテスクで悪夢的だ。
 スタンドが精神のヴィジョンである以上、それが生み出す惨劇もまた使い手の精神性に直結しているわけで、制御不能で無差別、なにもかもを飲み込んで書き換えていく”悪魔の虹”は、ウェザーが背負う悪夢がヴェルサスのそれよりも、悲惨で重たい現れな感じもある。

 エンポリオくんを的にかけることで、激ヤバ児童犯罪の匂いがプンプンただようヴェルサスであるが、”アンダー・ワールド”を制御できず巻き込まれた不幸な人生を、どうにか逆転させたい思いは強い。
 その必死さはもはや壮大さを取り繕う余裕なく、地道に地面の記憶を再生し情報を集め、思い込みで見落としかけた標的になんとか追いすがって、”天国”への鍵を拾い集める小道具へと自分のスタンドを変える。
 うわっ付いて大物ぶっているより、自分の根源をむき出しに出来ることに齧りついている今のヴェルサスには、卑近さと奇妙な親近感が宿っていて、正直嫌いになれない。
 まぁ、エンポリオくん殴りつけるのに一切躊躇いないのはどーかと思うけど、そこでどーかと思えるヤツは病気の子供をまきこんだりしないしな……。

 ヴェルサスはとにかく『人生の表通りを、まっすぐに歩きたい』という願いのままに行動していて、しかしその現れが地べたの記憶を再生し地面を掘り下げる”アンダー・ワールド”なのは、奇妙な面白さと悲しさがある。
 彼はエンポリオくんが仲間大事のヌルい考えで病院に向かうと思い込むけど、既に”覚悟”搭載されてる少年はいちばん大事な果たすべき使命を優先して、ヴェルサスを置き去りに自分の道を進んでいく。
 一事が万事そんな感じで、宿命に囚われた男は自分の想像力からなかなか飛び出すことが出来ずに、地べたをはいずり続ける。
 ここら辺、”ヘヴィー・ウェザー”が天から降り注ぐ災厄なのと真逆だよなぁ……。

 

 

画像は”ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン”第30話から引用

 結局ヴェルサスは徐倫に追いすがられ、望んだ”天国”を掴むことは叶わない。
 自分の想像を超えた圧倒的な体験に出会えなかったヴェルサスは、個人の思い込みから飛び出すことなく、躊躇いなく常識の外に出て勝ちをもぎ取る徐倫の”凄み”と、それに導かれた仲間たちとの絆に敗北していく。
 神父との出会いがともすれば、ヴェルサスに超越を教える契機になったはずだけど、やつはそういう体験をDIO以外の他人と共有するつもりが毛頭なく、出会ったものは軒並み自分の限界を越えるどころか、自分を捕らえてはなさないイメージの引力を強化し、それに足を取られてリタイアしていく。

 『幸せになりたい』という願い自体は邪悪ではなくて、その特別な叶え方を自分なり見つけて精神を成長できたのなら、ヴェルサスにも別の道があったのだろう。
 しかし彼はあくまで地面を掘り返し、事実に固定される”アンダー・ワールド”な生き方からはみ出すことは出来ず、運命に追いつかれてキモいカタツムリ人間に成り果てていく。
 その無様を笑うだけで終わる気になれないのは、そうやって引力に囚われ不自由な奴隷として生きる姿が自分の似姿に、思えてならないから……かもしれない。
 キモいカタツムリ人間になれ果てて、なお凛とした戦士の佇まいを崩さず勝利に邁進する徐倫には、とてもじゃないがなれないよなぁ。
 だからシビれる憧れるっ! なんだけど。

 

 

 

画像は”ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン”第30話から引用

 地面に埋め込まれた悪夢よりも、遥かにおぞましい天から降り注ぐ地獄。
 これを生み出すウェザーの記憶が、神父の過去とどう繋がっているのか。
 兄弟の真実が暴かれた時、”ヘヴィー・ウェザー”を生み出す精神性への理解も更に深まることだろう。
 ヴェルサスを捉える小市民的な邪悪さとは、また趣の違った壮大な悲劇をアニメがどう書くか。
 次回も楽しみです。