イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

大雪海のカイナ:第6話『籠の中のリリハ』感想

 人間を虫けらのように踏み潰す凶国の悪辣を前に、知恵と勇気と友情で立ち向かう王道ジュブナイル、姫様救出作戦開始ッ! な、カイナ第6話である。
 バルギアに捉えられたリリハが、籠のなか凍えるままにされて死ぬか、救いの手が間に合って生きるかという瀬戸際から、運命に導かれるまま敵国バルギアへ。
 大雪海の全部を見たい、カイナくんの好奇心に輝く瞳は俺達の目でもあるので、ガンッガン面白いものが見れそうな展開がありがたい。
 敵にも味方にも酷薄で苛烈なハンダーギルのわかりやすい悪役っぷりもかなり好きで、アイツをどうぶっ飛ばして話をまとめるのか、今から結構ワクワクしている。
 身体の『オーソドックスゆえにどっしり強い物語を、たっぷりと浴びて気持ちよくなりたい』つう部分に、ダイレクトに働きかけてくれる作風はやっぱ肌に馴染むなぁ……。
 カイナくんが優しい異人であり地上の荒々しさに戸惑いつつも、決断も行動も早く人間の良いところを体現してくれる主役なの、やっぱありがてーわ。

 

 

 

画像は”大雪海のカイナ”第6話から引用

 というわけで昔っからずっとおんなじことを続けて、他国の尊厳と他人の命を踏みにじって生き延びてきた、腐れ盗賊国家バルギア。
 アバンで檻に閉じ込められていたのは、髪の色から考えてアメロテ将軍の演者だよなぁ……。
 姫様は救援が間に合って過去と同じ結果から運命を変えつつあるけど、将軍が同じ境遇からバルギアに取り込まれたとすると、わかりやすくリリハのシャドウになるのか。
 なので、結構強めの視線をこの段階で送っているのには納得もある。
 アメロテは姫様の振る舞いを睨みつけることで、上手くいかなかった過去の自分と、その延長線上にある自分の今を見つめているのだろう。

 将軍が睨みつけてる現実には浅ましい暴虐と悲愴な高貴があって、上がクソなら下もクソ、目隠しされ寒さに震える姫様に食べカス投げつけて賭けに興じるクソっぷりは、なかなかいい塩梅のヘイトアーツだった。
 ハンダーギル筆頭にバルギアがこうも荒んでいる理由が、流れ流れての敵国侵入で見えてくるのか……それがどれだけ、この世界の根本的な行く末に関係しているのか。
 そこら辺も気になってくる展開……だけども、あんま姫様イジメんじゃねーぞッ!

 というわけでハラハラのステルス救出ミッションが展開するわけだが、カイナくんが天膜から持ち込んだレーザーカッターが、逆転の秘策になる流れは素直にアガった。
 やっぱ主人公の唯一性、当事者性が高い展開は大変好みで、古い文明の名残を託された天膜最後の少年だからこそ乗り越えられる苦況ってのは素晴らしい。
 ここにだって空気豆を生かした海底潜入だからこそたどり着けたわけで、天膜由来のギミックがカイナくんだけの新しい道を切り開いていくのは、スゲー良いなと思う。
 あと殺しとかは良く分かんねぇけど、リリハが酷い目に合わされてるとしゃにむに駆け出していく血の熱さが、主人公力高くて好きですねカイナくん。

 

 

 

 

画像は”大雪海のカイナ”第6話から引用

 カイナくん達が運命を頑張って切り開く中、父王は娘が政治の犠牲になるのを当然と捉えていて、血みどろで帰ってきた使者に戦争を決意する。
 水が枯れ、生きるのが難しいこの大雪海では、そのシビアさが当たり前なのだと思う。
 助けられてまず弟を叱ったリリハも、前回アメロテにハッタリ噛まして少しでも国益を守ろうとしたように、国を背負って生きることに慣れている。
 でも目隠しされ寒さに震えながら、カイナの助けが間に合ったとき小さく見せた安堵の表情と、それでも自分を崩さない、崩せない生き方には……ヤオハくんを抱きしめる仕草には、一人の人間としての体温が確かにある。

 それを確かめたカイナくんが、こういう顔をするのがやっぱり好きである。
 滅亡待ったなしな大雪海の常識は、殺しを良しとしないカイナくんの価値観は異物なのかもしれないけど、彼が天膜から持ち込んだ道具が新しい道を拓いていくように、その優しさがぶっ殺し合い以外の生き方に人々を導いてくれると、なんかいいなぁ、と思う。

 

 

 

画像は”大雪海のカイナ”第6話から引用

 かくして三人集ったものの、ここは敵地のど真ん中。
 見張り担当が亜音速で三人ぶっ殺されたりしつつ、知恵者リリハの策略と山盛りの幸運で危機を乗り越え、船はバルギア本国へと進む。
 やっぱアメロテ将軍が姫様の影を追う視線、かなり湿って熱いな……ここに溜め込んでいるものが、今後いいタイミングで炸裂してくれると嬉しい。
 つーかバルギアの舵取りする人がハンダーギルしかいないと、マジでお互い焼け野原にしあって枯れて死ぬ以外の道が見えてこないので、良い所に納めるためのカウンターウェイトとして頑張ってほしい気持ち。

 ハンダーギルは先週も今週も殺す相手に鞘を抜かせてて、鉤爪の義手では扱えなくなったものに固執し続けてんだなぁ……と哀しくなった。
 彼が暴力ぶん回して手に入れたものの威光が、それを可能にするのだとは思うけども、それは殺される側がハンダーギルの世界観に付き合ってくれるから成立する、歪な殺しだなぁと感じる。
 そういう人間に政治の主導権を握られてしまっているのが大雪海の現状でもあって、どうにか正さないと少ない資源を取り合っての絶滅合戦にしかならないわけで、さてより善い生存のために子どもたちには何が出来るのか。

 肩寄せあってひとまず眠り、英気を養って明日に備えるのはベストな選択肢なのだろう。
 王族としての鎧を外して、眠りについた仲間に感謝を述べるリリハが、可憐で健気で大変良い。
 主役の造形もいいけど、ヒロインとその弟の描き方もやっぱ好きだな、このアニメ。
 力が及ばないことはありつつ、自分たちに出来ることを必死に頑張って、微かでも確かな変化を必死に掴み取っている感じが、見てて応援したくなるのはありがたい。

 

 

 

画像は”大雪海のカイナ”第6話から引用

 さてはて流されてバルギア本国、狭く縁取られた空の下ではどんな人たちが、どんな暮らしを営んでいるのか。
 一触即発の緊張状態に巻き込まれている少年たちは、その目で”敵国”の実情を確かめることになる……という所で、待て次回! である。
 大雪海から天膜、軌道樹、根を伝っての海底行に今回の船旅と、色んなシチュエーションで飽きさせず異世界を見せてくれる物語が、また新しく面白い舞台を見せてくれて嬉しい。

 カイナくんが”敵国”を目にしたとき、アトランドと同じ輝きで空を見上げているのが僕は好きだ。
 天膜人である彼にとって、戦争寸前の両国はともに目を見開かされる驚異であり、ずっと夢に見てきた”人間が生きている場所”だ。
 そんな無邪気で眩しい夢こそが、殺し合う以外の甘っちょろい正解を大雪海の人たちに連れてくる……のか?
 運命の潮流が連れてきた異国で三人が見る景色が、どこに繋がっていくのか。
 次回も大変楽しみです。