イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

テクノロイド オーバーマインド:第8話感想

 治安の悪さをもはや隠そうともしなくなった物語は、バベル五層決戦を前に一気にクライマックスへなだれ込む! という、テクノロイドアニメ第8話。
 圧倒的な衝撃で見るものを作品にフックした、溶鉱炉おじさんの真実を追うエピソードである。
 ロボット排斥派と擁護派の対立がガンッガンに加熱する中、統治機構の上にある連中のきな臭い謀略も加速を始め、さてどうなっちゃうの! つう所でノーベルおじさん颯爽登場。
 結局溶鉱炉事件の真相が見えきらない所含め、終盤戦にむけて状況が加速しているのを感じる。

 ポンコツ共に刻まれたメモリーには、溶鉱炉おじさんとの楽しい時間が残っていた。
 世間が『機械の反乱』という分かりやすいストーリーを押し付けたがる事件は、外から観察している通りの形ではなかったわけだ。
 おじさんがポンコツを丁寧に扱ったのは、彼の人間が良かったからだが、ではその優しさに”驚き”を感じる非・機械的反応はロボットのどこから来たのか。
 状況に流されるだけの物質と、意志を持って世界を変えうる存在を分ける境界線は、どうして生まれてくるのか。
 アンドロイドSFとしてめちゃくちゃ大事なところだと思うが、果たして今後彫り込むのかふわっと処理するのか、気になるところではある。

 KNoCCだけが特別に歌を通じて訴えるべき心をプログラムされているのか、それともあの世界のアンドロイドには標準OSとしてそもそも感情があったのか。
 結構大きな違いだと思うし、ここらへんがヒロイックな横槍キメたノーベルさんの行動理念にも関わってくるポイントなのだろう。
 先を見てみなければ分からない部分だけども、人間に似た反応を返す機械を無条件に”人間”として扱うナイーブなヒューマニズムではなく、人間存在の根源を人に似て人ならざるものによって暴いていくお話のほうが好みなので、作品が言外に主張してくるアンドロイドの”人間扱い”がどこから来るのかは、ちゃんと語りきって欲しい。
 不定形で強力な力を持つ歌をメインテーマに持ってきているので、その不確かな力強さで『そういう感じ』にまとめていく事も出来るだろうけど、このお話なりの人間定義が見たい気持ちは強い。

 

 ここらへんは突き詰めても答えが出ず、出してもいけない問題なので難しいけども、こうも治安が悪い作品世界を作り上げ、つまりヒトの証明に常にヒトが不安がっているお話を選んだ以上、やんなきゃいけないとも思う。
 そこを彫り込むべく、噂された”動機”が嘘でしかないと分かった溶鉱炉事件へ、更に物語は踏み込んでいくのだろう。

 なぜ、優しいおじさんは死ななければいけなかったのか?
 なぜ、ボーラの行動リクエストは上書きされたのか?
 道具的存在に心が焼き付けられている時、世界は彼らをどう扱うべきなのか?
 こういう問いかけに、作品が主題と選んだ”歌”をしっかり絡めて答えを出すことで、STAND-ALONEとの決戦の熱量、説得力も上がってくると思う。
 『ヒトに似ているものはヒトである』という、素朴で直感的な共感を大事に進めているお話だが、それを裏打ちする自分たちなりの信念と理論を、この後語られるだろう真相で描けるか。
 ノーベルおじさんの長語りに期待大である。

 ハードでシビアな展開だけが真実ではなく、優しい少年と奇妙な機械が演じた愛しい日常を嘘にしないためには、世の中の暗くて重い部分にも、必要があるのなら踏み込む。
 そう”感じた”からこそ決戦前夜の大事なタイミングで、KNoCCも溶鉱炉事件を調べに行ったのだろうし。
 差別や暴力に憎み怒るだけでなく、安らぎを求め歌を愛する気持ちも、見知らぬ体験への驚きも、全部飲み込んで生まれる新しい歌が、どこにたどり着いていくのか。
 それを描き切れれば、アンドロイドの物語としてもステージのお話としても、この作品なりの答えが刻まれていくと思う。
 次回示されるだろう真実を受け取って、主役たちは何を歌うのか。
 楽しみですね。