イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

UniteUp!:第7話『向き合わないと』感想

 嵐のお披露目ライブをなんとかくぐり抜けたPROTOSTARに、一難去ってまた一難!?
 このアニメらしい優しく落ち着いた歩調で、愛ゆえにすれ違った親子の足取りを丁寧に描いていく、UniteUp! 第7話である。
 やっぱこのお話画角を広げすぎずに狭く深く、人間の心情に寄り添って話を転がす手付きに強みがある感じで、どっしり腰が落ち着いたエピソードで大変良かった。
 『アイドルと伝統芸能』をお題にした時、一番最初に思い浮かぶ衝突展開から上手くズラして、愛ゆえにこんがらがるラブリーな方向で牽引していったのは、新鮮……というかこのアニメ、あるいはPROTOSTARらしい話運びだったと思う。
 ここまで見てきて、主役ユニットの強みはとにかく純粋で柔らかな真っ直ぐさだと思うわけで、その一員である千紘くんが自分の課題と向き合う今回、どっかから悪意や困難を貼り付けてお話を作るのではなく、彼らしさがよく出たドラマと画作りでまとめてくれたのは、すごく良かった。

 

 

 

画像は”UniteUp!”第8話より引用

 例えば冒頭、モノローグを重ねていく映像詩的表現は、歌い手活動が迷える千紘くんをどんだけ救っていたかを上手く描くし、そうして進みだしたアイドル活動、何に迷っているかを鮮烈に削り出す。
 第6話で描かれ、僕が不足を感じた部分の後出し補充って感じもあったし、思春期のナイーブさを味わうべくこのアニメ見てる自分としては、ここまで生真面目むっつり頼りがいボーイだった千紘くんの、柔らかな内面がたっぷり溢れててシズル感あった。
 やっぱこういう内省的な表現を必要な絵面より優先して、どっしり積み重ねていくことで生まれてくる厚塗りのキャラクター性が僕は好きで、それが取りこぼすものもまぁまぁあるけども、しかし作品独自の筆致は確かな魅力を有していると思う。

 父であり師匠でもある存在を強く意識するあまり、母や弟には告げれた自分の道を伝えることが出来ない。
 丁寧に千紘くんがどんな場所で、どんなメシを誰とどんなふうに食べてるか刻み込む朝食風景は、影の中に置き去りにされた舞扇子と同じように、彼の人格を鮮烈に照らしていく。
 朝ごはんの卵は殻を破れるのに、どうしても曝け出すことが出来ない心の奥。
 それこそがこのエピソードの主題なのだと、何気ない(風を装って、正しく詩的質量を付与された)食卓は良く語っている。

 

画像は”UniteUp!”第7話より引用

 雑誌というメジャーメディアも動かすお披露目を終えて、PROTOSTARはセンセーションの中心に立っている。
 そこで浮かれることなく自分を鍛え、ファンに向き合う姿勢を見せるのはやっぱり五十鈴川千紘! ……って思ってたら、気もそぞろに集中を欠き、仲間に激しく当たる始末。
 前半戦は明良くんが迷ったり悩んだりする立ち位置で、これを牽引する頼れる兄貴分(年下)を頑張ってくれてたわけだけど、話の潮目が変わり明良くんが目指すべき”アイドル”が見えた今、千紘くんも迷ったり悩んだり出来るタイミングが来た。
 僕は”らしさ”にキャラが縛り付けられた不自由で不平等な話は好きじゃなくて、頼もしく引っ張ってくれる人にも弱さや影があるのだ、と描いてくれたほうが楽しく見れるので、ここで千紘くんが思う存分気持ちを出してくれるのは、大変嬉しい。

 彼の地金を引き出す試金石として、日舞という家業、父への感情が今回大事になるわけだが。
 爆烈キュートなロリ千紘くんの、あまりにも純粋なDADDY LOVEを早めに見せておくことで、『パパンもこんな可愛い息子無下には扱わねぇだろうし、優しく手渡してくれた枯れない花束もあるし、あんまヒドイことにはならねぇだろうな……』という安心感が生まれるのは、とても良かった。
 バチバチにエゴぶつけ合う激しさよりも、少しの掛け違いが生真面目だからこそお互いを縛っていく穏やかな難しさのほうが、やっぱこのアニメには向いていると思うしね。
 なので踊りと家族への巨大な純愛で、強烈に殴りつけられる過去シーンはめちゃくちゃ良かったです。
 ここを足場に、この後千紘くんが展開する可愛い身悶えをしっかり受け止められた。

 

 

 

画像は”UniteUp!”第7話より引用

 とうわけで課題の克服に向けてユニットの仲間がプライベートに首を突っ込んできたり、涙ながら本心を伝えたりするわけだが、その足取りはあくまで柔らかく、優しさに満ちている。
 五十鈴川の看板を背負わない自分で勝負したかったから、あえて伝えなかった過去に踏み込まれたときも、拒絶反応強めに仲間を押しのけるというよりは、頃合いや良しと全部預ける運びになるし。
 それを受け取ったPROTOSTARも、一緒に進んできた千紘くんを信じて解決を笑顔で待つ余裕があるしで、追い込まれた感じが全然ない。
 明良くんがここまでの物語で開けっ広げに開陳し、それを手がかりにユニットの距離感が更に縮まった部分を、千紘くんも今回さらけ出してくれている。
 そんな開放感が良い結果を連れてくるだろうと、信頼し期待できる物語がここまで、ちゃんと組まれているのは良いなぁ、と思う。
 知らない同士で始まったPROTOSTARが、知っている仲間になっていく過程を一個ずつ拾い集める手付きが好きだし、その象徴としてお互いの肌を見せる”銭湯”が明良くん(と、彼が所属するsMiLeaプロ)のホームなのは、良い表現だよね。

 

 

 

画像は”UniteUp!”第7話より引用

 今の自分には受け止めてもらえる仲間がいることを、暴走気味な前のめりでしっかり手渡されて、決意一発告げるぜアイカツ!
 って思ってたら、不器用父さんがヌッと突き出した自立への信頼を凶器だと勘違いして、千紘くん泣いちゃった……。
 ここで頑是ない子供のごとく、愛と不安をタレ流しに全部剥き出しにしちゃう純粋さが千紘くんとPROTOSTARの”味”で、あんまりにピュアなその涙……めちゃくちゃ”らしく”て素晴らしい。
 愛していたから怖くて、それでも進みたい道があって、どうすればいいかわからないから泣く。
 薄暗い感情ではなく、とびきり眩しい輝きあらばこそ悩み、苦しみ、それでも伝えていく……という描き方は、たいへん心地良かった。

 千紘くんが感情を爆発させたからこそ、踊り一筋ストイックに生きてきた不器用人間も泣きじゃくる息子に何を手渡すべきか、思い至って手を差し伸べる。
 小器用に対人関係を踊らずとも、真摯な芸事への姿勢は弟子にも伝わっていて、千紘くんはパパのそんな所こそが(泣いちゃうくらい)好きなんだと思う。
 哀しみではなく愛ゆえに泣く、熱く柔らかな心を千紘くんがたっぷり持っていると示し、それを育み見守ってくれるホームがどういう顔をしているかも、このエピソードはちゃんと教えてくれる。
 熱く重い真実を受け止めた後のパパの対応も、それを扉の向こうで見守っている家族の姿も、見ている側の心にグッとくる強さと、善良で前向きな手触りが宿って素晴らしい。
 PROTOSTARが幼い書かれ方をしているので、彼らを見守る家族のドラマがお話の真ん中に入ってきて、ファミリー・ドラマとしての手応えが良いのも、強みの一つだわね。

 

 

画像は”UniteUp!”第7話より引用

 新たな門出の餞に、手渡された桃花の舞扇子。
 それは芸事に修身すると約束したあの時から、父手ずからの筆で綴られたあいだったのだが、師はそれを伝えず、息子はそれを知らなかった。
 PROTOSTARだけじゃなく、五十鈴川親子も愛ゆえの遠慮が壁になって見えなかったものを、溢れる思いでぶっ壊して互いを知っていく構造になってて、ぶつかればこそ見えてくる新しい景色が、結構大事なアニメなんだと再確認。
 色々面倒くさそうな万里くんにも、そういう風に内側に踏み込んでしっかり顔を見るエピソードが待ってるんだろうなぁ……楽しみだ。

 

 というわけで、むっつり生真面目な千紘くんの熱くて柔らかい所、たっぷり味あわせてくれる回でした。
 日舞特有の体の使い方を艶やかに靭やかにアニメートし、パパの人格と合わせて”芸”の良さを削り出していく筆は、ステレオタイプ伝統芸能感から半歩はみ出した表現で、とても良かったと思います。
 厳しさに縛られるわけではなく、愛ゆえに自ら求めていたものを置き去りに、夢に進み出す後ろめたさ。
 千紘くんが優しいからこそ抱えていた重荷を、パパに預けて背負い直し、これまでの自分も舞踊への愛も捨てないまま、自分だけのアイドル道へ進みだしていく。
 青春決意の物語としても、大変爽やかで暖かなエピソードでした。
 次回も楽しみです!