イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

うる星やつら:第20話『失われたモノを求めて』感想

 毎度おなじみカオスなラブコメ、第20話は久々登場の銀河系三人娘を主役に、厄介な後輩たちとのドッタンバッタン大騒ぎである。
 いつもは基本一話2エピソードで回しているこのアニメ、一本繋ぎのサイズ感はなかなか新鮮で、一つのお話、ひとまとめのキャラと長丁場付き合っていく手応えが、なかなか面白かった。
 あたるはおろか地球人がほぼ出て来ないお話で、正直あんま出番がなかった宇宙幼なじみとの関係性をたっぷりと堪能できたし、エイリアンのお話だからこそな絵面が結構出てきて、そういう意味でも新鮮だった。
 まぁ結局は超銀河四畳半の生活感覚に戻っては来るのだが、やっぱ扱うネタが変わると生まれるヴィジュアルが変わり、ドタバタから受ける印象も変化し、繰り返す物語に混沌としているからこその奥行きが追加される……というと、ちと言い過ぎか。
 こうして考えると、宇宙人属性と学生属性と幼なじみ属性、全部兼ね備えて色んな場面に顔出せるランちゃん、隙のないキャラだな……。

 

 

 

画像は”うる星やつら”第20話から引用

 脱皮に保護色に擬死。
 宇宙教育動物番組で、その愉快な生態が取り上げられてそうなエイリアン三人娘の得意技だったり、朝日と夕日が同時に照るギャラクティックな風景だったり、地上に巨大な影を伸ばす不気味な超コンピューターだったり。
 地球要素を削ったからこそ描けるものが今回多くて、スラップスティックSFとしての”うる星やつら”を堪能できる回だったと思う。
 スペーススクーターの出番も多く、普段は目立たないうる星メカデザの良さとかもたっぷり味わえたのは、なかなかいい感じだ。

 ワイワイ騒がしい地球人も規格外の変人揃いなので、あんまその特異性を普段は思い起こさないけども。
 なんだかんだラムは異星の客であり、今回みたいにその異質性とか宇宙規模のスケールが顔を出すと、気づけば景色が変わっているような、戻っているような、心地よい酩酊感みたいのをお話から受け取ることが出来る。
 これが極めて庶民的な友引町の風景に、容赦なく投下されてまた別種の異質性が際立つのも愉快な体験で、ご近所SFの味が濃いエピソードだな、と思った。
 やっぱここら辺のテイスト、藤子・F・不二雄からのラインを感じるよなー……。

 

 

画像は”うる星やつら”第20話から引用

 中学時代の武勇伝も飛び出し、弁天とお雪という同年代の友だちがいる少女としてのラムも、良い角度から切り取られていく。
 僕はあたるがいない所では相当いい性格してるラムが好きなんだが、うっかりミスに文字通り後ろ足で砂かけてごまかしたり、妄想で突っ走った挙げ句電撃で圧力かけたり、ダーリンに見せる病みっぷりとはまた違った、年相応の生っぽい質感が濃かった。
 女同士の気安い関係というより、過去を共有する馴染みだからこその力の抜け方を、どっしり味わえる構成だったのはありがたい。

 常時ダルそうなお雪も含め、無自覚な暴力主義を後輩相手に力強くぶん回し、いい塩梅に翻弄されながらも元気で自由なラムは、”ラブコメヒロイン”という枠をあてがわれているときとはちょっと違った、力みのない表情を見せてくれる。
 様式美に染まった……というより、連載が続いた足取りが様式になったこのお話で、そういうキャラの息吹を感じられる瞬間が、僕は好きである。
 ダーリンとの恋路に全力投球した時の甘く切ない青春感もいいけど、今回のしょーもないドタバタに薫る等身大の少女感は、やっぱり生き生きと瑞々しくて素晴らしい。
 悪友のしょうもなさにさんざん振り回され、じっとり睨みつける視線に宿る質量には、永遠の喧騒を繰り返す優しい箱庭から蒸発していく物語の心音みたいなものが感じられて、とても良いなと思えた。
 ランちゃん贔屓もそうだけど、ラムが”あたるのラム”じゃなくなってる瞬間が好きなんだろうな自分は……。
 あたるに関してはむしろ、普段軽薄な足取りで回避してる”ラムのあたる”に本気で向き合う瞬間、滲むシャイボーイの純情にそういうモンを感じ取るのが、なかなか面白い所である。

 

 というわけで一本どっしり、エイリアン小娘が織りなす奇妙な追いかけっこを堪能させてもらいました。
 こういう変則的な回で、独特な味わいをたっぷり楽しむことが出来るのも、キャラ紹介ノルマがだいたい片付いて状況が落ち着いてきたからこそだよなぁ……。
 『いつもの”うる星”』というフォーマットが固まってきたからこそ、新鮮さを掘り返す試みを力強く受け取れるのは、大変ありがたい。
 次回はどんなお話が紡がれるのか、楽しみですね!