気づけば2クールぶっ続けの狂騒にもそろそろ一休み、前半戦ラスト一個前はファンシーに行くぜ! な、令和うる星第22話。
暴力的大騒ぎが常に暴れ狂ってきたこのアニメだが、今回は幻想的な妖精郷あり、小美人ラムあり、釘宮声の純情子狐あり、いつもと違ったテイストで攻めてきた。
こんだけ変化球だと『こんなの”うる星”じゃね~~!』となりそうな所だが、エピソード全体に漂う可愛げはむしろこの作品の得意コースであり、『これもまた”うる星”……』でまとまってしまう懐の深さを、堪能できる話数になったと思う。
俺はこのお話の可愛い所が好きなので、一旦休憩挟まるこのタイミングで”そこ”に重点したお話が届いてくれるのは、なんだか嬉しかったな。
というわけでまずは第1エピソード、とにもかくにも不思議惑星の美術が良いッ!
『ここでなら、話を転がす不思議便利アイテムが作られてもおかしくないな……』というファンタジー力(ちから)が画面に満ち溢れた仕上がりで、ちっちゃいラムちゃんといつもより素直なダーリンがイチャイチャするお話を、しっかり下支えしてくれた。
何かと『原作通り』を心がけ、そのこだわりが演出幅を狭めている感じもある令和うる星であるけども、今回は画作りから見せ方から、結構独自性あるシャープな描き方が活きていた感じ。
何しろ聖典扱ってるので、料理の仕方に慎重になるのは解るけども、こういう精妙な塩梅で今だからこそのアレンジを加えていくと、原作のパワーもより強くぶん回せんじゃないかな、と思う。
でもアレンジ効かせすぎると期待されてるコースから外れるわけで、メチャクチャバランス難しいだろうなぁ……。
さておきお話の方はいつもの追いかけっこをちょっと変装して、ちっちゃく弱い立場に追い込まれたラムをダーリンが気遣い、裏切りに傷つき、テンちゃんの一喝で愛に気づく展開。
ラムの嘘が信頼を傷つけ二人はフラフラ迷うわけだが、せっかく自分だけに執着してもらえるチャンス、嘘ついてでも堪能したいラムの乙女心がいじましく、やっぱり怖い。
伊達や酔狂で”鬼”ではないというか、ここまでの物語でも暴れていた元祖ヤンデレっぷりは健在というか、結構あたるが可愛そうな展開ではある。
他のキャラやネタに焦点あたっていると、ラムとあたるのすれ違いは手癖で流され、実はあんまりクローズアップされない。
今回はラムが弱者の立ち位置(これが飾りでしかないことは、猫に襲われるピンチを地力でビリビリ解決しているパワフルさで暴かれるけども)に立つことで、にくからず思いつつ素直にはなれず、しかし何もかもが壊れてしまうのには耐えられないあたるの純情と、それを信じたくても信じきれず、嘘の報復に傷ついてこちらも素直になれないラムの絡み合いが、いい具合に描かれていた。
ここを彫り続けると二人は”人間”になってしまって、たどり着くべき決着へ至ってしまうので、なかなかど直球なロマンスを描けないお話が、二人の青年の複雑で甘やかな思いを切り取れる、貴重なタイミングだ。
心地よいドタバタを交えつつ、小さなラムを優しく撫でたり、マジ顔で危機に駆けつけたり、無事解決して安堵に涙したり、戻ってきた腐れ縁に辟易した顔を作ったりするダーリンが、たっぷり見れてよかった。
いつもはラム→あたるのデカい思いばかりが描かれるので、ラム←あたるがそれに釣り合うくらいデカくて、だからこそ宇宙鬼娘はダーリンに夢中なのだ! と納得できる回だったのは大変良い。
特別なロマンスが終わっていつものドタバタに戻った時、ラムが自分を鳥かごに高速するのを許すのが、軽薄なプレイボーイであることを運命づけられている少年ギリギリのデレであり、そらーラムちゃんも満面笑顔だよなー、と思う。
作品をラブコメとして成り立たせている二人の思いが、ファンタジックな面白さたっぷりの『夫婦喧嘩』として描かれているのも、何でもありなこのアニメらしい変奏で、たいへん良い感じだった。
そして第2エピソードは、宇宙人でも霊能力者でもない只のクラスメイトだったはずなのに、気づけば怪物的膂力を手に入れてしまっていた三宅しのぶを真ん中に据えたエピソード。
こちらもキツネくんの描き方が大変良い感じで、ファンシーなマスコットと触れ合うことでしのぶが純情可憐乙女に見えるという、ある種の物語的詐術に全力ブチ込んだお話だった。
ラムとあたるを取り合うライバル……という初期立ち位置はもはや彼方に吹っ飛び、恋とは無縁な立ち位置でガルガル吠えさせられていたしのぶに、人外のロマンスを届けるエピソード……でもあるか。
どっちにしても、しのぶが本来持っていたものを思い出させるような柔らかく暖かく、そして少し不思議なお話でとても良かった。
第7話”住めば都”とちょっと似通ったテイストで、人を化かす妖狐が何の説明もなくひょろっと顔を出して、ドタバタ教室に受け入れられて穏やかに……温泉マークにとっては散々な決着を迎える足取りは、妖精譚としてこのお話らしい落ち着きとぬくもりがあったと思う。
普段の狂乱からは遠い位置にあるように思えて、あの大騒ぎも友引町を包むおおらかな優しさ(”ノリと勢い”の別名)あってこそで、むしろ凄く”うる星”らしい回だな、と思えた。
それはこういうホンワカした可愛げこそ、僕がこのお話に求めているのだという証明かもしれない。
そして余った尺で長めの予告編、前半戦最終エピソードは美人コンテストだッ!
時代錯誤と捉えられないネタを、昭和にはあり得なかったスタイリッシュなリアリティーショー演出で削り直して、長いお話一段落を担当するのに相応しい形に尖らせていく演出、かなり好きだな。
この予告編を受けて本編がどういうテイストで作られるのか、今風アレンジか(倫理観含めて)いつも通りか、読みきれないワクワク感もラストに相応しい。
今回散々純情少年の素顔を見せてたあたるが、いつもの色ボケ悪童なやる気をみなぎらせて次回に引くところも、脳の切り替えを助けてくれてありがたい所か。
色んなことが起きすぎるこのお話、話数ごとの方向性とそれに合わせたキャラの書き方にチューニングし損なうと、結構ノるのが難しいからな……『あ、今回のあたるは””そっち”なんだ』と、納得できるサインがひっそり出てるのは個人的に大事。
ファイナリスト選別の計測基準が”暴”なところに、一抹の不安とたっぷりの期待を込めつつ、どんなドタバタが飛び出すか……楽しみですね!