イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

私の百合はお仕事です!:第4話『大きらいですわ』感想

 キラキラな外装をバックリ割り砕き、瘴気のごとく漏れ出す因縁が語られる。
 『テメーら世間一般がふんわり考えてる”百合”を、虚飾としてボコボコに殴って初めて生まれる玉鋼の刃……抜身のままでぶら下げてやるぜ!』系アニメ、わたゆり第4話である。

 ランドセル背負ってた頃合いから相当に捻くれていた二人の女が、片方あまりに嘘が上手すぎ、片方あまりに嘘がつけなさすぎた結果、生まれた衝突と波紋。
 陽芽と美月の距離感がヤバくなってる根っこがほじくり返されたが、まーどっちにも悪いところしかなく、この体験が傷になって精神が全然成長してない二人の人生、ちょっとでも良くなるビジョンは全然ねぇ!
 嘘っぱちで綺麗に取り繕って好かれようとした体験から、自分を変えて直心で生きるのではなく、より巧い嘘で覆って愛を搾取しようという方向に突っ走った陽芽と、裏切りで膿んだ傷を覆い隠すように頑なさを増した美月。
 『愛されるってのも楽じゃないね……』と、思わず達観したこと呟いて精神の安定を確保したくもなる、ネトネトギトギト因縁地獄でした。
 でもまー、最悪の底には到達出来た感じはあるので、後はアガるだけ! 止まった時計がダイナマイトで爆破されて、チックタックと動き出すだけ! ……でもねーか。
 来週もツラだけキレイな嘘つき共と、人の抱えたままならなさに付き合ってもらう!

 

 つーわけで二人の関係がこじれた理由を、掘り下げていくわけだが。
 嫉妬と独占欲が複雑に絡み合う教室内政治を上手く泳げすぎる女と、全く泳ぐ気がないガチンコ人間が出会い、絆を深めたがゆえに取り返しのないキズを付けあって、人生更に捻くれましたという……なんとも……なんとも……。
 透明感ある夕日の中、ピアノの連弾に持ち込んだらフツー”勝て”そうなもんだが、そういうイマージュドリブンな雰囲気百合は、この本格ジビエ料理店では扱ってないんだよッ!
 何もかも嘘で塗りつぶしてでも愛されたいという陽芽の気持ちと、愛されなくても自分でいたくて、でも寂しい美月の生き様は真逆で、そして愛に飢えている一点では同じで。
 誰にでも良い顔して誰からも愛情貨幣をかっぱごうとした、陽芽の経営方針が破綻するべくして破綻した結果でもあるけど、一回目の失敗は『嘘をついて他人に迎合しても、求めるものは手に入らない』という教訓を彼女に与えていない。
 美月がじっとり薄暗い目でかつて隣りにいた女を睨んでいたのは、その本性を時がどう変えたのか確認したかったからだと思うけど……わりー全然こりてねぇワ!

 周囲が一般的なランドセルを選ぶ中、一人独自のカバンを背負ってる美月とか、周囲の雑音に惑わされて伴奏が出来ない陽芽だとか。
 一見無邪気に思える小学六年生の教室に、じっとり渦を巻いている人間関係の複雑さを、無視するにしても飲み込まれるにしてもそれはあんまりに厄介で、高校生になった少女達にも長く響いている。
 大人が願うほど無邪気でも無垢でもない、薄汚い愛憎と政治が付きまとう教室は特別な最悪というほどでもなく、ごくごく普通にありふれた現世の一部で、だからこそ少女たちが息苦しく溺れるには十分だ。
 答えがわからないまま最悪に終わった小学生時代を、決着させれてないから陽芽も美月も過去に呪われ、成長のない激ヤバ人間のまま再会した結果、周囲の空気はどんよりよどみ続ける。
 さてここに空気穴を開けて、ちったぁ前向きな未来に踏み出すにはどうしたらいいのか!!?
 こいつぁ、素直に飲み下せる味わいじゃぁねぇわな!!
 スッキリしたの食いたけりゃ月島行ってエルフを拝みな!(毎週楽しく拝んでいます)

 

 こういう激ヤバ人間の激ヤバ過去を、嘘と知りつつ女学院コンカフェの演目に夢中な客たちは、全然気にしない。
 金銭媒介にして演じられるサービスである以上、板に乗っかったもんが全てであり、抱えたネトネトはどうでもいいからワクワク楽しめる”百合っぽい何か”を提供してくれよ。
 そういう態度は全く正しいし、仕事でやってる以上それには応えなければいけない。
 でもなぁ……舞台裏にカメラが入っちゃうことで演者が”人間”になっちゃって、その複雑怪奇な事情と感情を消費するスタンスにヤダ味が滲むの、本当に独特ね。

 嘘で塗り硬め他人を蔑する生き方してきた陽芽が、身にまとう外面の良さ。
 他人が求める自分を演じられてしまう資質は、即応力が求められるコンカフェにおいては武器で、でもその嘘っぱちはプライベートでは地獄しか持ってこない。
 んじゃあガチンコ人間である美月が実直で過ごしやすい人生しているかといえば、真っ直ぐすぎて愛されない、悪意ばかりを引き寄せる辛い立場に追い込み追い込まれ、ギスギスグツグツするばかりだ。
 そういうネトネトな中身に、客が望むキラキラな”百合”コーティングして嘘で固め、破綻なく売っぱらう稼業がロクでもなく見えるのは、狙ってるのか意図せずか。
 ここら辺読みきれない手付きの危うさが、実は結構好きだったりする。

 源氏名で芝居を続けるコンカフェ稼業を面に置くことで、バックヤードの大惨事がより際立つ現状、嘘をつくことで何かが生まれうる可能性を、仕事としての百合が示してくれると、また面白くなりそうだが。
 四話まで来て、一応話のメインに居座ってるコンカフェ仕事がどういう価値を持ちうるのか、さっぱり提示されないのは本当にスゴイよね……。
 陽芽が小学校以来ぶん回している外面は、彼女に食っても食っても満たされない、砂糖菓子みたいな愛しかつれてこないし、それで満足しないから延々嘘を積み重ねるループに、彼女も腰までハマってるわけだが。
 そこから脱出する契機を、最悪女との二度目の再会と、嘘まみれのお仕事は連れてきてくれるのか。
 まだまだ百合の花で飾られた、感情の蟻地獄は続くゾっ!!

 

 しっかしまぁ、美月が人間関係軒並み破壊する真実爆弾を投げ込んだ理由が、強がって乾いた心に愛が染み込んだ結果、粘着質の泥が特定個人に張り付いて引き剥がされた結果だと、分かったのは良いことだ。
 いや、その結果なんもかんもが最悪になったのは良くはねぇけど、コイツラのカルマはそういう所に行き着くしか無いんだよッ!(犯罪モノでよく聞くタイプの擁護)
 どんだけ最悪の暴発でも根っこには愛への渇望があり、愛があるなら全てが許されるわけでもない。
 好きだったのに裏切られ、裏切られてなおどこかで繋がりを求める、寂しがり屋の孤立主義者。
 くっそ面倒くさい美月の地金が、ようやく見えてきたのはグッドだ。
 グッドなの!!
 もーここまでこじれちゃったら、どん底まで沈むところからスタートでしょうがッ!!
 四話使ってまだ、始まってすらいねぇんだよこのお話!

 ネトネト生臭い人間関係の荒波から、大事な友だちを守るべき重ねた嘘が、自分だけの本当を裏切って傷を残す。
 そういう体験を経てなお、誰かに何かを求める希望を捨てきれてない少女たちの日々は、グツグツ煮立った舞台裏に関係なく、華麗に踊り続ける。
 虚栄の舞台につま先立ちでしがみつく行為が、はたして何を教え何を生み出すのか。
 むしろグラリと揺れて激情に身を投げてしまったほうが、何かが動き出す可能性は高いのではないか。
 悟れねぇ正しねぇ強くも優しくもなれねぇ愚物どもが織りなす、キラキラ青春生き直しストーリーはまだただ続く。
 次回も楽しみですね!