悪役との決着も付いて、拾った赤子を親元に返す算段もついた……ならプリキュア人助けだッ! という、ノー暴力なひろプリ第13話である。
固形物食うようになったり感情表現が豊かになったり、自分の足で立って歩きだしたり。
一日一日……いやさ一分一秒成長するエルちゃんを、親御さんから遠ざけて過ごす日々には色々気がかりもあったので、このタイミングでサクッと門が開くのは丁度いいと思う。
あげはさんも変身してないし、どーせクソ帝国の最悪介入でプリキュア育児が続行だろうしなッ!(最悪なメタ読み)
いや実際、虚無から湧き出した血縁なき赤子ではなく明瞭に父母が泣きながら帰りを待ってるエルちゃんを、どう手元に置き続けるのかは気になってんのよね。
異世界人共ともお別れムード満載で、第1クールの折り返しを迎えそうな感じであるけども、小さい足で前に進み出すエルちゃんと、13話分の思い出を抱えて健気に笑顔を作るソラましと、孫との別れに足踏みする知らないおばあさんと、三者三様の”一歩”が戦闘のない穏やかなエピソードと、歩調を合わせているのは凄く良かった。
あげは姐さんが成人の度量でもって、泣かない少女たちの泣けない悲しみをしっかり見つめつつ、違う立場ながら同じ気持ちで”一歩”に向き合ってる人生の先輩の翼となることで、ようやく泣けるソラちゃんとましろちゃん。
バトルがないからこそ彫り込める穏やかで切実な熱が、じんわりとエピソード全体に漂って、別れを前に彼女たちが胸に抱く思いを丁寧に浮かび上がらせていた。
年が近いから、同じ屋根の下で暮らしてきたから心が通じるわけではなく、偶然行き合ったお婆さんにこそ想いを寄せて、戦いから離れた形で彼女たちなりのヒロイズムを体現していったのも、とても良い切り口だと思う。
見ず知らずの人の親切をそのまま受け取って終わるのではなく、延々悩んで自分の足で探し回って、事情を聞き届けて特別な力を決断の翼に変えていく。
そこに結構な手数がかかっている……手数をかけれる、バトルなし回の強みを活かす構成なのが、笑ってお別れするべく涙をせき止めていた少女たちが、手をつないで静かに泣けるまでの歩みとして、とても良いテンポで描かれていた。
自分たちが翼となることで、共に過ごしたからこその哀しみ(と釣り合い、あるいはそれ以上に花咲く喜び)から逃げようとしていたお婆さんは、自分の大事なものと向き合えた。
それを鏡に、ソラちゃんましろちゃんが必死に押し留めていた本心と出会い直す時、心情は言葉では語られない。
しかしここまで1クール、エルちゃんをかすがいに豊かに紡いできた出会いと笑顔の日々と、この話数でここに至るまで描かれた彼女たちの健気さ、張り詰めた思いを足場にすることで、語らぬからこそ豊かに届くものが、あの涙には宿っている。
笑顔で靴を譲るヒロイズムの奥、秘めた心の揺れに気づくのがましろちゃんで、駆け出すのがソラちゃんなの、ヒーローユニットとしての二人の人格と役割分担が日常に滲んでいて、とても好きだ。
同時にソラちゃんが浮かれた気持ちを鎮めて、自分がヒロイズムだと思ったものの奥に何があるか、見据え考え動き出す道を選ぶこと……その隣に虹ヶ丘ましろが並び立つのが、彼女たちの”今”なんだな、という感じが強くした。
心躍らせる正義の行いを、あえて立ち止まって考え直し、見えてくるものに対して歩みを進めていく。
優しさや正しさにしっかり繋がった、生きた賢さを彼女たちはちゃんと持っていて、それが少女たちを未来へと突き動かしていく。
そしてそんな歩みは、今まさにファーストシューズを手渡されて、自分の足で自分だけの人生を進んでいく一歩目を刻んだ、エルちゃんに継がれていくものだろう。
ツバサくんのダディもそうだけど、年長者から若人へと尊いものが手渡しされていって、それが彼ら自身の人生を彼ららしく進んでいく翼になっていく描写が多いのは、ひろプリの好きな所だ。
というわけで離別本番に向け、たいへんいい感じに”一歩”を描く回でした。
カバトン退場で後続がいないタイミング、ノーバトルで穏やかに展開しましたが……良いなこれ、凄く良い。
プリキュアの力を使ってお話が描きたい正しさが、必ずしも戦闘に繋がっていない優しさを示す意味でも、新しい物語の形を提示する意味でも、新鮮な喜びがある回でした。
同時にこのままご両親にエルちゃんを預け異世界人は故郷に戻り、、あげは姐さんが変身しないまま話が落ち着いちゃいそうな気配もありますが……女と女が夜着にて語り合うための美しい夜景と、押し殺した喜びと哀しみを涙に溶かし手を握る一瞬を描いて、ここで終わるわけがねぇんだよなぁ……。
ソラちゃんの過去がスカイランドを舞台に掘り下げられ、どんな物語が広がっていくのか。
次回も大変楽しみです。