イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Dr.STONE NEW WORLD:第9話『美しい科学』感想

 可愛いは作れる!
 どっかで聞いたキャッチフレーズも、命がけの石器時代サバイバルにおいては切実な目標となる。
 悪の居城に裏口から忍び込むべく、ラボを盗んで化粧を施せ!
 そんな感じのドクストアニメ三期、第9話である。

 

 ”やるときゃやる男”銀狼が期待通りの燃え上がり方を見せ、無事千空チームは移動ラボを奪還。
 潜入作戦のための化粧品をザックザックと作り上げて、粗暴に怯懦とクセありまくりな連中をなんとか鉄火場に送り込んで、さて本命をごろうじろ……という所まで。
 僕はクールガイがホットになっちまう瞬間と同じくらい、臆病者が最後の一線に踵を乗せた所から立ち上がっていく場面が好きなので、銀狼が根性出す場面は大変好きだ。

 小さなハラハラ感をちゃんと作って、スペクタクルを常時用意し停滞させない作風を鑑みても、銀狼が期待通り”やる”かどうかは見どころであり、構えた所にきっちり投げ込むこのお話らしさが、良く生きた展開だと言える。
 実力も性根も良く仕上がった連中が、全力を尽くして結果を作りに行くお話も面白いものだが、”やる”のか”やらない”のか、ハラハラさせられるキャラクターが奮戦するのもまた面白いもので、生き残りに銀狼がいるのは作劇上結構大事なのだな、と感じた。
 『ナメてんじゃねぇ……俺の声帯はプリキュアだぞ!』と吠え(吠えていません)、バッチリ女装もキメて、さらに危険度が上がる後宮潜入……どんだけヘタレが輝くか、楽しみである。

 

 生活に密着したアレソレをゼロから作り上げ活躍させることで、現代文明を下支えする科学の凄さを視聴者に実感させる語り口も、”化粧”という切り口で今回元気だ。
 何気なく、意識せず、当たり前に消費している物品が贅沢品通り越して”妖術”になってしまっているストーンワールド、科学文明のありがたみを際立たせるにはうって付きのキャンバスと言える。
 悪臭を放ちながら爆走する移動ラボを、異形の怪物としか認識できない宝島の科学リテラシーは、蘇生者ベースで組み上げられていた司帝国相手のときとはまた別の角度から、科学王国の強みを際立たせている感じがあって、なかなかに面白い。
 莫大な知識の蓄積がリセットされ、千空が乗っかっている巨人の肩が覆い隠されると、生み出されるものは全部魔法にしか見えなくなるのだなぁ……。
 これを独占・隠蔽して支配体制を確立するのではなく、公開・活用して幸福効率を最大化したのは、何度も言うけど千空の一番凄いところだと思う。
 やっぱ科学チートというより、科学倫理チートなお話よね。

 一発逆転の超兵器造ってるわけではないので、軽いクスグリも交えつつ完成していく美の科学。
 これに支えられて外見は化けつつも、中身の方までは変えられない。
 いろいろギクシャク凸凹しつつ、なんとか潜入大成功であるけども、敵の幹部は癖強実力者ばっかりでどうなることやら……つう状況である。
 イバラのどす黒い執念は前回から引き続きだけど、享楽主義者で実力者なモズの素顔も、コハクちゃんの鬼気に当てられる形でモリッと表に出てきた。
 伸るか反るかのハラハラ感は、挑むべき試練が強大であるほどに盛り上がるわけで、やっぱこういう所でしっかりハッタリ効かすのは大事だ。
 現地協力者となったアマリリスの強かな覚悟も良く描かれて、こっから状況がどう回っていくのか、期待を煽るいい座組だと思う。

 

 このお話物品制作だけじゃなくて、物語全体においてもロードマップをしっかり描く。
 人類石化の謎を解くため、石化解除の触媒となるプラチナを求めて宝島に来て、不意打ちの石化でそれが果たせなくなったのでラボを奪還し化粧品を作って、敵中枢にスパイを送り込んだ。
 目的を明確にして、一つ一つの場面を次の目標に繋げていく語り口が、主役たちが今挑んでいる戦いの意味をぼんやりさせず、視聴者に教える。
 潜入チームは無事情報収集・後方撹乱ミッションの入り口に立ったので、残された千空達は敵の主力兵器を無効化するための秘策を練る。

 何かを作り上げることで何かが成し遂げられ、それを果たせばより大きな目標に手が届く。
 クラフト感満載の手応えがメタ領域にもしっかりあることが、作品独自の面白さに繋がっている感じだ。
 そんな物語の中核にいる天才科学者が、数の上では圧倒的に不利なこの情勢を覆すべく、思いついた作戦は何か。
 まだまだ続く宝島の戦い、次回も大変楽しみですね!