イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

蒼穹のファフナー THE BEYOND:第1話『蒼穹作戦』感想

 蒼い地獄が帰ってきたぞ!
 ファフナーシリーズ完結作、劇場での上映より数年を経てのTV放送である。
 自分はEXODUSの真ん中あたりで、あまりに凄惨に若き命(と若くもないが必死に生きている沢山の人達)が散っていく展開に心がペッキリ折れて、辛すぎて離脱した視聴者でございます。
 シリーズ自体は好きなので地上波放送を契機に遅ればせながら挑みかかったわけですが……全然わかんないッピ!
 orange謹製の超かっけぇロボが激戦を繰り広げているのは解るけども、戦っている相手が一体誰で、社会情勢はどうなってて、龍宮島のみんなはどんな感じで、あの戦いの帰結が世界情勢をどう揺るがしているのか……全然わかんないッピ!
 これはどれだけ巨大な力を振るっていても世界全体を見通すことも、動かすこともあまりに難しいあの世界のリアリティを、一兵士たちから見える視点を書き続けることで見てる側に初手からシンクロさせる、意図した見えにくさ、息苦しさかな……とは思った。

 色んな人が幸せを望んで、その欠片を日々の中必死に紡いで、それでも無惨に砕かれ踏みにじられていくお話だってのは、一応途中まで付き合って、その痛みに耐えかねて離脱した身分としては、なんとなくだけど解っているつもりです。
 皆自分の手の届く範囲、目の見える範疇で最善を尽くしているのだけども、フェストムという異質生命の襲来で大きく変化……あるいは暴力的に真実を引っ剥がされた人間の世界はあまりに複雑で残酷で、一人間に出来ることなどあまりに少ない。
 そんな現在地を27分ギチギチに叩きつけて、残りの話数でどう広げ、長いシリーズの中で気づけば当たり前になってしまっていたものを壊し、あるいはその残骸の中から輝く価値を見出し、出口の見えない戦いのその先(THE BEYOND)を追う話にするための、見通しの悪い第一話……なんかなぁ?

 

 覚悟ガンギマリの青年戦士たちの勇壮な戦いは、各機体ごとに凄くスタイリッシュで力強い書き方をされてて、素直に血湧き肉躍……った後、僕はもうめちゃくちゃにしょんぼりしてしまった。
 アガるバトルシーケンスの奥には命を削ってファフナーに乗る悲壮があり、生きて帰って当たり前の幸せに浸る願いがあり、ガキどもがなんとか生き延びてちょっとずつおとなになり、生きる意味とか愛の実感とかを学び取りながら続く明日が、確かにある。
 あるはずなのに、目の前の激しい戦いは凄くあっけなくそういうものを砕いてしまうもので、それでもその残酷さが自分たちの大事な人に及ばないよう、青年たちは揺るがぬ魂で戦い続けている。
 物語が始まった時点でそういう話であるし、進むに連れてその残酷さはより苛烈さを増していったのだけども、それでも新たに、とても格好いい表現で”ファフナー”に出会い直すと、興奮よりも悲哀が腹の底から湧いた。

 もう、いいだろう。
 それは外野の寝言であり、戦わなけりゃ自分のかわりに大事な誰かが戦って死んでいく世界なんだから、死ぬより辛い後悔噛みしめるよりは、自分の命を天秤に載せたほうがマシ。
 そうするしかない宿命に文句もいわず、心と体を引き裂かれながら戦い続けている青年たちはとても立派で、勇壮で、痛ましく観ていられなかった。
 もうフェンリルは見とうないんじゃ……死んで咲く花実はないんじゃ!!
 ここら辺、EXODUS放送から八年分老いた僕の、脆くなった部分に直撃した感じもある。
 同時にこのお話はロボットが戦う場面をとにかくそういう痛みを込めて描いてきたわけで、こういう感覚は作品に漂う空気を上手く吸えてる結果なのかな、と思ったりもする。

 

 お話は”ソウシ”と呼ばれる少年を奪還するべく、アルヴィスの戦士たちが第五次蒼穹作戦を敢行し、激闘の果てに作戦目的を果たせず美羽ちゃんが涙を流す展開。
 『なんで美羽ちゃんがファフナー乗ってんだよ!』とか『あの喜安さんの声帯を持ったボーヤはなんなの?』とか、『結局誰が悪くて誰殴ればいいの?』とか、気になるポイントは山盛りであったけども、美羽ちゃんがザインに乗りつつ非情な戦士にはなりきれない、柔らかな弱さを持ち続けていることはわかった。
 多分抑えるべきポイントはここで、絶滅戦争ではなく対話を通じた闘争終了を目指す人達にとって彼女は最後の希望であり、そういう子が殺すのではなく叫び願う戦い方を諦めていない(諦められない)ことに、大きな意味があるのだろう。
 彼女がザインに乗ってしまっている現状が、フェストムとの終わりない戦い、それによりむき出しの自然状態に投げ捨てられてしまった人間と人間の闘争が、全く終わっていない事実を突きつけてもくるけども。
 この乗り越えられないカルマをなお超えて、凄惨で壮大で血の通った長い戦いを決着まで連れて行くのが、THE BEYONDの歩みになっていく……んだと思う。
 なら、叫ぶほどに想いを寄せている相手を撃てなかったのは弱さではなく希望なのだろう。

 今回戦っていた相手がどんな輩なのか、なんで”ソウシ”をさらう必要があったのかとかはさっぱり分からんけども、まぁここら辺はおいおい説明があるだろう……。
 EXODUS最後まで見れていないので、人類との対話を試みるフェストゥム、人間の感情の負の部分を学習したフェストゥムフェストゥムとの対話を願う人間の勢力図がどんな感じになって、双方の意識がどう変化してるのか解んねぇからな。
 弓子さんの顔したフェストゥムクロッシングシステムを通じて色々悪さしていたけども、敵も力を増す中でアルヴィスも強くなるしかなく、それは色んな人の寿命と魂を削る道でもあり、血を吐きながら続けるマラソンの行方は……といった感じ。
 つーかなんで皆城くんがショタになってんだよッ!
 色んな人がコピーされたり転生したりするお話なんで、EXODUSで色々あった結果こうなってるんだとは思うけども、そこらへんの真相とか”ソウシ”の扱いや意思含めて、見えてくるのはまだ先かな~。。
 この訳わかんなさは不快な先の見えなさというより、勢いよく疾走するジェットコースターに乗ってる感じに近いので、次回どんな揺らし方をして何を見せてくれるのか、大変楽しみだ。

 というわけで半端モンのファフナー再履修計画、始動であります。
 次回も楽しみッ!!