イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

うる星やつら:第34話『校長殴打事件/秘密の花園/涙の家庭訪問 地獄の諸星家編』感想

 可能世界を股にかけて、未来を見つめるエモい旅も一段落。
 気分も新たに冒頭にあらすじをお出しし、大変にロクでもないお話でラッシュを仕掛けてくる、令和うる星第34話である。

 ここ最近情感の濃い、筋道の立ったお話が続いてきた流れをぶった切るように、『あー……コイツラそう言えば、相当なロクデナシでもあったな……』と思い出せるエピソードが、ゴロリと飛び出してきた。
 このしょうもなさ(第2エピソードの投げっぱなし加減含む)もまた”うる星”の味であり、特に理由もなく襲いかかるメガバイオレンスっぷりとか、スキマ時間に蓄積されてきた家庭訪問エピでの温泉マーク虐待っぷりとか、いやまぁなかなかにヒドい。
 先週まで未来の扉を開けて自分たちの可能性を観測したり、幽霊少女と真夏のデートを繰り広げていた連中と同一人物とは思えないが、まー演目の雰囲気に合わせて結構キャラ変わるからな、このお話……。
 そういうフラフラ感も芸幅と、チャーミングに受け入れさせてしまえる腕力が強みでもあって、いい話が続いたからこそここで一発荒れ球投げ込んでくる組み立ては、アンソロジーとしての令和うる星がどういう印象を編み上げたいのか、探る手助けにもなって面白い。
 やっぱどの話数をどの順番で板に乗せていくのか、セットリストから編者の意思を読み取るのが俺的には面白いんだよな、令和うる星。

 

 お話の方は校長気絶の裏側を探るミステリ仕立て……と思いきや、温泉マークを限界まで追い込んで虚偽自白を引っ張り出して終わる、大変蛮性の高いオチ。
 ノリと勢いでガンガン人間追い詰めていく、うる星メンバーのヤバい所が全力で暴れまわる話であり、激詰めされた温泉マークの顔面芸と合わせて、なかなか心地よいろくでもなさであった。
 表向きの被害者である校長はノンキに危機を乗り越え、秩序の体現者なはずの担任が一番ひどい目に合わされるという、トボケて逆立ちした展開がなかなかに面白い。
 つーかアクが強すぎる面々と並ぶと、極めて好い人である校長はけっこう『どうでもいい人』にもなってしまって、なかなかキャラの味付けは難しいな……と思わされる。

 話の軸足が久々に友引高校に戻り、ドタバタ騒がしい高校生活がどんなものだったか、改めて掘り下げる……にしては、色んな意味で治安最悪のエピソードでもある。
 罰則貰うだけの大暴れを確かにしているのに、不服の牙を突き立ててさらなるメチャクチャに踏み出す学生連中も、そんな輩に負けじとヤバめな偏見投げつけて、迷推理で更に場を混乱させる温泉マークも、まぁ大概な人間ではある。
 令和のコンプライアンス意識だと、一部女生徒に教師が投げかけてはいけない妄念がモリッと表に出ていたが、そういう不謹慎も引っくるめて楽しめるのが”うる星”の良いところではあって、心地よいロクでもなさだった。
 高橋先生、『迫られて椿の花が畳にポトリ……』的な表現好きよねぇ……後続作でも良く出てくるので、時代を経てある種の風物にまで昇華された感じがある。

 

 Bパートは宇宙由来の超ろくでなしアイテムが大暴れして、あらゆる場所がメチャクチャになっていくお話。
 宇宙人組がまーったく友引町の大混乱を知らぬ存ぜぬ、自分たちの見える範囲でお片付けして一件落着……みてーな面して、なーんも解決しないままドササーっと終わっていくのが、勢い良くてナイスだった。
 投げっぱなしのナンセンスを巧く使えているのが、コメディとしての高橋作品の強みだと思っているが、今回のすっとぼけた展開はそういう味わいが、濃く出ていたのではないかと思う。
 それにしたってアイツラ、マジで人間どもに引き起こした混乱欠片も興味なくて、久々に宇宙人らしさを感じたよ……。

 地上の大惨事をよそに、幼馴染コンビは仲良くキャッキャウフフしており、ラムラン大好き人間としては喜べば良いものか、ロクでもなさを嘆けば良いのか、なかなか判断に迷いもした。
 妙にテンちゃんがプニプニしててかわいいのも含めて、ランちゃん周辺の過剰なブリっ子イズムが大量摂取できる回でもあって、どんだけヒドいことが起きててもランちゃんのそういう部分を、口にねじ込まれると幸せになってしまう自分の業を感じる。
 何しろ人数が多いので、どのキャラに出番が回るかも難しい座組なのだが、こうして日当たりいいところに出てくるとやっぱ大変可愛く、ラムと仲良くワーワーやってて嬉しかった。
 ランちゃんは単独でも良いけど、やっぱラム相手に仲良し悪友っぷりを見せつけてるのが最高なんだよなぁ……20年早かったきらら時空。

 今回は混乱をもたらすタネが、ヤバイ発言を切り貼りして増殖する宇宙植物であり、MADテープ文化のような面白さもあった。
 あの頃はスーパーオタク共の密やかな楽しみだったものが、時の流れとともに結構一般的なネタになり、あるいは色んな具材をぶち込まれて悪魔進化を果たしている様子を見ると、やはり先駆者としての凄みを改めて感じてしまう。
 淫夢だの猫ミームだの、このエピソードでコスられた面白さを継承・変化させたネタは全然現役で元気であり、というかオタク文化の一般化に乗っかってよりデカくもなっている。
 ある種のタイムカプセルとして、過去から今を立体視する助けになるのは、やっぱこの作品が内側に取り込みエピソードへと消化した、当時のポップカルチャーへの視線が別格に鋭かったからこそかなと思う。
 あんまモダナイズせず当時の味わいを大事にしていることで、結果としてコンテンポラリーな味が出ているのは面白いところだ。

 

 というわけで、久々に”うる星”の不謹慎で暴力的な所がゴリゴリ前に出る回でした。
 いやー……久々に飲み干すと、これもなかなか良いなッ!
 こっからどういうコースを組み立てて、令和うる星最後の1クールを味あわせてくれるのか。
 そこら辺の腕前にも期待しつつ、次週を楽しく待ちたいと思います!