イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

わんだふるぷりきゅあ!:第8話『まゆのドキドキ新学期』感想

 リアルよりひと足早く、アニマルタウンは新学期!
 新たな学校、新たな友達に馴染めるか不安な猫屋敷まゆ、勝負の転校デビューやいかに!? という、わんぷり第8話である。
 毎度のことながら、大変良かった。

 

 

 

 

画像は”わんだふるぷりきゅあ!”第8話より引用

 猫屋敷まゆの物語としての今回は、自分の外側へ開けていく窓に背を向け、暗い場所で事前準備の鎧ばかり固めているところから始まる。
 考えすぎで大失敗! …と自分では思ってしまう自己紹介が、いろはちゃんの助け舟で上手く落着し、眩しい場所と暗い場所の間を繋ぐ渡り廊下でしばらく迷った後、”姉”であるユキが開いてくれた窓から燦然と輝く夕日を見るまでの、小さな冒険のエピソードである。
 私服で過ごす春休みの間に、プリキュアとして闘う非日常に首を突っ込んだいろはちゃんとは毛色が違うが、こういうありふれて難しい等身大の戦いをすごく大事に描いてくれるのがわんぷりの良さだと思うので、なかなか上手く生きれない猫屋敷まゆが『学校面白かった、行ってよかった!』と思えるまでの旅を、丁寧に描いてくれたのは嬉しい。
 これが完全に現実と季節をシンクロさせず、もしかしたら数週間後の初登校や環境の変化にナーバスになってるかも知れないメイン視聴者の、未来への予防接種としてちょい早めに、まゆちゃん等身大の頑張りを描いてくれていたのが、誰に向けて作品を作っているのか、強いエールを勝手に感じてジンと来た。

 いろはちゃんは非常に幼いこむぎを受け止め導く立ち位置なので、既に人間力が分厚く適切なコミュニケーションをズバズバ手渡せる。
 何しろ変身後の決め台詞からして『あなたの声を聞かせて!』なわけで、眼の前の相手のやりたいことを傾聴し、自分の出来ること、するべきことを見定めて適切な補助を行うことが、人格の一部として既に仕上がっている少女だ。
 対して猫屋敷まゆは過剰に失敗を恐れ、事前準備で自分を雁字搦めにして、頭の中で膨らませた恐怖に縛られてしまう、コミュニケーションが下手くそな……いろはちゃんのようにスーパーな存在ではない当たり前の女の子として、ずっと描かれている。
 出来ないことがあるとはつまり、出来るようになる余白をたくさん残しているということで、人見知りがはげしいまゆちゃんがいろはちゃんと出会い、新たな環境で変わっていける物語には、独自の活力が宿っていくだろう。
 その一歩目として、ブルブル考えすぎて震えてるところから始まり、自分に親切にしてくれるいろはが”自分にだけ”優しいわけではないと見て一歩引きそうになってしまったり、その後退をガッチリ捕まえられて新しい学校の楽しいところを教えてもらったりする。
 自分に欠けているものを友達に助けてもらう体験を経て、見知らぬ怖い場所だった学校は楽しいかも知れない場所に変わっていって、ありふれた怯えと憂鬱は晴れやかに吹き飛んでいく。
 その小さな、でも大事な一歩がすごく丁寧に描かれていたのが、とても良かった。

 

 『人間万事塞翁が馬』を、好きな言葉として先生が上げているのが、僕は凄く良いなと思った。
 それは目の前に立ち現れてくる幸と不幸を、頭の中で簡単にジャッジせず身一つで飛び込んで噛みしめる、勇気が必要な態度だ。
 物語が始まった時、自己紹介の文面を幾度もこねくり回しているまゆに、思い通りに行かない現実を楽しむ余裕はない。
 既に傷ついている体験から過剰に怯え、それに縛られて実際”失敗”してしまうわけだが、偶然と運命が事前に結びつけておいてくれたいろはとの縁が、動物大好きなクラスに受けが良い話題を引っ張り出して、ファースト・コンタクトは良い方向へと転がっていく。
 まゆ一人だったら確かに最悪のデビューになっていたかも知れないが、彼女がシコシコ手作りのハーネスを作り、友情の証として手渡した過去が、ちょっとコケてもそれを好機に変えてしまえる、明るく元気な女の子の助け舟を呼び込んだ。
 ここまで8話、いろはとの出会いを無下にしなかったことが、あんなに怯えていた新たな出会いに傷つくのではなく、明るく楽しい場所として学校を受け取れる足場を、まゆに作っていたのだ。
 いろはの分厚い人間力はマジ凄いんだが、まゆちゃんなりに不器用ながら新しい街、新しい友達と親しくなろう、不安と戦おうと頑張ってきたことが、今回の”塞翁が馬”に繋がっているのが、僕には凄く嬉しかった。

 前々回こむぎの身勝手を受け止めきれない、ティーンエイジャーとして当然の(喜ばしくすらある)未熟をみせたいろはちゃんだが、今回はバキバキに仕上がったコミュニケーション筋をフル動員し、クラスの中心として光り輝く姿を見せつけていた。
 新学期が始まり、クラスという社会が初めてスケッチされたことで、そこにおいて犬飼いろはがどういう人物であるか……太陽のように眩しい犬飼さんに、悟くんがどんだけ参っちまってるかが良く見えて、新鮮な喜びがあった。
 あんな素敵ガール……そらー瞳奪われ、心高鳴っちまうよなぁ……。
 こむぎと向き合う時とはまた違った、引っ込み思案なクラスメイトをグイグイ開けた場所へ引っ張っていく犬飼さんが見れたことで、彼女をもっと好きになれたのは大変良かった。
 いろはが前に出てまゆが手を引っ張られるこの初期配置から、プリキュアとしての非日常の戦い、学校生活や放課後を共に過ごす日常を経て関係が深まれば、色んな善さや強さが形になって、関係も変わっていくだろう。
 一年アニメの醍醐味とも言えるそんな変化を、最大限堪能するには”今”猫屋敷まゆがどんな少女であるかがちゃんと描かれているのが大事だと思うので、そこをしっかり、影も光もどっしり削り出してくれたのは、大変良かったです。

 

 まゆの小さな奮戦記と並走する形で、とにかくいろはと一緒にいたい犬飼こむぎの大暴走も、明るくコミカルに突っ走っておりました。
 ハチャメチャ元気で明るい幼めの語り口が、まゆのお話に伸びている思春期特有の陰りと面白い対比をなしており、良い感じのメリハリが付いたのは良かった。
 ブレーキのぶっ壊れた感情機関車として、バリバリ突っ走り続けるのが”獣”の定めって感じもあり、幼いからこそ怖い物知らずで街駆け抜け、あっちにフラフラこっちにフラフラノンキに生きている様子は、それよりちょっとオトナだからこそ難しいまゆの様子を照らす、良い鏡にもなっていた。
 更に言うと次回犬飼こむぎ制服着込んで学校にGO! なので、その前奏としてもスーパーハッピー元気印、とにかくいろはと一緒にいたいワン! な様子がよく見えて、良い滑走路になってたと思います。
 人生の難しいところに直面していないときの犬飼こむぎは、マジで元気の塊で恐れるものなし、純粋さと力強さの象徴でいてくれていて、見てて凄く元気貰えるんだよな……。
 ありがたい……(アニマルタウンの方角へ、合掌礼拝)

 そんな暴走超特急とわんにゃん大戦争を繰り広げた猫屋敷ユキも、うにゃうにゃスーパーチャーミングな様子をたっぷり見せてくれて最高だった。
 はー可愛い……本当に可愛い。
 色々精神不安定な”妹”が、自分をもみくちゃに安らぎを得ようとするのを『ったくしょーがねーなーコイツはよー……』という顔でされるがままにしてたり、そんなまゆちゃんが明るい顔で幸せを報告してくるのを聞き届け、『見ろよ……お前の未来だぜ……』とばかりに夕焼けの窓辺へ導いていくの、あまりに”姉”で良すぎた。
 姉妹ってのは血縁でも年齢でも種族でもなく『生き様と心意気』なので、ひとつ屋根の下共に暮らす2×2を主役に据えたことでそういうトコロにビシッと切り込めているわんぷり、かなり新しいプリキュアな感じがある。
 姉妹キュアって案外いねーからな……”ふたり”をこういう角度から削り出していくのも、わんぷり特有の新機軸な気がしている。

 実際、どーも過去の失敗に傷ついている匂いがあるまゆちゃんが、それでもユキが大好きだからなんとか人生戦えている描写、猫屋敷の少女たちの繋がりの描き方としてめっちゃ好きなんよな……。
 傍から見りゃちっぽけで下らない事かもしれないけど、まゆちゃんにとって社会の中で上手く振る舞えない自分、傷つけてくる世界との向き合い方は命懸けの戦いで、自由で優しいユキに体重預けることで、ギリギリ戦えている部分も大きいじゃない。
 ユキもユキなりに、そういう立場にいる自分を悪くないと感じてるからこそ、時折猫パンチぶち込みつつ手のかかる”妹”の、心の支えになってやってるわけで。
 人とか猫とか横に置いて、誰かと誰かがそういう繋がり方をしているってのは大いに意味ある営為だと思うし、そんな繋がりが色んな出会いによって広がって、見知らぬ同士が友だちになれるかもって可能性も、今後描いていくわけでね。
 そういう作品が豊かに広がるキャンバスが、なかなか良い感じだと教えてくれる回だったと思います。
 めっちゃ良かったです。

 

 というわけで、猫屋敷まゆ等身大のデビュー戦でした。
 僕はプリキュアが住まう街がどっかぶっ飛んでてファンタジックな所が好きなので、『どう考えても学校レベルじゃねぇだろ……』という飼育施設に、色んな動物が暮らしている様子とか最高でした。
 やっぱメインテーマに選んだネタならね、あんくらいぶっ飛ばしたスケールで扱って欲しいわけよ。
 ガルガル出た時、ハリネズミは丸まり兎はスタンピングして、種族によって対応が様々であると描かれていたのも、細かいけど良いところだったな……。
 毎回色んなガルガル出てきて、その生態を契機に浄化が行われるの、自然な生き物教育要素で好きだぜ、わんぷり。

 色々出来ないことも多いけど、だからこそ自分なり必死に頑張る等身大の成長物語の二歩目を、猫屋敷まゆがどう踏み出したか。
 学校という舞台をわんぷりがどう活かしていくか、そのテストケースとしても大変良い話数でした。
 この青春の園に、ブレーキぶっ壊れた純情まっしぐらが飛び込んでくるわけだが……一体全体どうなることやら。
 犬飼こむぎ制服デビュー、ワクワクと次回を待ちたいです!