イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ラーメン赤猫:第11話『あやふやな記憶の話/ねこによる/とくいな仕事』感想ツイートまとめ

 小さな体を震わせていた子猫も、時とともに一国一城の主となり、新たな夢を仲間と育んでいく。
 『猫に歴史あり』を強く感じさせる、子猫次代の文蔵くん達と、赤猫に迷い込んだ子猫と、現在絶賛修行中な虎を描くラーメン赤猫第11話である。

 

 今や一端の親方である文蔵くんにももちろん子猫時代があり、そこでの出会いによって今の彼が形作られている。
 佐々木さんに遺産を残して去っていった資産家存命の横顔と合わせて、若者を守り導く側になった頼れる猫たちの、原点を描いた第1エピソードのキレが良い。
 ここから迷い込んだ子猫を猫っ可愛がりするでなく、適正距離を保ちつつ庇護する第2エピソードへと繋がっていく。

 今回のお話は前回秘められた過去を明かし、普段は軽妙に乗りこなしている感情をむき出しに素顔を見せたハナちゃんの、頼りがいが輝くエピソードでもある。
 どんなに頼もしく思える猫でもそれぞれいろんな過去があり、傷ついたり弱々しかったりするむき出しの魂を、それぞれのスタイルで囲って社会生活を営んでいる。
 座っていれば愛される猫界において、働く猫はマイノリティであり、つまり普通ではいられなかった”何か”が過去にあればこそ、赤猫で働く道を選んでいる。
 偶然同じ場所に集ったように見えて、その実奇妙な縁と出会いで繋がり、程よい距離でお互いを…あるいは自分の中の過去と未来に向き合い、進んでいく猫たちの横顔。

 

 常時60%で完璧にやりこなす、プロフェッショナリズムを崩して過去と向き合ったハナちゃんを前回見たからこそ、突然の闖入者にも慌てず騒がず、冷静に観察して対応していく彼女の”今”が、奥行きと感慨を宿しもする。
 過去を知ればこそキャラに立体感が出てくるこの味わいは、文蔵くん達の原点を描く第1エピソードにも上手く働いていて、とても良かった。
 キャラの個人史だけでなく、赤猫をハブにサブとかクリシュナちゃんとか、横にも広がっている所が好きだな。
 マイノリティの社会的接点として、赤猫を維持運営してる佐々木さんの人生哲学が、懐が深い居場所を生んでる形だ。

 そこに拾い上げられて、社さんもブラック企業で腐らせてきた才能を開花させ、新たな居場所を得てもいるわけだが。
 製麺作業に勤しみつつ、クリシュナちゃんの人生の深いところを自然に聞けてる第3エピソードは、最終話を前に主人公的立ち位置にいた人がこの物語で何を得たのか、静かにスケッチしてくれていた。
 お互いのやりたいこととか幸せとか、腹割った話を構えることなく自然に交わせる、当たり前で特別な関係。
 それをこそ、赤猫で社さんは得たのだ。
 小さな変化が積み重なって、気づけば傷ついた誰かを包み込む世界の全部が、大きく変わっている不思議。
 そういうモノを書くお話だったと、改めて思う。

 デカい事件が運命をかき回し、大きな困難を皆で乗り越えていくようなお話ではないので、最後の〆もあまり派手になりすぎず、しかし確かな歩みを感じさせると嬉しいなと、改めて思える最終話一個前でした。

 

 色んな人の色んな過去が、傷や涙や出会いや人情全部ひっくるめで一つにまとまって、今日も赤猫は営業中。
 ”日常”という、なんとなくの当たり前で消費されてしまう二文字がどう作られているのか、小さな憩いをラーメン通じて手渡してきた物語も、そろそろ幕引きです。
 最後に何を描いて、どういう気持ちで物語にサヨナラを言わせてくれるのか。
 アニメなりのフィナーレを楽しみに、次回を待ちます。