イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

菜なれ花なれ:第10話『Go Fight Win』感想ツイートまとめ

 荒ぶる涙雨の後には、青春と友情の虹がかかる!
 ポンポンズがどう夏休みを終えていくかを眩く描きつつ、最後の戦場へと主役が帰還する、菜なれ花なれ第10話である。

 

 前半かなり時間を使って、着てる制服は違えど奇縁で繋がった六人の夏の終わりをしっとり描き、そこで得たものをそれぞれ抱えての新学期、かなたの部活復帰と毬先輩という爆弾発見までを描くエピソードである。
 相変わらず焦らないというかスローモーというか、萌え顔トンチキ人間の青春がどんな煮込み加減に仕上がったのか、すげーどっしり描いて最終コーナーを曲がっていくのが、このアニメらしくて好きだ。
 見始めた時はまさか、エモ担当が小父内さんになるとは…。

 他の2カプが関係性出来上がってる所からスタートしたのに対し、桜城組は感情が表に出ないトンチキ猫ちゃんと、非の打ち所がない学園のマドンナがゼロから出会い、チア活動を通じて想いを磨いていったわけで。
 それが今回、なかなか笑えなけど確かに楽しい夏休みにしっかり反射し、田園を駆け抜ける青春列車の美しい姿、いつもどおりのフリーダムに見えて何かが変わった新学期と、確かな手応えで一つのゴールにたどり着いてて、凄く良かった。
 俺は小父内さんが好きだし、彼女に引っ張られて視聴を続けてきた感じでもあるので、ずっと欲しかったけど諦めていたものを確かに手に入れたのだと、車窓にムニムニ笑顔を反射させて確認する姿、とても可愛かったし、描いてくれて嬉しかった。

 表に出ないだけでいろいろ考えてて、しかしそれが他人に受け取りやすい形では発現しない小父内さんを、ポンポンズの仲間は受け止めてくれた。
 楽しかったり迷ったり、ぶつかったりする日々の中で、動かない表情の奥を覗き込んでもらって、勇気を出して伝えて、確かに何かを手に入れた。
 ポンポンズが抱えた夏休みの宿題は、たしかにちゃんと終わったのだと示す役が小父内さんだったのは、猫みたいに自由で分かりにくいあの子がずっと、願いを叶えてくれるといいなと思って見てきた視聴者としては、ありがたい決着だ。
 小父内さんの濃さとバランス取るべく、詩音ちゃんの透明度高かった感じもあるね。

 

 他の連中もしっとりした進行の中で相方との独自の絆を確かめたり、的を絞って同じ方向を見てチアに励んだり、充実した夏を駆け抜けていった。
 「そのためには、動画配信は重荷になる!」と決意して、一意専心リアルのチアのために切り捨てる決断をエイヤと投げ込むところ、メチャクチャこのアニメらしい味だったな。
 フツーのお話だったら両立が答えになりそうなもんだが、かなたの心に刻まれた深い溝に潜ったこのお話は、自分たちが本当にしたいこと、為すべきことのために、何かを諦めさせる。
 そうやって皆で選び、納得して進んでいくことが大事だし、”菜”でしかないポンポンズにはそれしか出来ないのだと描く。

 なんか純情なレールに乗っかった風味だったのに、主役のメンタルが大きくガタついて場が荒れ、微笑みの奥に感情拗らせてた幼馴染との正面衝突を書き切る方向へと舵を切ったお話にとって、「動画も現実も!」はあまりに欲張りな夢だった。
 「なので動画は辞めます! 限られたエネルギーを、全部現実に突っ込みます!!」という、生っぽい決断あってこその、充実の夏だった。
 フィクションの割に夢がないといえばその通りだが、この独自の食感がなれなれだってのは10話まで見てていい加減肌味に染みてるし、そういう決断しなきゃ「今までの展開は何だったの?」つう話でもあるしな…。

 動画でスタウトレコード立て直した成功体験を持つ杏那が、いの一番に「辞めっか!」と言い出すのと、でもブラジルの家族には距離飛び越えられる動画で幸せとどけるの、両方好きだ。
 世の中色んな選択肢があって、どれも問題と強みを兼ね備えていて、なら大事なのは適切に選ぶこと。
 そして何より、その決断を隣に一緒に立っている人と共有すること。
 本気の応援合戦から始まった真夏の大騒動は、ポンポンズと僕らにそういう、地道なんだけども妙にフワフワ夢色な結論を出した。
 この、心のどこに収めていいんだかまだ全然解んないけど、確かに抱きしめたくなる手応えがやっぱり、俺は好きだ。
 なれなれの味がする。

 

 他人と噛み合わずに一人で空回ってると、凄い勢いで周りを引っ掻き回し色々ぶっ壊すと、今回の騒動で解った主人公。
 彼女の部活復帰もゆったりとしたペースで描かれ、ひたすら真っすぐ突っ走る気質がいい塩梅のトンチキで、周りと噛み合っていく様子を切り取っていく。
 気持ちばかりが焦って、傷ついた親友への後ろめたさに背中を押されて、周りも自分も全然見えなかったかなたであるが、恵深があの雨の中飛んだ(飛ばせてしまった)事で、ようやくあるべき自分の輪郭を捕まえられた。
 そんな新学期の再出発が、どっかトボケてズレてるのがかなたらしく、またこの話らしいなと思う。

 相変わらず窓から入ってくる小父内さんもそうだけど、根本的な所で”普通”からズレてるトンチキ人間が、急に世の中のスタンダードを飲み干せるわけではない。
 ズレてトボケた私たちのまま、どうにかデコボコを噛み合わせて望むまま駆け抜けられた夏の思い出が、ヘンテコな彼女たちを肯定させる。
 そういう奇人の自己実現を描きつつ、世界と自分のバランスをナチュラルに取れる、恵深と詩音ちゃんの”普通”も書いてる所が結構好きだ。
 色んな奴がいるから、世の中面白い。
 そう思える心の元気を、チアに勤しむことで掴み取っていった話…なんだろうか。
 この話数まで、この作品における”チア”が明言できないのは凄いわな。

 

 この奇妙なまんま噛み合った手応えを足場に、かなたは競技チアへと戻っていくわけだが、そこに入り込んだ一粒の砂…毬先輩の退部問題。
 「主役と物語が乗り越えるべき最後の課題があの子なら、最初っから盤面に貼っておけよ!」と、バンカラ先輩の時と同じツッコミ思わずしちゃったけども。
 かなたの心を刺した匿名の棘を回収して、クライマックスへの扉を開ける展開自体は、パワーがあってなかなか良かったと思う。
 先輩が先に退部してケジメ付けてる所が、このアニメらしい煮込み加減だよな…人間のドロっとした部分に、独自の間合いで挑む感覚。

 部内では一応の決着が既に付いてて、でもかなた的には寝耳に水なこの状況。
 結局過剰な元気が空回りして、周りを引っ掻き回すことしか出来ない激情型主人公なのだと、夏の課外活動を通じて己を思い知ったかなたが、ここにどういう答えを出すのか。
 自分一人で飛べば大怪我だが、支えてくれる相手が隣りにいることも思い知らされているので、今度はちゃんと相談して、一人じゃ見えない未来へと進み出していってくれるかな、と思います。

 

 ポンポンズの物語としては今回で一段落ついて、そこで成長したかなたの物語を最後にもってくるの、やっぱ普通じゃない作りだよなぁ…。
 でもま、俺はそういうクセが強いなれなれが、やっぱり好きなのだ。
 次回も楽しみ。