出会いの季節を終えて、見据える未来の行く先は。
進路とか勝負とか色々ありつつ、行くぞ上海前後編!
三期始まって以来の肩の力の抜け方で、真夏のLiella! を描くスパスタ三期第5話である。
あの最悪なクリフハンガーから二年、作品ぶっ叩く気満々で待ち構えていた僕を、三期は密度の濃い展開でキッチリ殴り返してきた。
3+8に大人数を分割して展開していく話運び、話の中心に立つかのんをライバル側に置くことで生まれる律動、チョロさの片鱗を見せつつなかなか崩れないマルガレーテちゃん。
四季や夏美、冬毬にクローズアップしたエピソードの切れ味も含めて、中身で納得させられてしまった感じがある。
これは多分意識的かつ計画的な犯行で、かのんちゃんに物語の決定機が偏りすぎてたり、現2年生の真芯が見えなかったり、ニ期の良くない(と僕が感じた)点は軒並み、むしろそれを回収し描き直す事で、新たな輝きが生まれている。
ここまで積み上げたLiella! の物語と関係性を、心地よくくすぐるファンサービスの巧みさも含め、みっしりと油断することのない展開がここまでの4話、続いてきたと思う。
それに比べるとこの第5話、夏休みということもあってかかなり肩の力が抜けていて、同時に久々に味わうユルさと可愛さがいかにも”ラブライブ!”味でもあり、程よいタイミングで味変してきた感じが心地よかった。
マルガレーテちゃん相手にやり込められ泣きつき、ヘロンヘロンになってる澁谷かのんの姿一つとっても、ともすれば前向きな決意で奇跡をもぎ取り、運命を左右する完璧な偶像になってしまう彼女が、まだ人間であることを思い出させてくれる。
全国優勝を果たし、戦うべき”外部”が無くなってしまったLiella! が、ある意味苦肉の策で選んだ、敵対してくれるからこそ己を正す鏡足り得る、ガーガー口やかましいライバル。
既にLiella! の内側に取り込まれ、ひとつ屋根の下ズブズブに絆されつつも、文句言う役を頑張ってくれてる女の子。
泣いたり笑ったり、先輩っぽかったり情けなかったり。
『澁谷かのんの色んな顔が見たい…ッ!』という、僕の中の根源的な欲求をたっぷり満たしてくれること含めて、マルガレーテちゃんの存在はここ最近、大変良い。
冬毬も姉者全霊の”答え”を受け取り、スクールアイドルに本気な前のめりを見せている今、彼女の存在が巧いこと、作品世界全部がLiella!色に染まって、変化もメリハリもない”勝ちの後の景色”が広がるのを、なんとか留めてくれている。
実際、もっと早くLiella! (というか澁谷かのん)に堕ちると思っていたが、いい具合にビシバシやり合って、自分を保ってくれているね…。
ツンツンそっぽ向きつつも、5話分至近距離で人生共有している手触りはマルガレーテちゃんにしっかり染みてもいて、押し通されて上海行きに同行したり、そこで冬毬といい感じの触れ合いを芽生えさせていたり、デレ爆裂への準備も着々と整っていた。
来たるべき大トマーテ時代に向けて、俺のコンディションも整ってきているが、片やライバル意識むき出し、片や姉者の夢を否定するための偵察と、”Liella!”にそこまで熱がない二人が、じっくり影響を受けていく様子が積み上がるのはとても良い。
それが同い年の二人が、特別な絆を作る足場ならなおさらだ。
話数同士の繋がり、各要素の響かせ方が冴えてるのも三期の特徴だと思うけど、前回あれだけ強烈に情緒の爆弾をブチかました事実を引き受け、冬毬とスクールアイドルの向き合い方が変わってきているのも、凄く良い。
仲間たちの助けも借りつつ、自分があの暗い場所から何処にたどり着いたのか、愛する妹に解ってもらおうとステージに託した夏美が、冬毬の変化を…新しく出来たお友達との距離感を、優しく見守っているのも最高。
やっぱこういう、要素要素の有機的な繋がりが感じられると、じっくり何かが変わっている手応えを感じられるし、それを描くべく一年組が作品に在ることを思い出せる。
無表情クールと反発しまくり天邪鬼が、素直に近づいていく魔法。
その説得力を上海の夜景はしっかり宿していて、夏休みという特別な時間が何かを生み出す感覚が、特別で良かった。
この触れ合いが今後どう育ち、感情を炸裂させるに至るかを見守る楽しさもあるし、劇場版を先取りするような海外浮かれポンチ旅の合間に、しっかり物語の種をまいてる手応えがありました。
底抜けに陽性な空気は壊さないまま、カッチリした組み立てを感じられる描写が結構あるの、三期の良いところだと思う。
バカやってる時も、『この先何かやるつもりなんだろうな…』つう期待と信頼を、あんま捨てないですむというか…。
そんな一年組の胎動を横に置きつつ、今回のメインは唐可可の未来にある。
学園自体が自分たちと一緒に動き出した、白紙の一年坊主も気づけば最高学年。
”進路”という課題に真っ直ぐ向き合うべき季節に差し掛かって、澁谷かのんは自分の運命を動かしてくれた恩人の、間近にしっかり寄り添う。
その特等席を譲りつつ、物陰から見守る女の前のめり…。
平安名すみれが、今回相当前掛かりだったのは最高に良かった。
「クゥクゥを救うわよ!」は、かなり『ほう…』ってなったよね…。
メタな都合と大人の横暴でもって、一度結構な重さで決断したウィーン留学を蹴り飛ばされたかのんちゃんの未来も、まぁまぁ波乱万丈なんだが。
第一期からずーっと引っ張ってきてる、名門唐家の重責とスクールアイドル狂の情熱が生み出す摩擦熱は、”終わり”を見据えなければいけない三年生を照らす鏡として、今描くべき要素だと思う。
前回冬毬が「テメーラは三年間のお付き合いだろうが、家族は一生その傷と向き合うんだ!」とブチかましたのと、ちょっと響くテーマだけども。
ラブライブが終わっても、人生は続くのである。
しかし暴走パンダ娘の脳内には、ラブライブしかない。
だからこそ、唐可可は強かったのだ。
解決は現地に直接乗り込んで、ステージとアイドルが生み出す奇跡で理解らせるにしても、制服を着た日常の中、立場を違えつつクーカーがお互いを思いやってる様子が見えたのは、凄く良かった。
つーか三期、クーカー”強”くねぇか…?
”Tiny Stars”に相当ヤられちゃってる人種なので、そこにリキ入ってるのは大変ありがたいわけだが、そこでの触れ合いが最上級生らしい落ち着きと重さ、瑞々しい友情の入り交じる、なんかすっげぇ…澁谷かのんと唐可可の”今”っぽい味してたのが、今回素晴らしかったな…。
他の連中がどっしり構えた落ち着きを見せる中、三期のクゥクゥは相変わらずの暴走超特急、それゆえに作品に元気を与えてくれる、とてもありがたい存在だったと思う。
そういう子が当たり前に未来と家族に思い悩み、その重荷に気づいて即座に駆け出し、隣り合ってくれる友達…と、そこに”信”を預けつつも陰ながら見守り、いざ一朝事あらば眦を怒らせて詰め寄ってくる、感情のデカい女(ひと)を側に置いてるの、やっぱり良い。
全体的に肩の力が抜けた柔らかなトーンながら、渡り廊下の進路相談はしっとり落ち着いた雰囲気で、すみれの空回りしながら燃え盛る友情はしっかり熱く、書き分けていたのはありがたかった。
素敵な夢、楽しい日々が基本だけども、結ヶ丘の空気には色んな色が混じってて、だからこそ面白いのだ。
ここら辺の書き分け、「Liella!のいない間に猛特訓! ズルして一気に追いつくぜ!」と、相変わらず勝負論に脳を焼かれてるマルガレーテちゃんに、澁谷先輩が「アンフェア禁止!」と釘を差し、運命共同体として上海まで引っ張っていく場面にも感じた。
仲間でライバル、不運を喜ぶより手を貸して最高の舞台へ導く。
かのんちゃんが掲げる綺麗事は、勝敗よりも”私達らしくあること”を重要視する、スクールアイドルの理念に支えられてる。
ここら辺、あくまで”部活”であることに立ち戻ってる感じで、三期らしい筆致だなぁと思ったりもするけど。
上海くんだりまで引っ張られて、敵に塩送る体験がどう刺さるか…見ものだね。
ドタバタ色々贅沢に描いた準備を終えて、Liella!(-1)は上海へと降り立つ。
俺は”ラブライブ!”が街を描く筆致が凄く好きなんだけど、原宿とも牛久とも違った色合いで描かれた上海、そこに瞬く青春の魔法は、大変素晴らしかった。
美術で夏休みの特別感が出てくると、少女たちが浮かれる気持ちに素直にシンクロできるし、色んな場所で色んな楽しさに触れて、色んな顔を見せてくれる彼女たちを見れて、とても嬉しい気分になる。
三期3話という特大ブースターを積んで、若菜四季の無敵っぷりに”文脈”が出来てきてるの、かなり面白いな…。
海を渡った特別な場所で、とびっきりのバカンスに浮かれる様子はこれまで、主に劇場版で描かれてきた。
携帯電話越しのミステリを追いかけることで、異郷の風景を堪能する様子はAqoursフィレンツェ旅のリフレインを感じたりもするが、前人未到の三期に足を踏み入れたスーパースターが、前例を踏まえつつ縛られない語り口を選んでいる証拠でもあるかと思う。
まー”ラブライブ優勝”という、これまでゴールと定められた場所を過ぎたその先を描かんとする物語、「海外は劇場版!」っていう前例だって、当然ぶっ壊して新たに作り直すのがスジではあろう。
この三期から匂い立つ”突破”への気概は、俺現状かなり高く勝ってんのよね
かくして妹好きすぎて上海への渡航費×10ポンと出す”姉”も登場し、次回SIF決戦に物語は続く!
前回鬼塚姉妹のぶっとい絆で殴りつけた余韻が残る間に、唐姉妹に溢れる愛で追撃入れてくるの、なかなか良い構成だと思います。
”星屑クルージング〜上海Ver.〜”は、とっておきの夜景を舞台装置にライティングで魅せる演出が、ソロでもステージを作れるクゥクゥの”今”を見事に照らしていて、とても印象的でした。
あとノータイムで抱擁に行った澁谷かのんの”熱”を見れて、やっぱクーカー死んでねぇなって…思えました…
かのんちゃんも三年らしい落ち着きで一線引いてたし、クゥクゥも過剰な自己開示を押さえて重荷背負わせないようにしてたけども、萌萌お姉ちゃんの優しいお節介でもって、全てをさらけ出さなきゃ状況は動かない所に来た。
一体何が、スクールアイドルやりたくて異国に身一つ渡航した少女を縛るのか。
三期はやや大人しい感じだった平安名すみれに”火”が入る期待感含め、次回上海決戦後編、大変楽しみです。
…なし崩しの流れとはいえ、11人のLiella!初披露でクール折り返し迎えそうなの、かなり面白い運びだな…。
想定されるマルグレーテちゃんのツンツン駄々こねを、”姉”がどう切り崩し情に絡め取っていくかも、次回の見どころか…。
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あ、おまけ劇場は今回もひたすらに可愛くて素晴らしかったです。
鬼塚姉妹回以来、”四人で二年生”な描写がスゲーガッチリ強化されまくってて、ずーっとそれが見たかった人間としてはマジ最高だと思っております。
俺は桜小路きな子のファンシーな所が好きなので、リスとおしゃべりしてる様子とか、ありがたさしかねぇ。
後は”きな夏”の決定的に強ぇのが一発、本編中にぶっカマされたら、思い残すところもねぇのだが。
やっぱ北海道編で夏美のゴールにぶち込む仕事、きな子がやるべきだったよ絶対ーッ!(今更過去の描写に文句たらたらマン)