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イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

正解するカド:第3話『ワム』感想

超立方体の中の神が人類にもたらすのは平和か諍いか、人類が初めて体験する異方人と国家との対話を描く第3話です。
箱の『外』を描いた第1話、『中』を描いだ第2話に続き、『外』と『中』が接触する境界面の第3話となりましたが、ザシュニナの異質性と等質性、真道さんとの意思疎通と齟齬、振り回され気味の日本政府全権代表団と、色んなモノを描くお話となりました。
ほぼ24分喋りっぱなしの会話劇なので、ザシュニナの価値観や世界概念、目的や行動なんかも土っさり出てきましたが、合間合間に不思議なユーモアと可愛げがあって、楽しく見れました。
何より興奮を誘うのは、ザシュニナが提示した『食い尽くせないパン』であるワム。
エネルギー問題を一気に解決し、国際情勢、政治・経済システム、ひいては人類の価値観まで一変させてしまうだろう超技術的核弾頭を譲渡された日本が、一体どう動くのか。
ぐっと話が動くエピソードとなりました。

というわけで、ザシュニナと日本政府のファースト・コンタクトがなされた今回。
異質知性であるザシュニナは相変わらず物分りが良く、自発的に己の異質さ、圧倒的な存在の高次元っぷり、行動理念を極力誠実に説明してくれます。
いくらでも密室にしまい込みたいだろう案件を『全国民、全人類が当事者なのだ』と認識し、オープンチャンネルでの会談に素早く同意・決断出来る総理と言い、人間レベルでの軋轢を極力避けて話を進め、思弁的な方向に体重をかけて進めていきたい意思を感じます。
というか、取り込まれた飛行機の中に稀代の交渉官・真道さんが居合わせ、ノヴォが彼ベースでコミュニケーション・ユニットを組み立てたのと同じくらい、この未曽有の変革に対処する日本の頭があの人だったのは、凄まじい幸運だと思う。

真道さんを介してもわかりにくいザシュニナの言葉を再翻訳しますと、彼は『人間に似合うもの』である進歩と推進をもたらすために、この宇宙の外側にある異方からわざわざやってきて、己を三次元的存在として再投影しながら交渉をしている。
ワムの中に四次元超立方体が見えることからも、彼は高次元の存在であると思うのですが、あくまで『異方』という言葉にこだわっているのは気になるところです。
方向によって異なる声質を持つ『異方性』とその意味合いが重なるとすれば、ザシュニナは完全にこの時空から切れた存在ではなく、この世界を別角度から観測した、人類が未だ知らない可能性の現れなのかな、とか、色々考えてしまうなぁ。

とまれ、ザシュニナは『ユノクル』なる概念を重視して日本に降り立ち、無限の電力を共有するワムを与えます。
ザシュニナは事あるごとに『正解してほしい』と言っているし、タイトルも『正解するカド(角・過度)』なので、これは無条件の恩寵でも、貧困にあえぐ人類に与えられた救済でもなく、『問いかけ』なのだと思います。
余剰を分け与えることが出来るベクトルとして説明された『ユノクル』は人類にも共有しやすい概念で、パンが過剰な場合、足らないものに分け与えるのは『自然な考えだ』と納得する。

同時にそれは不可能な倫理で、エントロピーとカルマに支配された人間界では、活きるための糧は常に有限であり、あらゆる人が余剰を分け合える楽園は、『どこにもない場所』としてのユートピアでしかありません。
しかしその『どこにもない』夢想を実現するのが、異方から無限の電力を供給できるワムという、超絶的なテクノロジーになります。
この技術を公平、かつ適切に分配できた場合、エネルギーや富、暴力の不均衡は無くならないにしてもかなり軽減され、より人間的で善い世界が到来するのは間違いない。
ザシュニナが言葉遊びをしていたり、ペテンを使っていない前提で話をすすめると、問われているのは有限のパンを奪い合うことが当然だった人類が、無限を適切に配分できるのか、という部分です。

超技術であるワムは人間のカルマを乗り越えうる可能性ですが、同時に既存の世界をぶち壊しにし、石油輸出やエネルギー技術を溜め込むことでアドバンテージを手に入れていた国家・組織・企業の現在を、大きく揺さぶるものです。
有史以来誰もが憧れながら、パンが必ず欠乏し飢える世界のルールに縛り付けられてきた『ユノクル』という夢想。
ザシュニナは無限のワムを、国境によって切り取られた日本に貸与することで、日本国(を通して人類)がカルマを乗り越え、新しい生き方に適応・調和出来るかを『問いかけ』てきたわけです。


今回の対話は相互に条件を出し合う交渉というよりも、異方人であるザシュニナが一方的に己を説明し、利益(であり不和の火種)であるワムを提示し、それへの解答を求める形に見えました。
羽田の電力全てを供給し、そして遮断できる圧倒的なパワーを提示された日本としては、それを受け入れるか否かの選択を考えるよりもはやく、爆弾を投げつけられたような形です。
真道さんを通じて適切に翻訳されていますが、やはりザシュニナは圧倒的に異質な存在であり、コミュニケーションにも軋轢が存在する。
彼が一体何を望んでいるのか、人類の価値観と認識能力ではおそらく正確に理解できないし、ザシュニナもその限界をしっかり把握した上で、優先順位をつけて行動しているようにも見えます。

異方の神から与えられた『問いかけ』に対し、真道さん含めた人類がどういう『正解』を回答していくのか。
ワムへの対処を通じて、日本国政府とそこに所属するキャラクター、そして他国政府と地球人類はその片鱗を見せていくでしょう。
おそらくザシュニナは、ワム級の超技術爆弾を複数持っていて、ワムという『問いかけ』に『正解』したのなら、次はまた別の問いが投げかけられると思います(12話あるしね)
しかしそれは、産油国を筆頭に紛糾するだろう国際政治の荒波を日本が乗り切り、適切なシステムと概念を整備して、『無限の電力』という新たな可能性を拡張・拡大してみせて出される、第二問です。

局面がこうなってみると、三人の交渉官がこのお話の主人公なのは面白いところです。
人類を理解しようと務める神・ザシュニナと、彼の通訳であり理解者であろうと務める代理人・真道さん、そして国家と人間の先頭に立ってテーブルに付く徭さん。
彼らは異質知性と人類の境界線にたって話し合っているわけですが、ワムがあまりにも強力なパワーを持っている以上、交渉はそこでは終わりません。
人類と人類、同じでありながら同時に異質である集団と個人として向かい合い、分かり合い、あるいは対立するよりオーソドックスな交渉もまた、お話にとってはとても重要なわけです。

来週は羽田から少しカメラを動かして、世界全体と日本がどのように交渉のテーブルを作っていくのかが描かれるようです。
それは組織のダイナミズムが唸る政治の領域であると同時に、交渉担当一人ひとり、利益共有者である人類一人ひとりの意思と知性が試される、横幅の広いドラマになると思います。
夢想でしか無かった『無限』が現実となった時、人は何を考え、どう行動し、どのような意思を疎通するのか。
ワムが生み出した波紋の広がりと、その中でのキャラクターの身の処し方に、期待が高まります。


さてはて、かなりスムースに行っていたように見える交渉ですが、そこには細やかな齟齬と理解がありました。
ザシュニナの行動をかなりの部分支配する重要概念、『ユノクル』は51%しか人類言語に翻訳できないし、現実的なタイムリミットのある政治交渉を背景に、概念の確実性よりもスピードとわかりやすさを重視した翻訳が選択されています。
『高次元』と『異方』の間にある差異は、例えば学術的時間の中ならばいくらでも考察して良い、考察しなければ大きな取り違えを起こしてしまう違いなのかもしれません。
しかしカドにまつわる問題はその物理的・概念的巨大差からして、のんびりとして正しい学術の時間ではなく、政治の時間で動いているわけです。
ここら辺、真道さんが学者ではなく役人なのが効いてる部分だと思う。

この宇宙の外側にあるより大きなものを折りたたみ、あるいは投影して干渉しているという意味では、カドもザシュニナも同じく境界……フレゴニクスです。
存在の次元が根本的に異なっている以上、その能力も認識も根本的に異なり、スマホから、あるいは真道さんと対話し、スキャンすることで人類世界を学習しようとしても、様々な場所に齟齬はある。
それを認めた上で、ある程度双方が納得できる妥協点を常に探り、有限の時間の中で問題を先に進めようというのが交渉官・真道幸路朗の方法論であり、彼を写し取って現世に降り立ったザシュニナも、同じロジックで動いています。

似通った彼ら(おそらく意図的に、3Dモデルの一部が共有)は異質なお互いを把握した上で、そこを埋める努力も怠らないし、断絶を前に諦めもしない。
パイプ椅子が似合うの似合わないの、くだらない会話の中で距離を詰めようとするし、実際の交渉でも時折衝突しつつ、『日本政府と人類に対し、己の存在と目的を伝え、ワムを貸与する』という目的は果たせています。
このアニメは基本的にシリアスかつハイブロウに進んでいるんですが、合間合間の人間味が笑いを呼んできて、独特のユーモアがあります。
厳粛な交渉の場なのに、おもしろ漫才を始める異方人コンビを前に、徭さんが思わず笑ってしまうのは、結構象徴的だなと思います。

笑いが出てくるということは、相手をコミュニケーション可能な存在として捉え、身近に引き寄せようという心の現れでしょう。
実際、緊張と使命感に固くなっていた彼女が見せた笑顔を僕(そしてもしかすると、結構な数の視聴者やあなた)は可愛いと感じたし、つられるように微笑むし、彼女を好きになる。
それと同じ心象を、この作品のとても理性的な人たちは、結構努力して他者に投影しているんじゃないかなと、僕は思います。
そしてそれは、言葉の本当の意味で『人間的』な行為なのかもな、とも。


ザシュニナの近寄る努力として面白いのは、人類に問いかけた『無限のパンを分け与えられるか』という疑問に、ザシュニナ自身がすでに回答しているところです。
前回真道さんとの交渉を経て、ザシュニナは人類の生存に食事が必要であることを理解し、パンを無限にコピーし分け与えるという行動を起こしています。
彼自身が『ユノクル』を体現できる人物であることは、事前の描写の中で証明されており、交渉に必要な言動一致の誠実さというのは、既にある程度担保されているわけです。
それがザシュニナが倫理的存在-いい人-だと示すか否かは、彼の異質性を物語が描ききっていない以上断言できないところですが。

異方の存在であるザシュニナと、その『中』に取り込まれつつ人類でもある真道さんは、けして等質にはなり得ないコンビです。
ザシュニナが繰り出す『ノヴォ』『ワム』『ユノクル』といった独自概念を翻訳する時には、どれだけ真道さんが優秀でも齟齬が出る。
作中でも言われていますが、その変質は情報の必然であり、人間と人間が、個体と個体がコミュニケーションするときにも必ず発生する問題なのでしょう。
『問いかけ』を行い『正解』を期待する、コミュニケーションする神であるザシュニナは、人類が背負ったそういう業(バベル以来のディスコミュニケーション)を受け入れ、もしかすると愛しているのかもしれません。

ザシュニナが真実万能な神ならば、人類の認識とコミュニケーションを拡大し(それこそエスパーに強制進化でもさせて)、異方の概念だろうと、カルマの桎梏だろうと一瞬で超越できる『正解』を与えても、おかしくはありません。
しかしザシュニナが与えたのはあくまで『無限の電力』であり、("地球幼年期の終り"におけるオーバーロードがそうしたように)政治システムを改善・支配したり、人類固有の認識モデルを変化させたりはしない。
それは人間が『正解』しなければいけない『問いかけ』のようです。

そしてそれは、双方向の『問いかけ/正解』でもある。
ザシュニナは数多ある齟齬を乗り越え、真道さんと、そしてその先にいる数多の人間と意思疎通を成功させなければ、『人間の進歩推進』という己の目的を達成できません。
過去人類を束縛してきたあり方にしがみつき、無限の可能性を信じきれずに暴力や謀略、多数派の圧力でワム(や今後与えられるだろう、ノヴォ由来の超技術)を拒絶してしまえば、ザシュニナがこの世界に投影された目的は果たせない。
考え続け、問いかけに答え続けなければならないのはちっぽけな人類だけではなく、人類のレイヤーにわざわざ己を投影し、カドという境界線を出現させたザシュニナも同じなのです。

ワムという『問いかけ』に日本政府が『正解』するか、否か。
それは日本政府や徭さんだけではなく、ザシュニナにとっても大事な問題です。
あまりにも大きな技術(を超越し、概念であり利益であり一つのイデア足り得るもの)を相手に、世界は泡立ち、キャラクターたちは奮戦を余儀なくされるでしょう。
動きの少ない会話劇の中に、様々に新奇な思弁を盛り込み、お話をドライブさせてくる第3話でした。
いやー、やっぱSFは……面白いな!

神撃のバハムート VIRGIN SOUL:第3話『Close Encounter』感想

髪と魔と人が混じり合うダークファンタジー黙示録、3話目は皇帝出陣。
リタののどかな日常を追いかけつつ、薄暗い悪魔と人間、人間と人間のぶつかり合いに彼女を導くだろう謎のイケメンとの邂逅を果たす回でした。
男衆の尻をひっぱたき、ニーナの保護者もやってくれるリタの頼もしさとか、天界復帰をダシに接触してくる天界勢とか、色んな場所が渦を巻きつつも、まだ爆発はしない感じ。
常に舞台が移り変わり、旅物語としての面白さが強かったGENESISに比べると、VIRGIN SOULはじっくりとした運びで進めていくお話なのかも。
足を止めても描写が常にリッチで飽きないし、どっしり腰を落として見えてくるものもあるでしょうから、このお話独自の楽しさを腹いっぱい詰め込みたい感じですね。

というわけで色んなことが起きてますが、やっぱりシャリオス17世とニーナが邂逅したのが一番のイベントでしょうか。
ニーナのドラゴニックパワーはこれまでもたっぷり印象づけられているし、大男たちをあっさりヒネるアームレスリングを見ても判る。
だからこそ、そんなニーナと対等にやれるシャリオスの異常なパワーが、微笑ましい出会いのシーンでも際立って見えました。
OPでもアザゼルさんと対等以上にやりあってるし、そもそも悪魔の都先頭に立って落としてるし、むっちゃ強いんだろうな。

そんなシャリオスが納める帝都のハラワタ、悪魔差別の問題が別世界であるように、ニーナの日常は相変わらず明るく楽しい。
ハンサはクワックワうるさくて可愛いし、リタのご飯はむっちゃくちゃ旨そうだし、物理的過ぎるイケメン対策は思わず笑ってしまう。(それを貫通し、手だけでイケメン力を感染させてくるシャリオス含め)
ファバロに勧められやってきた王都で楽しいことばかり……という時間も、その闇の中心にいるシャリオスと接触したことで、そろそろ終わるのかもしれない。
アザゼルやカイザルとも絆があるし、皇帝とダークヒーローが直接ぶつかることになる今回の決戦で、一気に話に巻き込まれる……のかなぁ。

ニーナの能天気で朗らかな可愛さは巧く演出できているし、好感も抱けるのだが、光が強いほどにどうしても、闇の濃さを思い出してしまう。
無視できないほどに色濃く(しかし悪趣味にはならないように)ダークファンタジーな部分は演出されているわけで、話の中心からニーナが保護され、主人公が世界観のうねりに巧く巻き込まれていない感じは、正直受ける。
アザゼルさんがグワッと迫る今回のヒキにはかなりのパワーがあったので、それで一気にニーナを病みの中心に放り込み、ストーリーが回転する速度を上げてほしいな、とも思う。
ニーナ周りの無邪気で明るい描写好きではあるんだが、このままだと作品内の立場的にも、キャラクターの立ち位置的にも『田舎から出てきたお上りさん』なので、世界を取り巻く闇を自分の物語として受け止め、噛み付いてほしいところだ。


一方闇の主役として存在感を増しているアザゼルさんは、先週結構目立ったのであまり出番なし。
とはいうものの、血で血を洗うダークヒーローの生き様を決意させたムガロとの出会いが描写されたり、そのムガロ相手に露骨な死亡フラグを立てたり、相変わらず美味しいポジションにいた。
VIRGIN SOULのアザゼルさんは闇のオーラ漂うビジュアルの統一性が崩れなくて、時折抜けたことしつつも、無軌道な暴力と不器用な優しさを併せ持った、面白いキャラになったと思う。
『葬儀屋』という死者の尊厳を守る表の仕事が、いい味出していると思うんだよな。

そんなムガロを狙って、神サイドからも真綾声のおっぱい天使がチャージイン。
悪魔と同様力を削がれたけども、奴隷にはならず距離を置いて住み分けている様子。
つうか、シャリオスに神の力を略奪されて、ひっそりアプローチを掛けるしかない状況って感じなのかなぁ。
ソフィエル-バッカス-ニーナ、もしくはソフィエル-ムガロ-アザゼルって感じで、神と悪魔と龍と人の運命が交わる接点は大事に作っている感じなので、チョロごんと同じように、天使も悪徳のうねりに早いところ飛び込んで欲しいもんですね。

今週はリタの存在感が分厚くて、ぶっきらぼうながら面倒見が良く、皆の背中を守り尻を叩く仕事をうまくやってました。
一期でも面倒見のいいキャラだったけども、全体的に世界が暗いからこそ、色々気にかけてくれるリタのぶっきらぼうな優しさがありがたい。
ロッキーとカイザルの関係もわかったけども、ぶった切られた腕を保管していて助手に使うけども、本体とは付かず離れずの距離感って……逆に重くね?
闇医者としてある程度の社会的立場は確保しつつも、時間や生死の定めから取り残されたゾンビ少女としては、未来あるカイザルの邪魔になってはいけないって考えなのかな……まぁ、カイザルの未来もこのままだと暗そうですが!


状況としては、皇帝の外道作戦で見事につられたアザゼルさんがこのままだと死んじゃう! という塩梅。
ここを起点に色んなキャラが巻き込まれると面白そうですが、さてはてどうなるかなぁ。
ニーナに見せた穏やかな表情と、為政者としての苛烈に過ぎる対応にギャップがあるわけですが、ここらへんが明らかになるにはもう少しかかるかね。
そういう部分も含めて、リッチな作画と丁寧な描写で積み上げた物語の燃料に火がつくか。
"火種"を意味する次回に、期待大です。

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