イマワノキワ

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天使の3P!:第7話『びっくり招待状』感想ツイートまとめ

プリンセス・プリンシパル:第7話『case16 Loudly Laundry』感想

因縁と陰謀が渦を巻く闇の中で、嘘まみれの天使たちが羽を失ってもがくアニメ、今週は少女たちのフォーディズム
親が死んだり人を騙したり、ずーっと暗い調子で進んできたこのアニメもクール折り返し、珍しく明るく前向きなお話が飛び込んできました。
アンジェの嘘、プリンセスの社会的立場、ベアトの機械いじり、ドロシーの色仕掛けにちせの実直さ。
これまで人の命を奪うために発揮されてきたプリンシパルの個性が、どん底洗濯工場を明るい希望で満たす『きれいな嘘』として機能するのは、ここまで重たいお話をたっぷり食ってきた分、爽快でしたね。
ここで腹筋を緩めさせておいて、更にヘヴィな地獄がドーン! ってのも十分ありえますが、今は女の子たちが汗まみれ泡まみれで掴んだ一瞬の夢を、素直に祝福したい。
そういう気持ちになるエピソードでした。


というわけで、Caseは巻き戻って16、引き続きロンドン最下層のお話です。
第1話から第2話で『話数的な始まりから、物語的な始まり』が、第5話から第6話で『父親の死』が継承されていたように、今回は背景となる社会階層が共有している感じですね。
輪唱(あるいはヒップホップのサイファー)のように、時系列をシャッフルしつつも放送順はなんらかの要素を引き継ぎ、そこからまた別のお話を展開させていくスウィングは、なかなか気が利いていて面白いです。
Case的には前回の破滅の前段階、来るべき地獄を知らずに陽気にはしゃいでいるとも取れるし、スパイの暗い因業こそが『嘘』で、今回ホコリまみれの工場で少女たちが見せた明るさが『本当』とも取れる、面白い配置ですね。

今回はおそらく作品初めて、死人が直接的に出ない話であり、殺して騙して奪ってと非生産的な仕事ばっかりしていたプリンシパルが、誰かの為になる仕事に勤しむエピソードでもあります。
異色ではあるんですが、彼女たちが軒並みスパイに向いていない善人だと、お辛いエピソードで思い知らされている視聴者にとっては、盲亀の浮木優曇華の花、非常にありがたい息継ぎでもありました。
小彼女たちの知恵や特技が、他人を騙し命を奪うためではなく、経営と工場の環境を改善し、どん底ぐらしで下を向いていた女たちに希望を与えるために使われてる姿からは、小さな希望が感じられた。
先週ラストであまりにも残酷な運命を強調していた『歌』も、今回は労働を誇り、日々を乗り切る活力を引き出す『労働歌』に変わっています。

先週との響き合いという意味では、広川太一郎似の借金取りが再登場して、2つのCaseにブリッジをかけているのが、面白くてやがて哀しい。
あの時は親父を破滅に追いやる、抗いがたい資本主義の走狗だった彼が、今回は明るいコメディ調子とプリンセスの社会的特権に助けられ、克服される。
悲劇と喜劇が紙一重であること、幸福と破滅に見た目ほど大きな差がない世知辛さを強調するのに、良いリリーフだったと思いますね。

残酷から希望へ、鮮明な変異が印象的なエピソードですが、差異は共通部分があって初めて強調されるものです。
今回プリンシパルが使っている『力』は、これまでのエピソードで確認された彼女たちの個性、そのものだったりします。
マッドサイエンティストに身体を改造されたベアトは、生まれを活かして洗濯装置を修理し、工場に安全を呼ぶ。
立ち回りと殺傷のために使われていたアンジェのCキューブは、『重たい荷物を動かす』というあまりに牧歌的な目的のために使われる。
ドロシーの色仕掛けだって、情報を盗み出すのではなく、新しい顧客を手に入れるために活用されます。
父の命を奪ったちせの武芸は、刀ではなくアイロンを手に、殺すのではなく無力化し守るため。

こうして絵にされると、僕はまるで普通の小娘のように、当たり前に自分の能力を活かし、陽のあたる場所で彼女たちに活躍して欲しいんだなと、強く思い知らされます。
『スパイは嘘をつく職業、人を殺す職業』とうそぶきつつも、彼女たちは誰一人望んで地獄に身を置いているわけではない。
10年前のロンドン分割という大きな流れに翻弄され、あるいは日本を割った戊辰戦争に飲み込まれ、父と別れ、身分を捨て、スパイにならざるを得なかった女の子たち。
今回のお話は、そんな彼女たちが誰かのために、血ではなく汗を流し、後ろめたいことなく笑顔で戦える、一瞬の綺麗な夢でした。
こういうのをあえて見せてくる筆運び、残酷だなぁホント……。


そんな状況の中、プリンセスは『財力』という強みを活かし、あっという間に社長になってしまいます。
労働力を使い潰し、女を踏みつけにするしかない男の経営者/借金取りから、女たちが自分らしく活躍し、日々の糧を得、プライドを獲得していく場所へと。
コントロールが苦い顔をするプリンセスの道楽は、『より善く生きる』という視点から見ると、文句の付け所がない善行です。
何しろ、善行を施しているプリンセスの懐まで潤っちゃうんだからねぇ。

元々ウーマンリブの気配がある作品なんですが、今回は特にその傾向が強い。
金と権力を握り、理不尽を押し付けてくる世界は『男』が手綱を握っていて、女たちは厳しい状況に追い込まれつつも、お互い支え合い、少しずつ理解し合って、健全に対抗の牙を研いていく。
そもそも洗濯工場自体がロンドンの最下層、堂々と声を上げて権利を叫べない場所にあるわけで、労働災害を避けるために怠けるしかない貧者の知恵は、その象徴と言えるでしょう。
そしてその無言は、プリンセスの介入とプリンシパルの努力、それを受けて変化した女たちのたくましさで、多分変わっていく。
妙にキャラが立った従業員が蠢く洗濯工場は、もう一つのプリンシパルと言えるでしょう。

例えば『女』を武器にするドロシーは『化粧』という女の領域を活用することで、男を誘うだけではなく、女にプライドと活力を与えもする。
外面を装うのは、惨めな服と顔で下をむくのではなく、世間に堂々と顔向けするための武装でもあるのです。
洗濯工場という『外部化された家事労働』が軸になるのも、ちせが『アイロン』という家庭的装置に親しみ、窮地を脱する武器にするのも、『女』である弱さを強さに変える、プリンシパルらしい戦いだと思います。

そして、これはプリンセスの内面が公開されないと断言できないところでもあるんですが、工場はスチームパンク・ロンドンの縮図でもあるかもしれない。
先週のどん底モルグ(そしてシリーズ全体の薄暗いエピソード)を通して、今のロンドンが楽園ではなく、様々なものを踏みつけにして進む制御不能のジャガーノートであることは、僕らに示されています。
その車輪に踏み潰される形で、プリンセスとアンジェは引き裂かれ、再会した。
アンジェは第3話冒頭で『カサブランカの白い家≒私的領域』への撤退を進めるのだけども、プリンセスは『私たちがてらいなく向き合える世界』を実現するべく、玉座という公共領域の頂点を目指し、撤退を拒否しました。

そこにどんな思いがあるかは、おそらく作品最重要の謎なのでまだ読みきれませんが、『私たち』の範囲がアンジェとプリンセスという狭い範囲で収まらず、同じように巨大な政治経済の歯車に噛み殺された犠牲者全てを含むものだったのなら。
王冠を手に入れたプリンセスが目指すのは、上層が下層を踏み潰して生き血をすする、サイバーパンクロンドンの社会構造、それ自体の転倒かもしれません。

女の、労働者の、公害病患者の、身体障害者の、あるいはスパイの。
華やかな舞踏会場からはけして見えない、薄らぐらい世界の中で苦しんでいる人の中に分け入り、その痛みを己で引き受けるため(だけではないんでしょうが)に、プリンセスはスパイとなり、洗濯女となったのではないか。
個人的希望も込めてこういう読みをすると、このアニメはちょっとした革命譚、あるいは世界で最も見捨てられたものたちのための救世主物語という色彩も、帯びてくる気がします。

適切なメンテナンス、非効率系な構造の変革、経済構造の健全化。
今回プリンセスが、プリンシパルの力を借りて成し遂げた工場の変化は、国家に敷衍する事もできます。
先週残忍にドロシーの肉親を奪った、スチームパンク・ロンドンの苛烈さを改革するモデルケースとして、今回の工場があるか、ないか。
それは先の話見ないと分からんのですが、国盗りを明確に口にしている以上、このくらいの大望は抱いてほしくもあるんだよなぁ……さてはて。


今回の話、マッドガッサーと切り裂きジャックをあわせたような敵はあくまでマクガフィンであり、プリンシパルが洗濯工場と、後ろ暗いスパイが明るい希望と接触するための、一種の理由付けに収まっています。
これまで『敵』と正面から刃を交わし、死体の山を築くことでドラマとしてきたお話なんですが、今回はむごい犠牲者は巧妙に隠され、画面に映らない。
可愛い崩し顔がたくさん見られるのも含めて、作品のルールからちょっと外れた、でも待っていましたの、面白い塩梅でした。

自爆寸前に上げた「王国万歳!」という叫びからしても、毒ガスジャックは王国と何らかの繋がりのある『敵』。
そこを正面から捉え、陰謀の編みを解きほぐす語り口でも作れたはずなんですが、今回の主眼はあくまで洗濯工場です。
スパイとして騙し、奪い、殺す顔ではなく、どこか境遇の似通った女たちのために力を使い、陽のあたる場所へとにじり寄っていく少女たちの表情を、今回は切り取りたかったのでしょう。
キャラへの理解と愛着が深まり、陰鬱な話に少し疲れてきたこのタイミングで出してきたのは、構成の妙味だなぁと思う。

番外だからこそ、闇の中の光は強く感じられます。
『日本人である』という異物性を、排他ではなく融和の象徴として、鉢巻で繋がったちせ。
あるいは変声能力を一回も使わず、小さな体に秘めた技術力だけで状況を変えたベアト。
血なまぐさいスパイ仕事の奥でチラホラ見えていた、年頃の少女としての笑顔が今回は多めで、ホッとする話でした。


そしてそれは、あくまで一時の夢。
アンジェが常に呟く『スパイは嘘をつく』は世界の残酷な真実でもあり、そうやって飲み込まなければ生き残れない闇と汚濁が、ロンドンにはみっしり満ちていることを、彼女たちも僕達も知っているはずです。
そして今回見せた女たちの絆と輝き、闇から這い上がるタフさもまた、けして嘘ではない。

踏みつけにされた日陰者の洗濯女たちが、どん底で光を見つけて己の人生を歩き直したように。
プリンシパルの優しいスパイたちが、血と陰謀に絡み取られる嘘の世界から抜け出し、明るい場所に漕ぎ出していく未来はあるのか。
はたまた、蜘蛛の糸のように細い希望が途切れてしまう結論を強調するべく、あえて一筋の光を見せたのか。
全く油断ならない、でもすがりつきたくなるような、洗濯女たちのポジティブ・ワーキングコメディでした。

この番外をどう活かして、次回以降に話を紡いでいくのか。
既に疑いようもないシリーズ構成能力、太いテーマ性、仮想世界構築能力を持ったこのアニメが、どこにたどり着くのか。
来週以降も、非常に楽しみです。

活撃/刀剣乱舞:第8話『歴史を守る』感想

時の河を遡り大義のために己を振るう付喪神恋歌、一切刀身が顔を見せない第8話。
任務を外れた『特別な一日』を過去で過ごす第一部隊と、本丸で己の迷いと向かい合い仲間との絆を新たにする第二部隊、それぞれの物語が交錯するエピソードとなりました。
『ただただ主命を果たし、命の重さを顧みない道具的存在のままでいてはいけない、いたくない』という刀剣男士の思いを、兼さんだけが抱えているわけではない、というのが分かる話でもあったかな。
自己満足の欺瞞と謗られようとも、過去に生きた人々の生死を心に刻むべく食事を振る舞う第一部隊からは、先週鮮明に描かれた遠さや冷たさ、完成され終わった物語とはまた違う体温が、しっかり伝わってきました。
それと同じものを抱くからこそ、任務について日の浅い第二部隊は悩み、支え合い、先達とすれ違うように己の物語へと挑んでいく。
過去と未来、終わった物語とこれからの物語が交錯する中で、刀剣男士全てに共有される誇り高き生き方がぶっとく見えてくる、非常にいい回だったと思います。


というわけで、今回は第一部隊と第二部隊が過去と未来に別れ、それぞれ刀剣を握らない闘いをするお話です。
先週クールに任務を果たす第一部隊が印象的だっただけに、主命から外れたイケメン炊き出し任務はインパクトがありました。
京を覆っていたおどろおどろしい空気は晴れ、街に活気は戻ってきたけども、失われた命は帰ってこない。
計測可能な歴史の歪みが取りこぼしてしまう赤い血を、第一部隊もまた、第二部隊の熱血漢たちと同じようにしっかり見据えていました。

そこに至るには、今(そしてこれから)第二部隊と兼さんが悩んでいる葛藤があり、自分たちも血を流してきたのでしょう。
新入りの骨喰くんがいるおかげで、先んじて自分たちの物語を終え、一つの結論にたどり着いた第一部隊の歩みが、描かれずとも感じ取れるようになっています。
刀剣男士は人斬り包丁の付喪神であり、血の通わない大義を果たすことを第一義として、今の姿を取る。
しかし人の姿で暮らすうちに、己の足で歩き、頭で考える自由を深めていって、自分たちなりの答えを出すようになる。
第一部隊の中にいる骨喰くんだけではなく、そこから時間的にも距離的にも離れた場所にいる兼さんもまた、同じ迷い路を歩いて、三日月達がたどり着いた迷いなき境地にたどり着ける。
今回のお話は、刀剣男子という特殊な生命がどのように自我を発達させ、成長していくかというライフスパンを、横幅広く見せるお話だったと思います。

先週は荒々しく雄々しい戦姿ばかりが目立った第二部隊ですが、今回はイケメン炊き出し部隊へと変貌し、戦士の仮面に隠した情熱を溢れさせていました。
飄々とした源氏兄弟も、眉毛なくてこえー大典太くんも、陸奥守や兼さん達のように失われる命に思い悩み、迸る激情をちゃんと持っている。
大典太さんが、あくまで『主の刀剣』であろうとする骨喰くんをアツく説得するシーンは、経験の総量は違えど本丸に集うのは同じ刀剣男士、同じ仲間、同じ人間なのだと確信できる、いいシーンでした。
俺は一見人情味なんぞ捨てたように見えるクールガイが、とんでもなくホットな熱血を溢れさせちまうシーンが大好物でね……。

『現在進行系の物語』ってのはとにかくダイナミックで勢いがあるので、『既に終わった物語』というのはどうしても冷めて見られがちです。
先週一本で終わってたら第一部隊の思いも、そういう冷たさを避け得なかったと思うわけですが、今週『既に終わった物語』で獲得した『自分なりの答え』がまだ脈動して、彼らの魂に赤い血を流していることがしっかり伝わったことで、巧く一方だけを持ち上げることを回避していました。
色んな理由から直接描かれないにしても、第一部隊の古強者たちも、第二部隊の若人と同じ道を辿って、落ち着いた現状にたどり着いている。
その歩みと境地は同じように尊いわけで、踏みしめた道のりが選ばせた『特別な一日』をしっかり追いかけることで、『既に終わった物語』を体現し、第二部隊が見つけるべき答えを暗示する仕事を立派に果たした第一部隊の価値は、より強くなったように思います。


刀剣男士は時の客人であり、現地に留まって時間の流れに身をおくことは許されません。
彼らの任務は人間の理を超えたところから、人間の営みを守る超常的なものであり、そういう意味では骨喰くんの『欺瞞』という言葉も、真実の一端を掴んではいる。
そういう定めを受け入れているからこそ、第一部隊は先週超常の戦士として刃を振るい、主命をしっかり果たした上で、自分たちで決めた『特別な一日』にだけ留まっています。
それは長い戦いをくぐり抜けてきた闘士達が、主命と感情の間でつけた、一種の折り合いなのでしょう。

現地民と刀剣男士が『食事』を介して触れ合う場所が『河原』なのは、なかなか面白いところです。
本丸でも滔々と流れる河は時間そのものであり、そこに身体を浸すことを刀剣男士は許されていない。
しかし河と陸地の境界に位置し。古来よりの開放空間、人間の理から外れた『河原』においては、たった一日だけ夢を見ることが許される。
共同体の境に位置し、そのルールから外れた行為(芸事や皮革加工、屠殺まで)が行われた『河原』でしか、人間と刀剣が触れ合えないというのはちょっと儚くもありますが、その逸脱を世界が許してくれるという優しい舞台設定でもあります。

今回も『俺達だって、人の命を繋ぐ行為を大事に思ってるんだぜ……ッ』というメッセージを発するべく、飯は上手く使われていました。
あからさまに浮いてる不思議衣装の超絶イケメンが、地べたに腰を下ろして煮炊きし施す姿にはシュールなおかしみがあり、それ以上の真剣さがあった。
『これくらいしか出来ないからこそ、精一杯にやろう』という気概は、戦を楽しんでいる余裕すら感じる先週と対比を為して、より強い温もりを教えてくれました。
作画力があるので、焼き魚やイケメン汁がちゃんと美味そうなのが良いよね。

新兵・骨喰くんはそういうムードにうまく馴染めないわけですが、ベテランたちはそんな彼を『昔の自分』として暖かく見つめ、理解を示す。
言葉を尽くしてしっかり思いを伝えようとする山姥切くんがすごく頼もしくて、ジジイどもにケツ持ちされているだけではない、隊長に相応しいリーダーシップを感じました。
兵器として強く、ユニットとしてレベルが高いだけではなくて、経験の浅さが生む頑なさとか迷いとかを受け入れる優しさがあるのが、刀剣男士のモラル高いところですね。

そこに支えられて、骨喰くんが簡単には答えを出さず、目の前の矛盾を矛盾のままじっくり考えているのも、とても良い。
そういう迷いがあって初めて、自分なりの決意を胸に秘めた老練の強者へと変わっていけるのだろうし、心を持たない只の刃は、審神者も求めていないだろうしね。
無論それが大義である以上、時間遡行軍と戦い、パラメータ化された歴史を守る使命は果たさなきゃいけないんだけども、困惑や混迷を含めた感情が伴わなければ、刀剣『男士』が事件に関わる意味はない。
頼れる先輩たちに見守られながら、骨喰くんもまた、闘いと日常から己の為すべき『使命』と、守るべき『命』を見つけていくんだろうなぁ。

『お侍さんにとって、命のやり取りは当然のものなんだろ?』という老母の問は、第3話で浪士との間にかわされた問答と、ちょっと響くところがあります。
あの時は『士(さむらい)』という生き様の苛烈で輝く部分が強調され、そこに陸奥守と兼さんが共鳴していく形だったわけですが、命を刃に乗せて使う戦士の刃は、同じ戦士にだけ向けられるわけではない。
『士の心』と書いて『志』になるわけですが、それは剣を持たない民草の小さな、しかし大切な生活を断ち切ってまで守らなければならないほど、大きなものなのかという疑問が、老婆を通じて投げられた気がします。
これは直接には第二部隊には届かない距離から出てるけども、テーマ的には真芯を捕らえる大事な疑問ですよね。
今後闘いの中で、兼さん達が自分たちなりの『志』を、胸を張って手に入れる展開になると良いのですが。


骨喰くんの青春ワントップを残り五人で支える形の第一部隊に比べ、第二部隊はみんなでスクラムを組み、みんなで答えを見つけていくスタイルです。
先々週散々迷っていた兼さんは、水面に己の心を写し、沈思黙考しているところから話が始まります。
他人に支えられ、『皆』のなかで答え(に続く疑問)を見つける骨喰くんと、『独り』から初めて自分の足で仲間に近づき、頭を下げて一つになっていく兼さんの対比が、なかなか面白い。
その両方を、時間を超えて流れる『河』が見守っているのも、ちょっと興味深いモチーフですね。

一番最初に兼さんに寄り添い、不器用な彼から言葉を引き出していくのは、相棒たる国広です。
ちょっと頼りない部分もあるけども、果たすべき『使命』に迷いがない国広は、迷えるリーダー兼さんに足りないところを補う、最高のパートナーですね。
あまりにも完成度が高くて正解ばっかり出すので、いるのが当たり前になってその尊さを忘れてしまう、ラブコメの幼馴染枠みてーなキャラだな国広……『良い人過ぎて、恋愛対象に出来ない』とかいう寝言をぶっこまれるタイプ。

兼さんが水鏡を前に己を見る時、ちょっと大きめの石に胡座をかいているのは、なかなかレイアウトの妙味だと思いました。
絵的に面白いってのもありますが、あそこで嵩上げしているお陰で国広を見下すでも、見下されるでもない、しかし国広の迷いのなさがちょっとだけ上回る絶妙なポジションに、二人の距離が調整されるんですよね。
普段はでっかくて頼れる兼さんと、小さい女房役国広って関係性が強調されてるんだけども、身体を折りたたんであぐらを組むことで、心がちょっと萎縮している現状が巧くビジュアル化されている。
でも兼さんは(先々週のジジイや陸奥守の助けもあって)答えには近づいていて、完全に大間違いってわけでもない。
そこら辺の心理状況を非常に巧くカメラで切り取っていて、やっぱ表現力のあるアニメだなと思いました。

国広を筆頭に、兼さんは『頼りない隊長ですまねぇ。もう一度俺と戦ってくれ』という想いを言葉にし、頭を下げて筋を通します。
みんな兼さんが良い人で、真面目で、迷うからこそ可能性を感じる『良い奴』だってのは知ってるんだけども、そこに甘えず自分の未熟さを侘び、関係を再構築する努力を怠けないところが、とっても良いです。
出自的に兄弟とも言える親しい国広にも、ちゃんと仁義を切って思いを伝えるところが、生真面目でいいなと思います。
そういう人格的清潔さがしっかり描写されると、回りが兼さんを立てて敬う展開にも、スッと乗っかることが出来るわけです。


そこから兼さんの謝罪巡業は続くわけですが、国広に続く親しさで近寄ってくるのが陸奥守なのは、なかなか面白い。
彼らがぶつかり合うのは期待の表れで、『コイツならもっと正しいことが出来るのに、なんでわからないんだ!』という苛立ちがあるからでしょう。
「お前が隊長になるかもしれないぞ」という軽口を「まっこと正しい」と軽口で返しつつ、重い口調で「でも、おまんはそれでええんか?」と続けるあたりに、陸奥守の兼さんへの強い期待が感じられます。
元々『主命』よりも目の前の『命』を大事にしがちな陸奥守は、『自分の答え』ってのを重く受け止めてるキャラなのだと思います。
そういう男が惚れ込んだ男が、状況に流されるまま只の刃になってしまうのは、陸奥守にとってなかなか耐え難いのでしょう。
そういう気持ちを素直に言えないところが、ツンデレアーツ黒帯って感じですね。
二億点です。

『アタイの胸キュン……ちゃんと判ってよね……』という陸奥守の漢女心を横において、兼さんは薬研くんと鶴丸にも思いを伝え、筋を通していきます。
この時『厩舎』と『菜園』という、物言わぬ命が日常の中で育まれている場所が舞台になるのは、本丸が何を守っているのかを巧く暗示していて、とてもいいです。
主命から離れた第一部隊が遠い過去で育んでいるものを、審神者の膝下である本丸でも慈しみ、大事にしている。
剣を置いて鍬や笊を持つ刀剣男士の姿が一瞬映ることで、本丸全体が共有している『命』の値札が見えるのは、とてもいいと思います。
馬に(文字通り)舐められるシーンも、仲間との親密さを確認していくエピソードを巧く変奏していて、いいアクセントだった。

『水も滴る良い少年』とばかりに、あざといサスペンダー半ズボン姿を強調する薬研くんですが、兼さんより下の位置にあえて入っているのは、なかなか面白い。
何かに押し付けられたのではない、兼さんの『自分の答え』であるのを確認したら即座に「良いぜ」と答えられる薬研くんは、身の丈に似合わぬ成熟を心に飼っているわけです。
でもあえて下に入って、兼さんの提案を受ける形で状況をまとめ上げていく。
刀の代わりに包丁を握って、人民の中に入っていく第一部隊にも似た靭やかな強さが、薬研くんにはあると思います。
『負けるが勝ち』的な強さというか。

薬研くんが見せたしなやかさを、兼さんも獲得していきます。
陸奥守の思いは肌で感じとっていて、でもそこに素直にはなれない。
ツンデレ×ツンデレの牽制合戦は最終局面まで行っても破裂せず、焦れきった陸奥守がアニメ史上に残る良い作画の地団駄を踏むことになる、と。
この時も荒ぶる陸奥守は立って。兼さんは座ったまま下に入り、「お前が必要だ。あの時助けてくれなれば、俺は死んでいた」と、言い争うことなく素直に気持ちを言葉にする。
あんまり真っ直ぐなので、拗れた陸奥守には受け取りにくいわけですが、そこは女房役の国広が巧く噛み砕き、通訳を買って出る、と。

本丸の日常の中をどっしりと自分の足で歩き、隊員一人ひとりに誠実に向き合い、思いを伝える旅路。
たどり着いた答えを骨喰くん一人に伝えていく第一部隊の歩みとは少し違うけども、同じ悩みに飛び込み、一つになっていく頼もしさを描くという意味では共通もしている。
そういうものをじっくり切り取る今回は、第二部隊の再起としてとても良かったです。
自分たちの至らぬ部分、頭を悩ます疑問と向かい合うことで、たどり着くべき答えへの道筋が見えてくるのだとしたら、兼さんのイライラ旅は必要な癒やしであり、試練でもあったのでしょう。
人を成長させる波風を前に、孤独に放っておくのではなく手を差し伸べ、言葉を変え、あるいは見守る情が本丸の中間にあるということも判って、ここ三話の迷い路はとても良かったです。

精神的な傷に向かい合った兼さんに対し、身体的な傷で寝込んでいた蜻蛉切さんという対比も、なかなか興味深い。
傷をケアしてくれる有難みも、塩大福という印象的なアイテムを活用して、こっちでもしっかり描かれていました。
おんなじテーマを立場とキャラクター、舞台を変えて何度も描くことで、分厚く熱くなっていくってのは、非常に大事だと思いますね。


自分で選んだ『特別な一日』を終え、帰って来る者たちと、強い結びつきを確認し新たな戦場に赴く赴く者たち。
彼らが共有するものが描かれた後だからこそ、あの交錯は凄く分厚い意味を持つ、良いラストカットでした。
立場や経験、来歴は違えど、人としての想い、士としての決意を共有する戦士達が、戦場と本丸、2つの部隊で鍛え上げられる。
活撃そのものを2つの舞台に背負わせて、そこからまた新しい物語が始まる活力にも満ちていて、本当に素晴らしい。

先々週思いをぶつけ、千々に乱れた思いに筋道をつけてくれた三日月と、答えを手に入れた兼さんが一瞬会話をするのが、ここに至るまで歩いた道、確認した想いを含んで豊かだなぁ。
あの時交錯した視線と言葉は、先々週ジジイが兼さんから引き出したモヤモヤに答えを出せたか、その確認でもあるわけで。
部隊の同志たる骨喰くんだけでなく、別チームにまで目配せ効かせているあたり、ジジイはほんと偉い。

とはいうものの、第二部隊は未だ完成とはいえず、彼らを鍛え上げる戦場はこれから先に待ち構えています。
『歴史を守る』という題目の本当の意味は、第一部隊が物語の前景で掴み取ったように、さらなる苦しみに挑んで初めて掴めるものなのでしょう。
そういう戦いに挑めるのもまた、傷を癒やし迷いを受け止めてくれる『本丸』があるからこそ。
刀をあえて握らないことで、戦いが成立する構図がより鮮明になる、良いエピソードだったと思います。
やっぱ派手で受けの良い要素だけを強調するのではなく、それを裏打ちする影の部分にしっかり切り込み、表現力豊かに語ってくれるアニメは、見てて面白いやね。


今回は第一部隊と第二部隊だけではなく、その上に立ち、あるいは間をつなぐ審神者……そして本丸という組織そのものもしっかり描かれました。
審神者の守りたい歴史』というのは、果たすべき主命であると同時に大切なものを取りこぼす、信頼しすぎてはいけない看板として扱われています。
しかし刀剣男子が、時に背中を向けつつも『主の刃』であることに誇りと納得を抱いているように、審神者もまた刀剣男士個人の想いや個性をしっかり受け止め、配慮している。
そういう様子が細かい描写から伝わってくるのは、彼(彼女?)を好きになり信頼するのに十分な足場になってくれます。

ミッションの評価分析、部隊マネージャーであるこんのすけとのミーティング、現場作業員である兼さんとの交流。
審神者は指揮者として、組織の長としてするべき仕事を相当真面目にこなしていて、彼の優秀さと優しさがあればこそ、第一部隊の『特別な一日』という逸脱も許容されているのだと感じました。
死闘の中で兵器の心を気にかける余裕があるのは、審神者が高潔な人格の持ち主であること、それを可能にする能力がちゃんとあるからだろうし。
直接答えを見つけるのは刀剣男子に任せつつ、それに必要な環境を整え、手に入れた答えを聞き届ける仕事はしっかり果たすあたり、職分を弁えた良い審神者だ……。

本丸からちょっと離れた周辺の自然を切り取ることで、先々週強調された折り目正しさとはまた違う、返ってくるべきホームの温かみみたいのが、うまく強調もされていました。
第一部隊が帰還し、第二部隊が旅立っていく『交点』の今回、背景として『本丸は良いところで、ここに帰ってこようと思えるから戦えるのだ』というメッセージがないと、話の奥行きが消えちゃうんですよね。
内勤の風景をファンサービス交えつつ描くだけではなく、仕上がった美術をどどんと叩きつけて『あ、いい場所だな』とパワーで納得させる力技、お見事でした。
入れ物の美麗さがあればこそ、そこに詰まっている刀剣男子たちの優しさと誇りも輝くわけで、象徴を巧く使って内実を細かく伝達する手腕、雄弁で好きだな。


というわけで、宿命の戦いに挑む戦士たち、それぞれの想いを別角度から掘り下げていくお話でした。
既にベテランとなったもの、今まさに戦いに挑むもの、それを遠くから見守るもの。
それぞれ立場は違えど同じ暗雲に挑み、それぞれの答えを手に入れることの意味をしっかり描いてくれて、とても良いエピソードでした。

第二部隊と第一部隊の差って、ゲーム的には『レベル』っていう味のないパラメーターの差だと思うのですね。
しかしプレイヤーが彼らをレベリングする中で、色んなイベントがあり思い入れが生まれ、独特の妄想≒物語が生まれてくる。
そういう感情の太さに支えられてアニメ化にたどり着いた(であろう)コンテンツの中で、『これからレベルアップしていく』新米を主役に据えつつ、『既にレベル上げを終えた』ベテラン部隊も疎かにしなかったのは、ゲームとアニメ、個人的体験と共益的物語のバランスを高度に取った、なかなかのアクロバットだと感じました。
キャラクターや背景設定だけではなく、原作のゲームシステム、ゲームという体験そのものにリスペクトを払いアニメを作っていくのって、やっぱ凄いことだなぁと思う。
……まぁ僕はブラゲーユーザーではないので、出てきたものから仮想的演繹かまして勝手に感じてるだけなわけですが。

第一部隊の『特別な一日』にしても、兼さんの迷妄行脚にしても、『自分で選ぶ』ということが凄く大きな共通テーマになっています。
それは『本丸』という組織に所属する歯車であり、『刀剣』という道具的存在として生まれた彼らが、、『男士』として志を手に入れる宿命にある『刀剣男士』であることを、巧く踏まえたテーマ設定だと思います。

冷たい鉄、他人にほしいままにされる存在として生を受け、新たな宿命と使命のもとに生まれ直した彼らは、時間から解き放たれた異形であり、同時に厳しさと優しさの中で成長する人間でもあります。
他人と大義に使われる存在であり、同時に個別の意志を貫き通す存在でもある彼らが、新たな戦いの中でどのような疑問と出会うのか。
それを乗り越えるために、どのように支え合うのか。
刀剣乱舞後半戦、己を洗い直す見事な中休みを挟んで、さらに期待が高まりますね。

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