エヴァQ、見てきますた。
パパーっとバレありの感想を書き記しますので、見てないかたは要注意でござす。
前向きな映画だなー、と思った。
人類の状況やシンちゃんに対する周りの態度、彼がやろうと思ったことの結果はそらもう手酷いもんですが、完結編という上がる尺があること前提の下げで、もっと腹にズブンと来る奴を想定していたので安心しました。
この映画、徹頭徹尾碇シンジの映画で、シンジが見てないものは基本的に描かれないし、シンジに関係ない人は基本的に存在してない。
設定面のかっ飛ばしや、全然説明もコミュニケーションも取ってくれない人々も、シンジの当惑や無知に視聴者が一体化するように描かれていると感じました。
視線での心理誘導が巧くて、シンちゃんより下の目線で話してくれる人は、カヲルくんまで待たないと出てこない徹底ぶり。
ヴンターに乗っている間は、目を合わせないかわざわざ壁によじ登ってでも上を取ろうとする人ばかりよ。
14年間がかっ飛ばされ、破の予告が見事嘘予告と化したのは、シンジの空白と彼が自動的に背負ってしまった罪に重点したかったから、なのかなぁ。
ヴィレの面々が地球最後の人類なのか、はたまたそうでないかはわからんですが、ともかくあの地球では日常之地獄から逃れられる人はいなかっただろうし、その重さを共有できないシンジが世界から切り離されていく状況を作りたかったんだろうか。
酷だとは思うが、ヴィレの人たちに想像力をのばすと、あんま文句も言えない派。
そのヴィレのトップになっちゃったミサトさんは相変わらず新劇らしい優しさで、ぶっ殺しチョーカーをハメつつも、あそこで殺しスイッチを押せないのが全部かなぁ、と思いました。
あの時のミサトさんの背中を見つめるリッちゃんはとてもイイ演技をしていて、シンジの映画であるQでも存在感があったな。
そんなヴィレに背中を向けたシンちゃんは、終わった世界であるネルフに行くわけですが。
積極的に話しかけてコミュニケーションを取ろうとするのも新劇シンちゃんらしい前向きさ。
まさかシンジが女の服を褒めるとはなぁ。空振りだったけど。
ネルフは死人の世界なので、シンちゃんの呼びかけは虚しい谺となって、受け取ってくれたのはカヲルくんだけでした。
カヲルくんは純愛だった。
アイツほんとシンジ好きだな。
恋人というよりも、やらかしちゃった子供の後始末をする母親みたいな全肯定っぷりで、生きてりゃあシンジも救われたものを、と思っちゃった。
でも、槍でやり直すのをミスった後の長考で多分、自分が死んでシンジを活かすルートへの覚悟を決めた男の死に様なので、尊重したいと思った。
あの死んだ世界で音楽が響いてきた時、そして音楽でつながることが出来た時、シンちゃんはどれくらい救われたんだろうか。
「とっととおっ死ね」か「喋りかけるな」というサインしか投げかけられなかった今回のシンジが、ぶっ殺しチョーカーを肩代わりして、「なんとなればお前と死ぬよ」と言ってくれた時、どんくらい安心したんだろうか。
シンちゃんの人生はなかなかうまく行かないけど、今回カヲルくんと触れ合えたことそれ自体は、なかなかに奇跡的で、温かいことだったと思う。
意外だったのは冬月先生がシンちゃんにコンタクトを取ってきたことです。
まぁあのネルフで色々話すのは冬月先生かカヲルくんかしかいないわけで、喋っちゃったら分かり合っちゃって話が終わるラスボスことゲンドウくんの代弁者としては、冬月先生が適任か。
正座して座卓越しに話すのがメトロン星人っぽくて、ちょっと面白かった。
とはいうものの別に冬月先生もシンジに優しい訳ではなくて、むしろゲンドウに優しいなぁと感じた。
14年間二人で暮らしてりゃそうなるか。
愛の戦士カヲルくんの頭が吹っ飛んで終わったら、まかり間違っても「前向きな映画」とは思わなかったんでしょうが、アスカが凄い勢いで話を展開させて強引に前向きにした。
カヲルくん以外のチルドレン、全員アスカが拾ってんじゃねーか！
加持さん依存もママンへのコンプレックスも省略された新劇アスカが、14年間戦いに明け暮れると、自分の傷に構わず突っ込んでくる人物になるのかなぁ。
これで多分、TV版21話以降+EoEまでが終わったんだろうなぁ、と感じます。
20話までは普通のロボットアニメだった旧エヴァが、「もー頭ン中グッチャグッチャです！！」という庵野の私小説坂を真っ逆さまに降っていた部分。
それをリメイクした今作は、下がりつつも上がるための伏線が丁寧に張ってある、結構わかりやすいアニメでした。
ゲンドウと冬月先生以外は「ここ踏んでジャンプアップ」という場所があって、それは例えば黒波さんがアスカに背中を押されて気づいた生存への意志だったり、一回一人でデッパツしたあと帰ってきてくれるアスカだったり、カヲルくんが死ぬ前に『僕のせいだ』ではなくて『僕のせいなのかな』と考える様子を見せてるシンジだったり、まぁそんな感じです。
視聴者への意図的な不親切さから鑑みると結構甘い評価かもしれんですが、結局自分、エヴァンゲリオンが好きなんですな。
シン、楽しみッス。
