イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

グラゼニ 4

森高夕次&アダチケイジ、講談社。銭と野球とプロフェッショナルにまつわる漫画、四巻目。今回は一巻まるまる「樹編」というべき、コンパクトに纏まった良作でした。毎度おなじみ、冷静かつ冷徹に割り切る主人公凡田と、感情と甘さで野球をやる二軍出身叩き上げの樹。二人の野球プロフェッショナルの立場が生み出す、相互作用が非常に上手く働いていた巻だと思います。
既に最初のエピソードからして、「プロフェッショナルはクールでテクニカルであるべきか」というテーマを全面に押し出し、ヘッドスライディングの是非という解りやすく、興味を引くアイテムを有効活用しておるわけです。その上で、ヘッドスライディングを強要された二人ではなく、凡田をアクシデントに巻き込む意外性の演出がうまい。
この後樹が顔を見せ、凡田の冷徹な理論を飲み込んで結果を出していくわけですが、最終局面は情の野球がはじまる。ここで上手いなぁと思ったのは、無用なサスペンスであるところの赤ちゃんの生死をとっとと解消して、余計なブレを防いでいる所。最も重要なのは野球の勝負論に情がどう絡むのか、というところであり、樹の赤ちゃんはそのための装置ですので、P182、183は非常に考えられたページだと思います。
結果、優勝の絡んだ局面で凡田はプレッシャーに飲み込まれ、戦犯寸前まで追い込まれる。それをひっくり返したのは樹のスタイルである、情の野球。でもそれも結果論かも知れない、というところを提示してこのエピソードは閉じられる。結果と過程、情と理性の間を行ったりきたりするバランス感覚から生み出される面白さが、この漫画のパワーであることを如実に示す名中編だったと思います。
巻末付録というかなんというか、おまけエピソード的な高校編も相変わらず面白くて、ナッツの不敵さが今の凡田とあんましっくり来ないところが、逆に高校野球とプロの差を感じさせて面白い。西浦センパイの必死さとか、本編にはない高校野球感を上手く出しているなぁと思います。ひと粒で二度美味しい、いい漫画じゃ。