イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ゆるゆり さん☆ハイ:第7話『忘れられない一日になる』感想

恋と友情の間を泳ぎ続ける熱帯魚のお話、今回はデートとデートとデート回。
コメディ要素も日常要素も抑えめに、徹底的に女の子と女の子がデートし続けるという、濃度濃い目の回でした。
細やかな動きでの芝居、背景の美麗さを活かしたカメラを据えての演出と、穏やかながら見せ方が凝っていた印象。
こうもド直球にゆるゆりしてくれると、やっぱ嬉しいもんですな。

今回は三組のカップルがキャイキャイする展開でしたが、それぞれ表情が違っていた印象。
ツンツン綾乃が勇気を振り絞って京子に接近していって、その思いが報われる展開だとか。
性欲の権化と良い友達の間を行ったり来たりするちなつを、慈母のように受け止めるあかりだとか。
あかりちゃん相手には欲望全開になるくせに、本命相手にはおぼこいところを見せるちなつだとか。
真正面からゆるゆりしに行った結果、キャラクターの一番柔らかいところが見えた印象です。

綾乃のツンデレって結構ギャグで流されがちというか、ツンツンしすぎた結果報われない印象が強いわけですが、今回はフツーに恋してフツーにデートしてフツーにいい話に収まった。
こういうフツーの感情の流れって、『日常系百合ギャグ漫画』という複合ジャンルに分類されるゆるゆりが『百合漫画』である裏打ちとして、大事な部分だと思う。
『日常系ギャグ漫画』としては濃い目にキャラを味付けし、酷いことした上で酷いまんま流す弄りも大事なんだけど、それだけだと『百合漫画』に必要な感情の柔らかさが失われてしまうと、僕は感じる。
三期はそこら辺、いいバランスで運行している気がするなぁ。

京子が無自覚ながら誠心誠意、綾乃に向かい合った対応をしているところが良い。
つーか褒め過ぎ触りすぎのコミュニケーション強者過ぎて、三期は特に京子周りの語らない描写が太い気がする。
単純に僕が京子好きだから目につくだけで、全体的に仕草の芝居は細かいのかもしれん。


ちなつも久々にセックスモンスターの顔を見せつつ、あかりと仲良く過ごしていた。
結衣相手には嘘っぽいというか、恋に恋する自分自身に舞い上がっている感じがするちなつだが、あかり相手には自然体に百合しているというか、穏やかで微笑ましい友情からシームレスに性欲ぶっこむ流れが好き。
ちなつも感慨なくドライにあかりを貪っているように見えて、友達として大事に思っている描写もちゃんとある変なバランスが、この二人は好きだ。
お互い『練習』という題目で始まった肉体関係にズブズブになって、快楽で友情を腐敗させていきそうなオーラがちょいちょい見えるものの、そこから先には踏み込めないのがゆるゆり世界のルールだな。

あかりちゃんもあのセックスモンスター相手によく友達付き合いしていると思うが、彼女らがダラっと過ごす日々の楽しさみたいのは、今回かなり良く伝わってきた。
OVA二作目以来となる平牧大輔の絵の作り方、芝居の付け方はやはり独特でありながら魅力的で、富山の穏やかな風景を大事にする演出が、巧く百合と日常を融合させている。
あかりとちなつの追いかけっこは一期二期でもあったが、背動を駆使して元気に回していた過去の演出と比較すると、三期の特徴がよく出る気がするな。
ズシンとカメラを据え付けて、少女たちの風景を窃視する視線というのは、単純なアクションシーンの作りにとどまらず、作品全体に伸びる影だ。
『百合』も『日常』も『コメディ』も色々やりつつ、全体的なトーンと哲学が統一されているのは、見ていて気持ちが良いですね。

結衣に関してはあくまで友達ラインというか、肉欲混じりの関係は京子にしか許していない頑固さみたいのが感じ取れる立ち回りだった。
綾乃→京子にしても、ちなつ→結衣にしても、お互い本命が明確にいる中での空回りではあるんだな……。
京子が綾野に真剣に向き合ったり、ちなつが自分自身の空回りを楽しんでいる描写がちゃんとあるので、哀れみや悲しさみたいのはそんなに感じないわけだが。
布団に潜り込む動きが姉と全く同じなところは、血縁を感じる細かい演出でグッドでした。

というわけで、ゆりゆりの『百合』を徹底的にやり切った、デートでデートでデートな回でした。
三期のシックな演出で『百合』をやり切ると、穏やかさと可愛気、湿度と爽やかさが両立したいい雰囲気になるということが分かり、とても良かったです。
デート回をしっかりやってくれると、彼女たちが肉欲を持った思春期の獣であることを思い出せて、個人的な好みとしては有り難い。
たとえ調整された水槽の中で泳いでいても、彼女たちが一個の人格を持った中学生であることを大事にしてくれると、僕はとても暖かい気持ちになるのだ。