イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ルパン三世:第13話『ルパン三世の最期』感想

一足お先に第2クール! 新時代を疾走するスティーラー・スリラー、今週はルパンととっつぁんのなかよくケンカしな。
『裏番組で女子高生たちがイチャイチャアイドルしているので、張り合っておっさん二人がイチャイチャしてみました!』と言わんばかりの、濃厚な男たちの関係性に分け入った話でした。
第1クール第1話が『ルパン三世の結婚』で、第2クール第1話が『ルパン三世の最期』だもんなぁ……面白い対比だ、色々と。

前回大立回りしたツケとして、とっつぁんにお縄を貰ったルパン。
『ルパンの脱獄』という名前のショートコントでもしているように、定番シチュエーションでの脱出ネタを片っ端から潰し、最終的にはまるで鋼鉄の玄室のような独房に、とっつぁん付きっ切りでの監視体制が敷かれます。
脱獄コントは、もはや文化的アイコンとも言えるルパン三世をいい具合に俯瞰したネタでして、『ルパンならこういう脱獄をする』という視聴者の期待とイメージを巧く利用した、小粋な笑いだったと思います。
ただメタネタで一笑取るだけではなく、クレバーなオチに繋がる使い方をしているのが良い。

玄室に入ってからは濃厚な愛憎関係がザックザックと描写され、俺の心臓に住んでいる乙女が騒いでしょうがなかった。
ご飯も暖かいのを手作りしている辺り、とっつぁんルパン好き過ぎる女子力高過ぎる……知ってたけど。
『何がろこどるだ! あっちが流川ならワシは埼玉県警出向だ!!』というとっつぁんの声、俺聞こえたよ……。(聖夜の幻聴)


今回は食事が一種のコミュニケーションツールとして描かれていて、食事を拒絶することは対話と理解を拒むこととイコールです。
警官である銭形は泥棒であるルパンを理解してはいけないし、その結果として玄室にブチ込んだわけですが、それでもルパンに対話≒食事を拒まれることはショックだし、理解も出来ない。
やせ衰えていくルパンにショックを受けたのは、その先にある『死』をイメージしたというのももちろんあるのでしょうが、世界最高の泥棒歌劇を一緒に作り上げてきた宿敵として、繋がり合っていたものが切れてしまった不安が大きかったように思います。
同時に泥棒を拒絶する刑事のスタイルにとっつぁんは誇りを持っていて、ルパンが死ぬ(と思い込む)までは自分を抑えていたところに、キャラのプライドを大事にする劇作が感じられとても良い。

扉越しにタバコ(≒火が付いて暖かい、口に入れるもの)を同じくするシーンには、結構強烈な演出的意図が込められています。
『衣・食・住』を操作することでお話に特定の意味を込めるのは演出術の基本ですが、挑発を繰り返し対話を拒否するルパンにあえて踏み込まずに話を進め、銭形に視聴者の心理的足場が移るよう展開してきたこのお話、あの瞬間が分水嶺になるわけです。
食事を拒み対話を拒絶してきたルパンが、初めて銭形にタバコをねだり、お互いの美学を語り合う。
今回のお話はルパンのクローゼットが開けられるあの瞬間に、お話の主役と視聴者の代理人はルパンに移るように、口に入れるものを丁寧に使ってコントロールされていました。
ここら辺の『一回完結のエピソードで何をテーマにするか』『それを効果的に感じさせるためにどういう演出を組み上げていくか』という意識の高さは、2015の強みだと思う。

トリックアートを使った逆転の一手と、それを成立させるための周到な誘導は、話が監獄内だけで成立する閉塞したシチュエーションだからこそ、スカッと一発入れられた気持ちよさがありました。
監獄コントで楽しませて、濃厚なブロマンスで心をくすぐり、スクリューの効いたトリックで泥棒ルパンを復活させる。
キャラは銭形とルパン、場所は監獄しか描かれていないのに、お話を縦横無尽に転がしつついろんな満足を与えてくれる話運びは、とても素晴らしかったです。
ほんと『ルパンらしい』スマートさよね、2015。

というわけで脱獄を果たしたルパンですが、いつものメンバー+シリーズゲストも元気そうで、MI6の陰謀家たちも動揺。
ピクル(もしくは『柱の男』)みたいな全裸マンも意味ありげに登場して、第2クールがどうなるのか、とっても楽しみです……声はカーズか。
折り返し点を過ぎても切れ味衰えず、やっぱり面白いルパン2015でした。