イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ルパン三世:第22話『ルパン、頂きに参ります』感想

リスペクトを込めてハイクオリティに展開してきたルパン2015も残り三話、今週はレベッカロッセリーニのラストエピソード。
シリーズゲストとしてお話の骨格を支えてきたわがまま少女が、ルパン三世にどんな気持ちを抱いているのか、丁寧に転がすお話でした。
子供っぽさを残るレベッカの挑発と戯れながら、少しだけ本気の『ルパン三世』を出して受け止めてあげるルパンがバチッと決まっていて、良い〆方だったなぁ……。

思い返せば第1話、ルパンとレベッカの結婚から始まったこのアニメですが、1クール目は『イタリアの夢』と浦賀を巡る丁丁発止を挟んで、レベッカが過去の思い出に決着をつける物語だったといえます。
2クール目からはあまり出番がなかったわけですが、そろそろお話を閉じるに辺り、第11・12話で絡みあったルパンとレベッカの気持ちを一回解して、決着をつけるエピソードを挟んできました。
僕はレベッカがとても好きなので、彼女の気持ちに入り込んで丁寧に扱ってくれた今回は、凄くありがたいお話でした。

今はスキャンダルとスリルに耽溺していますが、第12話で見せたようにレベッカは、素朴な性格をした女の子です。
浦賀との過去を復帰って赤ワインを飲めるようになったとはいえ、まだまだロブソンが親代わりをしなければいけない子供であり、ルパンも基本的にはそのように扱っています。
予告状をばらまき、ルパンと追いかけっこを繰り返しながら、レベッカは今回、大人と子供の間で自分を見つけようとしているのでしょう。
ルパン2015を通しで見ると、過去に大きな傷を受けたレベッカの治癒と成長をルパンが見守り手助けする、一種の成長物語として読めるのかもしれない。

浦賀を失って以来見せかけのスリルに逃げてきたレベッカは、自分自身と向かい合うチャンスが少なく、人格的な危うさを抱え込んだ子供です。
そんな彼女が現実逃避の一環として触りに行ったルパンはしかし、日本を代表する怪盗として約40年自分を保ち続けてきた筋金入りであり、そんなプロの魂に触れることでレベッカも変わった。
ルパンとの憧れと恋心の入り混じった感情をどうにも抱えきれず、暴走に近い形で叩きつけてしまう今回のお話は、遅れてやってきたレベッカの青春期なのだといえます。
なので、恋が実らず泥棒稼業もスマートに行かない、失敗する等身大の自分を受け入れる展開なのは、凄く納得がいく。
父親でもあり恋人でもあるルパンにぶつかり、翻弄され、自分を出し切って、身の丈にあったビールに落ち着く展開は、これまでの背伸びしたレベッカとはまた違う、小さな温かみのある姿でした。


結局ルパンとロブソンはずーっとレベッカを手玉に取り、その未熟さをサポートする大人の立場を崩しません。
『ルパンの花嫁』としてシリーズに登場したレベッカはその実、自分よりはるかに完成されたルパン三世に憧れ、恋とも言えない恋に戯れている『ルパンの娘』だったのでしょう。
しかしその気持はとても真剣で切実であり、だからこそルパンはそれを大真面目に受け止め、第12話においてレベッカを守る形で逮捕される。

今回のレベッカからの挑戦を捌く姿も、自分に憧れる子供と戯れるように気楽に、しかしある一面で非常に真剣に遊ぶ、とてもルパン三世らしい振る舞いでした。
子供相手に本気の恋は出来ないけど、子供の真剣さを無下にするほど無粋でもない男が差し出せるギリギリの譲歩が、最後のスリルなんでしょうね。
そういう彼が永遠に追い続ける女として峰不二子はいるわけで、『レベッカを見守る二人の父親』という構図をかき回し、スパイスを効かせる今回の出番は、とても良かったです。

ルパンという存在はその歴史を引受、1キャラクターの枠を超えた大きなものです。
如何に魅力的とはいえ、2015のシリーズゲストであるレベッカがあっという間にその域に達してしまうよりも、『自分はルパンや不二子にはなれない』という事実を受け止め、思春期の少女らしい悩みや力不足も含めて、自分らしさを引き受ける形でまとめたのは、レベッカというキャラクターだけではなく、2015というシリーズもよく見た展開だと思います。
レベッカのとても人間的な感情を真摯に受け止め、時に遊戯的に弄ぶルパンを描くことで、『ルパンらしさ』もまた演出できるわけで、2015らしい巧みな展開だったと思います。
まぁ超人的なトンチキアクションでルパンを目立たせる仕事は、ニクスとダ・ヴィンチおじさんがやれば良いやな。


そんなわけで、これまで22話お話を支えてくれた女の子に、ちゃんと報いる優しい話でした。
レベッカを大事にした上で、『ルパン三世』というアイコンの価値を高める、クールでスマートな立ち回りを崩さない所が非常に良い。
第1話、第10話、第11話、第12話と続いたレベッカの物語に、気持ちのいい幕が下りて、彼女のことが好きな僕はとても満足と感謝を覚えました。
ありがたい。

気付けばもう残り2話で、2015もおしまいです。
こっからはダ・ヴィンチおじさんの大暴れタイムですが、どう盛り上げてどう〆るのか、非常に楽しみです。
2015が持っている丁寧さとリスペクトが最後まで続き、楽しいルパン三世を堪能できると最高だなぁと思いつつ、来週を待ちます。