イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

NORN9 ノルン+ノネット:第11話『リセット』感想

炎と水の浄化を世界にもたらす系乙女ゲー、今週はモチベーションの最終確認と、ポンコツロボの終末幻想。
朔也がなんかすげー大人しく身を引いたり、ヒロインに選ばれなかった男やもめ共がお互いを慰めあったり、赤の他人の運命背負っておきながら一歩もノルンの外に出ようとはしないインナーマインド全開の救世主たちだったり、まぁノルンっぽいお話だった。
『誰か一人を選んで恋をする』という乙女ゲーの唯一性と、世界巻き込んで虐殺を行うリセットの共益破壊性が、そもそもにおいて食合せ悪いのかもしれんな。(残り一話しかないのにお話の根っこを揺るがす発見)

ルートが完全に定まった桃と青に対して、二人の男の間で揺れる黒ノルンであったが、結局夏彦さんを選ぶ模様。
個人的な感想を言うと、朔也が都合のいい男過ぎてやべぇ。
残り時間もすくねぇのでグダグダ言ってると終わりゃしないのも判るが、もう少し物分かり悪くても良いのよ……。
寝ている間にトロフィーゲットという形になった夏彦さんは、これで始まる恋に納得行くんだろうか……そもそも朔也がライバルだということを認識しているのだろうか。
もう少し深琴周りは時間使っても良かった気がするなぁ……残りの二人が納得行くルート整備をしていただけに、正直惜しい。

恋といえばクッソポンコツロボと1ONを担当することになった空汰は『いや……転生とか言われても……2000年一緒に寝てたとか重いし……あとポンコツすぎるし……』と、至極当然のリアクションを返していた。(一部返していません)
そらな、司会進行担当の恋愛モブだと思ってたら、ラスボス専用の主人公だよ! とか言われても、色々急だわな。
愛が重すぎて気が狂った史狼さんに対し、長年酷使された結果ポンコツになったけど愛情は忘れなかったアイオーンには十分共感の余地があるので、拾いにくいモチベだと思うが空汰には頑張っていただきたい。
つうかお前が頑張んねぇと、戦争するかもしれない可能性を持ちつつもそれはあくまで可能性にすぎない、基本何の罪もない地球七十億の人民が全員死ぬ!!


そうなんですよ。
想像を遥かに超えてアイオーンがポンコツでして、アドミニスター能力者の承認は無視して能力取り上げてリセット始めようとするし、その規模もアホみたいにデカいしで、まったくもって困っちゃう。
幻想の中で見た『リセット』は大迫力映像だったし、ラグナロクの基本的構図(炎→洪水→樹)を抑えていて感心もするが、こんな大破壊引き起こすなら、少しは当事者の話を聞け。
『世界』はゼーレっぽいし、史狼さんもゲンドウっぽいし、ノルノネは旧エヴァだった……?(短絡的思想)

全世界規模の虐殺を決断するには、主人公たち身内でキャイキャイしすぎたってのはあるが、そもそもノルンに拉致ってきた時点で当事者の世界を小さくし、選択肢を矮小化する気まんまんだしな『世界』……控えめに言って滅んだほうが良いんじゃねぇかなぁ。
『乙女ゲーは恋するのがメイン!』つう理屈は良く良く判るが、最終地点にこういう大きくて広い決断が待っているのなら、『恋以外の経験も積ませてやって良かったんじゃねぇの……』と思わなくもない。
が、まぁただでさえ人数多いのに、イベントの種類増やしたら収まるもんも収まらないか。

そういう意味では、恋心という自分のエゴ一本槍で走りきり、登場人物の中で唯一明確にリセットにNOを唱えているこはるは、ある意味頼もしい。
『世界と恋心を天秤にかけて、自分と恋人が重いという』独善、『世界全員が幸せでも、ワタシが幸せじゃないから死ね!!』というロックンロールが許されているのが、ラブストーリーの主人公というものだ。
能力暴走してボーボー燃えてたけど、まさかお前がラスボスになるとは……こはるはスルトで駆はバルドルだったってわけだな。(今更な発見)

一対一の顔の見える関係だけに注力して展開してきたこのアニメが、一対多・多対多の顔も名前も見えないモノたちとの関係を背負いきれないのは、ある意味必然的な展開といえる。
恋とは恋の相手以外を切り捨てるエゴイズムであるとはこはるが身を以って示したところだし、世界を代表する能力者でありながら世間が狭いまま広がっていかない閉塞感が、このアニメに独特のテイストを与えていた(そしてそれを僕が楽しんでいた)のも事実だ
こっから『戦いは人間と僕らにとってどういう意味を持っているのか』『特定の思想を『世界』が強要し、大多数の人間の生き方を縛る権限はあるのか』『本当に『リセット』だけが世界を善導する有効な手段なのか』『そもだに、我々は全人類を代表しうるほどの見解と経験を持っているのか』などなど、ガチでハードな議論を始めても終わるわきゃなし、そういうことを目配せレベルでも作中で扱わなかったことを考えても、『こんくらいのことが起きます。ウダウダ喋ってねぇで決断してください』と幻影を見せたアイオーンさんは、実に正しい。
ぶっちゃけ、舞台装置にすぎない(と切り捨てていいかどうかは、ジャンル内部の議論を大きく外れた所に位置する)『リセット』の反公益性よりも、恋のほうが大事だもんな、乙女ゲーなんだし。(と物分かりよく切り捨てた議論をすると、色々問題ある気もするが、取り敢えず僕はこの展開に結構感心はしている。納得はあまりしていない)
夏彦さんが寝てたのも、『リセット』反対派として主要人物たちで唯一、顔の見えない誰かと触れ合っていた異分子の意見を、正面から受け止め議論している余裕が無いからかなぁ。

どっちにしても、このアニメにおいて公共性や一般性、恋の相手を飛び出した広い世界の問題は『扱いきれないし、扱わない』と、今回明言したのだと思う。
個人的には巧く横幅広い結論を付けて『リセット』を否定して欲しかったもんだが、その足場となるノルンの外側での体験は、ほとんど描写されないわけで。
閉じた世界での決断が全人類に波及してしまう、いわゆる『セカイ系』のヤダ味を濃厚にまといつつも、閉じた世界だからこそ育めた恋のアツさでそこを突破できるか、否か。
話の焦点がそのエゴイズムに集約したのは、恋をするゲームを原作としたこのアニメのクライマックスとして、悪くない手だと思う。


『駆くんが好き過ぎて能力持ってるのがツラい……』とばかりに炎上を始めたこはるに、『ポンコツだけど超天才ショタにして創造主と恋愛したいもん!!』という気持ちで頑張るアイオーン。
この二人を受け取る駆&空汰に、世界の命運とお話の収まり方が託されている気がする回でした。
青ノルンと黒ノルン、そしてその攻略対象と仲間たちもボーッと見てるだけでは極めて惜しいので、積極的に状況に絡んで、お話にいた意味を強く主張して欲しいものだ。
あと朔也、お前物語進行の奴隷になる必要一切ないから、夏彦ぶっ飛ばして深琴拉致っちまえ。(最後の最後に過激派の意見)