イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない:第15話『漫画家のうちへ遊びに行こう その2』感想


透明な悪意と戦う街頭の十字軍戦記、今週は露伴ちゃん大暴れ後編。
スタンド能力一切関係なく異常な作画能力を存分に披露したり、康一くんがヘブンズドアー漫才したり、億泰が焼身自殺しかかったり、仗助がプッツンオラしたり、いろんな事が起きる回でした。
いや、考えてみると『サイコ漫画家にダチが拉致られたんで、殴って取り返した』だけなんだけど、ヒロイン役の康一&億泰のリアクションが面白すぎて24分あっという間つーか、なんつーか。
ボッコにされてヘロヘロになっても、櫻井ボイスと露伴ちゃんは相変わらず最高のマッチを見せており、再登場が楽しみになりますね。

こうしてアニメで見直してみると、登場したての露伴は本当にサイコ野郎でして、康一くんの経験を略奪しすぎて衰弱死することを一切気にしていない。
億泰に『死ね』と書き込むことにも一瞬足りとも躊躇いはなく、結果として死んじゃったとしても「ああ、そう。面白いネタになったね」といって漫画にしそうな凄みがあります。
金やチヤホヤされるためではなく、『読んでもらうため』だけに漫画を描く。
前回宣言した言葉は立派ではあるし、その作画技術も人外の領域に達してはいるんですが、それは同時に人命含めた『それ以外はどうでもいい』と割りきれてしまう、驚異的な冷たさに直結しています。

しかし今回、幸運にも死人は一人も出ない。
"ヘヴンズドアー"による健忘症漫才とか、あまりにもビックリし過ぎな作画解説とか、女子高生みたいな億泰のんびりリアクションとか、コメディ色も強いお話なわけで、死人が出るムードではないってのは、確かにあります。
しかし(この段階の)露伴が漫画だけに魂を燃やす、共感能力に欠けたサイコであり、一歩間違えば康一くんと億泰は死んでいたのも、また事実。
仗助が本気でぶん殴って能力を解除しなければ、彼は身内をぶっ殺したサイコ殺人鬼として、アンジェロ岩みたいな末路を迎えてもおかしくなかったわけです。

アンジェロと露伴を分ける一線は人死の有無であり、『漫画』という他人と繋がる表現の有無だったのかなぁと、今回見てて思いました。
露伴がどれだけ『それ以外はどうでもいい』サイコであっても、彼が描いた『漫画』は読者に知られ感動を生む、共感の足場になってしまう。
血の通った仗助個人はどうでも良くても、康一が語る『物語としての東方仗助』には『い~い話だなぁ』と感動できる、奇妙で捻じくれか共感能力の有無が、ギリギリの所で露伴を殺人から遠ざけたような、そんな気がするのです。

あくまで『日常』の延長線上にある杜王町では、スタンド使いと戦って再起不能にして、ハイおしまい、ということはあまりありません。
悪しき『非日常』の行使を主人公たちが止めた後、人間がどう変わっていくのかという構成物語の要素が、四部には強くある。(それこそ、今回のエピソードにおける間田のように)
僕は原作を読んでしまっているので、このあと露伴ちゃんが性格最悪のクズ野郎のまま、少しは仲間と語り合うことも出来る血の通った人間として描写される未来を知っています。
それは多分、仗助がおもいっきり殴り飛ばすことで最後の一線から露伴を遠ざける、『結果として正しい暴力の行使』がなければ、手に入らなかった未来だと思うわけです。
学ランの少年のように真心を分け与える形じゃないけど、仗助もまた意識せず誰かを殴り飛ばし、超えられない一線を簡単に超えてしまう直前で引きずり戻す行動をしているわけで、そういう不思議な引力の及ぼし合いの一環として、今回の露伴ボッコボコ事件もあるのかなぁとか考えました。


戦闘自体を発生させず無条件に死を与えられる"ヘヴンズ・ドアー"は、最強の知略です。
情報を集め、相手を知り尽くして拳を交えず勝つ露伴ちゃんが、康一くんから盗みとった『一番効く煽り』という策略で仗助をキレさせ、結果として策略が聞かない状態にしてしまうのは、なかなか皮肉でした。
やっぱ『つ、強すぎるッ! 一体どうやって勝てばいいんだッ!!』っていうインチキ能力を巧く表現したうえで、その能力自体が仇となって策士策に溺れる展開ってのは、強いカタルシスがあって素晴らしい。
事前に億泰を形兆絡みで煽って勝たすことで、露伴の知略の威力をしっかり見せているのが、カタルシスの作り方として巧いよね。
ココらへんを盛り上げるために、康一くんは過剰な高速解説を行い、億泰は無謀に突っ込んで能力の餌食になるのだろう……負けブックを素直に飲み込む億泰はいい子だね……。

仗助自身も結構な策士なんですけども、同時に熱い魂を受け継いだ正義の男でもありまして。
共感能力がないために『そこに触っちゃったら、殺しあいしかない』という部分を想像できない露伴が、安易に一番ヤバい場所に火を付けて負けるこの展開は、『小狡い頭脳戦も良いけど、やっぱ最後は"凄み"』というジョジョ的価値観が、良く反映されている気がする。
DIOの『血の目潰し』見てもわかるけど、勝つために全力を尽くす知恵と、薄汚い小細工は全然違うもんなぁ……そこら辺のロジックは、ジョジョシリーズ全体を通して徹底されていると思う。


と言うわけで、漫画のためなら人間の命なんてどうにも思ってない露伴ちゃんを、仗助の熱い拳が殴り飛ばすお話でした。
仗助は煽られた怒りで時文がなにをしているか全く分かってないんだけど、結構危ういところを助けてたんだなぁと、アニメで見なおして思いました。
あのまま康一くんを貪り尽くしてたら、漫画のネタのために殺人を重ねるサイコ殺人鬼に変化してたのかなぁ、露伴ちゃん。

期せずして『日常』と友人、岸辺露伴の危うい一線を守った仗助ですが、来週は甥っ子と一緒にネズミ退治です。
ホント四部は、色んな連中と色んな方法で戦うなぁ……このバリエーションが、やっぱ四部の魅力だな。
いろいろグロいアレソレをアニメではどう見せるか含めて、来週が楽しみですね。