イマワノキワ

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ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない:第23話『シアーハートアタック その1』感想

地獄のナイフが君を狙っているアニメ、今週は第二の爆弾攻略戦。
吉良吉影の凶悪な自動追跡スタンド"シアーハートアタック"と対峙した承太郎&康一コンビは、承太郎を重症まで追い込まれつつ康一も"エコーズ"をACT3にまで成長させ、窮地を乗り切る。
思わぬ反撃により"シアーハートアタック"を直接回収しなければならなくなった吉良と、満身創痍の康一くんが対峙する直前で次回に続く! というお話でした。
固くてヤバい"シアーハートアタック"を、最初は承太郎が、彼が傷を負ってからは康一が、冷静な観察力で対処し、上回り、時には思いがけぬ油断で足元を救われる。
ジョジョのバトル描写の白眉たる『起伏が幾つもあって、ダレない展開』が最大限に生きていて、見応えのある戦いでした。

今回のお話は"シアーハートアタック"との戦いであると同時に、康一が一皮むける話でもあります。
幾度も修羅場を乗り越え、彼女も出来てちょっと天狗になっていた康一は、実戦に裏付けられた承太郎の慎重さを侮り、結果として窮地に陥る。
承太郎がママみたいに口うるさくいろいろ言ってくるのは、アブドゥルや花京院があっけなく死んでいった過去を繰り返さないため、仲間を守るためであり、その忠告は臆病者の寝言でも教条主義のお題目でもありません。
自分のミスで承太郎が傷を負ったことで、その慎重さと冷静さは康一に宿り、精神の成長を反映して"エコーズ"はACT3に進化する。
これまでの活躍を考えれば、康一くんが天狗になるのも納得行くこと含めて、非常に良い具合に成長させていると思います。

そのための最高の触媒になっているのが、作中最強のスタンド使いであり、ベテラン戦士でもある承太郎。
『見たいよ~、無敵の"スタープラチナ"が思い切りオラオラするところが見たいよ~!!!』というファンの要望に答えつつ、康一に伝えるべきことを全部伝えたら手早く戦闘不能になり、見せ場を奪わない身の処し方は巧すぎた。
承太郎が判断や戦闘で目立ち過ぎると康一は何もしなくていいわけで、あそこで負傷退場するのはお話にとっても康一にとっても必要かつ大事。
おまけに康一を守る形で退場することで、スーパークールすぎて人間味ないように思える描写をしっかり補填し、承太郎も熱い慈愛の心を持っている男だと解らせるあたり、妙手だよなぁ。

康一が怯え逃げ惑う『非日常』の被害者から一本ブチ切れ、同じ『非日常』の力で理不尽に立ち向かう戦士に変わるシーンは、強いカタルシスがあります。
彼が一線を越え戦士のメンタリティを手に入れた表現として"エコーズACT3"が発現するのは、派手さと象徴性を両立させた上手い表現なわけですが、その能力があくまで『止める』ことに特化しているのは、スタンドがスタンド使いの内面を反映することを考えると非常に面白い。
『証拠を消したい』という吉良の欲望を反映した"シアーハートアタック"と同じ、独立起動型であることが、さらに康一くんと吉良の精神をはっきりと対比させ、際立たせていますね。
あくまで『止めたい』であって、『殺したい』『倒したい』にはならない辺り、康一くんは善人よね……なんで音のスタンドが重量増加に変化するかはサーッパリわかんねぇけど。


『タフネスに特化した、独立起動型爆殺スタンド』というクソチートを投げ込んで安心していた吉良ですが、無事逃げおおせたのもつかの間、"シアーハートアタック"を回収するべく自ら現場に赴くはめになります。
人目に触れずに殺人を処理したいから"シアーハートアタック"が生まれたのに、その事が吉良を現場に呼び戻す皮肉はなかなかに面白い。(そしてザマァ見ろと思う)
まぁ延々胸糞悪い完全犯罪を続けられても、こっちの胸にストレスが溜まり過ぎるわけで、ある程度はピンチになってもらわんとな。

"シアーハートアタック"も吉良の内面を強く反映したスタンドで、目撃者を消滅させるまで諦めない執念深さと攻撃性、『殺し』に夢中になりすぎて脇が甘い所、他者の攻撃をなんとも感じないタフネスと、親そっくりの極悪さです。
『いくら攻撃しても死なない、けして足を止めずに殺してくる』というのはスラッシャームービーの殺人鬼(ジェイソンとか、フレディとか)の属性でして、無敵の殺人爆弾に延々追跡される今回は、そういう文法も取り込んだエピソードと言えます。
"シアーハートアタック"の殺人鬼性はもちろん吉良の殺人鬼性でもあるわけで、そのタフさと強さ、おぞましさと脅威を身近に感じられるのは、侮れないラスボスの脅威を視聴者に解らせる上で、非常に有効。
つくづく、『スタンド能力は精神の発露』という設定は、魅力的なハッタリと堅実なドラマを両立させる、上手い設定よな。

ただ『証拠を消し去りたい』だけなら、影に潜んでボガンと爆発させればそれでいいわけですが、"シアーハートアタック"は犠牲者を前に「コッチヲ見ロ」と囁く。
そこには自己顕示欲と恐怖による支配があって、ただ殺すのではなく、暴力によって強制的に自己を他者にねじ込みたい、吉良のどす黒い欲望がすけて見えます。
吉良吉影は『静かに暮らしたい』とうそぶきつつ、被害者を圧倒的に支配し、誰よりも優れた自分を証明し刻み込みたい欲望があるわけです。
それは不屈の闘志となって"シアーハートアタック"を前進させると同時に、仗助たちを引き寄せ己を窮地に追い込みもする。
康一くんが指摘したとおり、『絶対にやめない(やめられない)』という執拗さが吉良の弱点であり、同時に強みでもあるのでしょう。


絶対的ピンチを戦士としての覚醒によって乗り越え、『殺す』『倒す』が効かない相手を『止める』ことに成功した康一くん。
しかしそのことが逆に殺人鬼・吉良吉影を呼び寄せ、正面衝突の危機を招きもします。
そしてその窮地は同時に、顔を見せない卑劣な悪のツラを拝むチャンスでもあるわけです。

危機と好機が激しく交錯し、油断のならない緊張感が途切れない、面白いエピソードでした。
"シアーハートアタック"という、一種の代理人との闘争は康一くんに軍配が上がりましたが、第2ラウンドはどす黒い欲望の主、吉良吉影が相手です。
間抜けなラバのような判断力ではなく、殺人鬼の狡知と激情を振り回す相手に、承太郎抜きでどう立ち向かうのか。
来週も息つく暇など無い展開が期待でき、非常に楽しみですね。