イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プリパラ:第113話『ちりちりちりちゃん!』感想

電子の歌姫楽園にも新世代投入! 90年台の萌えキャラに半年ぶりの出番なプリパラ113話目。
半年放置してたキャラをどうイジるかなーと思ってたんですが、第102話で使ったジュエルチェンジ設定を再利用し、90年台の高飛車キャラへと華麗に転身。
真中らぁらが好きすぎて頭おかしい系アイドルとして、のんちゃんともバチバチ反目してました。
キャラ単体としてもチーム結成の経緯としても、これまでなかった球で、なかなか面白いですね。

つーわけで、月川ちりちゃん衝撃のリ・デビューとなりました。
第90話をそのまま流しこむと大人しいらぁらポーザーにしかならないので、ジュエルで人格汚染してまで腕力でキャラを立てるプリパラ式の洗礼を、モロに食らってましたね。
第102話の腕力で押し切るコメディ力が、こういう形で説得力に変換されるとは……長期シリーズ特有の化学反応で、なかなか面白いところです。

おもくそ強引にキャラを変えただけあって、セレブちりちゃんは今後の話を引っ張れる要素がたっぷりあります。
のんちゃんとの最悪のファーストコンタクトも、ここで生まれた溝を埋めて仲間になっていく物語の原料になるし、自分のエゴを押し付けるだけの人格も、逆に言えば変化と成長が期待できるということ。
らぁらとファルル、ひびきとふわりを見ても判るように、プリパラは最初からトモダチな関係だけではなく、距離があるところからぶつかったり受け入れたりする関係の描写も巧いので、ライバルが心を通わせていく話が楽しめそうです。
セレブちりちゃんの言動って結構ハードなんだけど、『かしこまりなさいッ!→かしこまッ!』を何度もやることで笑いのオブラートにくるんで、飲み込める毒の範囲に収めているのはコメディの強みやね。


のんちゃんとちりちゃんがふたりとも『真中らぁらへの強い意識』を持っているのは、凄く三期っぽいなと思いました。
物語の蓄積に嘘をつかず、三期のらぁらは『これから物語を積み上げる、プリパラ初心者』ではなく『既に自分の物語を積み上げ終えた、伝説のアイドル』として描かれています。
何もわからないまま走る側だった主人公が、気付けば妹分に追いかけられる立場になっているのは、積み重なった時間と物語を感じさせられて、結構好きな描き方です。
反目でもいがみ合いでも、共通の話題があるとキャラを繋ぎやすいしね……つーかふたりとも、らぁらが好きすぎて頭おかしくなってるだけだからね、解決法が見えやすい対立になってる。

ちりちゃんはもう一個解決しなきゃいけない問題があって、セレパラ内部の自分をリアルの自分が好きではない、ということ。
リアルなちりちゃんははわわなお人好しであり、他人を意見高に従わせるセレブな自分は、とうてい認められません。
この意識がプリパラを『行きたくない場所』に変えてしまっているわけですが、本来プリパラは楽しい場所のはずで、『みんなトモダチ、みんなアイドル』という題目を維持するためには、どうにかちりちゃんが『プリパラに行きたい』と心から思わないといけない。
のんちゃんとのライバル関係だけではなく、セレブなちりとラブリーなちり、二人のちりを融和させることも、彼女が背負った物語なわけです。
……ここら辺の裂け目は、トライアングルでデジタルに分裂していたのんちゃんの変奏とも言えるのか……共通点多いなホント。

しかし現世のしがらみや束縛を捨て去り、ありのままの自分でいられるプリパラに入ったらああいう人格になっちゃうって、ちりちゃん案外抑圧された生活送ってるんだろうか……。
ジュエルによる人格変化がどれだけ本心を反映しているのかは、ネタ回だった第102話では測りきれないので、セレブちりちゃんは『浄化するべき呪い』として描かれる可能性もあるけど……それはちょっともったいない気がしますね。
プリパラは多様性と可能性に高い値段をつけてきたわけで、セレブなちりちゃんを汚点として消し去る方向ではなく、のんちゃんや他のアイドルと交流する中で高飛車さの上手い使い方を認めて、ラブリーなちりちゃんとも和解するようなまとめ方してくれると、俺の好みです。

わりかしドタバタと衝突だけしたデビュー戦に見えますが、ちりちゃんが背負っている物語の種はかなりクリアに見えたと思います。
パクト越しに指示を出しているあやしい存在も気になりますし、今後の物語を引っ張るエンジンになってくれると面白いですね。
演出の繋がりを見るとひびきが指示だしてんだけども、ミスリードっぽくもあんだよね……三人目の登場も合わせて、今後を待ちたいところだわ。


んで、ちりちゃんのデビューと並列して第三回神GPの開催が急に決まり、未だ参加資格がないトリコロールの現状も描写されてました。
ひびきをケアするふわファルの姿が、ED治療している夫婦とか鬱からのリハビリしている家族みたいで、すげーナイーブだった。
ひびきの話はトラウマとそれによって歪められた現状認識の話なので、ネタにしつつもナイーブになるのは正しい描き方だと思う。

ひびきとふわりとファルルの三角形は、お互いを大事に思えばこそいまいち踏み込めず、動くきっかけを掴めない状況です。
来週メイン回をもらうことで、腫れ物にさわるような隠微な関係を脱して話が動くんでしょうが、どう決着させるのかなぁ。
ひびきの物語に潜っていくことは、ふわりの過剰なナチュラルさや、優しいようでいて『自分』が強くあり、その延長線上にある現実認識からはみ出したものをあまり認められない狭量さを掘り下げていくことでもあります。
来週その領域まで潜っていけるのか、行く気があるのか、結構な勝負だと思います。

一旦退場したひびきとふわりとファルルはパラ宿に戻ってきて、尺を使って丁寧に、克服するべき問題を描き直してきました。
それはキャラクター個人、キャラクター間の関係性の物語であると同時に、あの三人が柱になって背負ったプリパラセカンド・シーズン、そのものを語り直す行為でもあります。
来週どのような語り口でふわりとひびきを描くかというのは、過ぎ去った二期がどのようなものであったかという、非常に大きなモノに直結していると、僕は思う。

製作者サイドがどのように考えているにせよ、出力されたエピソードとその連なりは『二期を語り直す』というメッセージを僕(もしくは僕ら)に伝えてきて、神GPという一つのピークが強制的にやってくる次回は、そこに一定の答えを出す回に、自動的になってしまっている回だと思います。
つまり負けることが許されない天王山ということで、期待と不安が同時に高まります。
三期のひびきの描き方を考えると、ラスボスとしての仕事がない分クリアーな掘り方が出来る状況だとは思うけども……実際出てきたものを見ないかぎり、どうとも言えんな!


そんなわけで、未来に繋がる二人と、過去に囚われた三人の姿が交錯する、ちりちゃんのリ・デビュタントでした。
背負った物語の萌芽が素直に伝わるのんちりと、あまりに色々絡み合いすぎて解決法が見えにくいトリコロールが同時に進行するのは、個人的にはすげー面白かった。
キャラクターの物語を透かして、おそらくシリーズ構成に時間をかけられなかった二期と、戦略的に見取り図を作れただろう三期が見えるように思えて、長尺でお話を積み上げていく大変さを身勝手に想像しました。

未来を背負う小学生たちは最悪の出会いを果たして、まだまだチームとして神GPに挑む足場は整ってません……つうか三人目も登場してねー!
つまり第三回神GPはトリコロールのために用意された舞台なわけで、この好機をどう活かし何を語るのか。
来週こそはプリパラ、相当の勝負どころだと思います。