イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない:第31話『7月15日(木) その1』感想


奇妙な地方都市で繰り広げられる、善悪を巡る神話的冒険、今週はスーパーアクロバティックに原作を切り貼りしてッ! スケジュールを『圧縮』!!!! する回。
『7月15日』という時間の縦軸で大胆に4エピソードを切り刻み、マッシュアップする構成にまず度肝を抜かれますが、あくまで軸はVS"スーパーフライ"にしっかり集め、安定感と野心の同居するエピソードでした。
スタンドバトルの真骨頂とも言える超限定状況戦を活き活きと描きつつ、他者を己の欲望の生贄にする『悪』と、友のために火中に身を投じる『善』との対比もピリッと冴えた、非常にジョジョらしい話でした。
同時並列で展開する怪しげな事件もいい具合に雰囲気を高めていて、今後どう見せるかも楽しみですね。

というわけで色々起きてますが、当面のメインは鉄塔スタンド"スーパーフライ"。
元々ジャンケンだのバイクで追いかけっこだの、状況を奇妙に限定することでお話しの温度を高める手腕が特徴的なジョジョですが、『一度入ったら、誰かを身代わりにしないと出れない』『攻撃を攻撃で跳ね返す』鉄塔というのは、その中でも一等ビザールな舞台です。
『一つ入ると、一つ出る』というルールを上手く使って、詐術で相手をハメて自由を手に入れようとする豊大と、仲間のために己を顧みない仗助たちの倫理が対比されているのは、非常に上手いところです。

ガラの悪い億泰は捕らえられた仗助のために迷わず拳を握り、直接戦闘能力のないミキタカを不器用に遠ざける。
『入るなと言われれば入りたくなる』のは鉄塔だけではなく、友誼に答えようとするミキタカの魂も同じことであり、彼は変身能力を活かしたトリッキーなハメ手で豊大の脱出を制し、攻撃を食らって血を流す。
仗助が億泰やミキタカの傷を治そうと必死になること含めて、鉄塔のルールは高校生戦士たちの高潔さを際立たせ、血を流さないまま他人を犠牲に逃げ出そうとする『悪』と対比させています。
『ぶっきらぼうなバカ』というキャラを壊さないまま、ミキタカの『サポ専だけど、この戦いからは逃げたくない!』というモチベーションをツンデレで突っつき、後の活躍につなげる。
億泰のプレイヤーは相変わらず圧倒的に上手いなぁ……。

初登場エピソードではストレンジな味わいが強調されていたミキタカですが、今回はバトルに飛び込む決意、仲間の危機を見捨てない熱い友情が感じられ、非常に良かったです。
インチキチンチロリンという『日常の中の異常』もいい味だったけども、命を賭けた血の出る戦いという『異常の中の異常』だからこそ強調されるものは、やっぱちゃんとある。
これまで『宇宙人』の異質な精神が強調されていたからこそ、今回ミキタカが事件にまっすぐ飛び込み、友のために血を流す展開はインパクトとありがたさがありますよね……トンチキなキャラが『らしくない』事する展開、やっぱ好きだなぁ……。


バトルの方も"クレイジー・ダイヤモンド""ザ・ハンド"の力押しをまず見せ、それを逆手に取ってくる鉄塔のルールで億泰を負傷させ、ミキタカのトリッキーさが武器に変わるという凝った構成で、見ごたえがありました。
ただ罠を張るだけではなく、戦場を知り尽くした古強者としての顔を露わにして攻撃してくる豊大の強かさもいいし、それがあらわになる瞬間上着が破け隆起した筋肉と無数の傷が見えるわかり易さもグッド。
『殺人鬼で超エグい』というわけではなく、『ちょっと道を踏み外した、狡猾な強敵』という塩梅にキャラが収まっていて、豊大はいい中ボスだなぁと思います。
『鉄塔という限定環境だけ強い』という描写が、この絶妙な塩加減に上手く寄与してるよなぁ……アクションシーンにドラマを埋め込めているのは、やっぱ強いわ。

鉄塔の奇妙さはバトルだけではなく、奇妙なで魅力的な杜王町の一風景としても非常に魅力的で、豊大の日常生活も不自由なんだろうけどもどっか楽しそうな空気満載でした。
ワイヤーで空中を自在に駆け回り、自給自足の生活を送る豊大は思わずじっと見てしまう魅力があって、こういう『日常に埋め込まれた異常』の魅力は第4部の魅力だな、と思う。
そういう不可思議な引力がそのまま、スタンド使いの姦計に繋がる流れも見事で、『日常』と『非日常』が常に背中合わせの第4部らしい展開だと思います。


そんな主軸に絡めるように、同時並列で一気に進行する三つの事件。
康一くんと仗助ママンを狙う、謎の影。
吉良を追跡する露伴ちゃんの前にあられた、怪しげな訪問者。
そして小学生らしからぬ行動力で、父を追いかける早人。
尺の都合も当然あるんでしょうが、7月15日という短い時間に一気に事件が圧縮され、『何か』が起きつつあるという期待をふくらませる展開は、なかなかに胸が踊るものがあります。

4つの事件が同時に起きるだけではあまりにもバラバラで、どこを見たらいいかぼやけるものですが、『吉良のオヤジ』という要素を要に使うことで事件の共通性をだし、横幅とまとまりを同時に演出していたのは見事でした。
アバンでアニメオリジナルのシーンを挿入して、『承太郎一味』を恨み、息子の悪事を手助けするべく動き回るオヤジを強調することで、複雑なエピソードが描かれるキャンバスの形をまず認識させたのは、上手い見せ方だった。

実際、オヤジのもった『矢』とそれで生み出される新手のスタンド使いが、ここら辺のエピソードの軸になってはいるので、彼を中軸に一気にまとめ直したのは、野心的かつ合理的な再構築だと思います。
僕は原作を読んでしまっているのでそういう目線からの意見になりますが、せっかくアニメという新しいメディアになる以上、物語が再構築され別の形で語り直されるのは、必然であり楽しみでもある。
これまでもアニメならではの語り口で、この超名作の新しい魅力を引き出してくれてたわけだけど
、非常に大胆なマッシュアップを使ってきたこのエピソードがどういう形に収まるのか、今から非常に楽しみです。
……初見の人は混乱しねーかなと少し思うけども、培ったホラー演出力を最大限活かし、『とにかく何かが起こっている……異常な何かだッ! 注意してみろォォ!!』というハッタリを上手く効かせつつ、本筋は進めない配慮がされてるんで、大丈夫だろう多分。(気読者特権にあぐらをかいた、高慢な言い草)


というわけで、アニメディアの再構成力を最大限に発揮し、独特の視線で一気に話を語ろうという、野望満載のエピソード開始であります。
4つの物語をどう並列で見せてくるか、その一つ一つに踏み込んだ描写をしっかり乗せれるか。
色々不安もありますが、奥行きと幅広さを両立させたいい塩梅の滑り出しで、期待がモリモリと膨らみます。

すでに原作とは大きく異なった展開を始めているこの物語、一体どう転がっていくか、先が見えない楽しさがあります。
鉄塔を舞台にしたトリッキーなバトルの結末も気になるし、各事件のヒキもいい具合に不穏だし、むぅううううううううう!!
やっぱジョジョ四部アニメはオモロイな!!!(いつもの結論)