メイドインアビスを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
捧げよ、捧げよ、捧げよ。母なる奈落は飢えている。血肉と悲惨と絶叫を捧げよ。
四層に入りエンジンフル回転、一切手加減なしのアビスの洗礼が子供たちを襲う。死を賭けた通過儀礼により、否応なく未熟を思い知らされる子供たちの前に、毛むくじゃらの救いが訪れる回。
というわけで、ここまで薄皮一枚で守られてきたものが、タマウガチの登場で一気に吹っ飛び、血と悲鳴に満ちた決断を強制させられる回。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
悪趣味でありながら可憐、過酷でありつつ真実。そういう作品の特質が、声優陣の熱演と一切逃げない描写によって強調される、ゴア色のジュブナイルであった。
今回の展開はオーゼンが与えてくれた試練の延長線上にあり、情とコミュニケーションがないとアビスの試練はこういう形になる、というテストケースでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
テストで腕がパンッパンになり、心がぶち砕かれ、七孔噴血するんだから、アビスというのは本当に剥き出しである。生存と残虐に容赦がない。
作品も展開も本性を剥き出しにした、といったところだが、試金というのは激しくこするからこそ真実でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
人知を超えた『巨人の盃』の地形自体が、レグの身体性能に(文字通り)おんぶにだっこな、リコのフィジカル面の弱さを強調する。そこはオーゼンの指摘のとおりだ。
そこからタマウガチとの戦いを経て、戦いは別のレイヤーに移る。悲惨な状況の中で判断力を維持し、溢れ出る涙と叫びを飲み込んで、生存を掴むための戦い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
ここではダメージでも揺るがないリコの心の強さと、動揺しまくるレグの弱さ(あるいは普通さ)が強調される。これもオーゼンの指摘どうり。
今回のお話が、リコがレグの手を取って進むシーンから始まるのは示唆的だ。身体的アドバンテージは、遺物アンドロイドたるレグが常に取る。しかし心理面では、生来の狂気を宿し、それに導かれて奈落への知識を蓄え続けたリコが優越している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
これはそんな二人が手を繋ぎ、奈落に落ちていく物語である
死毒と上昇負荷に侵されつつ、適切な対処を支持し続けるリコ。あるいは呼吸停止に対する的確な対処を教え、息を吹き返させたナナチ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
賢い女達(ヴァイゼフラオ)に囲まれ、レグは遺物の脆さ…蓄積された知識の無さを露呈していく。知は力だ。生き残るときも死なないためにも、とても役に立つ。
後悔に苛まれつつ、必死に戦友の腕を折り、切り離そうとするレグ。極限状況の中で壊れていく心を必死に繋ぎ止めようとする姿は、情けなさより健気さが目立った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
彼のマトモさは視聴者の共感の足場…好きになれるポイントなんだが、愁嘆場になるとリコの冷静さ=狂気だけが武器なのだ。
アビスという異常環境は、色んな物を反転させる。生死、子供と大人、内部と外部。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
友の危機に涙するレグの常識は、パニックを呼び込みアビスでは無用だ。生死の境すらも客観視し、適切に対処できるリコの冷静は、僕らには狂気と写る。
現代版の"鏡の国のアリス"では、いろんなものが逆しまだ。
これまでも演出の軸として使われてきた、子供の無力さと世界の巨大さ・無慈悲さを強調するためのサイズ比。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
あまりにも巨大なタマウガチと、小さな小さな子供たちの絵面に込められているものは、非常にエグい。それがリコを貫通し、毒を染み込ませる。侵入と放出、尖ったものによる柔肉への暴行。
傘で体を大きく見せるという、リコの智慧は何の役にも立たない。蟷螂の斧ならぬ蝙蝠傘の盾は簡単に貫通され、レグが心底守りたかったものを傷つける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
子供たちは未熟で無力だ。それぞれの強みを発揮しているのに通用しない。しかしオーゼンの鍛え、これまでの経験が、ギリギリ死からの撤退を許す。
身体能力に欠けるリコに与えられた、血がドバドバ出て腕が風船みたいに膨らむ、あまりにもフィジカルな試練。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
心と智慧に弱さを持ったレグが陥った、親友の体を切り刻みその死を背負うという、あまりにメンタルな試練。
高い代償を払った後悔から、子供たちは何を学ぶのだろうか。
何も出来ないという事実が、何かが出来るという成長を描くのに必要な、経験の白紙を確保できる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
成長物語の基本文法を確認するには、ハードコアで、セクシュアルで、フェティッシュな偏愛に満ちた試練であった。ジャンルとしては登山小説だよな……""神々の山嶺"かよ。
リコの死人の顔色、レグの魂の絶叫(伊瀬茉莉也は流石だ)で切れていれば、残酷が希望に勝利して終わりなのだが、これは御伽噺。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
試練の後には、異形で優しい協力者がやってくるもんである。ついにEDで顔だけ出してた不思議な生き物、ナナチが登場。可愛いね。
ナナチが顔を見せた時、ユーモアの力を的確に使っていたのは面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
『モフモフのマスコットだよ』という冗句は、人が死にかけてる修羅場には似つかわしくない。でもそういう言葉を使うことで、非日常のパニックに飲み込まれかけたレグは落ち着きを取り戻し、適切な対処が可能になる。
それは同時に、人が死にかける程度の修羅場はナナチにとって日常であり、冗句も飛び出す状況だということを示している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
オーゼンが不気味な巨体で示したように、ナナチも己の強さを、喉元まで覆う衣装でビジュアル的に説明している。賢く、強く、優しく、可愛い。場外ホームランだな。
智慧が足らないアビス産ピノキオに、ナナチは人工呼吸の方法を教え、家に導く。『ちゅーだよ』と言ってはいるが、リコが露骨に死人の顔しているのでムードもクソもねぇ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
地獄の淵に足をかけた状態での、血みどろのブラッド・ジョーク。それを口に出来るタフ&ウィットが、子供たちには必要なのだろう
ナナチハウスは、子供たちの命を容赦なく奪うアビスから隔絶されたシェルターだ。ヘンゼルとグレーテルが迷い込んだ、緑色のお菓子の家。シーカーキャンプと同じ『子宮の中の子宮』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
露出を上げることで警戒を外し、子供たちの庇護者としての顔が強調されるところ含めて、オーゼンの継承者だ。
ナナチがどうして獣の外見をして、言葉と優しさを持っているのか。それは来週以降明らかにされることだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
しかし彼女の物語的役割は、これまでの演出をリフレインすることで、あるいは細かく伏線を撒くことで既に明確だ。
庇護者、治療者、屋根と食事を与えてくれる存在、仲間。
レグの超感覚が掴んでいたように、ナナチは二人を見張って/見守っていた。死人を追い剥ぎするつもりなら、わざわざ声をかけ家には上げないだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
死が剥き出しになった獣の世界で、そのルールに背いて人として生きようとする半獣。ナナチが何故そうなったのか、知りたくなる。
かくして、厳しい試練で子供たちの未熟がイヤってほど明らかになり、それを乗り越えるべく智慧と試練が更に積み重なり、窮地を獣の賢者が手助けしてくれるお話だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
詳細な身体破壊描写は悪趣味でもあるが、作品独自の味と情け容赦のないアビスのリアリティを与えてくれてもいる。
試練の描写がハードだっただけに、そこからヒョイと引き上げてくれたナナチのありがたみは強い。イヤほんとありがとう、それにしても可愛いね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
来週はそんなナナチの内面と過去が、より判ってくる話だろう。僕はすっかり彼女が好きになったので、もっとたくさん知りたいし、話を聞きたいと思う。
リコを生死の境に追い込んだ、タマウガチの毒。ザイルパートナーの体を粉砕し、切断する経験がレグに与えた、心の毒。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
それが薬に転じ、治癒と成長を促すかは、今後を見ないとわからない。ナナチもそれを助けてくれるだろう。一話でこんだけハート掴んでくるのは、やっぱビジュアルがつえーなマジ。
作品の周囲を彩っていた極彩色の闇が、グワッと話の真ん中に溢れ出してくるような回だった。衝撃的ではあったが、それは唐突ではない。これまで語られたアビスはずっと、そういう場所であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月8日
危険で過酷な『牙の生えた子宮』を、子供たちはどう進んでいくのか。暗黒童話は更に加速する。楽しみだ。