クジラの子らは砂上に歌う を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
帝国と流刑地、舞台は別れつつも戦争は続く。銃弾飛び交う戦争から、自分に都合の良い物語を流通させる言葉の戦争へ。既存のシステムと人身を望むままに操る、デマゴーグ達が握った舵は、船をどこへ進めていくのか。
帝国とファレナ、鏡写しの状況が面白い。
というわけで、獲得した日常がまた不穏な方に流れ、舵を取り返したはずのファレナが自由の中で惑う展開である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
島のエネルギーについてはだいたい予測がついていたので、そこまで衝撃的ではない。チャクロが特権的に握ってしまった真実を、どう扱うかのほうが気になるかなぁ。彼もまた語り部である。
冒頭、オルカを中心に帝国が描かれるのだが、これ以上無いほどにファレナ(そしてチャクロ)のネガで、とても面白かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
ファレナを支配していた長老会と同じく、帝国もエクレシア(意味は『教会』)なる顔のないシステムによって運用される。オルカは彼らを舌先三寸でだまくらかし、舵を一気に握る
『カルサルティリオ(意味は『煉獄』)の雨』なる審判を生き延びた人々は、破滅の原因となった感情を封じ、印/無印の二元論で世界を分断して帝国を作った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
帝国を支配するオーソドックスに『デモナス』なる第三軸を付け加え、死の運命をそらしていくオルカの口上は清々しくすらある。
実際『デモナス』が世界秩序を根底から繰り返す悪霊なのかはわからないし、おそらく問題でもない。(アニメの残りの尺でやれるわけもない)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
オルカにとって重要なのは、『デモナス』を中心に据えた物語で世界秩序を塗り替え、そのコントロールを握ることだ。この時、ファレナとオウニは実態から離れる
必要なのは(それこそ悪霊のように)実態のないイメージなのであって、生み出された『敵』が何を考え、どう生きるかはオルカの知ったことではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
ファレナに害意を向けることで、帝国が己を必要とする状況を作り上げることこそ、オルカの望みだ。真実の歴史とやらは、捏造の物語に勝てない。
そんなデマゴーグの手に武器ではなく資料が握られていること、それが血に塗れるのは、非常に示唆的だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
仮想敵であろうと、ファレナは襲われればチト涙を流す。オルカに都合の良い物語は、血液のインクで描かれる。言葉こそが彼の銃弾であり、物語が真実を食い殺していく。
素朴なファレナの、素朴な歴史家。空の見えない帝国の、強かな詭弁家。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
チャクロが世界の真実に触れ、資料を手放してしまった描写と、薄暗い弾劾を物語の捏造で乗り切ったオルカの描写は、綺麗に鏡写しだ。町並みもカントリーとアーバン、明と暗で、全く逆しまである。
運命の潮目に押し流されて、あの二人の叙述家は衝突する運命にあるのだろうけど、多分アニメはそれを描ききる余裕がない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
少し残念であるが、その予感だけでも僕は結構面白かったりする。やっぱ群像劇には、鮮明な対比と暗喩がないとね。
これで帝国はファレナを公共の敵と認め、今後も襲撃される未来に誘導されてしまった。反論すらも計画通りに踊らされてるエクレシアのチョロさは、ホント大丈夫なの…って感じだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
ファレナが抱えていた構造疲労を、帝国もまた背負ってるということかしらね。その意味では、オルカとスオウは似てるな
一方、ラハリトという異物を飲み込んだファレナは自由を手に入れ、道に迷う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
『海図』という新しい知識、正しい世界認識を獲得する明るい描写と、ラハリトがリコスから真実を聞き出す(それにチャクロが行き交う)描写、双子の反乱の描写は、全て一続きだ。
クジラの胎内に捕らえられた罪人として、天然の牢獄を彷徨っていた時代。愚かな動物のように、何も疑わないまま生きて死んでいく楽園。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
サミの死を嚆矢として、良かれ悪しかれ黄金時代は終わった。ファレナは自立し、決断し、闘う。外部を取り込み、内部で争うふつうの社会に変質しつつある。
その起点となったラハリトが、今回はただの馬鹿ではない描写を見せてきた。同じく異物であるリコスに切り込んで、真実を暴いていく立ち回り。抱え込んだ爆弾を民へどう伝え、統治システムがどう変化していくべきか気にかける様子。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
流石に『外』で貴族やってただけあって、認識がまともだ。
印/無印に分割された世界で、サイミヤに祝福/呪詛されながら生きて、死ぬ。ファレナのスタンダードは世界のルール全てではないことが、ラハリトの口から語られていた。サイミヤがない国も、この世界にはあるのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
そういう場所で使われるのは、陰謀のセオリー。自分に都合よく物語を捻じ曲げる技術だ
まぁヌース社会でも陰謀と差別が渦を巻き、物語は常に捻じ曲げられているということは、帝国の描写でも判るが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
『クジラは命を啜って泳ぐ』という真実/物語をどう扱うか次第で、ファレナもまたああいう空をした国に、簡単になってしまうのだろう。舵のきりどころ、というわけだ。
ロハリトには賢さだけではなく、王たるものに必要な情もあることも、細かく示唆されていた。スオウが祈りを込めて積んでいた花畑の意味を知った瞬間、それを踏みつけられなくなる演出は、彼の性根を巧く見せてくれていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
名もなき花を踏みつけられない男…英雄の相であり、早く死にそうでもある。
ファレナは異質な社会構造と価値観を持った、気持ちの悪い場所だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
それを強調するかのように展開する、手つなぎお歌シーンのスピリチュアルなヤダ味は、早々簡単にファレナを『普通』にする気はないことを示している。
均質なる楽園の気配は、未だクジラに匂う。だが、もうそれに微睡んでもいられない
リコスという外部と接触したことで始まった物語は、ファレナの閉鎖した風習に風穴を開け、戦争をし、変化と不変のぶつかり合いを写しながら進んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
やっぱりブチかましてきた双子の反乱も、そのうねりの一つなのだろう。彼らもまた、自分の望みで歪めた物語を広め、願いを叶えようとする。
あらゆる場所でデマゴーグが花開く中、『真実』とやらはどこにあるのか。世界設定的にも、キャラクターの行く末的にもミステリが多いこの話で、それを探すのが一番大変なのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
血に汚さず、望みで歪めず、ただただあるがままを記述することを求められるチャクロ…しんどいな、オイ。
ファレナの規律に従えない体内モグラの残党として、双子は既存のハイエラレルキーを転倒させ、サイミヤによる暴力革命を示唆する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
同じものを求めていたはずのオウニが、『安っぽいことはするな』と止めに来るのが、ちょっと面白い。『安っぽくないこと』を、少しでも見つけたのだろうか?
オウニは真実世界の外に出たかったわけでも、反社会的な暴力を濫用したかったわけでもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
生まれついてのアウトサイダーである自分を、唯一受け入れてくれた仲間と生きられる『王国』を守りたかったことは、繰り返される崩れた壁の描写からでも見て取れる。
しかしもともと壊れかけの『王国』は、戦争により崩れ去ってしまった。ファレナがそれに変わる安住の地になれるかは…これまた語り切るには時間が足りなさそうだ。んーむ、なんとも惜しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
しかし双子が持っていない英雄的カリスマをオウニが備えていそうなのは、旗を巡る掛け合いからも見えたなぁ。
双子の言い分には『一分の理』もあって、帝国から派生したファレナが印/無印で二分された差別構造を継承し、搾取していることは事実だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
命を啜って泳ぐクジラの餌と、そこから免れている特権階級。この格差を解消しない限り、ファレナは『普通』にはなれないだろう。
その政治闘争の全てが描けないとしても、答えの兆しくらいは次回最終話、しっかり見せて欲しい所だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
ロハリトが言うとおり、再びファレナのルールで自閉し、慣習をシステム化して生きていく道は、とうに閉ざされてしまっているわけで。特に舵取り役たるスオウは、ちゃんとアンサーしないとイカンだろ
それは双子が持ち出した『無印は安全圏から、印を搾取している。暴力による変革が必要だ!』という物語/真実に、別の角度から物語を叩きつける、雄弁の戦いになる。その結果として血が流れるか、流れないかは、まぁ別の話であるな。…弁論術が支配の基盤、正しくポリス国家的だなオイ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
そして歴史家を職分とし、言葉を操る運命に配置されているチャクロは、握り込んだ真実をどう使ってくるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
ヌースという物理システム、あるいは葬礼にまつわる慣習のように、権力に関わる装置は様々な形をとる。物語(の捏造)もまた、その一形態足り得るわけだ。政治化した物語…イデオロギー。
どう生きても、巨大なシステムは島のように我々を取り囲んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
それは人生の愛憎を乗せ、生命の息吹を乗せ、不確かな海を成員の命を啜りながら泳いでいく。百億の物語と、千の意図に導かれ。
このお話、ハイファンタジーとして独立した物語でありつつ、国家と社会の暗喩の色も濃いね、今更だが。
すべてを語りきるには少々話数が足りない感じもあるが、何を描いてどう見せるか、次回最終話、とても楽しみである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
各キャラクターが選び取った物語、その先にあるクジラの航路が、祝福に満ちたものであると良いなと思う。そう願うくらいには、僕はこのお話好きなのだ。
しかし世界の成り立ちに『煉獄』が刻まれている以上、ファレナの罪人以外でもあの世界の人達は軒並み、天国にはいけない半端な亡霊なのだなぁ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年12月20日
死後の悔悛を望まれる場所に押し流されても、血と嘘で政治の城を作り上げる。牢屋の中に牢屋を造り、差別の中で差別を生む。浅ましいが、それもヒトか。