アイカツスターズを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月14日
船が出る。母に愛されたかった女神のエゴは、敗北とともに砕かれた。自分の放ってきた光を月に跳ね返され、己を慕う子供たちに諭され、エルザは再び船を出す。
なかなかなんとも言い難い船出であった。ともあれ、ヴィーナスアークに良き航海を。
というわけで、VAの始末である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月14日
冒頭ナレーション、ゆめの『よかったね!』が象徴するように、主役たちはVAの中枢までしっかり踏み込んではいない。なので事態はVAの当事者で決着していく。
ラストの別れで、あこだけが泣いている所含め、描写自体に嘘はないところがスターズっぽい。
エルザは敗北してようやく、己が成し遂げてきたこと、踏みつけにしてきたものを見る。停滞し続けたのだから、ここでそれを発見し直すこと自体は正しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月14日
ただ、そういう場所に延々と足踏みさせ続ける結果は、変え得ただろうし変えてほしかったな、と思う。半年遅い気がする。
エゴイスティックで身勝手な子供であった事実。それでもエルザは、人を引きつける才に満ちていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月14日
順当に置き去りにしてきたものを拾う形で、エルザは一度は旅路を終えようと思っていたVAを再動させ、苦手だったサラダを食べる。
何度も言うが、それは僕には物語の都合で制限されていた道に、順当に歩き直して話を収めたように見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月14日
最初から見えていた負けにハマって、最初から見えていた成長を果たして。その予定調和を切り崩すような、『ラスボス』以外の仕事を、エルザに許してあげて欲しかった。
まぁそういうことしてると安定感を失いかねないわけで、良いところに落ち着いた、とも言えるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月14日
エルザにとっての太陽たる母を、VAはエルザに見た。その重ね合わせが、ネグレクトの連鎖が腐敗し続けるVA現状なのも事実だろう。その歪さと哀れさは、妙に掘り下げられないまま幾度も語られた。
エルザ様も綺麗になって、自分と世界を見るようになって、船はもう一度出る。さんざん踏みつけにされたVA生も、エルザを許し同じ船に乗る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月14日
そういう物分りの良さは、スターズ二期にずっと付きまとう靄で、物語がそこに迷い込んでしまうと、僕にはよく判らなくなる。なぜ、彼女たちは許すのか。
世界が(生)優しいからか、踏みにじられるものが高徳だからか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月14日
レイちゃんが『エルザが第一。お前らどうでもいい』と言い放ったファンにしても、ゆめの大会荒らしにぶっ飛ばされた凡百アイドルにしても。
顔も名前もない存在は、スターズにおいては強者の圧力に飲み込まれ、自分の言葉を表明しない。
言葉の無さ、建前を通すことで(形情)安定した話運びをもぎ取る展開。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月14日
特にディープに触れ合ったわけではなく、『他に会話シーンやる相手がいないから』くらいのムードで、エルザの頑なさを引剥がすひめ先輩も、それに説得されるエルザも、同じく真実自分の言葉を持たないように思う。
持たなかった、あるいは持てなかった事自体に、スターズは嘘をつかない。でも、キャラと作品独自の血の通った言葉を持たせるべく、もう少し攻めた展開、予定された決着を先倒しにして、人間の魂が暴れまわるスペースが生まれるような運びを、僕は見たかったのだなと、今回の決着を見て思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月14日
エルザは母を責めない。生徒たちはエルザを責めない。優しい世界の穏やかな決着をかき乱してしまうような本音は、それが存在していないかのように胸の奥で眠る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月14日
でも、そこで物分りよく言葉を閉ざしてしまうことは、結構恐ろしいことなんじゃないか、とも思う。まぁ、こんなもんか。
あ、教師陣の扱いのざっくりさ、諸星学園長の道化ぶりは、いつものことながらワリと最悪でした。アンナ先生、喋ったのいつぶり?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月14日
教育機関としての四ツ星に骨がないので、それを感じ取ってエルザが道を改めるような展開はやらない。嘘になるし。船の中で閉じた変化を、物分りよく加速させていく。
そしてそこに、ゆりちゃんが乗る。幹部で卒業生なのに、否おそらくはだからこそ、ざっくりと前振りなく、幹部服をVA制服に着替えて去っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月14日
S4側近、歌組幹部。その重さを問いたくなるざっくりした退場であったが、二期は組制度もS4制度も強い機能をもたせられなかったし、まぁこんなもんか。
レイちゃんの学祭舞台といい、お話の泥を流し込まれる立場に、二期のゆりちゃんはいたなぁ、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月14日
CGモデルもないサブキャラクターは、まぁこんなもんか。僕はアイカツ範馬勇次郎ではないので、『こんなものなの?』と問い直す気力も愛情もない。こんなものだ。
こんなものか、という諦観で心に麻酔をかけざるを得ない展開が積み重なるけども、まぁ置きている事自体には嘘がなくて、しかしそこで描かれる価値は薄ら寒い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月14日
能なら『冷えに冷えたり』は褒め言葉だが、夜の儚さや理不尽を掘り下げる幽玄の美は、ゴージャス極まるVAには最も遠かろう。
こんなものか、なんて思いたくはなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月14日
こういうものか! と新しい価値観に目を見開き、そういうことか! と意外性に納得したかった。
それがアイカツでしょう、という恨み言は、あんま意味をなさない。アイカツスターズはアイカツスターズなのだから。それでも、名にし負わば。
その未練も、幕が閉じて終わる。船が出て、アウトロが終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月14日
エルザとその子供たちは、良い未来を掴めたのだろうか。心の奥にある本当のものに、痛みをこめて接近して、本気で傷つき、本気で学び、本気で変わったのだろうか。
僕が『そうじゃない』と思っても、船は幸福の中で漕ぎ出した。
なら、情緒虐待を繰り返し、カリスマのコピーを量産する歪さを内包したあの船がけっこう好きだった視聴者としては、その航海を祝いだほうが良いのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月14日
Bon Voyage,Venus Arc。良い旅を。二度目の船出は、多分新天地へと君たちを連れて行ってくれるだろう。
船は出ていき、女は残る。旅立ちは続き、物語は終わりに近づいていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月14日
来週はリリーとゆずの物語、その終章だ。個別の書き方にはいろいろ問題もあったが、二人の関係性はかなりいい感じに書けていた。そこに嘘なく話を継ぐと、素敵な幕引きになるんじゃないでしょうか。ゆりちゃんもいないしさ。