ロード・エルメロイII世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
金色の悪意が、吊られた男を問い倒す。少年は何故、無縁の教室を贖うことにしたのか。バビロンで何があったのか。
ウェイバー・ベルベットがロード・エルメロイ二世になるまでの、ミッシング・リンクを追うエピソード。
つーわけでTROYCA謹製、Fateコンテンツ夏の刺客は魔術ミステリである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
逆さ吊りの近過去、バビロンの遠過去、生徒いっぱいの現在と、時系列が行ったり来たりする凝った構造を活かし、主人公エルメロイ二世…と、その義妹ライナスの表情を彫り込んでいく第一話。
制作UFOではないとは言え、ZERO監督のあおきえいがスーパーバイザーで入る座組。クールに据え付けたカメラがビシッと画面を大胆に切り裂く構図が多用され、緊張感があった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
水平線と垂直線が非常に鮮明に、画面を割るシーンが多い。
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幾何学で構成された物語は静けさと落ち着きを宿し、パズルのような知的な雰囲気が画面に宿る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
同時に奇っ怪な転倒もしっかりあって、冒頭ウェイバーは逆さまにつられ、ライナスと真っ当に目を合わせはしない。将来の義兄を奇妙な果実に変える、なかなか良い性格したロリである。
転倒は時系列にもあって、ZEROでは超受け声受け顔で少年してたウェイバーくんが、なんで縦皺激渋教師に代わったのかという隙間を、今回埋める話でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
ZEROでヤンチャした少年時代を禊して、落ち着いたポジションで物語を始めるための儀式という側面もあるだろう。
今回の話はケイネス先生が冬木でメッタになる一因を担ったウェイバーくんが、激闘を経て大人になり、過去の過ちを取り返す決意を語るお話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
その真摯さに打たれて、ライナスもこのチョロ顔である。んーむ、いいキャラな匂いがプンプンするぞ!
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型月世界だと優秀な魔術師であることは、すなわち人間としてはど底辺のゴミクズ野郎であることと=である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
ライネスは人を逆さ吊りにし、高い場所に立ってマトモに話さず、蛇めいた悪辣さを隠そうともしない『正統派の魔術師』として、画面に登場する。
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しかしバビロンでの奮戦、己の過ちと恩師の遺産を真正面から受け止める態度に感化されて、しっかり床に足をつけてウェイバーくんを正面から見るようになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
過去を語ることで真っ当さを視聴者に見せるのは、ウェイバーくんだけでなく、彼に感化されるライネスも同じだったりする。
これを表現するのに逆さ吊りの転倒→椅子に座った高い位置→床に降りたフラットな関係→椅子に腰掛けた穏やかな距離感と、垂直方向の移動を活用する画面のセンスは、流石の加藤監督コンテって感じ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
金と銀、強火のクレイジーによく好かれるなウェイバーくん…。
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水平方向にどっしり据えた画面構成と、時系列トリックと人格的変遷を盛り込んだ物語展開。静止と変化が独特のリズムを作り出す中で、ウェイバー・ベルベットとエルメロイ二世をつなぐブリッジ…バビロン事変が語られていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
第四次聖杯戦争直後の彼は、少したくましくもやはり弱々しい劣等生だ。
『こ、このままじゃウェイバーくんがエロ同人みたいなことをされちまう! エロ同人みたいなことを!!』という、ヒロピン力全開のこの絡み。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
魔眼一発で無力化され、牢獄にブチ込まれ…そっから火が付いて大暴れである。冬木帰りなめんな!
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冬木の事件は増上慢のクソガキを、決定的に変化させている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
征服王最後の臣下として、己の中の弱さを認めた上で胸を張って生きていくと決めた。なら、憧れを掘り返して辱める発掘計画を、黙ってみているわけがない。
たった三ヶ月、しかし少年が男になるには十分な時間である。
牢を真っ正直にぶっ壊さなくても、つなぎ目を経年劣化させればいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
直接魔術勝負に勝たなくても、暴走させた悪霊に倒させればいい。
ガソリン大爆発で魔術陣地をぶっ飛ばす悪辣さは、切嗣を見習ったものか。頭が切れる事件簿ウェイバーくんは、ZEROとはやはり少し違う男である。
バビロンの大冒険で見せた積極性、過去に向き合い正しく贖う姿勢は、イスカンダルだけでなくケイネスにも向かう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
借金して教室を買い取り、師の夢をつなぐ。個人的な苦手意識を飲み込んで、自分が引き起こした失墜の責任を取る。
そういう事ができる青年になったわけだ。
この変化の延長線上に、エルメロイ二世”先生”がいる。第0話で見せた、才気あふれる教え子に慕われる”大人”としての姿。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
記憶に残るへっぽこ少年の気配を残しつつも、そこから脱皮して背筋を伸ばしたエルメロイ二世を、浪川大輔が好演している。時系列による人格の変遷、上手く声に乗せてたなぁ…。
バビロン編のヒロインとも言えるメルヴィンも、平川大輔のサイコ味溢れる声がズバッとハマって、いい感じだった。
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彼との距離感もまた、水平を活かした構図でその変遷を切り取られていく。青い夜光が、すごく綺麗だね。光がいいアニメ。
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バビロンの冒険でお互い背中を預けあった二人は、夢を掴むための借金で繋がる関係にもなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
善良さを残しつつも、『優秀な魔術師』らしくどっかぶっ壊れた部分があるメルヴィンは、ぐいと間合いを詰めて、少年を『親友』と呼ぶ。
危うさはありつつも、それはたしかに友情の距離感だ。
ウェイバーくんは血筋も性格も魔力も『優秀な魔術師』ではなく、しかし異能に優れ性格もぶっ飛んだクレイジー共を惹きつける”何か”を持っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
今後も色んなクレイジーに好かれるんだろうが、その第一号としてメルヴィンとライネスを見せて、並列で見せる構造がなかなか憎い。総受けオーラ凄いな…
エルメロイ家の借金を肩代わりさせたことで、ライネスともローンで繋がる関係なのよね…ホント金と銀のクレイジーに好かれまくり、バンスで縛られる運命にあんのね、ウェイバーくん…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
血ゲロが繋ぐ生臭い関係を、逆しまの刑死者と重ねて描く影絵もいいセンスだね。
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かくしてウェイバー・ベルベットとロード・エルメロイ二世の間をつなぐ物語が展開され、トンチキの人非人なれど憎めない魔術師が、クレイジーな表情の奥でどんだけウェイバーくんのことが好きなのか、好きになったのかがよく判るエピソードが展開された。ご愁傷さまである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
今後”ロード・エルメロイ二世”として、先生として大人として物語に踏み込むウェイバーくんは、こういうオリジンやブリッジの物語を僕らに見せるタイミングが、あまりないだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
僕らも見知った可愛い可愛いウェイバーくんが、いきなりキメ顔シブ声パなしてきて、戸惑う部分があった。
そんな当惑をしっかり埋めて、『今後も性格よろしくないクソ魔術師共が、借金と魔術でウェイバーくんに絡みついてくるからよろしく!』と楽しく挨拶してくる物語は、非常に良い出だしだったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
こうして、ウェイバー・ベルベットはロード・エルメロイ二世に、子供から大人に変わったのだ。
同時にZEROから継承されたものが彼の背骨にみっしり埋まって、その変遷に芯を入れていることもいい感じに見えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
ギルガメッシュとの水平の距離感、イスカンダルの幻影を追う奥行き。やっぱり幾何学を活用した画面構成が強いな。
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基本水平方向にフォーカスした構成でずっと続けてきて、イスカンダルとの関係だけ”奥行き”に軸がずれるのは面白いんだよね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
それは前に進める、時間的経過を埋め込めるポジション。いつか見たマントの背中を真似て、スーツを着込むことで少年は教師へと変化していく。
オケアノスの果てで泣いているばかりだった少年は、水平線の彼方(奥行きの向こう側)に視線を上げることで男の氷上に変わり、遠い未来、憧れた過去に手を伸ばす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
それが成功するか失敗するかは、この先に待つ物語が教えてくれるわけだ。
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ウェイバーくんがZEROから掴み取った、力強い意志と誠実さ。それが今後の事件を貫通して、解決していくという未来図をも見せる、良い”奥行き”の作画でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
ずっと水平方向でタメ、垂直方向に捻ってた物語が、ここで3Dになるの凄く良いよね。ストイックな画面制御が成功してる印象。
そんな感じでエルメロイ二世と、彼が好きで好きで好きすぎて頭がおかしい金銀魔術師を紹介したところで、そいつらが持ち込む難事件は来週以降!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
3人目の色素薄い系魔術師であるグレイちゃんは、やっぱりどっかクレイジーなのか。ウェイバーくんの総受けフェロモンは、どこまで垂れ流されるのか。
色々気になる、良いスタートでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
第ゼロ話でもそうだったけど、良い美術にマニアックで生っぽい魔術描写が絡んで、独特の雰囲気がしっかりあって気持ちがいいな。
時間軸が現在に進んで、”先生”になったウェイバーくんの顔、オモシロ生徒の大暴れも楽しめるだろうし。来週も楽しみ。
あ、アルトリアが死ぬほど風評被害食らって、極悪非道の残虐超人扱いだったのはひとしきり笑った後マジ許せませんでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
あの子は…愚かでも真っ直ぐに”騎士”であろうとして…それを切嗣が…マジ許せねぇよな!!
まぁランサー組、ZERO最悪の無残死だったんで、悪評立つのもしょうがねぇけど。
追記 まぁ言うても自分、アルカナの解き方を正式に勉強したわけではないので先見気取るには全然資質不足なわけだが。
エルメロイ追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
逆さ吊りにされたウェイバーくんがタロットの”刑死者”に擬されているのは間違いないとして、忍耐、あるいは不可避の通過儀礼を意味し、ルーン文字の叡智を死を通じて獲得したオーディンをモチーフにもするカードは、ただの苦難とイコールではない。
自分が死に追いやった(一因があると、ウェイバーくんが自認してる)”エルメロイ”の名と立場を、それでも背負うこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
それが彼を偉大な教師、善なる人間へと推し進めていく大事な決断であるからこそ、彼は天地逆さまに吊られ、憧れの鎧をまとって”エルメロイ二世”に変じていく。
同時に正位置で逆さ吊りの”刑死者”が自分の足で地面に立つということは、徒労ややせ我慢といった逆位置の意味が、その決断につきまとうということでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
運命は変遷し、アルカナの意味は常に揺れ動く。重い名と罪と責任を背負って、オケアノスの向こうに手を伸ばした愚者が何を掴むか。
サブタイトルと作品内容に込められた暗示を読み解いて、一種のタロット占いとして作品を読むのも結構面白いかな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月7日
全国放送のアニメっつーメディアで、こういう魔術遊びを仕組んでくるところは三田・三輪・小太刀のオカルト三羽烏らしい趣向だと思う。いや、オタクの妄想かもしれけど…。