虚構推理を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
桜川六花に背中を押され、動き出した想像力の怪物。
鋼人七瀬を葬るべく、琴子は電子の海に語りを始める。
用意されたのは、4つの物語。
実体を手に入れた虚構を、切り崩すのはやはり虚構。
電子時代に、未だ残る中世。闇の末裔達の戦いは続く。
つーわけで、現代怪異譚もクライマックス! ネット言説捏造バトル!! である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
絵にしてみると、まー地味だな…圧倒的な真実が全てをひっくり返し、正しさで虚妄を殴り倒す爽快感もないしな…。
あるのは百万の嘘と、一億の納得。真実ではなく物語で世界を解体する、旧い説話技術のぶつかり合い。
琴子は機能としては善で、構成としては偽なる言説を複数用意して、六花が用意した物語に立ち向かう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
大事なのは、秩序の境界線が守られること。寺田さんのような犠牲者が、これ以上増えないこと。
そのためなら、舌先三寸口からでまかせ、幾らでも使い倒す。
だって真実は、いつでもロクデモナイから
狂暴な情報生命体である鋼人七瀬は、根も葉もない噂話と”真実”の区別を持たない。沢山語られ、人の思いを集めてしまえば、それは事実になっていくのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
六花は原因と結果が融合した旧いシステムを、情報化社会に適応させて呪を放つ。琴子も同じく旧き語りで、嘘の上に嘘を重ねんとキーボードを叩く。
どっちに転んでも、全てが綺麗に収まる結末などありえない。日常と超常の境界線をはみ出して、鋼人七瀬が実体化した時点で、嘘が人を殺すか、嘘で怪異を殺すかしかないのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
そういう意味で、収まりの悪いクライマックスではある。ネット議論バトルの見せ方も、難しいしねぇ…。
琴子は記紀神話に名を残す知恵の神”久延毘古”をハンドルに、議論に目を配り導いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
聴衆の反論を待ち、適切なタイミングで言葉を紡ぐ。それはソリッドな事実を積み重ね、世界や事件を解体していく視線とは大きく異る。
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大事なのは納得。必要なのは魅力的な虚構。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
事実が最強となりうる科学的空間ではなく、ハッタリとそれっぽさで人を呑む政治的空間へ、現代の久延毘古は突き進んでいく。
大国主の国造りに、知恵を貸した一本足の案山子神。杖比古とも称される境界線の神。
”kuebiko”というハンドルは、彼女が自分が身を置く領域、その系譜に強く自覚的であることを示している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
六花の思惑を押し留め、あるべき秩序を定める。
それが大事なのであって、矛盾も破綻も後付の説明も、禁じ手は一切ない。生み出したいのは”納得”だ。
第一の推理として持ち出したのは、機械的トリックを活用したリアルな殺人だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
顔のない百万の聴衆を、納得させるに足りる一つの物語など、そもそも作れはしない。だから数で押す。多様な真実の時代の、アンチ呪術テクニック、というべきか。
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推論の上に推論を重ね、過程の上に過程を重ね、脆い物語を生み出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
かもしれない。であるに違いない。
確証などなにもないが、それがどうした。
動かしたいのは事実ではなく、あくまで印象なのだ。
ここら辺開き直ってる所が、ペテン師の資質だよなぁ琴子…。
驚き役として紗季さんがリアクションすることで、不確かな推論はある程度の重さを手に入れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
車外で展開される”不死人VS都市伝説”のバトルも、停滞しがちな長語りにアクションのスパイスを加える…が、九郎の闘いは根本的に”時間稼ぎ”であり、死んでも蘇る泥仕合でもある。
まとめサイトに足を運ぶ匿名の聴衆と、読者の立場は重なっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
積み重なる考証と物語に納得すれば、鋼人七瀬の存在は薄らぐ。うなずけなければ、秩序は遠のく。
この綱引きを引き寄せるのが九郎の異能だが、それは六花も使える武器だ。
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絶対であるはずの生き死にの境界線すら、自分の望む結末を引っ張るための綱の一つでしかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
匿名の陪審員達は、気楽に消費する物語が怪物に変わる可能性も、その奥で異能者たちが認識を引っ張りあっていることも知らない。
凄く変則的だが、結構正統派に伝奇バトルな構図だな…。
第一の推理に横槍を入れる、名無しの証言者。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
彼は実際に鋼人七瀬に行き合い、その異能を見た。
それは世界の真実なのだが、狂暴な噂を加速させる火種でもある。これが燃え盛れば、秩序はあっけなく崩れて落ちる。
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『鉄骨を投げつけてきたぜ!』という言葉は七瀬に力を与え、九郎の頭部は弾け飛ぶ。六花が生み出した想像力の怪物は、そういう性質を持っているのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
怪異はそこかしこにいるし、悪霊は実際に人を殺したが、そんなものが表沙汰になって、幸福などやってこない。
だから、真実を封殺する。
そんな琴子の闘いは、エンターキーに乗っかって電子の世界に放たれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
二の矢、三の矢、言の葉の鏃。
聴衆の顔色を伺い、情報を投げ込むタイミングと語り口に注意を払って、組み上げた物語を重ねていく。
事実がどうであるか、僕らは既に知っている。琴子の騙りは、それを凌駕するほどの嘘足りうるか
それを審判する議場に、僕らも立っているのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
作中の状況と、それを外側から観測する読者の立場。
琴子…をアバターに作者が打ち込んだ最大の呪は、このメタミス的シンクロかなぁ、と思ったりもする。
効くか効かぬかは、作品に前のめりになれるか、魅力的な虚構に食われるか否かで決まる。
となれば魅せ方が大事で、面白くなければ意味がない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月11日
なかなか演出の難しい論説バトルだが、さて二つ目、三つ目の騙りをどう描くか。
それがあやふやな共同幻想を揺るがせ、鋼人七瀬を葬るに足りる圧力は生まれるか。
クライマックスの語り口が問われる次回、なかなか楽しみですね。